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加賀市の実例を用いた地域モデル応用例

6.4. 知識構成システム論を活用した地域評価

6.4.2. 加賀市の実例を用いた地域モデル応用例

ここでは,加賀市の事例を基に地域モデルを説明する.

地域モデルの事業評価に従い次の各サブシステムについて分析を実施する.

1. Intervention:地域バイオマス政策の進展状況を明らかにする 2. Intelligence:環境影響を明らかにせよ

3. Involvement:物質循環を明らかにせよ 4. Imagination:推進体制を明らかにせよ

5. Integration:物質循環,環境影響,推進体制から進展状況を判断する

149 評価

1. Intervention:地域バイオマス政策の新転用挙を明らかにする 2. Intelligence:環境影響

・厨芥堆肥化事業では温室効果ガスであるCO2が排出されている.

・同事業に影響を受ける系として,行政の廃棄物処理系を調査したところ,市全 体として大きくCO2は減少していた.

・エネルギー効率は,廃棄物焼却系と比較して大きいが,市全体として削減方向 にあるため,今後も事業を継続しながら効率化を図るべきである.

3. Involvement:物質循環

・厨芥堆肥化事業では,厨芥類を厳格に収集し堆肥へと製品化している.

・堆肥はすべて農家へと供給されている

・厨芥類は,我々の生活に直結しており人口減少により今後は収量が減少する可 能性もある.

4. Imagination:推進体制

・加賀市ではバイオマス利用推進強機会を立ち上げている.

・大学の知見を活用して事業の推進を実施してきた.

・大学を利用した場で,しっかり議論を繰り返してきた

・経済性に関しては民間事業者へと業務委託をしており経済合理のもと運営され ている

結果総合判断

5. Integration:物質循環,環境影響,推進体制のいずれの面でも良好であり地域バ イオマスは順調に進んでいると判断される.ただし,エネルギー効率を高めてより環 境への負荷を低減させると共に,バイオマス資源の収集量の確保に務め無ければなら ない.

となる.

さらに,もしも各サブシステムにおいて問題が発見された場合は,知識構成システ ム論にて,地域モデルの連続再構成により解決にあたることが容易に行える.

例えば,3. Involvement:物質循環に関して,「物質収支はバランスがとれており,

堆肥に対する農家の引き合いも大きい.」という場合は,知識構成システム論の特徴で ある知識の連続再構成モデルの側面を活用して,課題解決にあたる.本論文では,2009 年の量と質の問題に該当する.事業の拡大推進策を実施して収集量の増加にあたり,

不純物の混入に関しては収集時の計量する際に取り除き,また,啓発活動に努めて市 民の理解を図る,として事業推進案を構築して実在モデルを用いて進展させていくこ とが出来る.

150 図59 地域モデルの連続再構成

例えば,物質循環においてやや低調であるが一見すると問題がないようなケースで も,推進体制に関しては,加賀市の事例では2008年度から2009年度にかけては農業 団体の代表を交代するなどして事業体制の改革があった.これらは,同地域モデルで 把握すると,物質循環で,堆肥の供給量以上の農作物の出荷という物質バランスが崩 れた状況があり,これは推移体制に起因する,というように因果関係の把握にも有効 である.また,2009年度から2010年毎には漁業者,小売,コンビニエスストア.飲 食店,など多様な関係者を巻き込むことで事業の推進体制の見直しを実施しており,

経年的な分析や環境影響に関する年度ごとの経年変化や事業変更毎での負荷量の変化 にも応用が可能である.

次に,厨芥堆肥化に関する先進的な事例として山形県長井市の事例を本論文で提案 する地域モデルにて分析する.

1. Intervention:山形県長井市で実施されている地域政策の進展状況を明らかにす る

2. Intelligence:環境影響を明らかにせよ 3. Involvement:物質循環を明らかにせよ 4. Imagination:推進体制を明らかにせよ

5. Integration:物質循環,環境影響,推進体制から進展状況を判断する

151 評価

1. Intervention:地域バイオマス政策を評価する 2. Intelligence:環境影響

長井市の政策に対するLCA分析では,生ゴミを再資源化する事業と,再資源化 せずにそのまま焼却するプロセスを比較すると,再資源化するプロセスの方が,半 分程度のCO2削減効果があると分析されている(楠部ら 2005).

3. Involvement:物質循環

一般家庭から分別されて水分が除去された厨芥類は,集積場所に集められる.集積 された厨芥類は市営の堆肥施設にて農家の籾殻,家畜排泄物を混ぜて発酵されて堆肥 化される.堆肥は農家にて使用し,直売上等で地域に販売される.物質循環に関して は,集められたバイオマス資源はすべて堆肥化されており,それはすべて農家にて使 用されている.一方で,同政策に対して参加している農家の数は,60戸程度あり,長 井市の全農家数の4%,耕地面積に占める割合は 1%であるという(楠部ら 2005).

がおのおの 4%であるとしている.参加している農家数の伸び悩みは政策の持続性の 問題点であるとしている(鶴見ら 2005).

4. Imagination:推進体制

推進体制は,レインボープラン推進協議会が立ち上げられており,そこには,アク ターとして,市民,行政,各種団体として,女性団体,農業団体,商工団体が参画し ている.また,事業に関わるすべてがこの場に於いて協議され,決定される.そのと き,市民と行政が対等の精神であるという.

結果総合判断

5. Integration:山形県長井市の誘拐類を堆肥化し,地域へ還元する政策では,環境 負荷効果が見込まれており,物質循環も順調である.また,各アクターが参画した推 進体制も気づかれており同政策は成功している事例で持続性があるといえる.

しかし,問題として指摘されている農家数の伸び悩みに関しては,長井市は構造改 革特区を設けて,農家 4 名が発起人になり,消費者の生産現場への参加を促したり,

農作物の生産拡大を目指したりNPO法人を設立している.

一方で,同政策の市民に対する評価として,認知度は高いものの,農作物を購入す る場所や商品が限定的であったり,価格が高かったり,と認知度と購買意欲が必ずし も対応していない点が指摘されている(應和ら 2004).また,環境負荷に関しては,

環境負荷には効果的であるとされていたが,行政全体としての環境負荷の低減効果は 言及されていない.一方で環境影響に関しては,厨芥を堆肥化する事業が環境の負荷 が低いわけではない.現実的には,生ゴミの分別の手間や施肥時の労働力の増加とっ た問題があり,市民の無償協力という部分に支えられているという(渡辺ら 2003).

以上の評価から,次の知識構成システム論での分析課題として,行政全体で見たと きの環境負荷低減効果や,今後の政策に参加している農家数の向上に関して NPO を

152 設立するという点が効果的かどうか,また,新しい NPO を設立したことによる全体 のマネジメントに関しては,どのように対応するのか,といった点が課題となり,同 政策の循環型社会への貢献やバイオマス政策の進展に資する点は何かを明らかにする 必要があるといえる.

ここで例を示した部分に関しては,簡略化しており,実際にはさらに詳細な分析が 必要であり,先行研究を利用した2次的資料によるものである.しかし,政策の全体 像を簡略化して把握することができ,問題点や課題を発見した場合は,その解決に関 する指針を与えることができる.また,文献や公開している資料等から全体像を把握 し,部分の問題に着目することも可能である.文化横断的知識の統合として政策に関 わるのならば,実際に知のコーディネーターという立場で研究者が地域の主体として 加入した実践的研究を行い,政策の評価をこの地域モデルにて客観的に示して,どこ に問題があり,その問題間の間にどういった関係性があるのかを提示し,全体をマネ ジメントすることが可能であると思われる.

こうした場合は,実在モデルや成功している自治体からのビジネスモデルを単に活 用するというトップダウン的な研究ではなく,政策関係者と協働して実践するボトム アップによる問題解決の方法論の提案にも資する地域モデルである.

なお,バイオマス政策といった特定の政策だけでなく関係するステークホルダーと の議論や合意形成は重要である.しかし,バイオマス政策では,廃棄物系バイオマス や未利用系バイオマスという表現が為されるように.リサイクルの対象とする資源と は元々は廃棄物であったり未利用であったりするものに価値を見いだそうとする取り 組みである.それらは,本来は経済的な価値が無いために,または再資源化に必要以 上の経費が掛かるために捨てられている,廃棄されているのである.そうした資源に 価値を見いだし経済合理な事業とするためには,循環型社会や低炭素に資するという だけでなく,本質的にそれらを本当に活用することが我々の生活や将来の社会に貢献 するものか十分に議論する必要があるのではないと思われる.