科博本館の改修工事では、耐震補強に伴い文化財的価値を有する部分や部位にも現状変 更が及んだ。これら現状変更による価値への影響と変更が生じた部分、部位及び変更箇所 に実施された補強対策について整理した(表 3-2)。現状変更の内容を検証する。
① 意匠上の特性の喪失
展示室の Is 値及び事務棟の軸力が不足していたため、耐力向上を目的とした対策が講じ られた。展示室は事前の調査で当初の意匠の残存状況等が確認ができなかったこと、また、
事務室は執務室としての有効面積の確保を優先としたことから、両翼展示室及び事務室内 部の柱頭装飾は、耐震壁の新設、壁面の増し打ち及び接合補強に伴い撤去された(図 3-53)。 また、竣工当初の展示室の出入り口に廻る木製装飾は一部の開口部閉塞のために取り外さ れた(図 3-54)。これにより柱頭及び出入り口の意匠の一部が当初の形状から変更された。
② 建築計画上の特性の変更
展示室の Is 値及び CT・SD 値、中央棟屋の Is 値が判定値に満たないため、耐震壁の増設 が行われた。展示室は展示における有効面積の確保を優先としたことから、竣工当初に展 示室出入り口であった中央塔屋寄りの開口部の閉塞、ならびに同壁面の上下において接合 補強が行われた。また、展示室内の柱間に耐震壁を新設したことにより展示空間内に壁面 が露出したため、展示の自由度や展示空間の使用に制限が生じた。
③ 原材料の特性の喪失
展示室及の Is 値及び、事務棟の地下 1 階の軸力が判定値に満たないため、開口部の閉塞 が行われた。展示室は展示における有効面積の確保を優先としたため、開口部の閉塞に伴 い、展示室の翼階段室側の壁面のガラス嵌め込み鉄製サッシュは撤去された(図 3-55)。さ らに、事務棟に残る竣工当時の受付カウンターの大理石は解体され、幅を狭めるように加 工の上据え直された(図 3-56)。
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耐震補強に伴って行われた現状変更は、既存の展示造作のため調査が遅れた箇所であっ た。そのため事前に対策を講じることが困難であった。耐震壁の新設や既存開口部の閉塞 は、来場者の安全性の確保と博物館の機能の維持に必要であった。また、展示室及び執務 室における有効面積を確保するためには必要不可欠な変更であった。
文化財的価値への影響 検証を必要とする変更箇所:(部位に実施された耐震補強対策)
① 意匠上の特性の喪失
・柱頭装飾(展示室・事務棟):(ウ)既存開口部の閉塞,(エ)接合補強
・戸口額縁の木製装飾(両翼展示室出入口):(ウ)既存開口部の閉塞
② 建築計画上の特性の変更
・展示における動線(展示室内):(ウ)既存開口部の閉塞,(エ)接合補強
・展示空間(展示室内):(ア)耐震壁の新設
③ 原材料の特性の喪失
・ガラス嵌め込み鉄製サッシュ(展示室と翼階段室の間の壁面):
(ウ)既存開口部の閉塞
・カウンター大理石(事務棟 1 階旧受付):(ウ)既存開口部の閉塞 表 3-2 改修により検証を必要とする箇所
図 3-53 柱頭装飾(展示室・事務棟)
改修前 撤去後
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図 3-56 カウンター大理石(事務棟 1 階受付)
改修前 撤去後
図 3-54 戸口額縁の木製装飾(両翼展示室出入口)
改修前 撤去後
図 3-55 ガラス嵌め込み鉄製サッシュ (展示室と翼階段室間の壁面)
改修前 撤去後