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第 3 章 土器川流域における危機管理対策検討の取組

3.3 危機管理対策の検討成果

3.3.1 危機管理対策の検討成果

(1)方針検討の成果(DCPの目標・戦略・方向性)

平成25年度の検討では,土器川上・中・下流域の3市3町の地域行政と地域住民が一堂に 会したWS 検討の場において,WS 参加者の意識変革をもたらし新たなアイデアを思考する 検討プロセスを実践した結果,「広域水害の対策方針」として,住民目線による「目標と戦 略」および自助・共助・公助の立場からの時間軸(平常時~災害警戒期~応急対策期~復旧・

復興期)に応じた「具体的に実施すべき対策(今後の方向性)」を明示した「とりまとめ書

(案)」を作成することができた.

「とりまとめ書(案)」は,「私たちの大規模水害対策」と題して,自助・共助・公助の 立場から事前対策~応急対策~復旧・復興対策の時間軸に応じた広い視点で意見集約を行い,

表3. 14に示す目次構成でとりまとめた.「とりまとめ書(案)」の主な内容を表3. 15に示

す.

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表 3.14 土器川における大規模水災害に適応した対策検討 とりまとめ書(案)

はじめに 1. 基本的認識

(1)地球温暖化に伴う気候変化への対応/(2)適応策と緩和策/(3)外力の増大 2. 土器川における大規模水害時の地域社会への影響

2.1 土器川の流域概要および気候変動傾向

(1) 流域の概要/(2) 土器川における気候変動傾向 2.2 土器川における氾濫特性

(1) 水害の歴史と治水の沿革/(2) 河道特性(現状と課題)と当面の河川整備/(3) 浸水想定 区域図(H21公表)と氾濫形態/(4) 想定される超過洪水規模と氾濫特性

2.3 周辺地域社会への影響

(1) 人的被害と物的被害/(2) 大規模水害に対する被害指標/(3) 地域機能支障(困ること)

2.4 広域社会への影響

(1) 広域緊急活動被害と経済波及被害/(2) 広域機能支障(困ること)

2.5 土器川における大規模水害時の地域機能支障(困ること)の特徴 3. 土器川における適応策の基本方針

3.1 適応策の基本的な考え方

(1) 目標の明確化/(2) 自助・共助・公助の連携/(3) 治水対策の重層化 3.2 目標と戦略

(1) 目標/(2) 戦略(目標を達成するための方針)

4. 具体的に実施すべき対策(今後の方向性)

4.1 適時・的確な避難の実行による被害軽減

(1) 避難者等への対応/(2) 災害時要援護者に対する支援/(3) 救助・救命対策 4.2 住民、企業等における大規模水害対応力の強化

(1) 防災教育・防災訓練の充実、人材の育成・確保/(2) 総合的な防災力の向上/(3) ボラン ティアとの連携/(4) 民間企業等の事業継続性の確保

4.3 公的機関等による応急対応力の強化と重要機能の確保

(1) 重要施設の耐水化/(2) 防災情報対策/(3) 広域連携・支援体制の確立/(4) 医療対策/

(5) 緊急輸送のための交通の確保・緊急輸送活動/(6) ライフライン・インフラの機能確保と 早期復旧/(7) 国、地方公共団体の業務継続性の確保

4.4 氾濫の抑制対策と土地利用誘導による被害軽減

(1) 治水対策の確実な実施/(2) 水防活動の的確な実施/(3) 氾濫拡大の抑制と排水対策の強 化/(4) 減災に向けた土地利用・住まい方への誘導

4.5 その他の大規模水害特有の被害事象への対応

(1) 堤防決壊地点の緊急復旧対策/(2) 保健衛生・防疫対策/(3) 社会秩序の確保・安定/(4) 文化施設の防災対策/(5) 水害廃棄物の処理対策

5. 土器川における適応策の進め方 5.1 幅広い連携による適応策の推進

5.2 実践的な防災訓練の実施と防災計画への反映 5.3 今後に向けて

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表 3.15 「とりまとめ書(案)」の主な内容 1) 地域社会への影響

周 辺 地 域 社 会 への影響

1) 人的被害

・死者,負傷者,孤立者などの他,避難者の避難時の支障,避難所における生活環境,水 害廃棄物による汚染などを想定

2) 物的被害

・住宅,事業所,医療施設,社会福祉施設,交通施設,ライフライン施設,防災拠点施設,

重要文化財,公共利用施設,地域シンボルなどのあらゆる施設が浸水により必要な機能 を発揮できないことを想定

広 域 社 会 へ の 影響

1) 広域緊急活動被害

・広域救護施設,広域物資拠点,広域応援活動拠点,緊急輸送道路などが浸水による被害 の影響により,当該地域のみでなく,他の被災地域への広域緊急活動に支障が生じるこ とを想定

2) 経済波及被害

・被災地域の交通・流通支障による物流などの停滞,被災地域の事業所被災による産業停 滞などによるサプライチェーンへの影響を想定

大 規 模 水 害 に 対 す る 被 害 指

・医療・社会福祉施設および防災拠点施設の機能支障,道路・鉄道の交通支障,ライフラ イン停止,人的被害などの様々な被害指標

・浸水深の規模に応じて被害の発生を想定 地域機能支障

(困ること)

1) 被災直後の困ること

・機能低下する医療施設・社会福祉施設・防災拠点施設/・途絶する主要な道路・鉄道/・

ライフライン(電力,都市・LPガス,上下水道,固定・移動通信)の停止/・人的被害

/・文化施設などの被害/・水害廃棄物の発生/・浸水被害の拡大・長期化/・社会秩序 の低下(治安,防犯)/・サプライチェーン・上場企業への影響

2) その後(通常生活に戻るまで)の困ること

・緊急復旧の遅延(堤防の復旧)/・ライフライン・インフラ復旧の遅延 3) 事前の災害への備え不足による困ること

・浸水被害の発生(堤防決壊)/・水防活動への支障/・浸水被害の軽減対策不足/

・家屋被害(住まい方)/・防災意識・訓練の不足/・ボランティア連携不足/・地域の 防災力の低下

2) 目標と戦略

目標 1) 犠牲者ゼロ,被害の最小化を目指す.

2) 地域住民が自ら判断し助け合って,命の安全を確保するための避難を実行する.

3) 安全な避難や復旧・復興に対して実効性を確保する.

戦略 1) 防災情報の充実

・地域間で共通化された大規模水害想定シナリオを作成する.

・住民目線による危険情報共有ツールを整備する.

・適切なタイミングにより危険情報を取得できる環境を整備する.

2) 地域コミュニティの活性化と地域連携体制の強化

・地域コミュニティ活動の活性化を図るために自治体機能を強化する.

・危険情報と地域コミュニティ活動を有機的に連携させるために香川型DCP手法の普 及・促進を図る.

3) 安全な避難や復旧・復興に対して実効性を確保するための施設整備

・急流河川のため,避難時間を確保できる施設の整備を優先する.

・浸水被害の早期回復に貢献する施設や防災拠点機能の継続性を確保する.

・新規の施設整備にあたっては,安全な避難に対する実効性の確保や耐水化などによる施 設の機能向上に努める.

・大規模水害対策を目的とした整備は,南海トラフ巨大地震対策の推進にも繋げる.

3) 具体的に実施すべき対策(今後の方向性)

今後の方向性

(詳細は 目次参照)

1) 適時・的確な避難の実行による被害軽減

2) 住民,企業などにおける大規模水害対応力の強化 3) 公的機関などによる応急対応力の強化と重要機能の確保 4) 氾濫の抑制対策と土地利用誘導による被害軽減

5) その他の大規模水害特有の被害事象への対応

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(2)アクションプラン検討の成果(DCPのアクションプラン)

平成26~28年度の検討では,モデル地区において河川行政・地域行政・地域住民が連携し て WS検討を実施した結果,「アクションプラン(行動計画)」として,3 テーマ(情報,

連携,実効)に分けた「52個の対策案」,その内「9個の重点対策」をとりまとめた「行動 計画書(案)」を作成することができた.

「行動計画書(案)」は,「とりまとめ書(案)」の「目標と戦略」を踏まえた検討 3テ ーマ(情報,連携,実効)ごとの具体的なアイデアについて意見集約を行い,表3. 16(1),表

3. 16(2)に示す目次構成でとりまとめた.「とりまとめ書(案)」の主な内容を表3. 17に示

す.

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表 3.16(1) 土器川モデル地区における“水害に強いまちづくり”のための

アクションプラン【行動計画書(案)】

はじめに 1. 総則

1.1 目的 1.2 対象

1.3 災害の想定と計画作成の基礎資料

(1) 公表資料/(2) 対象モデル地区の特性/(3) 被害想定(発災時系列シナリオ)/(4) 検討部 会・住民ワークショップ意見とりまとめ

1.4 他の計画との関係 1.5 防災関係機関等の責務

(1) 防災関係機関および市民の責務/(2) 防災関係機関および住民等の処理すべき事項 2. 活動体制の確立

2.1 組織動員

(1) 丸亀市の災害対策本部組織図/(2) 丸亀市の配備基準 2.2 広域応援等、他機関との連携

(1) 消防相互応援協定/(2) 香川県防災ヘリコプター応援要請/(3) 鉄道災害時の安全対策に 関する覚書/(4) 災害時の相互応援に関する協定等/(5) 災害時における医療救護活動に関す る協定/(6) 災害時における避難所の使用・利用に伴う申し合わせ・協定/(7) ライフラインに 関する協定/(8) 災害時における民間賃貸住宅の媒介に関する協定/(9) 災害時における要援 護者の緊急受け入れに関する協定/(10) 災害時における応急措置等の実施に関する協定/

(11) 災害時における放送要請に関する協定等/(12) 災害派遣に関する陸上自衛隊との協定/

(13) 災害時における救援物資等の提供に関する協定

2.3 タイムライン(防災行動計画)

3. 災害情報の収集・伝達・活用 3.1 災害情報の収集・伝達

(1) 気象予警報の条件・指標/(2) 丸亀市における避難勧告等の発令基準/(3) 気象注意報、警 報等の伝達系統図/(4) 土器川洪水予報の伝達系統図/(5) 香川県災害対策本部から丸亀市災 害対策本部への被害状況等情報収集伝達系統図/(6) 丸亀市災害対策本部の伝達系統図及び情 報伝達通信系図/(7) 香川県の災害時通信連絡系統図/(8) 香川県防災情報システム/(9) 香 川県防災行政無線システム回線構成図/(10) 市の防災行政無線系統概要図/(11) 災害報告詳 細系統図

3.2 事前情報の普及・活用

(1) 避難の目安/(2) 一次避難場所・広域避難/(3) かがわ防災GIS/(4) 避難所誘導や危険情 報の標識/(5) 住まい方情報(条例)/(6) 広報活動・情報提供

3.3 緊急時情報の伝達・活用

(1) 光ファイバー網(高所監視カメラ、CCTV)/(2) 情報提供手段の多様化(かがわ防災Web ポータル、防災情報メール等)/(3) 防災ラジオ/(4)地域協力による情報収集

3.4 避難情報・安否情報の伝達・活用

(1) かがわ減災プロジェクト/(2) デジタル防災行政無線/(3) SNS(Twitter、Facebook)/

(4) 防災情報メール/(5) 災害用伝言サービス/(6) 黄色いハンカチ

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表3. 16(2) 土器川モデル地区における“水害に強いまちづくり”のための

アクションプラン【行動計画書(案)】

4. 地域コミュニティの活性化と地域連携体制の強化 4.1 自主防災組織等の育成計画

(1) 丸亀市の自主防災組織の現状/(2) 自衛水防組織の強化 4.2 地域コミュニティの活性化

(1) マイ防災マップ/(2) 防災教育、避難訓練(地域連携による仕組みづくり)/(3) 防災教育(広 報誌、SNSの活用)/(4) 地域防災文化の維持

4.3 地域連携体制の強化

(1) 災害時要配慮者の避難支援体制/(2) 自主防災組織の活性化/(3) 関係機関との連携(災害時 応援協定、合同訓練等)/(4) 避難行動の支援/(5) 避難者等への支援【避難所運営(自治会単 位での食糧確保、炊き出し)、連携企業・施設(物資、人的支援等)】/(6) 国・県による緊急 活動支援

5. 避難の実効性確保のためのハード・ソフト整備 5.1 事前対策としてのハード・ソフト整備

(1) 災害情報の整備/(2) 備蓄品、水防機材の整備/(3) 施設整備/(4) 河川整備/(5) 道路整備

/(6) 宅地整備/(7) 流域対策/(8) 土砂災害対策/(9) 自助・共助(避難の支援)

5.2 事後対策としてのハード・ソフト整備 (1) 緊急活動/(2) 自助・共助(被災者の支援)

5.3 事業化(交付金制度の活用)

(1) 「社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金」による支援制度/(2) 「100mm/h安心プラ ン」による支援制度/(3) モデル地区における「水害に強いまちづくり」事業化イメージ 6. 重点対策

6.1 「情報」に関する重点対策

(1) 土器川水位・危険情報表示板の設置/(2) 一時避難場所(3階建て以上)の設定 6.2 「連携」に関する重点対策

(1) 防災士等と連携した地域防災リーダー育成、地域防災力向上の仕組みづくり (2) 防災関係機関と地域コミュニティが連携した防災教育・訓練の仕組みづくり (3) 災害時要配慮者や避難者の避難支援体制の整備

(4) 地域コミュニティや自主防災組織の横の連携体制(連絡体制)の強化 (5) 地域コミュニティや自主防災組織を活性化するための仕組みづくり (6) 防災関係機関と地域コミュニティが連携した情報共有の仕組みづくり (7) 事業所との連携強化(物資・食料、災害時対応協定等)

土器川における水害に強いまちづくり検討会 構成員

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表 3.17 「行動計画書(案)」の主な内容 1) 活動体制の確立

組織動員 災害対策本部の組織体制および配備基準

広域応援等,他機関との連携 民間企業や防災関係機関との応援協定および応援要請 タイムライン

(防災行動計画)

モデル地区における複合災害を想定,災害警戒期~応急対応期の時間軸を 対象,丸亀市各部署および地域住民(自助・共助)の防災行動を具体化

2) 災害情報の収集・伝達・活用

災害情報の収集・伝達 避難勧告等の発令基準,防災関係機関における災害情報の伝達手段・系統 事前情報の普及・活用 避難の目安,一時避難所・広域避難,かがわ防災GIS,避難所誘導や危険情

報の標識,住まい方情報,広報活動・情報提供

緊急時情報の伝達・活用 光ファイバー網,情報提供手段の多様化,防災ラジオ,地域協力による情 報収集

避難情報・安否情報の伝達・

活用

かがわ減災プロジェクト,デジタル防災行政無線,SNS,防災情報メール,

災害用伝言サービス,黄色いハンカチ

3) 地域コミュニティの活性化と地域連携体制の強化

自主防災組織等の育成計画 自主防災粗域の現状,自衛水防組織の強化

地域コミュニティの活性化 マイ防災マップ,防災教育,避難訓練,地域防災文化の維持

地域連携体制の強化 災害時要配慮者の避難支援体制,自主防災組織の活性化,関係機関との連 携,避難行動の支援,避難者等への支援 等

4) 避難の実効性確保のためのハード・ソフト整備

事前対策に関する整備 災害情報の整備,備蓄品・水防機材の整備,施設整備,河川整備,道路整 備 等

事後対策に関する整備 緊急活動,被災者支援制度

事業化(交付金制度の活用) 社会資本整備総合交付金,防災・安全交付金,100mm/h安心プランによる 支援制度

5) 重点対策(具体的な行動内容)

「情報」に関する重点対策 土器川水位・危険情報表示板の設置,一時避難場所(3階建て以上)の 設定

「連携」に関する重点対策 地域防災リーダー育成・地域防災力向上の仕組みづくり,防災教育・訓練 の仕組みづくり,災害時要配慮者や避難者の避難支援体制の整備,横の連 携体制(連絡体制)の強化,活性化の仕組みづくり,情報共有の仕組みづ くり,事業所との連携強化