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第 5 章 対人関係からみる日中ポライトネス意識Ⅱ

5.2 結果と分析

5.2.3 日本人の先輩に対するお礼の手紙の一部

語形上の誤用:

④:「ます形」(60%)を使うか「過去形」(40%)を使うかについて、母語話者の意見がかな り分かれている。

⑤:「送った」を「送っていただいた」に直して、自分の相手からの恩恵行為に対する配慮 意識を示している。

⑥:20 人中 16 人は謙譲語の形が間違っていることに気づき、「拝読」や使役形「読ませて いただく」に書き直した。

表 5-3.2 中国人のアンケート調査

番号

不適切な部分 理由 回答

人数

お書きになった

―書かれた(2 人)

×―お書きした(1 人)

3

論文

―ご論文(1 人)

×―お論文(1 人)

2

送ってくださり

―送ってもらって

―送っていただいて

×―送ってくださった(1 人)

7

送った

―送られた

―お送りの

―お送りになった

ここは尊敬語を 使ったほうがい いと思う

20

⑥ お読みいたしました

―拝見いたしました

―拝読しました

謙譲語が違った 15

⑦ 私の論文のテーマにぴったりで役に立ちました

×―私の論文のテーマと同じで本当に助けりました(2)

×―私の論文のテーマにぴったりする部分もあります

失礼 10

ので、本当にお役に立ちました(1)

×―いろいろと教えて本当にありがとうございます(1)

―私の論文のテーマにぴったりで、参考になりました

―私の論文のテーマに大幅に役に立ちました.

―私の論文のテーマに適切で役に立ちました

―私の論文のテーマにうまく合いますので、大変参考に なりました

言い方が失礼で、 先輩への手紙なので敬語を使ったほ うがいい

5

先輩への手紙なので、尊敬する必要はない 5

全文が適切と思う 13

運用上の誤用:

①:訂正された文は尊敬語として間違いがないが、日本人の答えと正反対で、この問題 については考察で詳しく分析したいと思う。

⑥:訂正された文は正確であるが、この問題を認識した学習者は 15 人(30%)しかいな い。

⑦:原文に違和感を感じ、訂正した人はわずか 10 人(20%)である。しかし、訂正され た文の多くは、「自分の都合を優先して相手への配慮が感じられない」ため、原文と 同様に、失礼に感じられる。

語形上の誤用:

①②③の訂正された文に明らかな語形上の誤用がある。しかし、人数が一人、二人しか いないので、ここでは議論の対象としない。

このメールには、敬語形式の誤り(⑥)と運用上の問題(⑦)が一か所ずつある。いず れも、中国人日本語学習者が犯しやすい問題である。

⑥の「お読みいたしました」は「読む」の謙譲語として使われ、自分の動作を低くする 表現である。この時は自分の「読む」という動作は相手に関与しない。しかし、このメー ル文は「相手から論文をもらったから、読むことができる」という状況について、感謝し ているものである。相手から恩恵をもらうことによって、自分の動作が可能になる。この

場合、「拝読する」「読ませていただく」が相手に間接的に感謝を表す表現としてふさわし い。しかし、多くの学習者(70%)はこの問題を認識していない。

また、⑦は一見文法上間違いがなく、単語の誤用もないが、「自己利益」のみに言及して おり、相手からの恩恵を全く考慮していない。学習者のこのような表現は日本語母語話者 に「失礼だ」と思われる。