科博本館で実施された改修工事では、保存すべき部分のうち、保存できた部分もあった が、損なわれた部位もあった。本節では、修理および模様替えに関係した事項もあわせて 保存できた部分と、損なわれた部分・部位について以下整理し図示した(図 3-71~75)。
地下 1 階の外構では、建物の西側にサンクンガーデンが新設されたため、地下 1 階のエ ントランスホールに接続していた南北の前室が失われた。また、ラウンジとミュージアム ショップの壁面は、ガラス扉の新設に伴い 18 箇所の開口部が設けられた。さらに開口部と 開口部の間の壁面には鉄筋コンクリートの壁が増し打ちされた。展示棟と事務棟の接続部 の北側外壁は、映像室の増築に伴い、一部が解体された。地下部分の外壁は、活用に伴い 一部損なわれたものの、改修前の状態を概ね維持できたと考えられる。
1階の外構では、南北の展示室西側にサンクンガーデンが新設されたため、外構の犬走 が一部損なわれたが、この他の事務棟北側や、両翼展示室の花崗岩の屋外階段は保存する ことができた17。また、外壁のスクラッチタイルは、後補の張り替えにより部分的な補修 が行われていたため、本改修工事では新たにスクラッチタイルによる張り替えが行われた。
1階正面の車寄せについては、床面のトップライトが新たな材料にて復旧された。そのほか の部分・部位は改修前の状態を維持することができた。また、車寄せに接続する石貼のスロー プは、サンクンガーデン設置に伴い、一度解体され、改修前の状態に据え直しが行われた。
正面玄関ホールは、不要な設備は撤去され、改修前の状態を維持することができた。
正面玄関脇の階段室は、欠失していた手すりは復原され、竣工当初の姿を取り戻した。
中央ホール1階は、床のタイルが一部欠失していたため、竣工当初の図面に残るデザイ ンを用いた修理が行われた18。このため、一部改修前のタイルが撤去された。展示室の中 央入口の上部にはシャッターのロールが残されていたため、これについてはロールをラス モルタルで覆い、表面を漆喰で仕上げ、現地保存とした。両脇 2 箇所の入口に設けられた シャッター、シャッターボックス、巻上げ装置は、構造補強による開口部閉塞のため撤去 された。2、3 階の回廊は、後補の改修により設置されていた大理石の壁面は撤去され、防 火及び耐久性のあるスタッコによる仕上げが行われた。この他の、部位については改修前 からの状態を維持することができた。
中央ホール上部のドームは、本改修工事にて新たに塗装が行われたが、その他の部位は 改修前の状態を維持することができた。
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南北の翼階段室の地下 1 階は、階段の幅が狭く勾配が急であったため、御影石貼りの階 段および床は解体・撤去され新たな階段が設置された。地下 1 階の翼階段室と部屋の境に 設置されていた鉄製建具は撤去の上保管された。1 階の小口タイル貼りの床は解体・撤去さ れ、新たに通路が設置された。また、床面に据えられていた御影石の台座等は撤去された が、保管されている。2〜3 階については壁面や天井のステンドグラスをはじめ、階段や手 すりなど改修前の部分、部位を保存することができた。
南北の 1~3 階の展示室は耐震壁の新設に伴い、壁側の柱と独立柱の柱頭装飾の一部が損 なわれた。また、開口部の閉塞に伴い、中央ホールに面する開口部廻りに設置された木製 装飾や翼階段室側のガラス嵌め込み鉄製サッシュは撤去された。腰壁の布は傷みと汚れが 著しかったため撤去された。また、1階を除く 2~3 階の楢材ブロック敷きの床は、活用に 伴いOAフロアにすべく撤去された。3 階の天井は空調用の開口部設置に伴い、部位が損な われた。
展示室内の設備改修では、1 階~3 階までの展示室の空調設備は、設備の更新に伴い内部 空間に空調用のダクトが露出することとなったため、内部空間が著しく変化した。1 階~2 階の展示室では、設備用のダクトの設置に伴い、既存開口部が閉塞されたため、窓として の機能が失われた。3 階は壁面に開口部がないため、空調用の吹出口が天井に設置された。
これに伴い天井の一部が損なわれた。展示室の照明設備は、ライティングレールとライテ ィングダクトを併用したため、梁や天井に金物が固定されたが、設備を躯体から離したこ とで、天井や柱に残る意匠などの部位を保存することが出来た。
1階の風除室(前 裏玄関ホール)では、開口部閉塞に伴い、カウンターの大理石が一 度解体されその後加工の上、復旧された。これに伴い、カウンターとしての機能は失われ たが、その他の部位については改修前の状態を維持することができた。
1階のメモリアルルーム(旧館長室)については、照明器具の増設に伴い天井に切りあ けが行われた。また、空調設備については、内部空間の意匠性を重視し空調機の露出を避 けるために、壁面からの吹き出し方式が採用された。これにより、壁面に吹き出し用の開 口部が設置された。
講堂は、設備の更新に伴い、室内吹き出し方式が選択された。これにより 3 階及び 2 階 の壁面に吹き出し用の開口部が設置された。照明設備では器具の更新だけでは照度が不足 していたため、天井埋め込み式の照明を増設したことから、既存の天井面に複数の切りあ けが行われた。
西展示室では、壁面に壁紙が残されていたが破損が著しいため撤去された。それ以外の 部位については改修前の状態を維持することができた。
事務棟階段室は、屋上の増築に伴い外壁の一部が解体撤去された。
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中央階段、地下 1 階の多目的室(前 施設課、旧公衆食堂)2 階の貴賓室・副室及び資料 庫、3 階の西階段室、屋上の第 1 天文ドーム(旧天文鏡:赤道儀室)は、改修前の状態を概 ね維持することができた。
図 3-71 損なわれた文化財的価値 地下 1 階平面図(改修後地下 1 階平面図に筆者加筆)
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図 3-73 損なわれた文化財的価値 2 階平面図(改修後 2 階平面図に筆者加筆)
天井
図 3-72 損なわれた文化財的価値 1 階平面図(改修後 1 階平面図に筆者加筆)
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図 3-74 損なわれた文化財的価値 3 階平面図(改修後 3 階平面図に筆者加筆)
図 3-75 損なわれた文化財的価値 塔屋平面図(改修後 4 階平面図に筆者加筆)