ラーメン構造置換補強とは、従来の躯体の大部分を撤去した上で、新たな架構とし て鉄筋コンクリートに置換する手法とする。
これまでに本手法を採用した建造物として、旧金澤陸軍兵器支廠第七號兵器庫があ げられる(図 4-4)3。
本手法は、煉瓦造外壁の内側に木造の軸組、小屋組をもつ建物であったが、外壁を 残して木造躯体を全て撤去して鉄筋コンクリート造に置換した。これにより、構造計算 が可能となり、建築基準法にも適合させることができ、外力に耐えうる構造形式となった。
外観は保存されたが、内部空間は、新設した鉄筋コンクリート造の柱や梁などによ り、当初の空間から著しく変化する。さらに、内装が施され、補強については仕上げ により隠される。当初躯体は解体され失われる。外壁の内側には、鉄筋コンクリートが 打設されるため、当初の架構に復することを考慮すると、改修前の状態に戻すのは困難 と考えられる。
したがって、ラーメン構造置換補強は「隠す」、「可逆性が低い」手法とみなす。
図 4-3 鉄筋コンクリート壁式構造置換補強
(旧近衛師団司令部庁舎断面図 断面図)
図 4-4 鉄筋コンクリートラーメン構造置換補強
(旧金澤陸軍兵器支廠第七號兵器庫 断面図)
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② 既存壁面への増し打ち
既存壁面への増し打ちとは、既存壁面に対して新たに鉄筋コンクリートを打設し、既存 壁面と定着させることで、一体化させる手法とする。
増し打ちは名古屋市庁舎4の地下室、科博本館の事務棟5の執務室の壁面で採用された手 法である。
本手法は、部分的に耐力が不足する壁面に対して、増し打ちにより壁厚を増すことで、
耐力を向上し、耐力壁として評価できるようにする効果がある。
既存壁面に、新たに鉄筋コンクリート造の壁を増し打ちし一体化させることで当初の壁 より厚みが増すため、若干なりとも室規模が縮小する。補強箇所には塗装などの仕上げに より増し打ち部を目立たなくしている。また、当初の壁面と増し打ちした鉄筋コンクリー ト造の壁面が定着するため、これを除去することは困難である。
したがって、既存壁面への増し打ちは「隠す」、「可逆性が低い」とみなす。
③ バットレスによる補強
バットレスによる補強は壁体を鉄骨フレームまたは控壁を付加して支持する手法である。
バットレスを設置することで、地震時の水平力のうち、煉瓦壁の面外方向に対する補強を図 ることが可能となる。本補強は建物の屋内に設置した手法と屋外に設置した手法が確認できた。
また、バットレスに使用された材料は、鉄骨と鉄筋コンクリートの 2 種類が用いられて いるが、屋内に鉄筋コンクリートを用いた例は現在のところ確認できない。
(ア) 屋外鉄骨バットレス6
屋外鉄骨バットレスとは、壁面の崩壊を防ぐために、屋外部の壁面に鉄骨の控柱を 設置する手法とする。
本手法を採用した事例としては、山形県旧県会議事堂(現山形県郷土館:文翔館)
の議事棟煉瓦壁があげられる(図 4-5)7。
本手法は、外観へ及ぼす景観的な影響はあるが、補強材が内部空間に露出しないた め、室内における意匠の保存や復原を可能としている。また、補強材として鉄骨を採 用し、撤去の際には、煉瓦壁から容易に取り外すことが可能である。また、壁面にボ ルトの撤去痕は残るものの、容易に補修できると考えられる。
旧山形県会議事堂では、煉瓦壁面を緊結する鉄骨バットレスの先端部に幅 340mm、
高さ 460mmのプレートが両側面の壁面 2 面、1 面につき 6 か所ずつ、計 12 か所に設 置され、1 箇所 6 本の樹脂充填アンカーボルトにより固定されている。
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したがって、屋外鉄骨バットレスは「見せる」、「可逆性が高い」手法とみなす。
(イ) 屋外鉄筋コンクリートバットレス
屋外鉄筋コンクリートバットレスは、壁面の崩壊を防ぐために、外部の壁面に鉄筋 コンクリート造の控え壁を設置する手法である。
本手法を採用した事例としては、旧名古屋控訴院地方裁判所区裁判所庁舎(現名古 屋市市政資料館)の露台煉瓦壁があげられる(図 4-6)8。
補強材が内部空間に露出しないため、室内における意匠の保存や復原を可能として いる。補強材には既存の躯体と異なった材料が用いられているため、表面は躯体煉瓦 に合わせたタイルによる仕上げが行われている。また、鉄筋コンクリート造の控え壁 は、煉瓦壁面との接面に鉄筋や樹脂アンカーボルトを配した後、コンクリートを打設し 一体化させなければならないため、補強材の撤去が困難であると考えられる。
したがって、屋外鉄筋コンクリートバットレスは、材料は異なるが「隠す」、「可逆 性が低い」とみなす。
図 4-5 屋外鉄骨バットレスによる補強
(山形県旧県会議事堂)
図 4-6 屋外 RC 壁バットレスによる補強
(旧名古屋控訴院地方裁判所区裁判所庁舎)