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前節でバイオマス・ニッポン総合戦略とバイオマスタウンについて述べた.国は多 種多様な補助事業を展開しており政策の推進を図っている.しかしながら,同政策は 必ずしも順調に歩みを進めているとは言えない.総務省では2011年2 月に「バイオ マスの利活用に関する政策評価書」を発表している(総務省 2011).この政策評価書 はバイオマス・ニッポン総合戦略の取り組みとその効果を総務省が評価するものであ る.同政策評価の前書きより引用すると,『(中略)関係府省においては,「バイオマス・

ニッポン総合戦略」に基づき,バイオマスの利活用に関する各種の政策や施策が進め られている.しかしながら,バイオマスの利活用状況(2007年)をみると,林地残材

は 98%が利用されておらず,食品廃棄物や農作物非食用部についても 70%以上が利

用されていない.また,国内で発生する廃棄物全体の56%(2005年度)を占める廃 棄物系バイオマスの循環利用率は16%にとどまっているなどの状況がみられる.この 政策評価は,バイオマスの利活用に関する政策について,総体としてどの程度効果を

20 上げているかなどの総合的な観点から評価を行い,関係行政の今後の在り方の検討に 資するため実施したものである.』と説明している.

総務省では,総合戦略に対してバイオマス利活用施設は国の補助事業を活用して設 置数が増加するなどバイオマスを利活用するための環境が整備されつつあると一定の 評価をしているものの,政策の有効性や効率性を検証するためのデータがこれまで十 分に把握されていない点を次の4つにまとめている.

(1)政策全体のコスト(決算額),

(2)バイオマス関連事業の効果(アウトカム),

(3)バイオマスタウン構想の進捗状況,

(4)バイオマスの利活用現場(バイオマス関連の施設)におけるCO2削減効果等 である.この4点はほとんどの自治体で把握されていないと指摘している.

さらにバイオマス政策の地域での実情に関して (1)バイオマス関連事業性,(2)

実施項目の取り組み度合い,(3)環境性について次の様にまとめている.

(1)バイオマス関連事業性

バイオマス関連事業に対してバイオマス関連の決算額が特定できたものは214事業 中122事業(57.0%)の1,374億円(2003~2008年度)であり,残り92事業の決算 額は関係省において特定できていないとしている.さらに「元々把握」していたもの は25事業(20.5%),総務省の調査により「今回把握」したものが86事業(70.5%),

「改めて把握」したものも11事業(9.0%)となっている.また,効果が発現してい るとされる事業は214事業中35事業(16.4%)であり,国の補助により整備された 施設の稼働は低調であり期待される効果が発現しているものは“皆無”であると言及 している.ここでいう効果とは事業性や採算性,稼働率などである.そして,バイオ 燃料製造施設に対する補助事業を3省でそれぞれ実施するなど非効率な例を指摘して いる.

(2)実施項目の取り組み度合い

バイオマスタウン構想に掲げる取組(785項目)のうち,構想どおりに実施されて いるものは277項目(35.3%)である.また,総合戦略の目標の達成度を測るバイオ マス利用率の変化については,全てのバイオマス原料を把握しているのは 90 市町村 中15市町村(16.7%)にすぎないと指摘している.

(3)環境性

バイオマス関連施設について温室効果ガスである CO2 の収支を把握しているもの は132施設中3施設(2.3%)のみである.またCO2収支などの削減効果についての 試算では効果があると見積もれるものは 77 施設中 8 施設(10.4%)のみであると指 摘している.

また,バイオマス・ニッポンの実現度を測るための指標としては技術的観点から 5 項目,地域的観点から1項目,全国的観点から4項目が設定されている.技術的観点

21 とは,バイオマスを用いたプラントの電力や熱への変換効率を高めるもの,バイオプ ラスチックの原料価格の低下,新しい実用化製品を作ることなどである.地域的観点 はバイオマスタウンを300件程度構築することである.全国的観点では,廃棄物系バ イオマスを賦存量の 80%以上の利活用,未利用系バイオマスの賦存量の 25%以上の 利活用,資源化作物の 10 万トン程度の利活用,バイオマス由来燃料の製造量増進,

である.同評価書では,いずれの目標に関しても数値目標の設定に関わる具体の根拠 および達成度の把握方法が明確でないと言及している.変換効率や数値目標の設定に は,専門家からの意見を踏まえたとあるが,それに関わる具体的な根拠が明確でなく,

例えば廃棄物系バイオマスの建設発生木材についてはそれまで利用量に含まれていな かった単純焼却というバイオマスをエネルギーとして利用されないような状態のもの を 2009 年度から含めるなどしている.建築発生木材に関する農林水産省の見解では 賦存量に対する利用割合は90%であるとしているが,総務省の見解として単純焼却に よるバイオマス利用料を含めない場合は80%になると試算している.

バイオマスタウンを300件構築するという目標地に関しても前章で述べたが,当初 は全市町村の1/6にあたる500件を目標とすることで,隣接している各市町村にバイ オマスタウンが存在するように設定したが,市町村合併の動向を踏まえて6割の300 件としたという.これは木法の達成を図るものとして不十分であると指摘している.

バイオマスタウンでの事業がうまくいっていない事例として総務省では複数の事例 として都道府県名のみで該当する自治体が分からないようにした形で課題を挙げてい る.例えば,原材料の調達では特定の調達先に依存するなど事業リスクを分散してい ない点,計画の見込みが十分に検討されていない点,稼働日数の算定に小中学校の夏 休みなど長期休暇を含めていない点,機械・設備が当初の見込みとは異なり適切でな く更新でずに事業が停止されている点,バイオマスから作られた製品の需要が伸び悩 んでいる点などである.

さらに,バイオマスタウンの構想に掲げるすべての項目が中止,または実施見込み がない事例として,市町村が合併したことで構想が棚上げになったり,合併前に十分 に協議されておらずに計画が進んでいなかったり,助成事業が採択される見込みでの 計画であり,不採択になりが白紙化されたり,事業者が倒産して計画が頓挫したりな ど指摘されている.

そこで,総務省は関係する 6 省(総務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省,

国土交通省,環境省)に対して次の5項目に関する勧告を行っている.

(勧告1)政策目的の達成度と政策効果を的確に把握するための指標を設定すること

(勧告2)政策のコストや効果の把握及び公表をすること

(勧告3)バイオマスタウンの効果の検証及び計画の実現性を確保すること

(勧告4)バイオマス関連事業を効果的かつ効率的に実施すること

(勧告5)バイオマスの利活用によるCO2削減効果の明確化すること

22 総務省の勧告の実施では,各省庁に対して対策を講じて是正ずることを求めている.

こうした点からも国の政策がうまく進んでいないことが分かる.こうした状況にある ため,バイオマス・ニッポン総合戦略を実現する上での各地域での取り組みであるバ イオマス政策の実在モデルが存在していないと指摘している.