2. 国際機関及び各国の電子商取引政策動向
2.1 国際機関
2.1.5 世界貿易機関(WTO)
●+3 との協力事業
・ 従来、1 カ国との協力で行っていた以下の事業を「+3」としての協力事業に拡大
・アジア・オープンソース・ソフトウェア・コミュニティ
・TEDI
・東アジアにおけるデジタル・デバイド解消のための特別プロジェクト
・ 既存の協力プロジェクト
・アジア e 学習ネットワーク
・ASEAN +3SME ネットワーク
・ 新たに提案されている協力プロジェクト
・ASIA e ‑Commerce Incubator(ASEAN 域内の中小企業による電子商取引参加を促進する ためのプロジェクト。2003 年の AEM+3 で新たなプロジェクトとして承認された)
・ASEAN e ‑Measurement(ASEAN 域内のデジタル経済を効果的・統一的に測定・モニター することを目的としたプロジェクト)
1999 年 7 月、言及された争点に関する結果を記した報告書を一般理事会に提出した。しかし、こ の報告書では、各傘下機構で論議された争点についての各国の立場のみを並べただけで、統一さ れ、一貫性のある立場としてまとめることはできなかった。
表 2‑2 WTO の電子商取引に関する 「作業計画(Work Program)」の内容
該当機関 主要な検討対象規定
GATS 理事会
‑ GATS I:範囲および供給様式
‑ GATS II:最恵国待遇
‑ GATS III:透明性
‑ GATS IV:開発途上国の参加拡大
‑ GATS VI. VII:国内規制、標準、認定
‑ GATS VIII, IX:競争に関する政策
‑ GATS X IV:プライバシー、公衆道徳の保護、詐欺防止
‑ GATS X VI:電子的手段を利用したサービスの提供に関する 市場アプローチの約束
‑ GATS X VII:内国民待遇
‑ 通信付属書:PTTN に対するアプローチおよび PTTS の利用確保
‑ 関税問題
‑ 分類問題
GATT 理事会
‑ 電子商取引商品に関連した市場アプローチ問題
‑ 関税評価協定の適用に関連して発生する問題
‑ 輸入許可手続協定の適用過程で発生する問題
‑ GATT1994 II 肖像の関税およびその他の関税に関連した問題
‑ 電子商取引に関連した標準問題
‑ 原産地規定原則に関する問題
‑ 分類問題
TRIPS 理事会
‑ 著作権および著作隣接権の保護と強化に関する問題
‑ 商標権の保護と強化に関する問題
‑ 新技術関連の問題および技術に対するアプローチ確保の問題
貿易開発委員会
‑ 開発途上国の貿易と経済発展に電子商取引が与える影響
‑ 電子商取引分野への開発途上国の参加を拡大させる手段および障害事由
‑ 多国間貿易体制での開発途上国の統合のための情報技術の利用
‑ 電子商取引が開発途上国の商品流通の伝統的手段に与える影響
‑ 開発途上国に対する電子商取引の財政的意味
一方、1999 年 12 月、アメリカ・シアトルで、「第 3 回閣僚会議」が開催された。このシアトル 閣僚宣言文の草案では、電子送信物についての無関税慣行の延長および電子商取引作業計画につ いての内容を記していたが、閣僚宣言文では、全体の合意を得られず、何らの結論にも至らなか った。以後 9 カ月ほど中断された論議は、2000 年 7 月、WTO 一般理事会で電子商取引論議を再開 することに決定、4 つの傘下機構で論議が再び始まったのであるが、「電子送信物の分類問題」で 意見が異なり、加盟国間の実質的合意を導き出すことができなかった。
2001 年 5 月に開かれた一般理事会では、電子商取引の問題について本格的な討議が行われ、同 年 11 月、カタール・ドーハで第 4 回 WTO 閣僚会議が開催された。同会議では、ウルグアイラウン ドを引き継ぐ第 9 回多国間貿易交渉、「ドーハ開発アジェンダ」交渉が出帆した。ドーハ閣僚宣言 文の採択によって、WTO での論議も活気づき、2002 年 5 月、一般理事会傘下の電子商取引特別会 議が開催され、分類問題について集中的に論議された。また 10 月にも、やはり特別会議が開催さ れて分類問題を中心に論議が行われた。
(2)電子商取引の主要問題点別、WTO の論議経過86
(ⅰ)分類問題
電子送信物の分類問題は、WTO の電子商取引論議の主流となっている分野である。分類問 題の論議対象は、全品目ではなく、オン・オフライン上で同時取引の可能な品目に限定され る。その品目には、ソフトウェア、書籍、音楽 CD、ゲームおよび映像物などがある。これら の品目がオンライン上で取引される場合、無形という特性上、サービスとして見るのが自然 であるが、WTO の基本原則は同種商品間で差別待遇をしないということであるため、同種商 品がオフラインで取引される時とオンラインで取引される時とで異なる規則を適用するのは、
差別的になる可能性があるという問題が発生し、当該分類が重要な問題点になっている。
また、WTO でサービス貿易を管掌する協定である GATS と商品を管掌する協定である GATT では、適用上、多くの差異が発生するため、分類問題が各国の政策と絡んで重要な問題とし て浮上した。したがって、電子商取引において比較的優位な立場にあるアメリカ、日本など は、問題になる電子送信物に対して自由な取引を保障するレベルということで、GATT レベル の適用を望んでいる。これは、GATS が、GATT に比べて内国民待遇などにおいて制限を加える ことのできる余地があるからである。
アメリカは、分類問題に対してどの規則が適しているかについては性急に結論を下しては ならないと主張し、貿易制限要素を最小化し、現在の自由貿易環境を維持しなければならな いという原則で合意しなければならないと、間接的に GATT レベルの規則適用を希望している。
日本は、従来、CD やディスク形態で取り引きされていた音楽、ソフトウェアなどが、デジタ ルコンテンツとして流通する場合、継続して GATT の規則が適用されなければならないと主張 してきた。また最近では、GATT の規則に代わり「GATT レベル」の規則という表現を使って、
MFN、内国民待遇および数量制限禁止原則などの規則が、継続してデジタルコンテンツにも適 用されなければならないと主張している。これに対して、自国の視聴覚サービス市場などを
86 チョ・スジョン、WTO における電子商取引に関する論議動向(抜粋、修正して引用)、韓国電子取引振興院、2003 年 3 月
保護しようとする EU などは、規制が容易という点で GATS 規則の適用を望んでいる87。
(ⅱ)関税の賦課
現在 2 年ごとに開かれる閣僚会議の度に、電子送信物に関税を賦課しないようにしようと いう宣言を採択しており、最近開かれた第 4 回ドーハ閣僚会議(2001 年 11 月)でも、第 5 回閣僚会議(2003 年 9 月)までの関税猶予宣言をしたことがある。現在でも、関税を賦課す ることができる技術がないために、継続して関税猶予宣言をしている。
アメリカ、オーストラリア、カナダなどは、無関税慣行の永久化を主張している。とくに アメリカは、1998 年 2 月、一般理事会で電子商取引無関税化を国際規範化することを公式に 提案した。しかし、EU は、当分の間、関税賦課猶予を維持することには賛成するが、永久化 することに対しては言及を避けている。インドは、電子送信物に対して関税賦課猶予をする ことで技術の中立性原則が損なわれる憂慮があるという立場だ。すなわち、他の手段で送信 される物にだけ関税を賦課しないと約束することは、技術中立性原則を害する可能性がある という立場である。日本は電子的伝逹についての関税賦課猶予慣行は継続して維持するが、
無関税慣行の永久化問題は技術の発展状況を見て決めなければならないと主張している。
(3)各理事会別の電子商取引論議の現況88
(ⅰ)物品貿易理事会
物品貿易理事会での主要論議内容は、「電子送信」の法的性格として、これをサービスと見 るのか、商品と見るのか、あるいは「第 3 の類型」として見るのか、という問題だった。こ のような問題は、関税、分類、関税評価、原産地および輸入許可など、関連事項より優先し て解決されなければならない事案として認識されている。これ以外にも、多様な事案につい ての合意が導き出されないために、物品貿易理事会は、1999 年 3 月、それまで非公式会議で 論議されてきた商品貿易関連電子商取引の部分を、「議長要約書(Chairman's Summary)」と してまとめ、一般理事会に中間報告の形で提出し、加盟国に回覧した。加盟国が同中間報告 書を検討し、必要な場合、論議を続けることにしたが何の意見も出ず、同報告書は 1999 年 7 月、物品貿易理事会の最終結果として一般理事会に提出された。
同報告書は、1998 年に WTO の「電子商取引作業計画」によって論議中である電子的送信の 特性に起因した問題を、WTO の各理事会および関連国際機関(OECD、UNCITRAL、UNCTAD、World Bank、WCO など)とともに論議することにした。以後、物品貿易理事会は、2000 年 10 月 4 日と 11 月 8 日、2 度の非公式会議で、多くの分野で論議できる争点について 1999 年 7 月に 決めた内容にしたがって論議を続ける、という宣言を行い、現在までそれらについての論議 を続けている。
87 電子商取引に関する国際論議、専門家フォーラム、資料‑WTO の論議動向、韓国電子取引振興院、2002 年 9 月
88 チョ・スジョン、WTO における電子商取引に関する論議動向(抜粋、修正して引用)、韓国電子取引振興院、2003 年 3 月