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第 3 章 土器川流域における危機管理対策検討の取組

3.1 検討フレームの構築(場の生成プロセス)

3.1.1 検討の目的と組織

香川地域では,東日本大震災を契機として,南海トラフ巨大地震に対応するため,DCP協 議会を2012(平成24)年5月に設立し,DCP策定に向けた検討を進めてきている.土器川 における大規模水害対策検討を 2013(平成 25)年に開始するにあたって,河川管理者であ る香川河川国道事務所では,大規模水害対策においてもDCPの考え方が必要であるとの認識 から,DCP 協議会との連携を図ることになった.DCP 協議会では,大規模風水害への対応 を図ることを目的に加え,香川地域全体で大規模災害へ対応する組織化が実現した.

土器川は,香川県の中讃地域に位置する一級河川であり,流域面積は 127km2,浸水想定 区域の3市4町の合計人口は約27万人である.この地域は,扇状地に田園地帯が広がり,臨 海部には第 2 次産業が集積し鉄道や高速道路の基幹交通網が整備されており,地域の社会・

経済・文化の基盤をなしている.土器川の国管理区間(河口から約 20km)において,堤防 の決壊を伴う大規模水害が発生した場合の浸水想定区域図を図3. 1に示す.この浸水被害の 想定は,土器川水系河川整備基本方針の計画規模を上回る超過洪水(1/100計画降雨×1.2倍)

を外力に設定し,平面二次元氾濫解析モデル(50mメッシュ)を用いて算出している.図3.

1に示した浸水想定による浸水被害は,土器川の上中下流の広範囲(3市3町)に及ぶことか ら,複数の市町の連携による広域的な対応が求められる.

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図 3.1 土器川の大規模水害による浸水想定区域図

土器川流域において大規模水害対策検討を始めるにあたり,事前準備として,事務局にお いて,大規模水害対策の策定を目的として,対象地域全体で「私たちの大規模水害対策」,

モデル地区で「水害に強いまちづくり」というコンセプトを決定した.「私たちの大規模水 害対策」は,地域住民が大規模水害を自身のこととしてとらえ,主体的に対策を考えること をねらいとしたものである.また,「水害に強いまちづくり」は,「強靱な地域づくり」を 目指して,防災・減災・縮災行動を具体化し,実行することをねらいとしたものである.

土器川における大規模水害対策検討の組織構成の概要を図3. 2に示す.また,この組織構 成の詳細を図3. 3(1)に示し,組織構成と「検討の場」との関係を図3. 3(2)に示す.土器川に おける大規模水害対策の検討成果とりまとめを行う組織として「検討会」を設置し,DCP協 議会と連携して検討成果を香川県全域で共有する組織を構成した.

また,DCP検討を進めるためには,最初に,広域的な視点かつ様々な立場(自己の眼,他 者の眼)から情報共有を行い,意見交換を行う検討の場が必要であることを提案し,土器川

(国管理区間)の全区間を対象に「広域住民 WS」の場を設けた.さらに,実効性のある取

・計算モデル:平面二次元氾濫解 析モデル(50m メッシュ)

・外力条件:土器川水系河川整備 基本方針の計画規模を上回る 超過洪水(S50.8 洪水型 1/100 計画降雨×1.2 倍)

・河道条件:現況河道

・破堤条件:流下能力不足箇所の 全地点破堤

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組みとするためには,地域行政(公助)の立場と地域住民(自助・共助)の立場から個別に 具体的に議論を行う場が必要であることを提案し,土器川のモデル地区(丸亀市土器町北・

東)を対象に,地域行政(公助)の立場から議論を行う「地区行政WS」の場,地域住民(自 助・共助)の立場から議論を行う「地区住民 WS」の場を設けた.以下に,年次進行におけ る組織構成と検討内容を示す.

2013(平成25)年度は,「大規模水災害に適応した対策検討会(以下「広域水害対策検討 会」と略記)」と「大規模水害対策WS(以下「広域住民WS」と略記)で組織を構成し,自 助・共助・公助の立場から時間軸(事前~発災~事後)に沿って「広域水害の対策方針」を

検討した2)3)4)

2014(平成26)年度は,「水害に強いまちづくり検討会(以下「地区水害対策検討会」と 略記)」と「水害に強いまちづくり検討部会(以下「地区行政 WS」と略記)」で組織を構 成し,公助の立場から対策の実効性を確保するための「アクションプラン(行動計画)」を 検討した.

2015(平成27)年度は,「地区水害対策検討会(継続)」と「水害に強いまちづくりWS

(以下「地区住民 WS」と略記)」で組織を構成し,自助・共助の立場から「アクションプ ラン(行動計画)」の充実を図った5)6)7)

2016(平成28)年度は,「地区水害対策検討会」と「地区住民WS」を継続し,自助・共 助の立場から「アクションプラン(行動計画)」のさらなる充実を図った8)9)10)11)

図 3.2 土器川での大規模水害対策検討の組織構成(概要)

時間軸 土器川のモデル地区を対象

とした

水害に強いまちづくり検討部会

【地域行政の防災関係の 全部署が参加】

土器川のモデル地区を対象とした 水害に強いまちづくり

ワークショップ

【地域住民が主体、

地域行政も参加】

土器川(国管理区間)の 全区間を対象とした 大規模水害対策ワークショップ

【地域住民が主体、

地域行政も参加】

連携 香川地域継続検討協議会

【国・県の防災関係部局、県内全市町、経済団体、インフラ企業、大学】

平成25年度 大規模水災害に適応した対策検討会 平成26~28年度 水害に強いまちづくり検討会

【河川管理者、地域行政、防災の専門家】

平成25年度 平成26年度 平成27~28年度

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図 3.3(1) 土器川での大規模水害対策検討の組織構成(詳細)

図 3.3(2) 土器川での大規模水害対策検討の組織構成(詳細)「検討の場」との関係