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○国営公園及び県立公園として広大な敷地を保存・活用している。

○環壕、木柵、祭殿の復元などを行うとともに、ボランティアによる解説等が充実している。修学旅行生や多く の観光客が訪れる。

吉野ヶ里遺跡

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2 保存・管理、整備・活用の状況

<史跡等の基本情報>

管理団体等 -

計画書作成 保存管理計画 整備・活用基本計画 策定済

管理体制

整備担当部署 国営海の中道海浜公園事務所 歴史公園課

維持・管理担当部署 佐賀県教育庁文化財課・国営海の中道海浜公園事務所 歴史公園課 維持・管理の実施主体 吉野ヶ里歴史公園マネジメント共同企業体吉野ヶ里公園管理センター

<保存・整備活用計画>

◇「吉野ヶ⾥歴史公園基本計画(平成5年3月)」

・平成元年2月の発掘調査の発表以降、全国にブームを巻き起こし、平成4年3月までにおよそ 680 万人が訪れた。

そのような中、吉野ヶ里遺跡の完全保存が叫ばれ、平成4年 10 月に遺跡を含む区域を国営吉野ヶ里歴史公園と して整備されることが閣議決定された。これを受けて、吉野ヶ里歴史公園基本計画を策定した。

<整備事業>

◇吉野ヶ⾥歴史公園の整備

・吉野ヶ里遺跡の保存及び活用を図るため設置された面積は約 54ha の国営公園で ある。

・本公園の周囲には、本公園と一体となって遺跡の環境保全及び歴史公園として の機能の充実を図るために約 63ha の県立公園が計画されており、総面積約 117ha の区域が一体的な歴史公園として整備される。

【基本テーマ】弥生人の声が聞こえる

【基本理念】吉野ヶ里遺跡の保存を通じての本物へのこだわりと、適切な施設の 復元やわかりやすい手触りの展示などの遺跡の活用を通じて、弥生時代を体感 できる場を創出することとし、もって日本はもとより世界への情報発信の拠点 とする。

【基本方針】①遺跡の保存と活用、②魅力ある風景・環境づくり、③新しい歴史 文化の創造、④国際交流の拠点として、⑤レクリエーション環境の整備、⑥地 域振興の一翼を担う、⑦段階的な整備の推進

<活用>

◇普及啓発活動事業(佐賀県⽴博物館・美術館が実施)

・吉野ヶ里考古学講座:吉野ヶ里遺跡の発掘調査の成果、弥生時代の生活・技術・

交流、『魏志』倭人伝の国々、考古学から探る佐賀の歴史など様々なテーマで、

原則として、隔月第2土曜日に吉野ヶ里考古学講座を開催している。

・弥生ロマン体験学習:吉野ヶ里歴史公園を歴史教育や総合学習の教材として利 用し、吉野ヶ里遺跡の魅力や弥生時代の生活技術を体験してもらうために、佐 賀県内の小・中校生を対象に火おこし・土笛づくり・勾玉づくりの各種体験学 習を行っている。

・その他、ゴールデンウイークや秋の行楽シーズンに遺跡周辺の散策やウォーク

ラリーなどを行う「吉野ヶ里探検隊」、九州国立博物館で勾玉づくりなどの体験ができる「吉野ヶ里 Days in 九 博」、歴史公園でのイベントに合わせた「吉野ヶ里ナイトミュージアム」といった普及啓発事業を行っている。

◇グッズ販売

・吉野ヶ里歴史公園ではマスコットキャラクター「ひみか」を使用したストラップなどのグッズを、公園内で販売 している。一方、佐賀県立博物館・美術館でも図録やグッズを吉野ヶ里遺跡展示室内で販売。グッズは、もとも と吉野ヶ里博物館の基金のお礼として、史跡の概要をまとめた子ども用のパンフレットを作成したのが始まりで あるが、現在ではストラップやペーパーナイフなどのグッズへと展開させている。販売を行うことで遺跡の普 及・啓発にもつながっている。

吉野ヶ里考古学講座 吉野ヶ里歴史公園マップ

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3 課題克服のポイント

課題:吉野ヶ里遺跡は平成元年2月の発掘調査結果の発表以来、日本を代表する遺跡として、全国遺跡評価の 基準となっていた。そのため、地元住民の要望もあり、国営公園として遺跡の整備を進める機運が高ま っていた。

遺跡をその周辺の豊かな自然環境と一体的に保存するとともに、広く県 民が利用できる空間として整備する必要性があった。そこで、都市公園 法第2条第1項第2号ロの規定に基づき、日本固有の優れた文化的資産 の保存及び活用を図るため、国が設置する都市公園「吉野ヶ里歴史公園」

として設置されることが閣議決定された(平成4年 10 月 27 日)。 集落中心部においては、可能な限り当時の生活の様子をわかりやすく紹 介するなど、見学者のニーズに応えた整備を進めた。その中で最も顕著 なものは、復元建物の整備である。平成6、7年度には、環壕集落ゾー ン内の建物等(竪穴建物、高床倉庫、物見櫓、環壕、柵等)の復元につ いて、学術的調査『国営吉野ヶ里歴史公園建物等復元検討調査』を実施。

当時の雰囲気を再現するため、2年間にわたって 学識経験者等からなる委員会を設置し、復元設計 の基礎となるべき資料の収集・整理と、設計の前 提となるべき条件分析など、建物等復元にかかる 基礎調査を行った。さらに、基礎調査を踏まえた 上で「建造物復元基本設計委員会」を立ち上げ、

現行の建築関連法規等の制約、建築資材の調達、

制約条件等を明確に示し、制約条件のもとに実施 設計の検討を重ね、学術的な調査研究に基づく復 元と、実際に来園者に体験・体感してもらうため の建物の利用想定、雰囲気を盛り上げるための展 示の観点から、復元建物を整備した。弥生時代の 遺跡の姿を目に見える形で復元したことにより、

吉野ヶ里遺跡の本質的価値を理解しやすくなり、

住民の積極的な利用にもつながっている。

公園を設置するにあたって、広く市民に史跡の価値を伝えるため、吉野ヶ里遺跡展示室の設置が決まった。展 示室は佐賀県立博物館・美術館が直営で運営しており、要望により展示室内のガイドも受けることができる。

展示室を設け、遺跡の解説を行うことで、史跡の価値や重要性の啓発へとつながっている。

国営公園である吉野ヶ里歴史公園の管理主体は国土交通省であり、管理は吉野ヶ里歴史公園マネジメント共 同企業体が指定管理者として受託。公園内に「吉野ヶ里公園管理センター」を設置して運営している。また、

国、県、地元市町等が月に1度の管理運営連絡会議を介して連携をとり、歴史公園の整備・活用の情報共有が 図られているとともに、イベント開催時には柔軟に協力し合える環境にある。

遺跡の復元整備

マネジメントのポイント①

遺跡の保存のみで終着せず、学術的な調査研究に基づく復元整備と現在の見学者の利用しやすさを 共存させつつ、公園整備がなされている。また、整備諸団体の連携がはかられ、円滑なイベント開 催を実現している。

南内郭跡全景(北から)

吉野ヶ里歴史公園マップ

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上記課題解決に向けて、本遺跡は文化財保護と観光を結びつけ、地域 のシンボルとして活用されるよう、「弥生人の声が聞こえる」をテーマ に整備・情報発信を行っている。これを受け、吉野ヶ里歴史公園では 国や地元市町と連携して、年に十数回様々なイベントを開催し、まち づくりの観点からも遺跡の活用に取組んでいる。弥生人の生活を再現 したイベントや企画が多く、勾玉などの装飾品の試作、当時の衣服の 試作・試着、古代米の育成、当時の食事体験など、参加型イベントが 豊富である。さらには、イベントの解説やガイド、グッズ販売、植木 市や青空トラック市の開催を通して、地元雇用の創出や経済発達にも 発展させている。また、遺跡から出土した遺物や復元品などを、吉野

ヶ里遺跡展示室や古代植物館で展示している。なお、展示物の一部は、実際に手で触れることもできる。吉 野ヶ里遺跡の知名度は、弥生時代を代表する遺跡として全国でもトップクラスにあることから、平成 13 年の 開園以来、来園者数は年間 60 万人を超える。また、地元の商工観光と連携したイベントを行った結果、春の ゴールデンウィークイベント期間中には約6万9千人の来園者があるなど、複合的な経済効果をもたらして いる。

佐賀県内の小・中校生を対象に、吉野ヶ里歴史公園を歴史教育や総合 学習の教材として利用し、吉野ヶ里遺跡の魅力や弥生時代の生活技術 を体験してもらう取組として、「弥生ロマン体験学習」を開催。火お こし、土笛づくり、勾玉づくりなどの各種体験学習を提供している。

なお、平成 26 年度の県内小中学校の受入れは、66 校、3,832 名に上 る。また、県立博物館・県立美術館では、毎年、学校の夏休みにあわ せて、小学生を対象とした「夏休みこどもミュージアム」体験講座の 開催も行っている。

また一般に対しても、原則隔月第2土曜日に「吉野ヶ里考古学講座」

を開講している。講座のテーマは毎回異なり、“吉野ヶ里遺跡の発掘 調査の成果”、“弥生時代の生活・技術・交流”、“『魏志』倭人伝の国々”、

“考古学から探る佐賀の歴史”など、様々なものがある。

県立博物館・美術館では、博物館実習生の受け入れを行っているが、

その中で専門分野(考古)の実習として、吉野ヶ里遺跡において発掘 作業や遺物整理作業の体験などを行っている。

吉野ヶ里遺跡展示室

児童・生徒から一般まで定期的に遺跡の普及啓発活動を行うなど、教育面での史跡の活用が積極的 に進められており、地域の遺跡への関心を高めることにつながっている。

文化財保護と観光 マネジメントのポイント②

弥生ロマン体験事業(火起こし・勾玉づくり)

遺跡と関連した特色的なイベントや企画などにより、文化財保護と観光、さらにはまちおこしを結 びつけ、地元の商工観光と連携したイベントをうちだした結果、行楽シーズンには来園者が増加し た。

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