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第 3 章 インタビュー番組の談話分析に基づく日中ポライトネスの対照研究

3.5 考察

3.5.1 ポジティブ・ポライトネスとネガティブ・ポライトネス

ここでは、日本語と中国語における各ストラテジーの分布状況を調べ、日本人と中国人 の各ポライトネス・ストラテジーの使用傾向と特徴を分析する。

表 3-3 と表 3-4 は日中両言語の会話資料に現れた各カテゴリーの数を示したものである。

表 3-3 中国語のデータにおける各カテゴリーの数

ポジティブ・ポライトネス ネガティブ・ポライトネス A B C a b c d e

会話1 7 1 5 11

会話2 9 8 18

会話3 8 9 18

会話4 8 2 8 11

会話5 4 2 14

会話6 3 1 1 6 3

会話7 5 6

会話8 9 3

会話9 4 1 3

会話 10 4 4 1 1 1

会話 11 6 3 1 2

会話 12 2 3 1

会話 13 10 2 1

会話 14 6 2 2 1

会話 15 11 5

会話 16 5 4 1

会話 17 11 3 2

会話 18 8 1 1 4 会話 19 3 1 1 3

会話 20 4 1 3 2 1 1

合計 127 24 8 2 75 79 2 0

表 3-4 日本語のデータにおける各カテゴリーの数

ポジティブ・ポライトネス ネガティブ・ポライトネス A B C a b c d e

会話 A 12 2 53 1

会話 B 8 1 1 36

会話 C 8 1 33 2

会話 D 12 2 28 1

会話 E 9 3 23

会話 F 4 2 19 3

会話 G 4 18

会話 H 2 1 10 5

会話 I 7 2 2 14 2

会話 J 6 2 21 3

会話 K 5 23

会話 L 7 1 32

会話 M 5 20 5

会話 N 6 2 2 18 1

会話 O 2 3 20 1

会話 P 10 9

会話 Q 2 24 1

会話 R 7 1 20 2

会話 S 5 2 2 21

会話 T 4 3 14 2

会話 U 8 28

合計 133 9 14 3 9 484 29 0

まず、日中のカテゴリーの分布状況に基づき、日本語と中国語のポライトネスの使用傾 向について分析していく。B&L(1987)は、日本社会はネガティブ・ポライトネス文化社会で あると述べ、社会的距離に配慮するようなネガティブ・ポライトネスが好んで使用される と指摘している。しかし、表 3-3 と表 3-4 の数字から、日本語の場合、中国語と同じよう に、話し手が相手との関係(親疎や上下など)に関わらず、談話を順調に進めるために、ポ

ジティブ・ポライトネスの各ストラテジー、特に「共通基盤を主張せよ」というカテゴリ ーに含まれているストラテジーもよく用いられることが分かった。

また、中国語はポジティブ・ポライトネス型言語(毋 2001)であると言われている。しか し、中国語のポジティブ・ポライトネス・ストラテジーとネガティブ・ポライトネス・ス トラテジーの数を調べると、その数は殆ど同じである。中国語では、より円満なコミュニ ケーションを行うためには、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーがポジティブ・ポ ライトネス・ストラテジーと同様に重要な役割を果たしていると言えるだろう。中国人は 相手との会話を順調に進めるためには、話し手と聞き手との親密さを重視すると同時に、

相手との社会的距離にも十分配慮していると言える。

さらに、ネガティブ・ポライトネスの b「推定/想定するな」(中国語 47.5%:日本語 1.7%) と c「H に強制するな」(中国語 50%:日本語 92.2%)という二つのカテゴリーの数の差から、

日中両言語のネガティブ・ストラテジーの使用傾向には大きな違いがあることが分かった。

表 3-5 中国語のデータにおける各カテゴリーの割合

ポジティブ・ポライトネス(159) ネガティブ・ポライトネス(158)

A 127(79.9%) a 2(1.27%)

B 24(15.1%) b 75(47.5%)

C 8(5.0%) c 79(50.0%)

d 2(1.27%)

e 0(0.0%)

表 3-6 日本語のデータにおける各カテゴリーの割合

ポジティブ・ポライトネス(156) ネガティブ・ポライトネス(525)

A 133(85.3%) a 3(0.6%)

B 9(5.8%) b 9(1.7%)

C 14(8.9%) c 484(92.2%)

d 29(5.5%)

e 0(0.0%)

表 3-5 と表 3-6 から分かるのは、日中両言語において、ポジティブ・ポライトネスの三 つのカテゴリーの中で、A「共通基盤を主張せよ」というカテゴリーの中の各ストラテジー

が、対話する相手の年齢や親疎などに関係なく最も頻繁にあらわれていることである。つ まり、相手によく思われたい、親しいものとして扱われたいという「ポジティブ・フェイ ス」を実現するために、日中両言語で最も重視されているのは、「相手と同じ枠組みにいる」

ことを示すストラテジーであると言えるだろう。

また、中国人は B「S と H は協力者であることを伝えよ」というストラテジーを重視して いるのに対して(24 回[15.1%])、日本人は自分の「ポジティブ・フェイス」を実現するた めに、「H の何らかの X に対する欲求を満たせ」というストラテジーに力を注いでいる(14 回[8.9%])ことが分かった。

ネガティブ・ポライトネスの c「H に強要するな」というカテゴリーの中の「Give deference(敬意を示せ)」というストラテジーの数については、日中両言語の間に大きな差 が見られ、日本語の方はその数が非常に多い。このことは、日本社会はネガティブ・ポラ イトネス文化社会であるという B&L(1987)の仮説を支持しているとも言えるが、表 3-4 から 分かるのは、「敬意を示せ」というストラテジーは話し手と聞き手の親疎、上下に関係なく、

普遍的に使われていることであり、B&L の理論で日本語のネガティブ・ポライトネス、特に 敬語は十分には説明できないと言えるだろう。