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地域再生システム論での議論(2010 年度)

5.4. 知識構成システム論による地域再生システム論の分析

5.4.5. 地域再生システム論での議論(2010 年度)

2010年度のシステム論は2010年10月23日,11月6日,11月20日,12月4日 で開講された.受講者数は122名であり学外参加者は96名,学内参加者は26名であ った.同年のシステム論は6グループで,温泉観光グループ,良心の市場グループ(バ イオマスグループ),地域医療グループ,白山牡丹グループ,人材育成グループ,モバ イルリテラシーグループであった(山下ら 2011).

2010年の参加者は18名であった.議論の参加者は,参加者は,昨年度に引き続き 事業者(収集事業者,再資源化事業者),NPO,農家,九谷焼伝統工芸師,市民,学 生,講師,さらに,バイオマスタウンに興味を持つアクターとして,漁業関係者,生 鮮食品小売店関係者,飲食チェーン関係者などが加わり議論が行われた.2010年度の 議論のポイントは既存の厨芥類堆肥化事業を食品に関するリサイクルループ事業化す ることである.最初の議論では,新規の参加も含めて,昨年度までの実績や取り組み 状況とその成果について各アクターから報告の実施を行い,情報を共有してから議論 を開始する.

知識構成システム論は次の様に描かれる.

1. Intervention:バイオマス政策の進展のための事業拡大ではどのような多様化し た戦略を立案できるのか

という問いを明らかにする.

その解決には,

2. Intelligence:これまでの事業成果とその取り組みの課題は何か

3. Involvement:連携の可能性として各アクターの目的や取り組みを明確化する 4. Imagination:事業進展に資する新しい概念を考える

を用いる.そして,

5. Integration:促進に向けたスキームを明らかにする で結果を統合する.

1. Intervention:バイオマス政策の進展のための事業拡大ではどのような多 様化した戦略を立案できるのか

2009年度から2010年度にかけて,厨芥由来堆肥を使用した農作物の出荷額は大き く増進した.これは,昨年度までの取り組みでの事業案は効果があったと推察される.

しかし,GWを通じて議論を重ねることで,農家側の話を詳しく聞き取りコーディネ ーターが構造化すると,農家は「野菜の卸売り」という立場に傾注していることが明 らかとなった.これは,厨芥堆肥由来の農作物とそれ以外の農作物もともに出荷して いることである.特に,NPO を中心として農家に対してバイオマスタウンの目的を 失っているのではないかと,指摘があった.

105 そこで,最初に共通の目標を設定にGWで議論を行った.今回の地域再生システム 論では,新しいアクターとして,漁業者,小売り,飲食店が参加している.そのため,

これまでのバイオマスタウンの取り組みを振り返りつつ,どのようにして新しい参加 者が政策に参加するのかに焦点が当てられた.GWでの議論と農業側が一人歩きをし てしまったという指摘を生かして,単に事業を増やして拡大するという戦略ではなく て,バイオマスタウンの取り組みを多様化する様な視点での事業拡大や事業進展を目 指したらどうかと提案した.この点に関して,総論として賛成できるが,各論として どうするのか,といった疑問が各事業者,農家,から提案された.そこで,これまで の取り組みからどういった失敗があったのかを明らかにして,今後のバイオマスタウ ンの推進について考えることで合意を得て,知識構成システム論での各次元の分析に 入った.

2. Intelligence:これまでの事業成果とその取り組みの課題は何か

事業の成果としては,農家は,バイオマス政策での厨芥類由来堆肥により生産され た農作物の出荷額は1億円を超えたことが報告された.しかし,急速に事業を拡大さ せたために,農業生産者団体は事業目的を見失っているとNPOから指摘されている.

そこで事業目的を見失った原因について取り組みでの課題を明らかにする.2009 年度では,市民,事業者,農家においてそれぞれ「量と質の問題」があった.そこで,

バイオマス政策の関係者は堆肥の生産量,品質,及び農作物の供給を増加させたり,

事業計画を多角化させたりしていった.そうしたことでそれぞれが事業拡大を実施し て,農業生産者団体では堆肥の供給量以上の農作物を出荷していた.つまり,厨芥類 由来堆肥で作られた農作物以外も市場に供給していたのである.また,生鮮食品の小 売店の担当者は,顧客に農作物を提供するためには,決まった日時に,決まった量を 過不足なく,安定して出荷されることが何より重要であると述べている.農家側は,

そうした出荷先への要求や市民への需要に答えるためにも,必然的に多くの農作物を 出荷せざるを得なかったという.農業生産者団体は各農家が会員として参加しており,

すべての農家や生産現場で厨芥類を使用している訳ではない.堆肥を使用して作られ た農作物が加賀五彩ブランドとして出荷されている.ブランド以外の農作物を出荷す ることでの弊害としては,バイオマス政策で市民からの厨芥類を堆肥にしてそれを基 に農作物を育てて地産地消を推進するという事業内容にそぐわず,また,加賀市が目 指すいわゆる「良心の市場」という市民の協力の基の事業では無くなってしまうとい う議論が為された.

その要因に関して,関係者と地域再生システム論で議論をした結果,それぞれが事 業の拡大を目指していることに原因があるのではないかと着想を得た.これまでのバ イオマス政策での進展を目指した事業拡大の概念図を次に示す.

106 図35 事業拡大と失敗

左のそれぞれの丸は事業を示しており,右のように事業を拡大しようとすると干渉 し地域の規模に応じて大きくなれなかったり,互いに干渉したりとやがて消滅してし まうことを図示した.そこで,新しい連携の概念として次の図を導出し,参加してい るアクターが概念的に理解しやすいように描かれた物である.

図36 バイオマス資源の活用ループ

GW と各アクターへの聞き取りや現地調査を基に各アクターの役割を分類すると,

収集事業者の厨芥類の収集事業は,食品リサイクルループを担っており,農家は,堆 肥を使用するバイオマス利活用グループに布置され,市民と市民団体は,善意の環境 行動として厨芥類を提供や農作物を購入する良心の市場ループに布置されるとしてコ ンセプトモデルを描いた.これらをともに第三者として例えば知のコーディネーター やバイオマス政策の事業主体である行政が,共創に向けてコーディネートをすること で互いに干渉せずに,全体として加賀市バイオマス政策に関するループとして事業を 推進させていくと捉えるものである.バイオマス利活用は厨芥類以外のバイオマス資

107 源の循環である.食品リサイクルは,厨芥類のリサイクルである.良心の市場とは,

市民と市民団体の自主的な協力に基づく政策支援である.

3. Involvement:新規アクターと既存アクターのバイオマスタウン参入の目 的,役割とその取り組み

新規アクターとして漁業関係,食品関係といった事業者からバイオマスタウンへ何 らかの関わり合いが持ちたいが,どのような役割を担うことができるのか,という意 見があった.そこで,新規のアクターと既存のアクターが加賀市バイオマスタウンに 参入する目的,役割とその取り組みに関して明らかにする.そのため,各アクターと GWで議論し,さらに,直接聞き取り調査や現地調査を実施した.各アクターの意見 を参考にコーディネーターが取り纏めて表にした.

加賀市を構成するのは加賀市民,市民団体でそれを行政が統括していると捉え,バ イオマス政策に対するアドバイザー,オブザーバーには石川県,北陸農政局,加賀市 バイオマスタウン協議会,大学とした.産業には,農業団体,漁業団体,収集事業者,

再資源化事業者,食品関連事業者が主要アクターとした.それぞれ,バイオマス政策 に参加する目的とそこで望まれる役割,事業を一つのビジネスモデルと考えそれを活 性化させるための条件について議論を実施した.それぞれに対して,内的要因と外的 要因を設けて対比化してわかりやすい議論に努めた.

108 表6 連携ビジネスモデル対象者分析

4. Imagination:事業進展に資する新しい概念を考える

この想像の次元では,バイオマスタウン事業の拡大に向けてどういった市場が想像 できるのか,を考える.これまでのバイオマス資源の循環は,市民から厨芥類を二次 産業に提供し,二次産業は堆肥化して一次産業に提供し,一次産業は農作物を三次産 業に提供して,三次産業は農作物を市民に提供するという流れであった.

GWの議論と各参加者の役割や目的を基にコーディネーターが市場の視点で側面か らどのように想像できるのか捉え直した.

そこで,一次産業で堆肥化された農作物を二次産業と三次産業で加工して付加価値 を高めて農作物を提供する流れとして六次産業化を目指す新しいバイオマス資源の循 環の流れを描いた.