<マネジメントのポイント>
1.史跡等の概要
○有備館は、江戸時代に岩出山伊達家の家臣子弟の学問所となった建物で、
二代宗敏の隠居所として延宝5年(1677)頃に建てられたとされ、その後、
下屋敷・隠居所そして家臣子弟の学問所として使用され、伊達家当主が時 折講義に臨むための場所であった「御改所」(主屋)とその附属屋が、現 在までその姿を伝えている。主屋は、平家建で、屋根は四柱造茅葺、二方 折廻縁を持つもので、庭に面し、屋敷から庭園が一望できる。玄関は裏側 についており、素木造の瀟洒な建物で、玄関構や床棚書院のしつらえ、欄 間・戸障子など素朴なうちに洗練されたものがある。
○庭園は、正徳5年(1715)、仙台藩の茶道頭石州流三大清水道竿によって、
作庭されたと伝わる。岩出山城の断崖を借景として、池中に御中島(茶島)、 鶴島、亀子中島(亀島)、兜島を配し、大名庭園型の池を中心とした周囲 約 500m余の廻遊式池泉庭園で、中には 300 年以上の樹木があり、四季を 通して緑や花などが変化を楽しむことができる。
指定年⽉⽇ 昭和8年2月 28 日指定、
昭和 47 年5月 26 日追加指定・一部解除 指定面積 23,855.92 ㎡
<史跡等の所在・市町村の状況>
所在地 宮城県大崎市岩出山字上川原町 (MAP)
立地
・有備館駅の北側に位置し、奥羽山脈の裾野 に広がった丘陵地に属した岩出山城址の 北側の崖下に位置している。敷地の南側を 流れる内川より導水し、庭園に池を形成し ている。
市町村の規模 人口(H22 国勢調査) 135,127 人 世帯数(H22 国勢調査) 46,047 世帯
市町村の概要
・宮城県の北西部に位置し、東は遠田郡、登米市、西は山形県、秋田県に接し、南は黒川郡、加 美郡、北は栗原市に接している。
・東西に約 80km の長さを持ち、奥羽山脈から江合川と鳴瀬川の豊かな流れによって形成された、
広大で肥沃な平野「大崎耕土」を有する四季折々の食材と天然資源、そして地域文化の宝庫で ある。
2 保存・管理、整備・活用の状況
<史跡等の基本情報>
管理団体等 -
計画書作成 保存管理計画 策定済 整備・活用基本計画 策定済
管理体制
整備担当部署 教育部文化財課 維持・管理担当部署 教育部文化財課 維持・管理の実施主体 自治体職員が直接管理
<保存・整備活用計画>
◇史跡及び名勝「旧有備館及び庭園」保存整備事業基本計画(平成 22 年 大崎市教育委員会)
・昭和8年に国指定文化財に指定され、適切に維持されてきたが、平成 13 年に主屋が大雪による被害を受け、主 屋の修理をはじめとした整備事業の検討に着手した。そして平成 20 年6月に、「岩手・宮城内陸地震」による、
主屋東部の柱が割れ、附属屋の壁面の亀裂等の被害を受け、建物の耐震診断を行い、今後の建物の維持管理・活 用における基本的な資料を得るとともに、構造補強計画についても検討を行った。
・これを期に、史跡及び名勝指定範囲全体の、整備及び維持管理に関する基本的な指針を定め、国民共有の財産で ある当該史跡及び名勝のさらなる周知と公開活用を見据え、基本計画策定に至った。
・歴史的変遷を明らかにし、当初の姿を明らかにすることによって、その価値を改めて見極め、保存状況・破損状 況を整理するとともに、当初の姿との比較検討を行い、本計画を策定した。
・敷地範囲内の整備計画のみならず、隣地及び借景の扱いや、今後のまちづくりを視野に入れた、広域的観点から の計画を示し、保存と活用を実現するための、短期的・長期的な視野に立った整備計画を示した。
<整備事業>
◇「主屋及び附属屋,茶室の保存修理⼯事(第Ⅰ期計画)」
・平成 23 年度から平成 27 年度の5年間にわたって、主屋及び附属屋、茶室の保存修理 工事を計画している。主屋は、半解体し、耐震補強を施した上、展示物を撤去し、建 物自体とそこからの庭園及び借景の眺望を確保。附属屋は、部分解体工事とし、展示 機能を継続させている。将来計画として、新たな展示施設の建設を検討し、附属屋に おける展示機能を移行する。
◇「庭園及び借景,⻄側隣地の保存整備⼯事(第Ⅱ期計画)」
○庭園要素の復元:樹木の整備(史跡及び名勝指定当初からの樹木の維持・継承、後継 樹の育成、当初の庭園景観形成のため、樹木の剪定)、護岸・橋・垣根・地形・景石等 の整備(池や各島の汀線の復元、景石・飛石・沓脱石などの移設)、借景(樹木の剪定 や伐採などの樹木整理による視点場・視点軸からの景観の復元)
○維持管理・公開活用のために設置された要素:案内板や説明版、樹木板、ベンチ、柵、
通用門、照明、管理棟、便所、物置などの施設
◇東⽇本大震災による被災した建物・庭園の復旧⼯事
・被害箇所の復旧とともに,建物では正確に検証できる明治初期以前の姿を再現した設計も行い、建築材は古材を 生かしつつ、東日本大震災と同程度の揺れに耐えうるよう耐震補強を施した。
<活用>
◇各種情報の発信
○ホームページ(概要、イベント案内、調査研究報告、周辺の観光案内)
○説明パンフレット(児童・生徒向け)等の資料配布
○シンポジウム・講演会(調査研究の成果の発表やそれを活かした啓発活動)
◇催しの開催
・茶室での茶会、古文書解読手習所、こども講座、コンサート、ライトアップをは じめ、小・中・高の校外授業や社会教育事業などを開催している。また、附属屋
で開催される企画展は、年に3~4回で展示替えを行っている。 ライトアップ 池(形状の変更)
解説版
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3 課題克服のポイント
課題:史跡及び名勝に指定されている「旧有備館及び庭園」では、周辺の水系に関連する池や土塁、並びに借 景である岩出山城の断崖等の諸要素との関係が不可分と考える作庭意図を理解し、「旧有備館及び庭園」
のみならず、敷地周辺の特徴を保存継承していくために、一体的な整備・活用が必要であった。
大崎市への合併以前から、「旧有備館及び庭園」を町の財産と位置付け、
商工や建築、教育機関と連携を図り史跡の活用に取り組んでいた。合併 後も、庭園に隣接する崖や公園等を、庭園の借景の一部とするため、建 設部局と連携して整備の方向性の共有・調整を図ることで、適切な設計 監理が実現しているほか、庭園の価値を維持することができている。そ のほかにも、指定地及びその周辺にとどまらず、「旧有備館及び庭園」は 岩出山城址を中心とした城下町のひとつの要素であるといえるため、地 域振興部局で史跡への誘導標識を設置。合わせて商工関係の部署とも連 携し、まちあるきのパンフレットをはじめ、様々なパンフレットやホー ムページでの紹介等を行うことで、来訪者への適切な誘導を実現するこ とができている。更に、教育委員会内においても、教育事業と連携し、
公民館の催しを旧有備館内で開催するなど、「旧有備館及び庭園」と一体 となった来訪者の回遊性、市街地での滞在の仕組みを構築し、広域的な 視点でまちづくりを推進している。
他部局との連携については、上位計画等では具体的に位置付けられてお らず、“市の財産を最大限に活用する”ことを目的に、各部局がそれぞれ 事業を推進している。部局間での障壁はなく、積極的に連携することで、
文化財自体への愛着にもつながっている。
地域のまちづくりの核として位置づけられ、保存・活用が図られてきた
「旧有備館及び庭園」は、平成 20 年の岩手・宮城内陸地震により、被害 を受けたことから、早急に調査・整備の検討が進められた。その整備工 事を行う直前の平成 23 年3月に東日本大震災が発生し、主屋が倒壊し、
附属屋は壁や屋根に被害がおよび、庭園の各所に地割れや陥没の被害を 受けた。
被災後すぐに、個人やボランティア組織によって、「旧有備館及び庭園の 早期復旧を願う会」が設立され、署名や募金活動が行われた。本史跡を いち早く復旧しようという想いから、まちづくりを担う地域の核として、
「旧有備館及び庭園」が地域住民に認識されていることがわかる。
公開活用の更なる充実を図り、敷地範囲内の整備計画のみならず、隣地及び借景の扱いや今後のま ちづくりを視野に入れた広域的視点からの整備計画を位置づけたことにより、来訪者の回遊性や滞 在を図ることができた。
遺構の指定範囲を超えた他部局の整備計画の調整 マネジメントのポイント①
災害によって被害を受けたが、地域のまちづくりの核となっていたことで、被災後すぐに個人やボ ランティア組織等によって、署名や募金活動等の復旧活動が行われた。
倒壊した旧有備館(大崎市 HP)
文化財の位置図 散策ルートマップ
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