第 3 章 学級レベル
第 3 節 子どもが認知した自分の性格特性と学級風土
表27 教師の諸属性
図26 キャリアによるPM型の差
図26から見るとベテラン教師より初任教師のほうがpm型が多い事が想定される。χ² 検定を行った結果,χ²=13.461 ,df=6,p=.036で統計上有意であった。つまり,キャリ アによってPM型の出現にちがいがあるとは言える。pm型は,経験年数で徐々に減少し ている事が伺われる。
調査方法2 延吉市における筆者の知人の校長先生を通して,6年生の5学級の担任の教 師に依頼した。各担任の教師はホームルームで自分のクラスの生徒に対して 質問紙調査を行った。
有効回答数 以上調査1・2の結果,回答に不備のある質問紙を除き,有効回答として北 京市の8学級で197部,延吉市の5学級で132部,合計329部(女160人,
男169人,5年生99人,6年生230人)が得られた。
結果と考察 1.全体としての相関
子どもの性格特性と学級風土の関係を検討するため,全体としての相関検定を行った。
その結果が表28である。
表28 性格特性と学級風土各因子間の相関
① 性格特性間の相関
「協調性」と「統制性」の間には正の有意な相関が見られ,「情緒性」,「開放性」,「外向 性」との間には負の有意な相関が見られた。「統制性」と「情緒性」,「開放性」,「外向性」
の間には負の有意な相関が見られた。「情緒性」と「開放性」,「外向性」の間には正の有意 な相関が見られた。「開放性」と「外向性」の間には正の有意な相関が見られた。
② 学級風土各因子間の相関
「学級内の不和」と「自然な自己開示」の間には有意な相関が見られなかったが,他の 因子間には有意な相関が見られた。「学級への関与」と「学級内の不和」の間には負の相関 が見られ,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向性」,「規律正しさ」の間 には正の相関が見られた。「学級内の不和」と「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規 律正しさ」の間には負の相関が見られた。「学級への満足度」と「自然な自己開示」,「学習
協調性 統制性 情緒性 開放性 外向性 関与 不和 満足 開示 学習 規律 協調性 1 0.46 -0.41 -0.31 -0.37 0.28 -0.38 0.29 0.18 0.22 0.26 統制性 *** 1 -0.32 -0.15 -0.35 0.39 -0.16 0.36 0.19 0.29 0.36 情緒性 *** *** 1 0.45 0.36 -0.08 0.30 -0.11 -0.03 -0.15 -0.13 開放性 *** ** *** 1 0.39 -0.07 0.27 -0.07 0.04 -0.04 -0.10 外向性 *** *** *** *** 1 -0.15 0.25 -0.10 0.03 -0.14 -0.14 関与 *** *** n.s. n.s. ** 1 -0.22 0.56 0.35 0.56 0.66 不和 *** ** *** *** *** *** 1 -0.22 0.06 -0.33 -0.28 満足 *** *** + n.s. + *** *** 1 0.28 0.47 0.55 開示 ** *** n.s. n.s. n.s. *** n.s. *** 1 0.19 0.36 学習 *** *** ** n.s. ** *** *** *** *** 1 0.60
規律 *** *** * + * *** *** *** *** *** 1
N= 329
への志向性」,「規律正しさ」の間には正の相関が見られた。「自然な自己開示」と「学習へ の志向性」,「規律正しさ」の間には正の相関が見られた。「学習への志向性」と「規律正し さ」の間には正の相関が見られた。
③ 性格特性と学級風土各因子間の相関
「協調性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向 性」,「規律正しさ」は正の有意な相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関 が見られた。
「統制性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向 性」,「規律正しさ」は正の有意な相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関 が見られた。
「情緒性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「学級への満足度」,「学 習への志向性」,「規律正しさ」とは負の有意な相関が見られた。
「開放性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「規律正しさ」とは負の 有意な相関が見られた。
「外向性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「学級への関与」,「学級 への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」とは負の有意な相関が見られた。
2.地方別の各種相関
① 北京での相関検定の結果
北京での子どもの性格特性と学級風土各因子の相関検定を行った結果が表 29 の通りで ある。「協調性」,「統制性」と学級風土各因子の間には地域を込みにした全体のデータと同 じ結果であった。「情緒性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られた。「外向性」
と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「規律正しさ」とは負の有意な相関が 見られた。「開放性」と「自然な自己開示」は正の有意な相関が見られた。
表29 北京による各変数間の相関結果
② 延吉での相関検定の結果
延吉での子どもの性格特性と学級風土各因子の相関検定を行った結果が表 30 の通りで
学級活動 への関与
学級内の 不和
学校への 満足度
自然な自 己開示
学習への 志向性
規律正し さ
協調性 .363* * -.302* * .300* * .185* * .231* * .286* *
統制性 .347* * -.194* * .351* * .267* * .183* .346* *
情緒性 -.040 .249* * -.059 .003 -.112 -.113
開放性 .015 .133 .001 .173* .080 -.026
外向性 -.131 .202* * -.083 -.025 -.126 -.190* *
N= 197
ある。「協調性」と「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」は正の有意な相 関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関が見られた。「統制性」と「学級へ の関与」,「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」は正の有意な相関が見ら れた。「情緒性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「学級への満足度」,
「学習への志向性」とは負の有意な相関が見られた。「開放性」と「学級内の不和」は正の 有意な相関が見られたが,「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」とは負の 有意な相関が見られた。「外向性」と「学級内の不和」,「自然な自己開示」は正の有意な相 関が見られたが,「学習への志向性」とは負の有意な相関が見られた。
表30 延吉による各変数間の相関結果
以上,地方別の各種相関の結果は「開放性」を除き,地域を込みにした全体のデータと ほぼ一致した結果であった。
3.性別での各種相関
① 男性の相関検定の結果
男性の子どもの性格特性と学級風土各因子の相関検定を行った結果が表 31 の通りであ る。「協調性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」
は正の有意な相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関が見られた。「統制 性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向性」,「規 律正しさ」は正の有意な相関が見られた。「情緒性」と「学級内の不和」は正の有意な相関 が見られた。「開放性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「規律正しさ」
とは負の有意な相関が見られた。「外向性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られ たが,「学習への志向性」,「規律正しさ」とは負の有意な相関が見られた。
表31 男性による各変数間の相関結果
学級活動 への関与
学級内の 不和
学校への 満足度
自然な自 己開示
学習への 志向性
規律正し さ
協調性 .155 -.458* * .285* * .114 .223* .212*
統制性 .467* * -.056 .399* * .023 .492* * .383* *
情緒性 -.107 .339* * -.172* -.037 -.204* -.137
開放性 -.160 .397* * -.173* -.055 -.208* -.178*
外向性 -.145 .237* * -.135 .213* -.181* -.036
N= 132
学級活動 への関与
学級内の 不和
学校への 満足度
自然な自 己開示
学習への 志向性
規律正し さ
協調性 .153* -.386* * .229* * .146 .160* .209* *
統制性 .400* * -.063 .322* * .244* * .249* * .386* *
情緒性 .070 .314* * -.028 .090 -.081 -.026
開放性 -.106 .356* * -.082 .140 -.061 -.186*
外向性 -.128 .394* * -.101 .029 -.155* -.165*
N= 169
② 女性の相関検定の結果
女性の子どもの性格特性と学級風土各因子の相関検定を行った結果が表 32 の通りであ る。「協調性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向 性」,「規律正しさ」は正の有意な相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関 が見られた。「統制性」と「学級への関与」,「学級への満足度」,「学習への志向性」,「規律 正しさ」は正の有意な相関が見られたが,「学級内の不和」とは負の有意な相関が見られた。
「情緒性」と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られたが,「学級への関与」,「学級へ の満足度」,「学習への志向性」,「規律正しさ」とは負の有意な相関が見られた。「開放性」
と「学級内の不和」は正の有意な相関が見られた。「外向性」と「学級への関与」は負の有 意な相関が見られた。
表32 女性による各変数間の相関結果
以上,性別での各種相関の結果は性別を込みにした全体のデータとほぼ一致した結果で あった。
換言すれば,学級風土と子どもの性格特性との関係については,学級風土のネガティブ 因子である「学級内の不和」と「情緒性」,「開放性」,「外向性」の性格特性因子とは正の 有意な相関が見られた。つまり,不安や緊張を感じやすく,怒りなどの感情を抑えにくい 性格特性を持つ子どもが学級の緊張感を高める雰囲気を作ってしまったり,かえって緊張 感の高い雰囲気の学級が子どものネガティブな性格特性を作ってしまったりする事が分か った。
4.子どもの性格特性と学級風土の関係
全体的には,「協調性」,「統制性」が全ての学級風土因子とは有意な相関が見られ,「学 級への関与」,「学級への満足度」,「自然な自己開示」,「学習への志向性」,「規律正しさ」
とは正の相関,「学級内の不和」とは負の相関があった。要するに「協調性」,「統制性」の 性格特性は学級風土に対して,有効な関係を持つ事が分かった。逆に学級風土に対し関係 が最も弱いのは「開放性」であり,次に「情緒性」,「外向性」の順であった。三者とも「学 級内の不和」とは負の有意な相関があったが,「学級への満足度」,「自然な自己開示」とは
学級活動 への関与
学級内の 不和
学校への 満足度
自然な自 己開示
学習への 志向性
規律正し さ
協調性 .396* * -.389* * .352* * .211* * .281* * .313* *
統制性 .383* * -.267* * .412* * .140 .330* * .337* *
情緒性 -.191* .302* * -.188* -.147 -.206* * -.222* *
開放性 -.026 .192* -.061 -.065 -.009 -.010
外向性 -.164* .096 -.105 .033 -.129 -.104
N= 160
関係がなかった。そして「情緒性」については「学習への志向性」,「規律正しさ」とは負 の有意な相関が見られ,「外向性」については「学級への満足度」,「規律正しさ」以外に「学 級への関与」とも負の有意な相関が見られた。つまり,「開放性」,「情緒性」,「外向性」の 高低と「学級への満足度」,「規律正しさ」の高低とは関係がなく,学級風土に対して,関 係を持つ性格特性ではなかった。これらをまとめて,全体として性格特性と学級風土特性 の関係については,「協調性」,「統制性」が強く,「開放性」,「情緒性」,「外向性」が弱い。
それらの理由について,以下の三つの側面から検討する。
① 性格特性の比率
13の学級では,子どもが持つ性格特性の中最も多いのが「協調性」(55%)と「統制性」
(18%)であり,最も少ないのが「開放性」(16%),「情緒性」(7%)と「外向性」(4%)
である(複数の性格特性を持つ子どもの人数は少数であり,それを除いた)。そのため,学 級レベルの平均の学級風土は「学級への関与」が高く,「学級内の不和」が低く,「学級へ の満足度」が高く,「自然な自己開示」が中程度で,「学習への志向性」が高く,「規律正し さ」が高い。つまり,人間関係を重視し,他人の気持ちを思いやりの「協調性」の性格特 性を持つ子ども,と責任感が強く,物事に積極的に取り組もうとする「統制性」の性格特 性を持つ子どもが学級風土への影響力が強く,学級活動への関心や熱意を持ち,学級の緊 張感を和らぎ,学級にいると楽しくなり,教科学習場面での学習活動に熱心があり,学級 内の秩序やルールを遵守する事ができる。その結果,「協調性」や「統制性」の性格特性を 持つ子どもの人数が多ければ多いほど,より肯定的な学級風土を形成する事ができる。逆 に,その肯定的な学級風土の中にいる子ども達は「協調性」,「統制性」の性格特性が育て られた。
② 学級風土への影響力
本章では「開放性」,「情緒性」,「外向性」が「学級内の不和」に強い影響力を持ったが,
「学校への満足度」,「自然な自己開示」とは関係がなかった。つまり,発想がユニークで,
好奇心や探究心が強く,現実回避の傾向がある「開放性」の性格特性を持つ子ども達や,
他人の思惑に対し敏感で,緊張や不安が強く,落ち込みやすい傾向がある「情緒性」の性 格特性を持つ子ども達や,自己顕示傾向が強く,怒りなどの感情が抑えられなく,外に表 しやすい傾向がある「外向性」の性格特性を持つ子ども達は多ければ多いほど,学級の緊 張感が高まる雰囲気を作る事ができる。逆に,グループ化している緊張感が高い学級では,
子どもの「開放性」,「情緒性」,「外向性」の性格特性が形成されやすいのである。また,
三つの性格特性のいずれを持つ子どもが,学級にいると楽しいかどうか,自分の考えや意 見,気持ちを自由に表現できるかどうかという学級風土とは全く関係がなかった。