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○大正時代の学術的な発掘調査に始まる継続的な調査が行われ、土器編年や骨角器の研究、縄文人の生活環境等 多くの成果が挙げられている里浜貝塚では、出土品の多くが隣接する歴史資料館に展示されている。また、里 浜らしさを活かすために、生活跡に極力手を加えないことを第一に当時の景観を復元する取組が行われてい る。

○歴史資料館や貝層観察館を核とした体験学習講座・イベントや奥松島縄文村まつりなどに力を注いでいる。

里浜貝塚西畑地点調査風景

里浜貝塚

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2 保存・管理、整備・活用の状況

<史跡等の基本情報>

管理団体等 東松島市

計画書作成 保存管理計画 里浜貝塚保存管理計画:平成 19 年3月 31 日 整備・活用基本計画 里浜貝塚史跡公園基本計画:平成 11 年3月 31 日

管理体制

整備担当部署 東松島市教育委員会生涯学習課奥松島縄文村歴史資料館 維持・管理担当部署 東松島市教育委員会生涯学習課奥松島縄文村歴史資料館 維持・管理の実施主体 東松島市教育委員会生涯学習課奥松島縄文村歴史資料館

<保存・整備活用計画>

◇東松島市総合計画実施計画(第8次):計画期間平成 26 年度 28 年、東松島市

・奥松島縄文村管理運営事業及び里浜貝塚史跡公園管理事業として、①調査研究事業(里浜貝塚の調査研究と企画 展等の開催)、②教育普及事業(資料館及び史跡の案内解説、体験イベント・講座及び講演会等の開催)、③広報・

活性化事業(情報発信及びPR、里浜貝塚ファンクラブの運営)、④史跡整備事業(案内・説明板設置)、⑤維持 管理事業(縄文村施設及び里浜貝塚史跡公園の日常的な維持管理、環境美化、小破修繕)を位置づけられている。

<整備事業>

◇「さとはま縄⽂の⾥ 史跡公園」整備

・「さとはま縄文の里 史跡公園」は、里浜貝塚の特徴を活かすために、

縄文人が残した生活の跡を極力いじらず、造りこまないよう配慮し、

里浜縄文人が暮らした当時の景観を復原することを試みた。

・縄文から現代につづく歴史と自然を体感するとともに、縄文人の生活 を追体験できる空間、そして貝塚だけではなく、里浜の海や森を肌で 感じられる体験型野外博物館を目指している。

◇奥松島縄⽂村歴史資料館

・遺跡に隣接して奥松島縄文村歴史資料館が整備され、出土品の多くが 展示されている。

<活用>

◇散策マップ・ホームページ・簡易解説書の作成

・「さとはま縄文の里 史跡公園」並びに、里浜貝塚についての情報発信とし て、ホームページ並びに簡易解説書(パンフレット)が作成され、ホームペ ージ等で公開している。また、里浜の海と史跡公園の散策マップなども作 成・配布されている。

◇体験学習

○貝塚見学(縄文時代の貝塚や土器片が分布している様子を観察したり、触 れたりすることで縄文人の生活の跡や景観を体験・体感)。

○火おこし体験や、土器・釣り針・勾玉・シカ角ストラップ・編布・土製ア クセサリー・貝輪等のモノ作り体験。

○塩作り、漁り(釣り針作り+海釣り)、貝紫染め、縄文食体験等の縄文体 験講座・イベント。

◇奥松島縄⽂村まつり

○毎年秋頃に開催。縄文体験、里浜貝塚を一巡するウォークラリー、フリー マーケット等を実施。

◇⾥浜⾙塚ファンクラブ(縄⽂村の村びと)

○縄文村ファンの要望により平成 13 年に発足。ファンクラブ登録により縄 文村の入館料が年間無料。また縄文村のイベント情報を掲載した季刊誌

「村報 縄文村」を配送。

○年会費(村民税)は一世帯 500 円。

○ファンクラブの世帯数は 156 世帯、523 人(平成 27 年 3 月現在)。

貝塚散策マップ

貝塚見学(貝層観察館)

縄文村発行の村びと登録証

「さとはま縄文の里 史跡公園」

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3 課題克服のポイント

課題:観光市場トレンドがレジャー型から体験型に移り変わる中で、当該地区が擁する豊かな自然や歴史・伝 統文化等の数多くの観光資源と、宿泊業等の観光サービス業をいかに活用し、トレンドの変化に対応す る必要に迫られていた。

日本の観光市場トレンドがレジャー型から体験型に移り変 わる中で、これまで市内で個々に対応してきた体験型観光を ブルー・ツーリズムとして位置づけ、地域一丸となって受け 入れを行うネットワーク構築の必要に迫られていた。協議を 行った結果、平成 14 年5月、東松島市観光協会総会にて、

「東松島市」「東松島観光協会」「地域観光業者」等による ネットワーク組織「奥松島体験ネットワーク」が設立された。

本ネットワークが活用している地域資源には、本事例として 取り上げる「里浜貝塚」や宮戸月浜地区にて毎年小正月に行 われる国指定重要無形文化財「えんずのわり」(鳥追行事)

等の史跡や伝統行事と、日本三大渓の一つに数えられる島の 最南端にある断崖海岸「嵯峨渓」、そして日本三景「松島」

がある。観光資源の豊かな土地であるため、本ネットワーク では周辺に来訪した観光客をひきつける面白い体験(縄文人 の生活体験等)を取り入れるとともに、貝塚を当時のままの 形で保存・整備し、ありのままの姿を人々に体感してもらえ るよう工夫している。

教育旅行の主な活動時期である5~11 月を中心に、当該地域 への宿泊客や県外の修学旅行生が、本ネットワーク展開の豊 富な体験活動に参加している。観光客数は年々増加しており、

平成 15 年度の来客数は 317 名、平成 16 年度は 897 名、平成 19 年度は 1,420 名であり、平成 22 年度には 3,000 名を超え た。

さらに、当該地域の受け入れ態勢の整備に向けて、平成 19 年度「農村コミュニティ再生・活性化支援事業」や平成 19 年度「観光立村国際グリーン・ツーリズムモデル事業」、平 成 20 年度「みやぎグリーン・ツーリズムアドバイザー派遣 事業」等、数多くの公的支援を受けている。地域全体での観 光資源の有効活用や受け入れ態勢の整備により、小中学校の 教育関係者のニーズを捉え、教育旅行の目的地として認識さ れている。

歴史資料館を核とした、他施設との協力による活用を試みた取組。

マネジメントのポイント①

里浜貝塚西畑地点の貝塚断面 日本三景「松島」と里浜貝塚 奥松島地域が有する歴史文化や自然などの観光資源を活用したブルー・ツーリズムのネットワーク を構築することで、各地域・施設で個別に活動していた体験学習・活動を連携させている。

蕎麦の種まきイベントの様子

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東松島市では、平成 18 年9月に策定された「東松島市民間活力の推進に関する方針」に基づき、市がその実施 主体として行うべき行政サービスの提供や事務事業について、以下の視点から官民の役割分担のあり方を見直 し総合的な検討を行ってきた。

これに伴い、里浜貝塚の植栽及び緑地管理、清掃業務等の保存管理は、東松島市シルバー人材センター、奥松 島縄文村菜種保存会(任意団体)、地元住民らの手によって行われている。

奥松島体験ネットワークも地域に根ざした自立的な活動を重視し、市からの運営助成金無しの完全な民間活動 としての運営を行っている。

本ネットワークは、平成 21 年度、「子ども農山漁村交流プロジェクト対策事業」の認定を受けた。本プロジ ェクトは平成 20 年度から5年間に全国2万 3,000 校の小学5年生 120 万人を対象として1週間程度の体験交 流を行うプロジェクトである。近年では教育旅行の目的地として北海道や関東圏の小中学校での需要が高まっ ている。

数多くの修学旅行生の受け入れを可能にしている背景のひとつとして、グリーン・ツーリズムインストラクタ ー会員の増加が挙げられる。一般財団都市農山漁村活性化機構が平成 20 年3月、宮戸地区にて開催したグリ ーン・ツーリズムインストラクター講座の地域開講では、それまで開催した育成講座での受講者が数名であっ た所 15 名が受講、会員数が増大したことで小中学校からの教育旅行に対する柔軟な対応が可能になった。

現在、本ネットワークの会員は個人会員が 16 名、特別会員として奥松島縄文村歴史資料館を含む4団体、準 会員4名から構成されている。会員一人ひとりの活動も主体的に展開されており、各会員が年間 50~100 名の 観光客を受け入れている。

平成 13 年度より資料館が主体となりファンクラブを発足した。ファンクラ ブの加盟者は村人として一世帯につき、年会費 500 円(村民税と呼ぶ)を 支払うことで「村びと登録証」や村報が配布される。現在 156 世帯 523 人、

幅広い年齢層の村人がファンクラブに加盟している(平成 27 年度 3 月現在)。 市民との距離の近い交流を目指し、資料館では「縄文まつり」のほか、地 域と協力してイベントや祭りを開催している。活動がメディアに取り上げ られたほか、PR活動を行うことで、住民への周知活動に積極的に取組ん でいる。

博物館での体験活動の始まりは、リピーターを増やすために行った季節ご

との体験学習である。現在は、小・中学校の受け入れを実施し、50 分間×3回で①博物館館内の見学②貝塚の 見学(実際に出土品に触れる)③ものづくりを体験してもらい、単なる博物館の見学だけではなく、実際に史 跡に触れて五感に訴えるプログラムを提供している。

① 市自らが直接実施する必要があるかどうか

② 具体的な実施を外部に委ねることにより、民間等の知識やノウハウ等を活用して質の向上やコスト削 減など効率的・効果的な業務執行が図れないか

地域として魅力的な体験学習を提供することに加え、ネットワークを構成する一人ひとりの会員の 主体的な行動に支えられた結果、全体の観光客増加につながっている。

地域に根ざした活動を重視し、活動における行政からの支援は最小限にとどめた結果、民間主導に よる自立した活動が進められている。

資料館が主体となり、市内外からの観光客に向けたファンクラブやイベントの運営等の活動を行う ことで、史跡の周知や継続的な観光客の確保につながっている。

機関紙「村報縄文村」の発行

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