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○整備の段階から、市民に積極的に公開し、勉強会等も開催することで、地域住民の誇りの醸成につながってお り、現在でも地域の宝として保存・活用が行われている。

○史跡が管理上、公開できないため、原寸大の復元を整備したことで、多くの来訪者の獲得につながっている。

出典:府中市 HP

武蔵府中熊野神社古墳

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2 保存・管理、整備・活用の状況

<史跡等の基本情報>

管理団体等 府中市

計画書作成 保存管理計画 - 整備・活用基本計画 -

管理体制

整備担当部署 府中市文化スポーツ部ふるさと文化財課 維持・管理担当部署 府中市文化スポーツ部ふるさと文化財課 維持・管理の実施主体 府中市文化スポーツ部ふるさと文化財課

<保存・整備活用計画>

・保存・整備については検討委員会を立ち上げ、その指示のもと進めている。保存管理については指針を策定し ている。

<整備事業>

◇国史跡武蔵府中熊野神社古墳保存整備事業報告(平成 25 年 3 月、府中市教育委員会)

・古墳の整備事業を行うに先駆けて、平成 15 年度より遺構及び 遺物の調査研究を行うともに、段階的に整備を進めるため、

「史跡指定ゾーン」、「便益施設ゾーン」、「神社関連施設ゾー ン」の3つにゾーン分けをした。これらの調査成果やゾーニ ングによる計画進行を基本として、平成 20 年度から平成 23 年度にわたって、石室及び墳丘、周溝、古墳周辺の整備を進 めた。古墳の保存整備とあわせて、国史跡武蔵府中熊の神社 古墳展示館と石室復元展示室の設置を行っている。

◇国史跡武蔵府中熊野神社古墳展示館

・展示ホールの大型ディスプレイによる古墳の解説、レプリカの 展示、古墳の土層断層のはぎとり土層が壁一面に展示されてい る。また、リピーター確保のために、一部展示替え等も行って いる。武蔵府中熊野神社古墳保存会が常駐している。

◇⽯室復元展示室

・史跡の石室は見ることができないため、発掘調査の成果をも とに、石室が作られた当時の状況にできる限り近い状態で原 寸を復元した展示室である。展示室の中は暗く、天井も低い ため、ヘルメットやライトを持って入室する。

<活用>

◇武蔵府中熊野神社古墳まつり

・地域の宝として、本史跡を知ってもらうこと、またこの史跡から情報発信し地域 の活性化を行うために、10 月に2日間「武蔵府中熊野神社古墳まつり」が開催 されている。まつりでは古墳のライトアップ、古墳をイメージしたパレード、ま た史跡横にステージを設け、古墳コンサート(雅楽、和太鼓、歌ものがたり)が 行われる。また、武蔵府中熊野神社古墳保存会によって作られたゆるキャラ「く まじい・おくまちゃん」も出演し、子ども達にとても好評である。

◇市内観光ツアーやスタンプラリー

・観光協会主催の市内観光ツアーでは、観光ボランティアが「武蔵国」府中を案内して おり、ツアーのコースのポイントとして位置付け、古墳まで見学に来ることで多くの 人に紹介する機会が増えている。また、スタンプラリーも行っており、史跡だけでは なく、府中の良さを知ってもらう取組になっている。

土層の展示

石室復元展示室

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3 課題克服のポイント

課題:国内最大・最古の上円下方墳の発見により、学術的観点からも古墳の専門的調査と整備保存の必要性に 迫られた。また、近年新たに発見された史跡であることから、認知度の向上と史跡の活用が大きな課題 である。

本史跡は、地域住民に単なる裏山として認識されていたため、上円 下方墳という古墳の特殊性・歴史的意義などをどこまで伝えられる かが課題であった。そのため、復元整備を行うとともに、公園緑地 課と連携を図り古墳公園として地域に受け入れやすい整備を行っ た。その古墳を整備する過程を公開したほか、見学会の開催や、新 聞への掲載もあり、1日に 1,000 人もの見学者が訪れたこともある。

公開に合わせ、勉強会等も実施し、古墳の本質的価値や重要性につ いて、周知を積極的に行った。このような取組の結果、本史跡が特 殊な古墳であることを認識させることができ、地域住民にも受け入

れられ、地域の新たなスポットとして注目されるようになった。また、府中市の西側には貴重で大きな史跡が 少なく、史跡に対する愛着が薄かったが、この古墳の整備を機に、住民に地域への愛着が生まれ、地域のシン ボル・宝として機能するようになった。

史跡の整備にあたって、石室の中に入りたいという地域住民からの 要望が多くあったが、調査の段階で史跡の公開が難しいことが判明 し、横穴式石室は保存のため埋め戻しをおこない、内部の一般公開 はしていない。そのため、古墳南側に国史跡武蔵府中熊野神社古墳 展示館を併設することで、学術的な価値のある古墳を見られるよう に工夫されている。展示室は石室を原寸大で細密に復元したもの で、中は暗く、無料で貸し出しされているヘルメットを被り、懐中 電灯を持って見学する。石室内の臨場感を味わえる大変ユニークな 施設であり、この演出が好評で、多くの見学者が訪れる地域の目玉 となっている。なお、展示館では出土品の展示も行われている。

地域の新たなシンボルとなった整備手法 マネジメントのポイント①

石室が一般公開されていない代わりに、原寸大の石室模型をユニークな演出方法で公開すること で、実物に近い形で古墳に触れられる工夫が好評を受けている。

展示館の外観

(窓の高さが復元された古墳の高さを示す)

整備の過程の公開や、見学会の開催等の広報により、史跡の本質的価値を積極的に周知させたこと により、住民の間で史跡が地域の新たなスポットとして定着した。

裏山であった古墳

石室の原寸大復元展示室

【床面表示】

展示館前面の広場には、古 墳の墳丘や石室の形と大き さが、実物大で表示されて いる。

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国指定の史跡である武蔵府中熊野神社古墳を大切に保存し、活用することを目的に平成 18 年 12 月に武蔵府中 熊野神社古墳保存会が結成された。現在、300 名を超える会員が在籍し、総会の開催、古墳や関連施設の保護 と活用、会報誌「七曜紋」の発行、バス研修、古墳まつりなどの活動を行っている。特に史跡及び展示館のガ イドについては、シルバー人材や外部組織によるものではなく、保存会に加入している地域住民約 20 名が率 先して取組んでいる。地域住民が実施することで、地域の地理や歴史

等も合わせて説明することができ、とてもわかりやすいと来館者から 好評を博している。なお、古墳展示館は府中市ふるさと文化財課より 古墳保存会が運営業務を委託されている。受付などの施設の管理を行 うほか、自主的に勉強会を開催し、地域の誇りの醸成や史跡の価値の 認識向上にも寄与している。展示館には年間約 10,000 人もの来館者が 訪れており、リピーターとなる来訪者も多い。また、保存会のキャラ クター「くまじい」と「おくまちゃん」を作成するなど、地域住民へ の啓発活動も積極的に行っている。

武蔵府中熊野神社古墳の整備が完了した翌年の平成 22 年から、武蔵 府中熊野神社古墳保存会が主体となり、「武蔵府中熊野神社古墳まつ り」を毎年2日間にわたって開催している。市と協働の事業として、

古墳の知名度向上とまちおこしを行うことが目的であり、祭りでは古 墳墳のライトアップ、古墳をイメージしたパレードのほか、史跡横に ステージを設け、古墳コンサート(雅楽、和太鼓、歌ものがたり)が 行われている。また、子ども達に文化を継承していくために、小学生 を対象とした塗り絵コンクールの作品展示、古代衣装を着用した写真 撮影、古代米の試食なども合わせて行われている。お祭りには地域内 外から、約 2,000 人もの人が訪れている。

駅から史跡までの利便性を向上させるために、途中に案内板や ルートの路面サインが整備されている。ほかにも、周辺の古墳 や名勝を含めた散策ルートが設定されているなど、地域内に回 遊性が創出される工夫が施されている。駅からのアクセスがし やすくなっていることも、特徴の一つである。

市と保存会が協働する古墳まつりを通して様々なイベントを行うことで、史跡の認知度の向上のみ ならず、地域内外からの来訪者の増加により、まちおこしにつながっている。

武蔵府中熊野神社古墳まつりパレード 古墳展示館の運営にはじまる市民主体の保存会の積極的な取組はイベント開催や勉強会開催など 多岐にわたるが、とりわけ史跡や展示館のガイドは地域に根ざしたものとなっており、好評を得て、

当館の来訪者・再訪者は共に向上した。

武蔵府中熊野神社古墳保存会

(府中市 HP)

史跡やガイダンス施設ではなく、史跡への来訪者のためにサイン等の整備を行っており、史跡を活 用したまちづくりへの発展が見受けられる。

武蔵府中熊野神社古墳への案内サイン

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