第 7 章 現場教員の学級風土改善の活動
第 2 節 第二回目面接(電話)調査の結果
2017年4月に筆者が同じ教師を対象に二回目のテレビ電話(skype)によるインタービ ュー調査を行った。各教師に約30分をかけて,2015年9月以来3学期(日本の一年3学 期と違って中国は一年2学期であり,上半期は9月~12月の期間であり,下半期は3月
~6 月の期間である。)を経た今(2017年4月)の学級の様子や学級風土改善の活動の変 化などを伺った。その結果が表61~64である。表61~64の項目では,二回の調査を分け て表示した。一回目調査の時に担当していた学級の学級風土の各下位因子得点の高低を
“H”“L”で表示し,二回目調査の時に担当している学級の教師の活動の変化や学級の現状を 表示し,最後に学級の現状に対して,活動の効果を“○”(効果が見られた),“△”(どちら ともいえない),“×”(効果が見られなかった)で表示した。
A先生
A先生の活動は表 61の通りである。
表61 A先生の学級風土改善の活動と活動の効果
一回目の調査(2015年9月)にA先生が担当していた学級は6年生(2016年6月に卒 業した)で,その時の A 先生のリーダーシップはPM型であり,学級風土のパターンは
HHHHHLであった。学級の問題について,A先生は「子どもの間にある小さなトラブル」
六年生上半期
(現在卒業した)
学級風土 得点の高低 学級風土改善活動の変化 学級の現状 効果
学級への
満足度 H 良い習慣を養うことで、皆仲良くやっ ていける
皆仲良くしているので、満足し
ていると思う 〇
学級活動
への関与 H 春のハイキングや詩朗読大会、運動
会などの体を動かす活動を行う 学級活動に積極的に参加する 〇
規律正しさ H
生徒と相談しながら学級のルールを 作る、クラスの前にルールを書いた
ボートが置かれている
大体のルールを守ってくれる 〇
学習への
志向性 H
宿題をしっかり完成する、分からない 問題をクラスメイトや先生に聞く。保護 者と連携し、当日の宿題の完成を監
督してもらう
学習成績よくない、落ちこぼれ
子が多い ×
自然な自
己開示 H
普段はよくカウンセリングをする、子ど もの家庭事情を把握し、子どもの情緒
の変化を観察する
落ち着いている純粋な子が多 い、先生との仲が良い 〇
学級内の
不和 L
善良で単純な子が多いから、その思 いやりの心を養うために、助け合うた
びに褒めてあげる
トラブルがほぼない、生徒間助 け合う事ができる 〇 一年生下半期
(別のクラス)
(学級内の不和),「専科授業の崩壊」(学習への志向性),「子どもが授業中に集中できない」
(規律正しさ)などの問題点を述べた。それに対して,A先生は「学級文化づくり」に集 中して,「読書文化」という学級の文化を作る事により,子どもに自分の学級の文化を理解 させ,その文化に沿って行動させるなどの活動をした。その結果,学級内の不和を緩和し,
学習意欲を向上する効果が認められた(表59)。
一年半を経てA先生が担当している学級は前の6年生は進学したため,新たに一年生を 担当する事になり,二回目の調査の時点ではA先生だけは指導の継続性がなくなっていた。
二回目調査は一年生下半期の開始時期で,一回目の調査の時点とは別の学級を担当してい る。そのためA先生は学級運営の方針を変化させていた。即ち,「読書文化」を作るより,
「体を動かす学級活動を増やす」,「保護者との連携を重視している」,「よく子どもにカウ ンセリングをする」などよりM行動を発揮するように変化させた。その結果,学級の現状 は「子どもが学級活動に積極的に参加する」,「トラブルは殆ど無い」,「みんな学級に満足 している」,「みんな仲が良い」,「学級のルールを守ってくれる」となっていた。A先生は 自分の活動をこう述べていた「一年生の学級を担当するには6年生と違って,教師は子ど もの母親の役割の一部を果たせなければなりません。そのため,注意や指示のようなP行 動より子どもへの配慮のようなM行動を発揮する方が学級運営に役立つと思います」。そ して,今後の課題は「学習意欲を向上させる事」であった(表61)。
B先生
B先生の活動は表 62の通りである。
表62 B先生の学級風土改善の活動と活動の効果
四年生上半期
学級風土 得点の高低 学級風土改善活動の変化 学級の現状 効果
学級への
満足度 L 「皆は家族だ」の考え方を教えている 皆仲良くやっていて、笑顔をよ
く見られる 〇
学級活動
への関与 L 消防訓練や体操コンクールなど生活
や健康に役立つ活動を行っている 学級活動に積極的に参加する 〇
規律正しさ L 皆で話し合い、学級のルール及び
ルール違反の罰などを決めていく ルールの遵守が良い 〇 学習への
志向性 L
基礎知識をしっかり勉強したうえで、
学習の達成感を感じる。落ちこぼれ子 の個別指導を行った。
学習意欲が強い 〇
自然な自
己開示 L
皆助け合いしたら褒めてあげる、先生 と相談したら生徒の気持ちを受け入
れる
生徒間や教師と子どもの間に
仲が良い 〇
学級内の
不和 L 自分で解決するよう指示し、その対処
方法をみてカウンセリングをする
トラブルはあったがすぐに解決
できる 〇
五年生下半期
一回目の調査ではB先生が担当していた学級は4年生上半期の時期で,その時のB先生 のリーダーシップはpM型であり,学級風土のパターンはLLLLLLであった。学級の問題 について,B先生は「小さなトラブルがあった」と述べた。それに対して,B先生は「学 級は家だ,皆は家族だ」の考え方を子どもに教える「子どもにカウンセリングをする」な どの活動を行い,その結果,「子ども達はお互いに助け合う事が出来る」という効果が見ら れた(表59)。
一年半を経た二回目の調査では B 先生が学級風土の改善活動の内容を変化させ,「消防 訓練など生活に役立つ学級活動を行う」,「生徒の気持ちを受け入れる」,「落ちこぼれ子の 個別指導」,「みんなで学級のルールを決める」などリーダーシップのM行動である生徒へ の配慮を十分に行うように変化させた。その結果,学級の現状は「学級活動を積極的に参 加する」,「トラブルがすぐに解決できる」,「みんな仲良くやっていく」,「生徒間や教師と 子ども間の仲が良い」,「子どもの学習意欲が強い」,「ルールの遵守が良い」と変化してき ている(表62)。
C先生
C先生の活動は表 63の通りである。
表63 C先生の学級風土改善の活動と活動の効果
一回目の調査では C 先生が担当していた学級は 4 年生上半期の時であった。その時 C 先生のリーダーシップはpm型であり,学級風土のパターンは LLLLLH であった。学級 の問題についてC先生は「学級活動が少ない」,「専科授業の崩壊」,「ルール違反」などの
四年生上半期
学級風土 得点の高低 学級風土改善活動の変化 学級の現状 効果
学級への
満足度 L
欲しいものを手に入れないからストレ スを感じる子がいる、その子の情緒の 変化を観察しカウンセリングをする
ストレスを感じる子がいる × 学級活動
への関与 L 特長のある子どもしか参加できない が、個性を伸ばせる事も大事だ
学級活動には個人参加の活
動が増えた 〇
規律正しさ L ルールを破った子どもに対してカウン セリングをし、道理を教える
高学年になるにつれ、成績良く ない子によるルール違反が多
い
× 学習への
志向性 L
学習成績が全てではないので、特に 各子ども個人の成長を注目し、指導を
行っている
成績優秀な子が少ないが中く らいの子が多い △ 自然な自
己開示 L
学級内の
不和 H
トラブルを起こした子にカウンセリング をしてから、能力範囲内の仕事を与え
る
トラブルがあるが、すぐに解決
した 〇
五年生下半期
問題点を述べた。それに対してC先生は「子どもの日常生活に役立つ知識を教える学級活 動を行う」,「専科教師と連携して学級活動を行う」,「トラブルの解決やルールの遵守など を子どもに任している」などのような活動を行った結果,「子どもの学校生活を充実させた」,
「授業崩壊は少し良くなってきた」など微小な効果が見られたが,「トラブルはあった」の 問題点もあると述べた(表60)。
一年半を経た二回目の調査では,学級風土の改善活動を次のように変化させた。例えば,
「特長のある子どもを学級活動に参加させる」,「トラブルよく起こす子どもにカウンセリ ングをする」,「学習成績の良くない子どもに個人指導を行う」,「学級のルールを破った子 にカウンセリングをする」などの活動を行った。つまりC先生は学級全体を良くしようと するのではなく,学級にいる子ども一人ひとりに対応するように心掛けた。その結果,学 級の現状は「学級活動には個人参加の活動が増えた」,「トラブルがすぐに解決できる」で ある。今後の課題は「ストレスを感じる子がいる」,「学習成績が中くらいの子が多い」,「高 学年になると学習意欲低い子がよく学級のルールを破る」,「子どもの学習意欲の向上」で ある(表63)。
D先生
D先生の活動は表64の通りである。
表64 D先生の学級風土改善の活動と活動の効果
一回目の調査では D 先生が担当していた学級は 4年生上半期の時であった。その時 D 先生のリーダーシップはpm型であり,学級風土のパターンは HLLLLL であった。学級
四年生上半期
学級風土 得点の高低 学級風土改善活動の変化 学級の現状 効果
学級への
満足度 H 学習成績は全てではない、健全な人
格を育つ事に力を入れている
子ども達が学級にいると笑顔 で話し合うことが多い 〇 学級活動
への関与 L 学科授業以外に趣味豊な授業も設け
ている 学級活動に積極的に参加する 〇
規律正しさ L
学級のルールは明確で、違反した場 合の罰する方法もはっきり決められて
いる
ルールを守ってくれる 〇
学習への
志向性 L 活発の子が多いから、自由に発言出
来て良かったと思う
学習意欲が高いが、専科授業 の秩序を乱すこともある △ 自然な自
己開示 L 子ども達の会話に割り込まずに見
守っている
明るい子が多くて、自分の考 え方や意見をはっきり言える 〇 学級内の
不和 L
トラブルがあったときに本人を叱って からこの件について皆で討論し、再発
防止の方法を検討する
活発な子が多いのでトラブルも
あった ×
五年生下半期