2. 国際機関及び各国の電子商取引政策動向
2.2 北米
2.2.1 米国
(1)2003 年の主な動き インターネット課税問題
米国では、1998 年にインターネット関連(インターネット・アクセスやオンライン・ショッピ ングなど)の活動に対する課税措置を 3 年間停止(モラトリアム)する法案を可決した後、2001 年にも同法を 2 年間延長する法案が可決されている。この法律は 2003 年 10 月 31 日をもって失効 しているが、これを延長する法案が現在、上院で宙に浮いた状態となっている。下院では既に 2003 年 1 月にこのモラトリアム措置を恒久化する法案(Internet Tax Nondiscrimination Act)が提 出され、可決しているが、上院では 9 月に同様の法案が提出されたものの、詳細をめぐって論争 しており採決に至っていない。
上院でも、モラトリアムを延長することで合意しているが(上院はモラトリアムの恒久化には 反対している)、モラトリアムの延長期間と、大手通信事業者が提供しているブロードバンド回線
(DSL)をモラトリアムの対象として継続するか否かを巡り、交渉が続いている。ブッシュ政権は、
インターネット税のモラトリアムを恒久化する下院案への支持を表明している。
サイバー・セキュリティ対策
2001 年 9 月の同時多発テロ事件以来、米国の IT 政策はセキュリティ対策に重点が置かれたも のとなっており、2003 年に入ってからもその傾向は続いている。2 月には、連邦政府・州政府・
地方自治体や教育・研究機関、コンピュータ・セキュリティ業界の声などを集めて構築した国家 戦略、「安全なサイバー空間のための国家戦略(A National Strategy to Secure Cyberspace)」 が発表された。同戦略では、同時多発テロ事件後に発足された大統領特別インフラ保護委員会
(President s Critical Infrastructure Protection Board)を廃止し、セキュリティ政策を国 土安全保障省に移行することなどが定められた。また、一般市民のテロ対策意識を促すため、関 連情報を盛り込んだ「ready.gov」というウェブサイトを立ち上げるなどしている。
ブロードバンド(高速インターネット回線)の普及
米 国 内 に お け る ブ ロ ー ド バ ン ド 普 及 率 向 上 を 目 指 す 連 邦 通 信 委 員 会 ( FCC : Federal Communication Commission)は 2003 年 6 月、2002 年下半期における米国内のブロードバンド普 及率に関する統計を発表した。これによると、米国内の家庭や職場におけるブロードバンド普及 率は 23%増大し、1,620 万件から 1,990 万件に達したという。2002 年全体では 55%の急増を示し ている。2002 年下半期のブロードバンド普及率に関する報告の主な内容は下記の通りとなってい る。
・ 1,990 万件のブロードバンド利用者のうち、家庭または小規模事業者が 1,740 万件を占 める。家庭または小規模事業者によるブロードバンド普及率は 24%増を記録した。
・ 1,990 万件のブロードバンド利用者のうち、1,300 万件は、高度サービス(データ伝送が 双方向において 200 キロバイト以上のブロードバンド)を利用している。また、その 1,300 万件のうち、1,080 件は家庭または小規模事業者が占めている。
また、ブッシュ政権は「地方に住む米国民にこそ IT は重要である」とし、地方におけるブロー ドバンドの普及促進に取り組んでいる。農務省は 2003 年 9 月 30 日、地方の学校におけるブロー ドバンドや、医療機関における遠隔治療(telemedicine)向上のため、総額 3,240 万ドルの助成 金を発表した。これらの助成金は、全米 41 州の地方にある 57 の学校や 27 の遠隔治療プロジェク トに送られ、地方に住む米国民のブロードバンド・インターネット・アクセスを向上させる計画 である。
電子認証を巡る紆余曲折
ブッシュ政権の行政管理予算局(OMB:Office of Management and Budget)は、2002 年 2 月に 発表した電子政府政策( E‑Government Strategy)の中の 24 のイニシアチブの 1 つとして、政府・
ビジネス・消費者と幅広い分野で利用できる電子認証システムの構築を挙げている。これは、電 子商取引のための安全なインフラを提供するとともに、認証や電子署名に関する別個のプロセス を省略することで、企業、国民、政府が電子サービスを利用する際の障害を最小限に抑えること を目的としたもの。連邦調達庁(GSA:General Service Administration)及び OMB の主導の下で 進められることになっている。
GSA 及び OMB は 2002 年 6 月、「電子認証業界デー(e‑Authentication Industry Day)」を開催 し、テクノロジー企業に対して電子認証のための技術提案を呼びかけ、電子認証のプロトタイプ 作りを開始した。また、2003 年 7 月には、連邦機関のための電子認証政策の草案(Draft E‑Authentication Policy for Federal Agencies)」を発表した。草案では、電子認証の保証レベ ルを電子商取引内容の重要度に応じて、以下のような 4 つのレベルに分けることを提案している。
電子認証の保証レベル 内容
レベル 1(最小限) 電子商取引において確実な認証を必要としないレベル。誤った認 証でも当事者にほとんど影響を及ぼさない。
レベル 2(低度)
電子商取引を行う当事者の認証に一定の信頼性が必要とされる取 引。誤った認証が当事者に財政や評判上のわずかな悪影響を及ぼ す可能性のある内容の取引。
レベル 3(中度)
電子商取引の内容が公式なものであり、電子商取引を行う当事者 の認証に高度な信頼性が必要とされる取引。誤った認証が当事者 の財政や評判上に大幅な被害を及ぼす可能性のある内容の取引。
レベル 4(高度)
電子商取引の内容が公式なものであり、電子商取引を行う当事者 の認証に非常に高度な信頼性が必要とされる取引。誤った認証が 当事者の財政や評判上に深刻な被害を及ぼす可能性のある内容の 取引。
ところが、会計検査院(GAO:General Accounting Office)が 2003 年 9 月に、「電子政府の電 子 認 証 ゲ ー ト ウ ェ イ は 深 刻 な 開 発 問 題 に 直 面 し て い る ( Electronic Government: Planned E‑Authentication Gateway Faces Formidable Development Challenges)」と題する報告書を発表
し、政府による電子認証システム構築にブレーキがかかった。この報告書発表後、議員ら関係者 の追及が行われた。OMB の電子政府・IT 担当行政官が 10 月、「電子政府の電子認証システムは、
ゲートウェイとしての開発を目的としない新しい方向で進行している」との声明を発表したこと から、米国政府による電子認証システム構築は現在、大きな課題に直面しているといえる。
スパム・メール対策法
米国下院は 11 月 21 日、米国内のスパム・メールの取り締まりを意図したスパム・メール対策 法案を可決した。このスパム対策法案では、スパム・メールを送信する企業に対して、消費者に スパム・メールの受信を拒否する権利を確実に提供するよう義務付けており、これに違反した場 合、最大 5 年の懲役や最高 200 万ドルの損害賠償金などが科せられる。また同法案では、消費者 がスパム・メールの拒否を登録するシステム、「Do‑Not‑Spam Registry」の制度化も求めている。
これは、現在テレマーケティング用に実施されている Do‑Not Call Registry と同様、登録してい る消費者にスパム・メールを故意に送った場合、企業は罰則を受ける。
今回可決された下院案は、去る 10 月下旬に上院が可決した同様の法案「スパム法案(Can Spam Act: Controlling the Assault of Non‑Solicited Pornography and Marketing Act of 2003)」 を元にしている。この下院案を反映させたスパム・メール対策法案は改めて上院で可決を必要と するが、可決は間違いなしとされており、年内にもブッシュ大統領が署名し、成立する見込みと なっている。
2.2.2 カナダ