第 5 章 流域連携による地域継続計画( DCP )策定手法の開発
5.3.1 地域連携プロセスの評価
平成27~28年度の地区住民WSにおいて,WS参加者を対象にアンケート調査を実施した.
平成 27 年度のアンケート調査は,事前説明会開催時(H27.7)の事前アンケート,第 3 回
WS開催時(H27.12)の事後アンケートの計2 回実施した.平成28 年度のアンケート調査
は,事前説明会開催時(H28.10)の事前アンケート,第5回WS開催時(H29.1)の事後ア ンケートの計2回実施した.
アンケート回答者の属性を図5. 8に示す.年齢は,30歳代~70歳代の男女で,60歳代が 約4割を占めており,最も多い.男女比は,男性が約8割,女性が約2割である.防災との 関わりは,地域コミュニティ関係者が約6割を占めており,最も多い構成になっている.
ここでは,事前・事後アンケートにおいて,「場の合意形成プロセス」に関する「意識変 革」と「合意形成の達成度」の設問,「主体関与プロセス」に関する「地域連携への寄与度」
の設問に着目し,アンケート調査結果について考察する.
149
図 5.8 H27WSおよびH28WS のアンケート回答者属性
(1)「場の合意形成プロセス」の評価(意識変革,合意形成の達成度)
「場の合意形成プロセス」の中で,意識変革が起こっていることを確認するため,WS 参 加者を対象に実施したアンケート結果を図5. 9に示す.図5. 9の結果から,「大規模水害の 発生が想像できるか」では,「十分に想像できる」が平成27年度WS前の31%から平成28 年度WS後には59%と約2倍に増えた.一方,「想像できない」が平成28年度WS後には ゼロとなり,意識変革が十分に達成できた.
また,「大規模災害時には誰が頼りになるか」では,「共助(自治会,自主防災組織,地 域コミュニティ,ボランティア)」の割合が平成27年度WS前の35%から平成28年度WS 後には44%と約1.3倍に増え,共助への期待が高まった.
これら結果より,大規模水害に対する危機意識の向上や共助(地域連携)への期待度の向 上が認められる.このことは,WS検討の場において,WS参加者が広い視野で現状と課題を 認識し,課題を深く議論することが重要と考え,「情報の共有」と「課題の掘り下げ」の検 討ステップを重視したプログラムデザインを組み立てたことが効果的に機能したものと評価 する.
20歳 未満
0% 20歳代 0%
30歳代 10% 40歳代
10%
50歳代 17%
60歳代 44%
70歳以上 17%
不明 2%
計41人
地域コミュニ ティ 64%
行政職 9%
インフラ・ライ フライン関係
2%
物資・物流 関係
0%
教育関係 2%
医療・福祉 関係
0% 防災の
専門家 17%
特になし
2% 無回答
2%
計50票
男性 76%
女性 22%
不明 2%
計41人
【年齢】 【男女比率】 【防災との関わり】
H27WS実施時
地域コミュ ニティ 行政職 57%
インフラ・ 20%
ライフライ ン関係
0%
物資・物流 関係
0%
教育関係 0%
医療・福祉 関係
3% 防災の
専門家 17%
特になし 0%
計35票 20歳未満
0%
20歳代 0%
30歳代 7%
40歳代 15%
50歳代 19%
60歳代 44%
70歳以上 15%
計27人
男性 85%
女性 15%
計27人
H28WS実施時
【年齢】 【男女比率】 【防災との関わり】
150
【調査日】H27WS前:H27.7.11(事前説明会),H27WS後:H27.12.19(第3回WS)
H28WS前:H28.10.29(事前説明会),H28WS後:H29.1.15(第5回WS)
図 5.9 平成27・28年度 WS前後のアンケート調査結果(意識変革)
「場の合意形成プロセス」の中で,U 理論に基づく合意形成プロセスの達成度を確認する ため,各年度の WS実施後にWS参加者(平成25 年度は進行役の防災士のみ)を対象とし て,アンケート調査を実施した.この調査結果を図5. 10に示す.アンケート回答者は,平成 25年度が代表10名(防災士),平成27年度がWS参加者の44名,平成28年度が22名で ある.設問は,U プロセスの各ステップを対象とし,「A~B.課題の認識」「C.異なる認識 の感知」「D.課題の掘り下げ(対話)」「E.目的の共有」「F.新たなアイデアの思考」「G.
具体的な言葉での表現」「H.行動計画の思考」の7問を各年とも共通とした.なお,平成25 年度は,意見集約までの WS 検討であったため,G ステップまでを評価対象とした.「I.行 動計画の実践」は,H ステップでとりまとめた行動計画を今後実践するステップであり,評
16% 13% 11% 0%
53%
40% 37%
41%
31%
48% 52%
59%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H27WS前
(45人)
H27WS後
(41人)
H28WS前
(27人)
H28WS後
(22人)
十分に想像できる 少しは想像できる 想像できない
土器川の堤防が決壊して大規模な水害が発生することが想像できますか?
9% 8% 15%
8%
1% 2% 4%
4%
13% 16%
12% 19%
10% 12% 11% 8%
11%
12% 10% 13%
22%
23% 19% 19%
33% 27% 30% 28%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H27WS前
(107件)
H27WS後
(115件)
H28WS前
(84件)
H28WS後
(72件)
自身 家族 自治会 自主防災組織 地域コミュニティ ボランティア 行政
大規模な自然災害では、誰が頼りになりますか?
151
価対象外とした.評点は,「十分できた」が 3点,「できた」が2点,「少しできた」が 1 点,「できなかった」が0 点として,平均点を算出した.この平均点を各年度,各ステップ で比較し,図5. 11に示した.
図5. 10および図5. 11の結果から,A~Hの一連の検討ステップで,「十分できた」と「で きた」が大半を占め,平成25年度のFステップを除いて達成度(平均点)は1.5以上となっ ている.これは,WS検討の場において,WS参加者の間で十分な対話(掘り下げ)が行われ たため,「共通の意志」が見出され,「新たな思考と行動」が創造されたものと考えられ,
U 理論に基づく意識変革~合意創発~未来創造のプロセス(Uプロセス)の実効性がほぼ確 保できたと評価する.
一方,平成25年度のFステップでは,達成度(平均点)が1.4と最も低い点数となってい る.また,平成27年度のG~Hステップと平成28年度のGステップでは,達成度(平均点)
が2.0を下回り,他のステップと比べて低めの点数となっている.これは,F~Hステップの
「新たなアイデアの思考と掘り下げ」において,検討時間が不足したためと考えられ,新た な思考と行動を創造するWS検討の場では,十分な時間を確保することのプログラムデザイ ンが必要と考える.
図 5.10 各年度における Uプロセス達成度のアンケート調査結果
第1回 第2回 第3回 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回
A~B.課題の認識 平均点 2.30 平均点 2.50 平均点 2.41
点数(3):十分に認識できた 点数(2):認識できた 点数(1):少し認識できた 点数(0):認識できなかった
C.異なる認識の感知 平均点 1.90 平均点 2.28 平均点 2.32
点数(3):十分に感知できた 点数(2):感知できた 点数(1):少し感知できた 点数(0):感知できなかった
D.課題の掘り下げ【対話】 平均点 1.90 平均点 2.30 平均点 2.23
点数(3):十分に対話できた 点数(2):対話できた 点数(1):少し対話できた 点数(0):対話できなかった
E.目的の共有 平均点 1.70 平均点 2.33 平均点 2.32
点数(3):十分に共有できた 点数(2):共有できた 点数(1):少し共有できた 点数(0):共有できなかった
F.新たなアイデアの思考 平均点 1.40 平均点 2.20 平均点 2.18
点数(3):十分に思考できた 点数(2):思考できた 点数(1):少し思考できた 点数(0):思考できなかった
G.具体的な言葉での表現 平均点 2.30 平均点 1.75 平均点 1.90
点数(3):十分に表現できた 点数(2):表現できた 点数(1):少し表現できた 点数(0):表現できなかった
H.行動計画の思考 平均点 1.90 平均点 2.14
点数(3):十分に思考できた 点数(2):思考できた 点数(1):少し思考できた 点数(0):思考できなかった
H25WS H27WS H28WS
●
(1.0)
WSプログラム WS参加者
N=22
●
(0.8)
●
(1.0)
●
(1.2)
●
(1.2)
●
(0.5)
●
(0.7)
●
(0.8)
●
(0.8)
WS参加者 N=44
●
(1.1)
●
(1.3)
- - - -
WSプログラム
●
(0.7)
●
(0.7)
●
(1.0)
●
(0.5)
●
(0.5)
●
(0.6)
●
(0.7)
テーブル進行者(防災士)
N=10
●
(0.6)
●
(0.6)
WSプログラム U理論ステップ
●
(0.7)
●
(0.6)
●
(1.3)
●
(1.1)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0 50 100
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数( 2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
0.0 50.0 100.0
点数(3) 点数(2) 点数(1) 点数(0)
( %)
152
図 5.11 U プロセス達成度の各年度・各ステップにおける平均点の比較
(2)「主体関与プロセス」の評価(地域連携への寄与度)
「主体関与プロセス」の達成度を確認するため,WS参加者を対象に,図5. 12に示すアン ケート調査を実施した.この結果から,地域住民と地域行政が協働して主体的に関与したた め,地域防災リーダーの育成や信頼関係の構築に寄与したと評価する.「地域防災リーダー の育成」では,「寄与した」と「少し寄与した」で合わせて 100%となり,WS 検討の場が 人材育成の場として機能したと考える.「信頼関係の構築」でも,「寄与した」と「少し寄 与した」で合わせて 100%となり,WS 検討の場が信頼関係構築の場として機能したと考え る.
図5.12 平成28年度WS後のアンケート調査結果(主体関与)
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00
A~B C D E F G H
達成度(平均点)
U理論に基づく検討ステップ H25(防災の専門家)
H27(防災の専門家、行政職、一般住民)
H28(防災の専門家、行政職、一般住民)
十分にできた
できた
少しできた
できなかった
【地域防災リーダーの 人材育成の寄与度】
【信頼関係の構築の寄与度】
寄与した と思う
73%
少し寄与 したと思う 27%
寄与したと 思わない
0%
無回答 0%
計22人 その他
0%
寄与した と思う
55%
少し寄与 したと思う 45%
寄与したと 思わない
0%
無回答 0%
計22人 その他
0%
153