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子どもが認知した教師のリーダーシップと学級風土

第 3 章 学級レベル

第 1 節 子どもが認知した教師のリーダーシップと学級風土

方 法 調査時期 2013年5月

調査対象 中国の吉林省にある地方都市(龍井市,図門市)の二つの小学校で5,6年生 とそれぞれの学級の担任教師。

質問紙 ①「小学生用短縮版学級風土質問紙」(伊藤,2009a)

②「教師リーダーシップ行動測定尺度」(三隅・矢守,1989)

(それぞれの中国語版は筆者が訳し,日本語に熟達している中国人留学生等4名のチェ ックを経て作成されたものである。)

調査方法 筆者の知人の校長先生を通して,二つの学校において,教師会議で5,6年生 の7学級の教師を対象に質問紙調査を行った。その後,各教師はホームルーム

で自分のクラスの生徒に対して質問紙調査を行った。

有効回答 回答に不備のある質問紙を除き,子どもの有効回答として5年生の3学級で85 部,6年生の4学級で103部,合計188部(女92人,男96人)が得られ,教 師の有効回答として,7部が得られた。

結果と考察 1.教師のリーダーシップに及ぼす学年差と性差の効果

子どもが認知した教師のリーダーシップに及ぼす学年差と性差の効果について,検討し た結果が以下である。

6 P行動における学年差・性差

P行動(図6)について検定した結果,学年差と性差の主効果は有意ではなかった。

30 40 50 60

5年生(平均) 6年生(平均)

P

女性 男性

7 M行動における学年差・性差

M行動(図7)について検定した結果,学年差と性差の主効果は有意ではなかった。

2.学級風土に及ぼす学年差と性差の効果

子どもが認知した学級風土に及ぼす学年差と性差の効果について,検討した結果が図 8

~図13及び表12~16である。

① 「学級への満足度」

8 学級への満足度における学年差・性差

「学級への満足度」について検定した結果,すべての主効果も交互作用も見られなかっ た(図8)。

② 「学級活動への関与」

9 学級活動への関与における学年差・性差 30

40 50 60

5年生(平均) 6年生(平均)

M

女性 男性

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

図9より,男女共に5年生より6年生のほうが得点が高い事が想定できる。それを検定 した結果が表12の通りである。

12 学級活動への関与の分散分析結果

表12より学年差の主効果が有意であり,5年生より6年生のほうが高い事が分かった。

性差及び交互作用の効果は有意ではなかった。

③ 「規律正しさ」

10 規律正しさにおける学年差・性差

図10より,男女共に5年生より6年生のほうが得点が高い事が想定できる。それを検 定した結果が表13の通りである。

13 規律正しさの分散分析結果

表13より学年差の主効果が有意であり,5年生より6年生のほうが高い事が分かった。

性差及び交互作用の効果は有意ではなかった。

④ 「学習への志向性」

11 学習への志向性における学年差・性差

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

学年 15.592 1 15.592 23.689 .000

性別 .028 1 .028 .043 .836

学年 * 性別 .557 1 .557 .847 .359

誤差 121.110 184 .658

総和 137.386 187

要因

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

要因 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

学年 4.183 1 4.183 5.338 .022

性別 .089 1 .089 .114 .736

学年 * 性別 .657 1 .657 .839 .361

誤差 144.182 184 .784

総和 149.132 187

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

図11より,男女共に5年生より6年生のほうが得点が高い事が想定できる。それを検 定した結果が表14の通りである。

14 学習への志向性の分散分析結果

表14より学年差の主効果が有意であり,5年生より6年生のほうが高い事が分かった。

性差及び交互作用の効果は有意ではなかった。

⑤ 「自然な自己開示」

12 自然な自己開示における学年差・性差

図 12 より,男性より女性のほうが得点が高い事が想定できる。それを検定した結果が 表15の通りである。

15 自然な自己開示の分散分析結果

表 15 より性差の主効果が有意であり,男性より女性のほうが高い事が分かった。学年 差の主効果の傾向が見られ,5年生より6年生のほうが高い傾向が見られた。

⑥ 「学級内の不和」

13 学級内の不和における学年差・性差

図13より,男女共に6年生より5年生のほうが得点が高い事が想定できる。それを検

要因 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

学年 27.448 1 27.448 32.830 .000

性別 .990 1 .990 1.184 .278

学年 * 性別 1.384 1 1.384 1.655 .200

誤差 153.836 184 .836

総和 183.629 187

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

要因 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

学年 2.672 1 2.672 3.145 .078

性別 3.679 1 3.679 4.331 .039

学年 * 性別 1.257 1 1.257 1.480 .225

誤差 156.286 184 .849

総和 163.547 187

0 1 2 3 4 5 6

5年生(平均) 6年生(平均)

女性 男性

定した結果が表16の通りである。ここから明らかなように学年差の主効果が有意であり,

6年生より5年生のほうが高い事が分かった。性差及び交互作用の効果は有意ではなかっ た。

16 学級内の不和の分散分析結果

以上より「学級活動への関与」,「規律正しさ」,「学習への志向性」,「学級内の不和」に ついては,学年差が有意であった。「自然な自己開示」については,性差が有意であり,学 年差の主効果の傾向が見られた。「学級への満足度」については,いずれの主効果も交互作 用も見られなかった。子どもが認知した学級風土における学年差と性差の効果について,

検定した結果「学級活動への関与」,「規律正しさ」,「学習への志向性」について,学年差 が有意であり,5年生より6年生のほうが高く,「学級内の不和」について,学年差が有意 であり,6年生より5年生のほうが高い事が分かった。「自然な自己開示」については,性 差が有意であり,男性より女性のほうが高く,学年差の主効果の傾向が見られ,5 年生よ り6年生のほうが高い事が分かった。それらの原因について,以下の二つの側面から解釈 できる。

① 受験制度からの解釈

中国では,日本と同じく九年義務教育がある。子どもは試験を受ける事なく,戸籍の住 所によって,進学先の学校が決められる。しかし,決められた学校の評判が良くないと,

別の進学率が高い学校へ進学したい場合,或いは決められた学校へ進学したい生徒数が多 すぎる場合,進学先の学校の試験を受ける事になる。みんな進学率の高い学校へ進学した いため,競争が激しくなってきた。そのため6年生の子どもは学習活動に専念しなければ ならなくなる。子どもは勉強する事に集中し,学級の秩序を遵守し,学級内は落ち着く雰 囲気が見られ,学級内の緊張感も和らげるようになった。その事から,「規律正しさ」と「学 習への志向性」について,学年差が見られ,5年生より6年生のほうが高く,「学級内の不 和」について,学年差が見られ,6年生より5年生のほうが高い事が分かった。

② 教育政策からの解釈

中国では1985年から素質教育(ゆとり教育)が実施されて以来,30年間教育部により,

“減負”が提唱された。子どもの学業の負担を減らし,教科書の内容を簡単化し,学校行事

要因 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

学年 18.496 1 18.496 22.728 .000

性別 .006 1 .006 .007 .934

学年 * 性別 .161 1 .161 .198 .657

誤差 149.732 184 .814

総和 168.334 187

は充実するようになった。例えば,5月に春のハイキングや文化祭,10月に秋のハイキン グや運動大会などさまざまな学校行事が行われた。そのため,子どもは学級活動に参加す る機会が増えた。これらの学級活動を通して,学級に所属する楽しさを感じ,開放的楽し い学級雰囲気を作った。その事から「学級活動への関与」について,学年差が有意であり,

5年生より6年生のほうが高く,「自然な自己開示」について,学年差の主効果の傾向が見 られ,5年生より6年生のほうが高い事が分かった。さらに,「自然な自己開示」について,

性差が有意であり,男性より女性のほうが高い事が分かった。要するに「個々に浮かぶ考 えや意見・気持ちを自由に表現できる」については,男性より女性のほうが気軽に自分の 事を人前であらわす事ができると考えられる。金(2013)で日中比較した結果,「自然な 自己開示」について,両国に大きな差は見られなかった。この事から,こうした自己開示 については,国,あるいは文化差を越えて,男女による性差が強く出るものだと考えられ る。

3.学級風土と教師のリーダーシップの相関

子どもが認知した学級風土と教師のリーダーシップの相関について検定した結果が表 17である。

17 子どもが認知した学級風土と教師のリーダーシップの相関検定

P行動と「学級活動への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向 性」,「規律正しさ」とは正の有意の相関が見られたが,「学級内の不和」とは相関が見られ なかった。M行動と「学級活動への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習 への志向性」,「規律正しさ」との正の有意の相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の 有意の相関が見られた。換言すれば,学級風土と教師のリーダーシップの関係について,

リーダーシップP行動と学級風土のネガティブ因子とは負の有意な相関が見られ,リーダ ーシップM行動と学級風土のポジティブ因子とは正の有意な相関が確認出来,ネガティブ 因子とは負の有意な相関が見られた。また,リーダーシップP行動よりM行動の方が学 級風土各因子と強い相関を持つ事が分かった。

P行動の質問項目は以下の通りである。

P行動 M行動 学級活動への関与 0 . 3 1 5* * * 0 . 5 3 7* * * 学級内の不和 -0.021 0 . 3 8 2* * * 学級への満足度 0 . 2 3 0* * 0 . 5 4 1* * * 自然な自己開示 0 . 2 5 1* * * 0 . 3 5 7* * * 学習への志向性 0 . 2 3 9* * * 0 . 4 4 8* * * 規律正しさ 0 . 2 7 0* * * 0 . 5 8 9* * *

N= 188