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第 3 章 インタビュー番組の談話分析に基づく日中ポライトネスの対照研究

3.2 研究方法

本章で用いるデータは、様々の関係の話者間の会話が比較的自由にとれ、しかも実際の 談話に近いインタビュー番組の会話である。司会者とゲストの会話を録音し、それを文字 化したデータを分析資料とした。

社会状況及び人々の生活や考え方などの変化が人々の言語使用にも大きな影響を与える と考え、本研究に使われるデータは全て2003年以降に行われたインタビュ-である。内容 としては、特別なテ-マが強調されているものではない。しかし、データを採集する時に インタビュ-に出ているゲストの性別、年齢、社会的地位、司会者との親疎関係が様々で あるように気を配った。

本研究で採用されたデ-タは日本側がテレビのインタビュ-番組『徹子の部屋』である。

中国語のデ-タは朱軍が司会者とする『芸術人生』と楊澜が司会者とする『楊澜訪談』で ある。

この三つの番組を選んだ理由:

①黒柳徹子と朱軍、楊澜が三人とも様々の相手と会話を続けてきた十分に経験を積んだ インタビュ-ア-であり、対話者や会話の状況に応じて適切にポライトネス・ストラ テジーを使い分けていると判断した。

②この三つの番組は登場するゲストの年齢、性別、社会的地位が様々であるため、司会 者とゲストとの位置関係も様々である。

このようなインタビューを分析資料として利用すれば、話し手と聞き手が社会的身分や 親疎を前もって認識して、様々なポライトネス・ストラテジーを利用して、会話を成功さ せようとしている様子を分析することができると考えられる。

各インタビューを録音・文字化し、日本人21人、中国人20人の計41人の会話文字化資料 を得た。インタビュー番組の始めの部分と終わりの部分を取り除き、その中からコマーシ ャルなどで断続されることがなかった連続した5分間ほどの内容を取り出し、本章の分析資 料として使用した。始めと終わりの部分を取り除いた理由は、これらの部分で司会者は、

視聴者向けに、「有難うございます」「よくいらっしゃいました」「~さんでございます」な どの決まった形式の挨拶をしたりして、通常の聞き手に対する会話と異なるストラテジー が使われているためである。

本研究のデータ資料の文字化に関しては、ザトラウスキー(1993)、松村・因(1998)を参

考にして、以下のように文字化規則を定めた。

文字化規則:

①漢字と仮名交じりで記述する。ただし、読み方が複数と考えられるものやどの漢字を 使っているのかを特に判断しにくいものについて、平仮名で表記する。

②笑い、身振りなどの非言語的行動は{笑い}のように{}の中に入れて表記する。

③テレビのインタビュー番組なので、テレビに出ている写真について説明する部分の前 には〔写真〕のように〔〕の中に入れて表記する。

④聞き取れない部分は(?)で示す。

⑤?疑問表現の上昇イントネーションが認められる所。

⑥。文末のイントネーションが認められ、文法的に文と認められる発話が終わる所。

⑦、文が続く可能性がある所。

松村・因(1998)によると、実際日本語の会話におけるポライトネスを考察する際は、対 話者間の相対的地位や社会的状況の読み取りが重要である。話者は先ず対話の相手に応じ て自分の位置を定め、その位置を基準としてポライトネス・ストラテジーを変化させてい るということが分かった。そのため、本章の分析では、実際に収集されたデータの中で、

特に日本語の場合は、ポライトネス・ストラテジーはポジティブ・ポライトネスとネガテ ィブ・ポライトネスが一緒に複合形で現われると推定し、ポジティブ・ポライトネスを「下 線」、ネガティブ・ポライトネスを「網かけ」というように表記する。

⑧人名を表記する方法:

日本語のほうは人名のローマ字表記の始めの一文字のアルファベットを使用して、表 記する。中国人の名字は通常一文字であるから、中国語のほうは直接漢字を使って、

名字で表記する。

⑨うなずき、笑いなどのような非言語表現は本研究の研究対象としない。

本章に使用される会話の対話者の社会的地位(推定上の上下関係)、年齢、性別、親しさ の度合いは表 3-1、表 3-2 の通りである。

表 3-1中国人調査対象者リスト 朱(41 歳)

楊(38 歳)

対話者 ゲスト の年齢

ゲスト の性別

社会的地位 親疎関係

会話1 朱⇔常香玉 81 女 下→上 疎 会話 2 朱⇔秦怡 80 女 下→上 疎 会話 3 朱⇔王晓棠 70 代 女 下→上 少し親 会話 4 朱⇔丁建华

乔榛

60 代 女 男

下→上 少し親

会話 5 朱⇔翟俊杰 60 代 男 下→上 疎 会話 6 朱⇔余秋雨 59 男 下→上 疎 会話 7 朱⇔张瑜

郭凯敏

50 代 男 女

下→上 疎

会話 8 朱⇔赵雅芝 49 女 同等 疎 会話 9 朱⇔田震 40 代 女 同等 疎 会話 10 朱⇔崔永元 42 男 同等 かなり親 会話 11 朱⇔楊澜

白岩松

37 37

女 男

同等 かなり親

会話 12 朱⇔李亚鹏 34 男 上→下 疎 会話 13 朱⇔徐静蕾 31 女 上→下 疎 会話 14 楊⇔田壮壮 53 男 同等 疎 会話 15 楊⇔何冀平 52 女 同等 疎 会話 16 楊⇔趙宝刚 50 男 同等 疎 会話 17 楊⇔何平 48 男 同等 疎 会話 18 楊⇔刘欢 40 男 同等 疎 会話 19 楊⇔趙薇 30 女 上→下 疎 会話 20 楊⇔章子怡 26 女 上→下 疎

表 3-2 日本人調査対象者リスト 黒柳徹子

(72 歳)

対話者 ゲスト の年齢

ゲスト の性別

社会的地位 親疎 関係 会話 A K⇔S(塩沢とき) 80 女 下→上 親 会話 B K⇔E と N(江原真二郎

と中原ひとみ)

69 70

男 女

同等 親

会話 C K⇔T(徳光和夫) 64 男 不明 疎 会話 D K⇔A(綾小路きみまろ) 54 男 不明 疎 会話 E K⇔T(天満敦子) 50 代 女 上→下 少し親 会話 F K⇔L(島田歌穂) 42 女 上→下 少し親 会話 G K⇔I(石丸謙二郎) 41 男 上→下 かなり親 会話 H K⇔T(鶴見辰吾) 40 男 上→下 疎 会話 I K⇔I(いとうまい子) 40 女 上→下 少し親 会話 J K⇔M(前田知洋) 40 男 上→下 疎 会話 K K⇔M(松本伊代) 40 女 上→下 疎 会話 L K⇔H(早見優) 39 女 上→下 親 会話 M K⇔H(橋本志穂) 38 女 上→下 疎 会話 N K⇔R(梨花) 32 女 上→下 疎 会話 O K⇔W(河口恭吾) 31 男 上→下 疎 会話 P K⇔W(河我相聞) 30 男 上→下 疎 会話 Q K⇔L(君島十和子) 30 代 女 上→下 疎 会話 R K⇔Y(YOU) 30 代 女 上→下 少し親 会話 S K⇔T(武田美保) 29 女 上→下 疎 会話 T K⇔H(ホリ) 28 男 上→下 疎 会話 U K⇔G(劇団ひとり) 28 男 上→下 疎

上下関係:本論でいう上下関係とは、年齢及び社会的身分の上下を指す。社会的身分の上 下関係には、家族内で尊属とされる者が上という先天的属性と、一般社会で決 定する後天的資格とがある。後者で上とされる者には、階級が高い者、年齢が 上である者、何らかの権限を持っている者、所属グループで影響力を持つ者な どが考えられる。

親疎関係:日常生活の中で要求する際、聞き手が顔見知りか初対面かによって使い分けを 行う。特に初対面の相手に対しては、使い分けの意識も高まると考えられる。

そこで本研究では、初対面の場合を「疎遠」な関係とし、その他は「親しい」

関係と見なす。