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学級レベルと家庭レベル

第 6 章 三つのレベルでの知見

第 1 節 学級レベルと家庭レベル

方 法 調査時期 2015年9月

調査対象 中国の北京市D小学校の本校と分校,4,5,6年生の子ども及びそれぞれの保 護者を対象にした。

質問紙 ①「小学生用短縮版学級風土質問紙」(伊藤,2009a)

②「学級での社会的地位の自己認知」(金,2016)

③「家庭での社会的地位の自己認知」(金,2017b)

④「保護者の養育態度」(中道・中澤,2003)

(それぞれの中国語版は筆者が訳し,日本語に熟達している中国人留学生等4名のチェ ックを経て作成されたものである。また,②と③については,論文として公表したのは調 査実施前になっているが,第Ⅰ部で紹介した内容は2015年9月までには確認されていた 内容である。)

実施方法 D小学校の校長先生の同意を得て,本校と分校で勤務している教師2名に質問 紙の配布・回収を依頼した。自習授業の時間を利用して,子どもに質問紙への 回答を求めてから回収した。その後,子どもに,保護者用質問紙入りの封をし ている封筒を自宅に持ち帰り,自分の保護者に回答してもらってから封をして,

翌日学校に持ってくるように説明した。子ども用質問紙,封筒,封筒に入って いる保護者用質問紙に同じ番号を振ってあり,匿名調査でも子どもと保護者が 合致している事に確認できた。

有効回答 回答に不備のある質問紙を除き,377部の有効回答が得られた。子どもは女性 180人,男性173人,不明24人(4年生59人,5年生198人,6年生100人,

不明19人)であった。保護者は女性269人,男性106人,不明2人(母256 人,父103人,その他18人)であった。

(本調査は第3章第4節,第4章第2節の調査とは同じ調査である。)

結果と考察

1.学級での社会的地位の自己認知と家庭での社会的地位の自己認知の関係

学級での社会的地位の自己認知と家庭での社会的地位の自己認知の相関について検定し た結果が表42の通りである。

42 学級での社会的地位の自己認知と家庭での社会的地位の自己認知の相関検定結果

「主導的地位」と「家族承認希求的地位」とは正の有意の相関が見られた。つまり学級 では影響力を持ち,かつ皆に受け入れられている社会的地位を認知している子どもが,家 庭では家族に認めてもらいたいと認知している。逆に家族に受け入れてほしければほしい ほど,主導的地位得点が高くなると言える。

「浮遊的地位」と「家族愛的地位」とは負の有意な相関が見られ,「家族排斥的地位」と

「家族承認希求的地位」とは正の有意な相関が見られた。つまり学級では影響力を持って いないし,皆に受け入れられていない社会的地位を認知している子どもが,家庭では家族 からの愛情を感じずに,家族からの排斥を感じ,家族に認めてもらいたいと認知している。

逆に家族愛を感じ,家族からの排斥を受けずに,それほど家族の承認を求めてない子ども ほど,浮遊的地位得点が低くなると言える。

「追随的地位」と「家族愛的地位」,「家族承認希求的地位」とは正の有意な相関が見ら れ,「家族排斥的地位」とは負の有意な相関が見られた。つまり学級では高い影響力を持て いないのに皆に受け入れられている子どもが,家庭では家族からの排斥を感じずに,家族 からの愛を感じ,家族からの承認を求めたいと認知している。逆に家族愛を感じずに,家 族からの排斥を感じ,家族に認めてもらいたくないと認知している子どもほど,追随的地 位得点が低くなると言える。

2.家庭での社会的地位の自己認知と学級風土の関係

家庭での社会的地位の自己認知と学級風土各因子の相関について,検定した結果が表43 の通りである。

主導的地位 浮遊的地位 追随的地位 虚勢的地位

家族愛的地

家族排斥的 地位

家族承認希 求的地位

主導的地位 1 -0.05 0.07 0.21 0.09 0.06 0.13

浮遊的地位 n.s. 1 -0.36 -0.07 -0.27 0.51 0.12

追随的地位 n.s. *** 1 0.19 0.38 -0.26 0.02

虚勢的地位 *** n.s. *** 1 0.10 0.02 -0.03

家族愛的地位 n.s. *** *** n.s. 1 -0.53 -0.02

家族排斥的地位 n.s. *** *** n.s. *** 1 0.19

家族承認希求的地位 * * n.s. n.s. n.s. *** 1

N= 377

43 家庭での社会的地位の自己認知と学級風土の相関検定結果

「家族愛的地位」と「学級内の不和」とは負の有意な相関が見られ,他の学級風土各因 子とは正の有意な相関が見られた。つまり家庭では家族からの愛情を感じる子ども程,学 級での緊張感を緩め,学級にいる楽しさや学級活動への熱心さ,学習意欲,自己開示の自 由さなどが高くなり,学級のルールの遵守をよくなるなどが言える。逆に学級風土ポジテ ィブ因子得点が高く,ネガティブ因子得点が低いと認知している子どもが,家庭での社会 的地位の自己認知について家族愛的地位と認知している。

「家族排斥的地位」と「学級内の不和」とは正の有意な相関が見られ,「自然な自己開示」

以外の他の学級風土各因子とは負の有意な相関が見られた。つまり家庭では家族からの排 斥を感じる子ども程,学級の緊張感を高め,学級にいる楽しさや学級活動への熱心さ,学 習意欲などが低くなり,学級のルールの遵守をできなくなるなどが言える。逆に学級風土 ポジティブ因子(自然な自己開示を除き)得点が低く,ネガティブ因子得点が高いと認知 している子どもが,家庭での社会的地位の自己認知について家族排斥的地位と認知してい る。

「家族承認希求的地位」と「自然な自己開示」とは正の有意の相関が見られた。つまり 家庭では家族に認めてもらいたいと認知している子ども程,学級では自由に自分の意見・

気持を表している事が言える。逆に,子どもが学級で対人の自己開示度が高けば高いほど,

家庭での社会的地位の自己認知について家族承認希求的地位と認知している。

3.学級風土各因子における保護者の養育態度パターンの差

学級風土各因子における保護者の養育態度パターンの差について1要因分散分析で検討 した。その結果,学級風土各因子について「自然な自己開示」を除き,「学級活動への関与」,

「学級内の不和」,「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」において,全て 保護者の養育態度パターンの差が見られた(図60~図64)。

学級活動 への関与

学級内の 不和

自然な自 己開示

学級への 満足度

学習への 志向性

規律正 しさ

家族愛的地

家族排斥的 地位

家族承認希 求的地位 学級活動への関与 1 -0.41 0.34 0.56 0.58 0.67 0.34 -0.19 0.06 学級内の不和 *** 1 -0.17 -0.36 -0.40 -0.39 -0.26 0.38 0.07 自然な自己開示 *** *** 1 0.41 0.32 0.37 0.22 -0.05 0.11 学級への満足度 *** *** *** 1 0.46 0.54 0.34 -0.31 0.05 学習への志向性 *** *** *** *** 1 0.58 0.27 -0.19 0.01

規律正しさ *** *** *** *** *** 1 0.37 -0.20 0.02

家族愛的地位 *** *** *** *** *** *** 1 -0.53 -0.02

家族排斥的地位 *** *** n.s. *** *** *** *** 1 0.19

家族承認希求的地位 n.s. n.s. * n.s. n.s. n.s. n.s. *** 1

N= 377

① 学級活動への関与

60 学級活動への関与における養育態度パターンの差

図 60 の通り,学級活動への関与における保護者の養育態度パターンの差について,

1要因分散分析を検討した結果,F(3,373)=4.431, p=.004で有意であった。そこで多重比 較を行った結果,HH型(権威的養育態度)が LL型(無関心的養育態度)より得点が高 い(p=.015),LH型がLL型より得点が高い(p=.016)事が分かった。つまり保護者の子 どもの意図・欲求に気付き,愛情のある言語的・身体的表現を用いて,子どもの意図をで きる限り充足させようとする行動と,子どもの意志とは関係なく,親が子どもにとって良 いと思う行動を決定し,それを強制する行動の二つの行動を増やす,また後者の行動だけ を増やす事は二つの行動ともしない事より,子どもの学級活動に対する関心の深さや熱意 が高くなる事が言える。

② 学級内の不和

61 学級内の不和における養育態度パターンの差

図 61 の通り,学級内の不和における保護者の養育態度パターンの差について,1要因 分散分析を検討した結果,F(3,373)=2.847, p=.037で有意であった。そこで多重比較を行 った結果,HH型(権威的養育態度)がLL型(無関心的養育態度)より得点が低い(p=.048)

事が分かった。つまり保護者の子どもの意図・欲求に気付き,愛情のある言語的・身体的

1 2 3 4 5

HH HL LH LL

1 2 3 4 5

HH HL LH LL

表現を用いて,子どもの意図をできる限り充足させようとする行動と,子どもの意志とは 関係なく,親が子どもにとって良いと思う行動を決定し,それを強制する行動の二つの行 動を増やす事は二つの行動ともしない事より,子どもの学級での緊張感を緩める事ができ ると言える。

③ 学級への満足度

62 学級への満足度における養育態度パターンの差

図 62 の通り,学級への満足度における保護者の養育態度パターンの差について,1要 因分散分析を検討した結果,F(3,373)=2.636, p=.050で有意であった。そこで多重比較を 行った結果,LH 型(権威主義的養育態度)が LL 型(無関心的養育態度)より得点が高

い(p=.036)事が分かった。つまり保護者の子どもの意図・欲求に気付き,愛情のある言

語的・身体的表現を用いて,子どもの意図をできる限り充足させようとする行動と,子ど もの意志とは関係なく,親が子どもにとって良いと思う行動を決定し,それを強制する行 動の二つの行動について,後者の行動だけを増やす事は二つの行動ともしない事より,子 どもの学級にいる楽しさを高くなる事が言える。

④ 学習への志向性

63 学習への志向性における養育態度パターンの差

図 63 の通り,学習への志向性における保護者の養育態度パターンの差について,1要 因分散分析を検討した結果,F(3,373)=3.058, p=.028で有意であった。そこで多重比較を 行った結果,HH型(権威的養育態度)がLL型(無関心的養育態度)より得点が高い(p=.023)

事が分かった。つまり保護者の子どもの意図・欲求に気付き,愛情のある言語的・身体的

1 2 3 4 5 6

HH HL LH LL

1 2 3 4 5

HH HL LH LL