第 2 章 社会的地位の自己認知の尺度構成
第 2 節 家庭での社会的地位の自己認知尺度の信頼性と妥当性の検討
1.因子分析
家庭での社会的地位の自己認知尺度の全 21 項目に対して因子数指定なしで探索的因子 分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。その結果,スクリープロットを参考にして 因子数が3つだと判断し,因子数を3と指定して再び探索的因子分析を行った。その結果,
十分な因子負荷量(.48以上)の値を得たため,削除なしで,解釈可能な3因子21項目が 抽出された。学級と同様に確認的因子分析を行い,モデルは十分な適合度を示した。その 後,3つの下位因子に対して削除可能な項目を検討しつつ,信頼性検定を行った。その結 果,削除可能な3項目を削除し,最終的に3因子18項目からなる家庭での社会的地位の 自己認知尺度が構成された(表7)。
第一因子に含まれていた9項目は,「私は家族の中でよけ者にされた事があったと思う」,
「家族で話が弾んでいるときに,私が割り込むと気まずい空気になったと思う」,「私は自
分で頑張っているのに家族で浮いていると感じる事があったと思う」などの項目から構成 されており,家庭での社会的地位の自己認知に対して,社会的勢力が低く,社会的被受容 も低い内容の項目が高い負荷量を示していた。そこで「家族排斥的地位」因子と命名した。
表7 家庭での社会的地位の自己認知の因子分析結果
第二因子に含まれていた 6 項目は,「私が何か困っているときに,家族の誰かが助けて くれたと思う」,「自分の本音や悩みを話せる親しい家族がいたと思う」,「私は自分の気持 ちを理解してくれる人が家族にいたと思う」などの項目から構成されており,家庭での社 会的地位の自己認知に対して,社会的勢力が高く,社会的被受容も高い内容の項目が高い 負荷量を示していた。そこで「家族愛的地位」因子と命名した。
第三因子に含まれていた 3 項目は,「私は家族から「すごい子だ」と思われたかったと 思う」,「私は家族のみんなにかわいがってほしかったと思う」,「私は自分から進んででは
項目内容 F1 F2 F3 共通性
家族排斥的地位(α =.854)
私は家族の中でよけ者にされたことがあったと思う 0.86 0.33 家族で話が弾んでいるときに、私が割り込むと気まずい空気に
なったと思う 0.70 0.22
私は自分で頑張っているのに家族で浮いていると感じることが
あったと思う 0.69 0.63
私は家族から無視されるようなことがあったと思う 0.66 0.71 私は家族の中でからかわれたり、馬鹿にされたりするようなこと
があったと思う 0.65 0.55
私は家で孤立感を覚えることがあったと思う 0.58 0.47
私は家族の中で自分が発言をしたとき、冷やかされることがあっ
たと思う 0.51 0.23
私は家族から耐え切れないほどの厳しいしつけを受けたことが
あったと思う 0.47 0.45
私は家にいる時や家族の前で行動をしているとき、不安や緊張
を覚えることがあったと思う 0.39 0.45
家族愛的地位(α =.841)
私が何か困っているときに、家族の誰かが助けてくれたと思う 0.84 0.49 自分の本音や悩みを話せる親しい家族がいたと思う 0.81 0.63 私は自分の気持ちを理解してくれる人が家族にいたと思う 0.80 0.56 私の家族は私の言い分を聞いて行動をしてくれたと思う 0.55 0.34 私は家族の誰かが困るとき、助けようとしたと思う 0.54 0.43
私は家族から愛されていたと思う 0.42 0.47
家族承認希求的地位(α =.662)
私は家族から「すごい子だ」と思われたかったと思う 0.67 0.32 私は家族のみんなにかわいがってほしかったと思う 0.65 0.40 私は自分から進んでではなく、家族に褒められたいから行動し
たと思う 0.54 0.27
因子間相関 F1 F2 F3 F1:家族排斥的地位 -0.59 0.11
F2:家族愛的地位 0.08 F3:家族承認希求的地位
なく,家族に褒められたいから行動したと思う」などの項目から構成されており,家庭で の社会的地位の自己認知に対して,社会的勢力が低く,社会的被受容が高い内容の項目が 高い負荷量を示していた。そこで「家族承認希求的地位」因子と命名した。
因子間の相関については表1の通り,「家族排斥的地位」と「家族愛的地位」はr=-.59,
「家族排斥的地位」と「家族承認希求的地位」はr=.11,「家族愛的地位」と「家族承認 希求的地位」はr=.08となり,「家族排斥的地位」と「家族愛的地位」とは負の有意な相 関が見られ,「家族排斥的地位」と「家族承認希求的地位」とは正の有意な相関が見られた。
2.信頼性検定
家庭での社会的地位の自己認知尺度の下位尺度について,信頼性検定(Cronbach の α 係数を求めた)を行った結果,第一因子「家族排斥的地位」でα=.85,第二因子「家族愛 的地位」でα=.84,第三因子「家族承認希求的地位」でα=.66であった。
以上より,作成された家庭での社会的地位の自己認知尺度の3因子18項目について,α 係数を算出した結果十分に高い値が得られたため,本尺度は比較的高い内的整合性が示さ れたと言える。
3.妥当性の検討
社会的地位の自己認知尺度の併存的妥当性を検討するため,家庭での社会的地位の自己 認知尺度の各因子,「家族排斥的地位」因子と『家族満足度』の「家族からの受容感」因子,
「家族愛的地位」因子と『家族満足度』の「家族満足感」因子,「家族承認希求的地位」因 子と『母親に対する愛着』の「両価性」因子との関連を算出した。その結果を示したのが 表 8である。
表8 本尺度と既存尺度との関連
「家族排斥的地位」と「家族からの受容感」とは負の相関(-.54***),「家族愛的地位」
と「家族満足感」とは正の相関(.78***),「家族承認希求的地位」 と「両価性」とは正の 相関(.53***)が認められた。本節における家庭での社会的地位の自己認知についての3 つの因子と,それぞれ対応すると想定された既存の諸尺度との間に高い併存的妥当性を確
家族排斥的地位 家族愛的地位 家族承認希求的地位 家族からの受容感 -.541** .742** 0.076
家族満足感 -.469** .778** 0.062 両価性 .408** -.241** .529**
N= 405
本尺度
既存尺度
認する事ができた。
以上第2章の諸点より,社会的地位の自己認知については,図2(序論の第4節)のよ うに,内から外に向かう「社会的勢力の自己認知」と,外から内に向かう「社会的被受容 の自己認知」の組み合わせで説明する事ができると考えられる。社会的勢力が高く,社会 的被受容も高いと認知している場合は,自分は集団内で主導的地位(acceptance)・家族 愛的地位(affection)を占めていると自己認知していると考える。同様に,社会的勢力が 高く,社会的被受容が低いと認知している場合は虚勢的地位(isolation)の自己認知,社 会 的 勢 力 は 低 い の に , 社 会 的 被 受 容 は 高 い と 認 知 し て い る 場 合 は 追 随 的 地 位
(camaraderie)・家族承認希求的地位(requited),社会的勢力が低く,社会的被受容も 低いと認知している場合は浮遊的地位(rejection)・家族排斥的地位(nonacceptance)の 自己認知だと考えられた。
小学生自身に自分の社会的地位の認知に関する質問を投げかけるのは倫理的にも困難な 部分があり,今回は大学生の回想的データに基づく尺度構成であった。本章を基に,子ど もの社会的地位の自己認知に関する研究をますます進めていく事が大きな課題である。
脚注:本章は,金(2016),金(2017b)の内容を再構成したものである。また,本章での独自の概念の英 語訳については,Lucy Spence氏(University of South Carolina)及びJohn Spence氏の協力を得た。
記して謝意を表明する。