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第 7 章 現場教員の学級風土改善の活動

第 3 節 教員の活動の経年変化

A 先生だけは一回目の調査と二回目の調査の時に担当していた学級が違う。B 先生,C 先生,D先生共に一回目の調査の時に4年生上半期,二回目の調査の時に5年生下半期の 開始学級を担当していた。一回目の調査では,各先生のリーダーシップについてA先生は PM型,B先生はpM型,C先生とD先生はpm型であった。二回目の調査では,A先生 はPM型からpM型に変化した。B先生は更にM行動を発揮するように変化した。C先生

は学級全体をよくするより,子ども個人の成長に注目するように変化した。リーダーシッ プの変化について,どちらかと言えば前よりM行動を発揮するようになった。D先生は学 級風土の改善を専科教師から子どもに任せるようにしたが,リーダーシップの変化につい てはどちらとも言えない。

学級風土の改善の効果から見ると,A先生が担当している学級は「子どもの学習意欲を 向上させる」以外にすべて良い効果が見られた。つまりA先生の学級風土改善の活動やリ ーダーシップのM行動の発揮は効果的である。

B先生が担当している学級はLLLLLLの学級風土パターン(すべてのポジティブ因子の 得点が低い)から「皆仲良くやっていて,笑顔をよく見られる」(学級への満足度が高い),

「学級活動に積極的に参加する」(学級活動への関与が高い),「ルールの遵守が良い」(規 律正しさが高い),「学習意欲が強い」(学習への志向性が高い),「生徒間や教師と子どもの 間は仲が良い」(自然な自己開示が高い),「トラブルはあったがすぐに解決できる」(学級 内の不和が低い)のように変化し,学級風土の改善に良い効果が見られた。つまりB先生 の活動とリーダーシップのM行動の発揮は有効だと思われる。

C 先生が担当している学級は LLLLLHの学級風土パターン(ポジティブ因子の得点が 低く,ネガティブ因子の得点が高い)であった。そして一年半を経た後「学級活動に参加 する人が増えた」(学級活動への関与),「トラブルがあるがすぐに解決した」(学級内の不 和)の二つの因子は良い効果が見られたが,「成績優秀な子が少ないが中くらいの子が多い」

(学習への志向性)の因子についての効果が何とも言えない事と「ストレスを感じる子が いる」(学級への満足度),「高学年になるにつれ,成績良くない子によるルール違反が多い」

(規律正しさ)の二つの因子の効果は全く見られなかった。つまりC先生の学級風土改善 の活動はまだ改善するところがあり,リーダーシップのP行動もM行動ももっと発揮で きると思われる。

D先生が担当している学級はHLLLLLの学級風土パターン(「学級への満足度」と「学 級内の不和」以外に他の因子の得点が低い)であった。そして,一年半を経た後に「子ど もが学級にいると笑顔で話し合う事多い」(学級への満足度が高い),「学級活動に積極的に 参加する」(学級活動への関与が高い),「ルールを守ってくれる」(規律正しさが高い),「明 るい子が多くて,自分の考え方や意見をはっきり言える」(自然な自己開示が高い)につい て良い効果が見られた。しかし「学習意欲が高いが,専科授業の秩序を乱す事もある」(学 習への志向性)についての効果は何とも言えないと,「活発な性格の子が多いのでトラブル

もあった」(学級内の不和が高い)について逆効果が見られた。つまり D 先生の学級風土 改善の活動(子どもの個性を伸ばして学級運営を子どもに任せる)はある程度の効果が見 られたが,問題点も見られた。D先生が学級風土改善の活動を行う際にリーダーシップの P行動をもっと発揮した方が良いと思われる。

1.教師の指導法が学級風土改善に及ぼす影響

A先生,B先生は自分のリーダーシップのM行動を発揮する事によって学級風土が改善 された効果が見られた。この点について,金(2014)の「M」を含むPM型とpM型の学 級風土パターンはHHHHHLであり,「m」を含むPm型とpm型の学級風土パターンは

LLLLLH であり,M 行動得点の高低によって,学級風土パターンが逆転しているという

結果と一致している。

C先生,D先生は自分のリーダーシップを発揮できず,pm型であった。特にC先生は

「トラブルがあるのは当たり前だ」,「子どもがほしいものがある(一人子政策でわがまま な子どもが多い為,社会性が欠如していると思われる)からストレスを感じる」など学級 の問題点に対して「仕方がない」と述べていた。D先生も学級運営を「専科教師と連携す る」から「子どもの個性を伸ばすため子どもに任せる」に変化した。いずれの先生も自分 のリーダーシップを十分に発揮しなかった。このようなネガティブな感情を抱いていると きの教師のサポートはむしろ子どもの学級適応感を低める作用をもたらす(松沼・五十嵐,

2016)ため,C先生,D先生のような,担当している学級の状態が良好でない場合,教師

のサポートは情緒的な支え(M行動)よりも,指導的かつ積極的なもの(P行動)が必要 であると考えられる。

2.教師の活動が学級風土改善に及ぼす影響

学級集団作りにおいて,ソーシャルスキルの必要性が指摘され,近年,ソーシャルスキ ル訓練(SST)に関する実践的な研究がされている(佐藤ら,2000)。高橋ら(2011)は まとまりのある集団においては子どもの配慮スキルの数値が高いと指摘した。つまり「相 手を思いやる気持ち」のような配慮スキルは子どもの学級への満足度を高める学級づくり に必須のスキル条件だと思われる。そのため,A先生の「良い習慣を養う事で皆仲良くや っていける」や,B先生の「皆は家族だという考え方を教える」などの活動は子どもの配 慮スキルを養ったので,学級風土改善に有効な活動だと言える。

A先生の「子どもと相談して学級のルールを作る,そのルールをクラスの前に置かれて いるボードに書く」や,B先生の「皆で話し合い,学級のルールとルール違反の罰を決め

る」の活動は子ども達に話し合いの場を提供している。子ども達が学級のルールについて 話し合って,お互いの意見を受け入れ最後に学級のルールを決める過程で子どもがクラス の友達からの受容感を高める事を狙っている。クラスの友達からの受容感が子どもの対人 的自己効力感や学業達成の自己効力感に高い予測性を持つ(大沼・坂野,2002)ため,ク ラスの友達からの受容感を高める事は子どもが学級における受容感を高く感じ,学級にい る楽しさの増加や学習意欲の向上,学級内の緊張感を緩めるなどの効果があると思われる。

換言すれば,教師が子ども達に話し合いの場を提供し,子どもがお互いの意見を受け入れ,

クラスの友達に受容されている事を実感させる活動は学級風土改善に有効な活動と言える。

更に,このような活動は「主体的・対話的で深い学び」(無藤,2017)と表現されるアク ティブラーニングの推進につながっているとも言える。

A先生の「ハイキングや運動会など体を動かす学級活動を行う」は体育教師と連携し,

B先生の「消防訓練や体操コンクールなど生活や健康に役立つ学級活動を行う」は消防署 と連携し,D先生の「学科授業以外に趣味豊な授業を設ける」は美術や音楽,科学などの 専科教師と連携し,活動を行った。専科教師や学校外部の人間などは,学級の教師と違っ て,子どもとの授業場面などでの限定した関わり以上の,その領域についての「ほんもの」

性の視点を持っている。そのため,教師が学級運営を行う際に,積極的に他の,その領域 についての専門的知見を有する人間と交流させる事は,学級の問題点の気づきや新たな教 師―児童関係の展開の契機を作る可能性がある(伊藤・毛利,2005)。これは,その後の学 級における問題点の解決や教師―児童関係の改善などにつながると考えられる。このよう な専科教師や子どもとかかわりのある人間から得た子どもに関する情報を,教師が学級運 営を行う際に役立たせる事によって,A先生,B先生,D先生のような活動が学級風土改 善に有効であったと思われる。