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資本の限界効率

原文:http://bit.ly/nBvezr  

セクション I

投資をしたり資本財を買ったりするとき、その人はその資本財の寿命の間ずっと、それ が生み出す産物を販売し、そこからそのための運転費用を差し引くことで得られる一連の 収益見込みを買っていることになります。この年間収益 Q1, Q2, ...Qn を、投資の見込み 収益と呼びましょう。

投資の見込み収益のもとになるものとして、資本資産 (固定資産)の供給価格がありま す。これはその種の資産が実際に市場でいくらで買えるか、という市場価格のことではな く、メーカーが新たにその資産を1ユニットだけ追加生産するよう促す価格、つまり時に 再調達原価とも呼ばれるものです。固定資産の見込み収益とその供給価格または再調達原 価との関係、つまりその種の資本1ユニット以上からの見込み収益と、そのユニットの 製造費用との関係は、その種の資本の限界効率を与えてくれます。もっと厳密に言うと、

私の言う資本の限界効率の定義とは、その資本の寿命期間中の収益から得られる一連の年 次利益を、その供給価格と等しくするような割引率です(訳注:現在でいう内部収益率、

IRRですな)。これで個々の種類の固定資産が持つ限界効率がわかります。こうした限 界効率の最大のものが、資本全般の限界効率と見なせます。

ここで定義した資本の限界効率は、その固定資産の期待収益と、当期の供給価格で定義 されていることに注意してください。それは新しく製造された資産に投資を行ったとき に、得られると期待される収益率に依存しています。その固定資産の寿命が尽きたあと で、その投資が原価に対してどのくらい稼いだかという歴史的な実績には依存していま せん。

もしある種類の資本に対し、ある時期に投資が増えたら、その種の資本の限界効率は投 資の増加につれて減少します。一つにはその種の資本供給が増えると見込み収益は下がる からで、一つには一般に、その種の資本製造設備に需要圧力がかかって、供給価格が上が るからです。この後者の要因のほうが、短期的な均衡に達するときには重要なのが通例で すが、検討している期間が長くなるほど、前者の要因の比重がそれに取って代わるように なります。したがってそれぞれの種類の資本について、限界効率がある値にまで低下する ためには、その期間内に投資がどれだけ増える必要があるかを示す、

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関係表を作れます。

さらに様々な種類の資本についてそうした

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関係表をとりまとめれば、総投資の大きさと、

その投資額が実現する資本全般の限界効率とを関連づけた

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一覧表が作れます。これを投資 需要

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関係表、あるいは資本限界効率の

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関係表と呼びましょう。

さて当然のこととして、当期の実際の投資額は、もはや限界効率が現在の金利を超える ような固定資産が残されていないところまで増えます。言い換えると、投資額は投資需要

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関 係 において、資本の限界効率が市場金利に等しいところまで増えます*1

次のように表現しても同じことです。Qrを、r時点における資産の見込み収益だとし て、drを当期の金利でr年先送りにした1ポンドの現在価値だとします。∑

Qrdr はそ の投資の需要価格です。そして投資は、∑

Qrdrが投資の上で定義した供給価格に等しく なるまで実施されます。もし∑

Qrdr が供給価格より低ければ、その資産に対して当期 は投資が行われません。

すると投資をうながすには、一部は投資需要

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関係表が関係し、一部は金利によることが わかります。投資を決める各種要因はきわめてややこしいもので、それについて総合的な 見方ができるようになるには、第四巻の結論を待たねばなりません。でもこの段階で、そ の資産の見込み収益を知っていても、その資産の限界効率を知っていても、金利はわから ないしその資産の現在価値もわからない、という点はご理解いただきたいのです。金利は どこか別のところから持ってこなければなりません。そしてそれができてはじめて、見込 み収益を「資本化」してその資産の価値を評価できるようになるのです。

セクション II

上で定義した資本の限界効率は、この用語の一般的な用法とどう関係するのでしょう か? 限界生産性とか収益とか効率性とか資本効用といった用語は、みんながしょっちゅ う使う、おなじみの用語です。でも経済学文献を探しても、そうした用語で経済学者たち が通常は何を意味しているのか、はっきりした記述はなかなか見つかりません。

はっきりさせるべきあいまいさは、少なくとも三つあります。まず、考えているのは資 本の物理ユニットを一つ以上雇用することで、ある一定時間に生じる物理的な産物の増加 なのでしょうか、それとも資本の価額1ユニット以上を雇用することで、生産の価値がど れだけ増えるか、という話なのでしょうか。前者は、資本の物理ユニットというものの定 義がむずかしいし、それは私が思うに、解決不能で不必要だと思います。もちろん、一定 面積の畑で働く労働者十人は、何らかの機械を追加で使えればもっと多くの小麦を生産で きる、といったことは言えます。でもこれを理解可能な数値比率に還元するには、価値を 使う以外の方法を私は知りません。それでも、この点について多くの議論は、もっぱらあ る意味で資本の物理生産性を考えているように見えます。とはいえその書き手はそれを明 言するわけではありませんが。

第2に、資本の限界効率というのが、絶対量なのか比率なのか、という問題がありま す。この用語が出てくる文脈と、それを金利と同じ次元の数字として扱うという慣習を見 ると、比率でなければならないようです。でもそれが何と何の比率なのか、通常は明記さ れません。

*1話を単純にするため、金利や割引率も、その資産からの各種予想収益が実現されるまでに要する期間の種 類に応じていろいろあるのだ、という点は無視しています。でもこの点をカバーするように議論を書き直 すのは、むずかしくはありません。

最後に、いまの状況で資本量を追加したときに追加で得られる価値を扱っているのか、

それとも追加の固定資産の寿命すべてを通じて期待される収益増分を扱っているのか、と いう相違点があります。これを無視することで、混乱や誤解のほとんどが生じているので す。つまり、Q1だけを扱うのか、Q1, Q2, ...Qr… という数列すべてを扱うのか、という ちがいです。これは経済理論における期待の役割という大きな問題に関わるものです。資 本の限界効率に関するほとんどの議論は、この数列の中でQ1以外の数字にはまったく目 を向けないようです。でもこれはすべてのQが等しくなる静的な理論以外では適切では ありえません。通常の分配理論では資本が現時点でその限界生産性(どんな意味にせよ)

を得ていると想定しますが、これは静的な状態でしか意味がありません。資本に対する現 在の総収益は、その限界効率とは何ら直接の関係がありません。また生産の限界における 現在の収益(つまり産出の供給価格に入ってくる資本収益)はその限界利用者費用であ り、これまた限界効率とは近しい関係がまったくありません。

さっきも言いましたが、この問題については驚いたことに、明確な記述がまったくあり ません。一方で、上で述べた私の定義は、マーシャルがこの用語で言わんとした意味とか なり近いと思っています。マーシャル自身が使っている用語は、生産要素の「限界純効率 性」、あるいは「資本の限界効用」です。以下は、マーシャル『経済学原理』で私が見つけ られた、いちばん関係ありそうな部分(第六版pp.519-520)のまとめですが、その主張の 要点を伝えるべく、いくつか連続していない文章をつなげています。

「ある工場では、追加で百ポンドの機械を導入して他に何ら費用をかけず、その機 械自身の摩耗を差し引いたあとで、純産出を年3ポンド分追加できるものとする。

もし資本の投資家が、高い収益をもたらすと思われる職業すべてに資本を押し込む とすれば、そしてそれが実行されて均衡点が見つかったあとでも、ぎりぎりこの機 械を利用するだけの収益があるとすれば、その事実から年間金利は3パーセントだ と推定できる。しかしこうした例示は単に、価値というものを律する大きな要因の 活動の一部を示すに過ぎない。それを利子の理論にしようとすれば循環論法に陥っ てしまう。これは賃金の理論にすることができないのと同じである。(中略)金利 が、完全に安全なものについて年3パーセントだとしよう。そして帽子製造業が、

100万ポンドの資本を吸収するとする。これは帽子製造業が、その100万ポンドを まったく使わないよりは、その資本全額をとてもよい目的に使って、その利用のた めに3パーセントを支払えるということを意味する。金利が20パーセントなら帽 子製造業が絶対に使わなかった機械があるかもしれない。もし金利が年10パーセ ントなら、使われる機械は増える。6パーセントなら、もっと増える。4パーセン トなら、もっと増える。そして最後に金利が3パーセントなら、もっとたくさん使 うであろう。それだけの量を持っているとき、その機械の限界効用、つまり彼らが 利用する価値があると考える機会の効用は、3パーセントと計測されるのである」

ここで明らかにわかるのは、実際の金利水準をこの論法で決めようとしたら循環論法に 陥るということを、マーシャルがしっかり認識していたということです*2。この一節で、

彼は上で述べた見方を受け入れているようです。つまり金利は、資本限界効率の

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関 係 が

*2でも、賃金の限界生産性理論もまた同様に循環論法だと想定したマーシャルは、まちがっていませんでし たかな?

ドキュメント内 ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』 (ページ 89-97)