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〇斎宮跡はわが国の古代、中世の歴史・文化を解明する上で重要なものと位置づけられ、明和町をはじめとし、

三重県が保存・活用に積極的に関与していることが特徴としてあげられる。

○また町づくりの核に斎宮跡を選定したことにより、斎宮跡を活用することでの観光誘致に対しても地元住民の 理解が深く、史跡への興味関心も高いといえる。

○斎宮歴史博物館、いつきのみや歴史体験館などにおける体験プログラムも充実している。

斎宮跡 再現模型

斎宮跡 航空写真(出典:明和町 HP)

斎宮跡

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2 保存・管理、整備・活用の状況

<史跡等の基本情報>

管理団体等 明和町

計画書作成 保存管理計画 保存管理計画:昭和 55 年3月 31 日 整備・活用基本計画 史跡斎宮跡 整備基本構想:平成8年3月

管理体制

整備担当部署 三重県教育委員会・明和町 維持・管理担当部署 明和町 斎宮跡・文化観光課 維持・管理の実施主体 明和町

<保存・整備活用計画>

◇史跡 斎宮跡保存管理計画書(昭和 55 年3月、明和町教育員会)

・斎宮跡が国史跡に指定されてから約1年後に刊行された本計画書においては、宮跡は遺構、遺物を現状保存する だけでなく、発掘調査、土地の公有化の進捗と相まって史跡の整備を行うが、当面、斎王の森とその周辺及び県 斎宮跡調査事務所資料展示室を宮跡活用の核として整備充実を図った。

◇史跡斎宮跡 整備基本構想(平成8年3月、三重県教育委員会、明和町教育委員会)

・史跡斎宮跡をサイトミュージアム(史跡公園)として位置づけ、地域の特性に応じた整備を進めるため、地域住

⺠の⽣活環境整備も図ることを基本に 5 つのゾーン区分を設定している。

◇史跡斎宮跡を核とした町の活性化基本⽅針(平成 22 年2月、明和町)

・斎宮跡は、斎宮跡を核とした町の活性化を図るための中心的な存在となっており、歴史文化資源であるため、後 世に引き継ぐ責務もあり、一般的な観光資源とは異なる取り扱いが必要である。こうした状況の中、①町民の関 心度の向上、②認知度の向上施設、③サービスの充実といった基本理念のもと、活性化を図っている。

◇史跡斎宮跡東部整備基本計画書(平成 22 年3月、三重県⽣活・⽂化部)

・地下に眠る遺跡そのものへの地域住民の理解はまだ低いため、広域的な活用の視点、

学校教育・生涯学習活動からの利用などを含め整備の可能性について整理を行って いる。本計画において、斎宮寮の中枢部とみられる柳原区画の中で、主要殿舎とみ られる3棟の建物を実物大で復元表示する計画が進行している。

<整備事業>

◇史跡整備事業

・昭和 57 年度に斎王の森周辺に遺構表示を実施。順次、その他の広場の整備、八脚 門遺構表示などモデル的、暫定的整備を行ってきた。平成8年度から平成 13 年度 にかけて、初めて本格的な大規模整備事業として地方拠点史跡等総合整備事業を近 鉄斎宮駅北部の「遺構の活用・演出的整備ゾーン」において実施し、平安文化の体 験拠点となる「いつきのみや歴史体験館」をはじめ、1/10 史跡全体模型、外周ヤ ナギ並木などを設置した。

◇環境整備事業

明和町では、昭和 59 年度から地域住民のための生活環境整備進めると共に来訪者に対する誘導案内板、駐車場、

トイレ、休憩施設などを整備してきた。

<活用>

◇史跡斎宮跡地内の施設における講座開設

・「斎宮歴史博物館」では様々なテーマに基づく歴史講座、「いつきのみや歴史体験館」では古代の術や古代の食な どの歴史を体験等、それぞれ斎宮に関連するイベント等が催されている。

◇住⺠主体の取組による活用事例

・斎宮ガイドボランティアの結成、史跡斎宮跡植栽計画推進委員会を主体とするノハナショウブ、ナバナ、コスモ ス等の植栽環境美化活動、史跡斎宮跡・伊勢街道まちづくり会によるまちづくり活

動などがある。

◇祭り・イベント

・一年を通して6つの行事が行われているが「斎王まつり」、「斎宮ロマンまつり」な どは地元町民が参加できるということもあり、町民に親しまれている。

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3 課題克服のポイント

課題:斎宮跡は町の活性化を図るための中心的な存在となっており、史跡整備事業として昭和 57 年度の遺構 表示を皮切りに暫定的な整備事業を実施してきたが、斎宮跡の本質的価値は、大半が遺構として地下に 埋もれているため、地域住民の多くは、その価値を十分に理解できず、貴重な資源に対して関心が希薄 であった。

斎宮に対する町民の関心と認知度を高め、斎宮の魅力を堪 能できる環境を形成する必要があるとして、平成8年度か ら平成 13 年度にかけて、初めて本格的な大規模整備事業 となった文化庁事業である「歴史ロマン再生事業」(地方 拠点史跡等総合整備事業)を近鉄斎宮駅北部の「遺構の活 用・演出的整備ゾーン」において実施。斎宮に対する町民 の関心と認知度を向上させるために、斎宮の雰囲気を感じ られる空間整備を行った、平安文化の体験拠点となる「い つきのみや歴史体験館」の開館をはじめ、1/10 史跡全体 模型の建設、外周ヤナギ並木を整備した。さらに、現在、

柳原区画の実物大の復元整備が進められている(平成 27 年7月完成予定)。広域な指定範囲かつ指定範囲内に住宅 が混在しているため、史跡の保全と人々の生活の共存を 図るとともに、斎宮跡を核とした町の活性化に取り組ん でいる。平成 15 年4月にはガイドボランティアが結成さ れ、模型等を活用して観光客等をもてなしている。

「知」の拠点として平成元年に設置された「斎宮歴史博 物館」、「雅」の拠点として平成 11 年に設置された「いつ きのみや歴史体験館」に加え、斎宮の雰囲気が感じられ る体感空間「蘇」の拠点づくりとして、発掘調査で確認 された斎宮跡の最盛期の姿を実大で復元あるいは表示し、

大規模な整備計画も進行中であり、斎宮らしい雰囲気を よりリアルに体感することができる整備が進めている。

平成 21 年度から 26 年度にかけて、三重県下全域で市町を主体として取り組む「美し国おこし・三重」との連 携を視野に、史跡整備と併行しながら、地域づくり・人づくり・情報発信を進めている。三重県では、①自発

史跡斎宮跡を核とした町づくり計画を地域住民の参加も得て策定している明和町の歴史的風致維持 向上計画と、三重県の事業である「美し国おこし・三重」では、その趣旨の面で共通する部分が多 く、密接に連携して施策が実現・進行している。

町と県の連携による保存・活用を進めている取組 マネジメントのポイント①

広い指定範囲の遺跡を理解できるように1/10の史跡全体模型や復元建物を表現し、ガイドボラン ティアを配置することで、認知度をあげるとともに、リアルな体験を実現している。

いつきのみや歴史体験館での「蹴鞠」体験の様子 出典:いつきのみや歴史体験館 HP

1/10 史跡全体模型

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的な地域づくりグループへの支援、②自立性・持続性を高める仕組みづくり、③新たなイベントスタイルによ る地域力の結集と成果の情報発信の3点を取組みの柱として掲げ、地域の自立性・持続性を担保するには、住 民自身による自立的な意識や自発的な活動が最も重要だとしている。

県内の市町単位で取組まれる住民主体のパートナーグループによる、地域おこし活動とリーダーとなる人材育 成、そして持続可能な地域づくりを目指しており、これに呼応する形で、竹の文化を発信するまちかど博物館

「竹茗舎」や「竹の都・明和」農業生産研究会や、「史跡斎宮跡・伊勢街道まちづくり会」などといったグル ープが「美し国おこし・三重」のパートナーグループとして登録されている。

そのほか、いつきのみや歴史体験館、県立斎宮歴史博物館、1/10 史跡全体模型、斎王の森、古代伊勢道、竹神 社、伊勢街道を案内する「斎宮ガイドボランティア」や、ノハナショウブ、ナバナ、コスモス等の草花の植栽 環境美化活動を行う「史跡斎宮跡 植栽計画推進委員会」といった地元の住民主体の取組も活発化している。

課題:斎宮跡が、教育・生涯学習の場として機能し、歴史文化を体験する集客・交流の場として、あるいは町 民・県民の憩いの場として広く長く親しまれるには、適切な維持・管理と運営のための体制整備が必要 であった。

史跡中央部に位置する体験学習を主とする「雅」の拠点とし て位置づけられている「いつきのみや歴史体験館」と「斎宮 跡歴史ロマン広場」については、平成 11 年9月に合意した

「いつきのみや歴史体験館」に関する協定書及び平成 14 年 3月に合意した「斎宮跡歴史ロマン広場」に関する協定書に 基づき、町がその業務を担当した。現在では町が指定した指 定管理者である公益財団法人国史跡斎宮跡保存協会が担当 している。

「斎宮歴史博物館」は昭和 61 年4月に設置された教育委員 会文化課の博物館建設担当の管轄のもと、平成元年に発足し た。平成 20 年4月より、三重県生活・文化部の地域機関と なり、現在、所管部局は、三重県(環境生活部)と三重県教 育委員会の両者であり、「共管」という体制となっている。

同博物館は「知」の拠点として斎宮跡の歴史資料、考古資料 等の紹介・展示をするとともに、定期的に歴史講座、講演会、

古典文学講座等を開催している。

予約団体には、学芸員が直接、展示案内を行うといった、利 用者へのサービス向上を図った。史跡斎宮跡の保存・活用の 拠点として学校団体には、バックヤードツアーや体験発掘の 提供を行い、学芸員が講師となって、出前講座や出前授業を 積極的に展開している。

斎宮歴史博物館 出典:斎宮歴史博物館 HP

こども装束の試着体験

斎宮歴史博物館等による教育活動 マネジメントのポイント②

公益財団法人国史跡斎宮跡保存協会を中心に平安文化の体験講座をはじめ、季節ごとに斎宮ならで はのイベントを継続的に行うことで、斎宮の普及・啓発に貢献するとともに、利用者の能動的な関 わりを生み出す企画によって、一定の顧客を得ることに成功している。

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