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流域連携による大規模水災害を想定した地域継続計画(DCP)策定手法の開発に関する研究-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)香川大学審査学位論文. 流域連携による大規模水災害を想定した 地域継続計画(DCP)策定手法の開発 に関する研究. 2018 年 9 月 香川大学大学院 工学研究科 博士後期課程 信頼性情報システム工学専攻. 佐 藤 英 治.

(2) 目 次 第1章. 序論 ··································································································· 1. 1.1. 研究の背景と目的 ··················································································· 1. 1.2. 既往研究と本研究の位置づけ ···································································· 4. 1.3. 本論文の構成 ························································································· 7. 参考文献 ······································································································ 9. 第2章 2.1. 水災害に対する危機管理対策の現状と課題 ··············································· 12 水災害に対する危機管理対策の現状 ·························································· 12. 2.1.1. 近年の水害対策 ··············································································· 12. 2.1.2. 地域継続計画(DCP)の概念 ····························································· 27. 2.1.3. DCP 検討プロセスに関する既往研究 ··················································· 35. 2.1.4. 合意形成プロセスに関する既往研究 ···················································· 39. 2.2. 水災害に対する危機管理対策の課題と重点対策 ··········································· 49. 2.2.1. 地域住民の視点からの危機管理対策の課題 ··········································· 49. 2.2.2. 危機管理対策の実効性を高めるための重点対策 ····································· 51. 参考文献 ····································································································· 53. 第3章 3.1. 土器川流域における危機管理対策検討の取組 ············································ 57 検討フレームの構築(場の生成プロセス) ················································· 57. 3.1.1. 検討の目的と組織 ············································································ 57. 3.1.2. 検討の枠組み ·················································································· 60. 3.1.3. DCP 検討プロセスの開発と適用 ························································· 62. 3.2. 検討プロセスの実践(場の合意形成プロセス,主体関与プロセス) ················ 63. 3.2.1. 検討プロセス実践の概要 ··································································· 63. 3.2.2. ワークショップを軸とした検討手順 ···················································· 67. 3.3. 危機管理対策の検討成果 ········································································· 93. 3.3.1. 危機管理対策の検討成果 ··································································· 93. 3.3.2. ワークショップ検討の特徴(ワークショップに期待される役割) ··········· 108. 参考文献 ··································································································· 110.

(3) 第4章. 土器川モデル地区における住民タイムライン検討の取組 ··························· 111. 4.1. 住民目線のタイムラインに関する既往研究 ··············································· 111. 4.2. 住民タイムラインの検討手順 ································································· 116. 4.2.1. 住民タイムライン検討のための複合災害の想定 ··································· 116. 4.2.2. 住民タイムラインの検討プロセス ····················································· 118. 4.3. 住民タイムラインの検討成果 ································································· 129. 4.3.1. 災害警戒期の住民タイムラインの内容 ··············································· 130. 4.3.2. 応急対策期の住民タイムラインの内容 ··············································· 130. 4.4.3 住民タイムラインの検討成果まとめ····················································· 134 参考文献 ··································································································· 136. 第5章. 流域連携による地域継続計画(DCP)策定手法の開発 ····························· 137. 5.1. 「香川型 DCP 検討方式」の概念 ···························································· 137. 5.2. 「香川型 DCP 検討方式」による DCP 策定手法の構築 ······························· 139. 5.2.1. 事前準備(第 1 ステージ) ······························································ 140. 5.2.2. 方針検討(目標と戦略:第 2 ステージ) ············································ 142. 5.2.3. アクションプラン検討(第 3 ステージ) ············································ 144. 5.2.4. アクションプラン実践(第 4 ステージ) ············································ 146. 5.3. 「香川型 DCP 検討方式」の実践からの DCP 策定手法の評価 ······················ 148. 5.3.1. 地域連携プロセスの評価 ································································· 148. 5.3.2. 住民タイムラインの効果検証 ··························································· 153. 5.3.3. 評価結果からの考察 ······································································· 155. 5.4. 今後の課題 ························································································· 157. 参考文献 ··································································································· 159. 第6章. 結論 ································································································ 160. 6.1. まとめ ······························································································· 160. 6.2. 今後の展望 ························································································· 164. 謝辞 ············································································································ 167.

(4) <付録> 1.第 1 回~第 3 回 大規模水害対策ワークショップ意見分析 ··································· 2 2.平成 25 年度 WS 事後アンケートその 1 ··························································· 18 土器川大規模水害対策ワークショップに関する事後アンケート調査(平成 26 年 7 月) 3.平成 25 年度 WS 事後アンケートその 2 ··························································· 23 地域継続計画(DCP)と連携した大規模水害対策ワークショップの 特徴分析についてのヒアリングとアンケート調査(平成 26 年 12 月) 4.平成 27 年度 WS 事前アンケート ··································································· 30 防災意識・防災情報に関するアンケート調査(平成 27 年 7 月) 5.平成 27 年度 WS 事後アンケート ··································································· 42 ワークショップをふり返ってのアンケート調査(平成 27 年 12 月) 6.平成 28 年度 WS 事前アンケート ··································································· 54 防災意識・防災行動・地域防災力に関するアンケート調査(平成 28 年 10 月) 7.平成 28 年度 WS 事後アンケート ··································································· 63 ワークショップをふり返ってのアンケート調査(平成 29 年 1 月) 8.平成 28 年度 WS 事後アンケート ··································································· 72 「土器川の減災に係る取組方針」を実施するための『地域連携』に関する アンケート調査(平成 30 年 1 月).

(5) 第 1 章 序論 1.1 研究の背景と目的 水災害分野では,従来,ハード整備や水防活動を通して,被害ゼロを目標とした防災対策 すなわち事前対応の考え方を中心として災害に備えてきた.しかし近年,地球温暖化に伴う 気候変動に起因する大規模水害が全国各地で発生しており,河川の流下能力や流域の保水能 力を超過する水害への対応が急務となっている. 大規模水害対策に関する取組は,内閣府中央防災会議において「大規模水害対策に関する 専門調査会」が 2006(平成 18)年に組織され,首都地域における大規模水害を対象に,被 害軽減のために取るべき対策の検討が始まった.2010(平成 22)年 4 月には,事前対策~応 急対策~復旧・復興対策のあり方をとりまとめた専門調査会報告が公表された1).また,国土 交通省は,近年の異常な気象状況を危惧し,最大クラスの豪雨災害に対する防災・減災対策 の方向性を示した「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」を 2015(平成 27)年 1 月に公表した2).さらに,同年 8 月には,社会資本整備審議会において「水災害分野における 気候変動適応策のあり方について」が答申され,大規模水災害を想定した減災への取組が推 進されることとなった3). このような取組が進められている最中,2015(平成 27)年 9 月に関東・東北豪雨が発生し た.この災害では,栃木県日光市から宇都宮市などを経由して茨城県常総市へと流れる一級 河川鬼怒川の堤防が決壊した.この堤防決壊により,茨城県常総市で広範囲で長時間に及ぶ 河川氾濫被害が生じるなどの広域的な大規模災害となり,地域の防災機能や社会経済機能に 大きな支障が生じた4).常総市では,情報伝達の不備により,広域避難の対応ができず,住民 避難が遅れ,多数の孤立者が出る甚大な被害が生じ,常総市の行政の災害対応に不手際があ ったと指摘されている. 4).しかし,甚大な被害が生じたことは,地域行政の災害対応の不備. だけの問題だけではなく,地域住民の危機意識や災害対応能力が低下していることも大きな 問題である5). 国土交通省は,鬼怒川水害の教訓を踏まえ,社会資本整備審議会において「大規模氾濫に 対する減災のための治水対策のあり方について」を 2015(平成 27)年 12 月に答申し,洪水 による河川氾濫の発生を前提として,社会全体でこれに備える「水防災意識社会」を再構築 するビジョンを打ち出した6).この答申を受けて,国土交通省は,全国 109 水系を対象とし て,「水防災意識社会. 再構築ビジョン」の取組に着手している7).この取組は,従来から実. 施している「洪水を河川内で安全に流すためのハード対策」に加え,人的被害や社会経済被 害の軽減を図るための「危機管理型ハード対策」を導入し,水害リスクの低減を図るととも. 1.

(6) に,「行政目線」から「住民目線」へと転換した実効性のあるソフト対策を展開するもので ある. 大規模広域災害発生時には行政による「公助」の対応にも限界があるため,このソフト対 策の展開にあたっては,地域行政も地域住民も大規模水害に対する危機意識を高め,適切か つ迅速に防災行動・避難行動が実行できるように,住民目線による地域で一体となった取組 推進の必要性が強調されている.これまでの地域では,地域に息づく伝統的な助け合いの精 神に基づく「互助」による災害対応を中心に,地域コミュニティや自主防災組織による地区 単位での取組が行われてきた.しかし,近年では,地域住民の価値観や関係性が多様化・複 雑化しており,地区単位での「互助」は機能しなくなっている.また,複数の地区の住民が 連携した広域的な災害対応のための組織化は十分に図られておらず,広域災害への地域での 対応が難しい状況にある.そのため,大規模水害発生時には,様々な主体の広域的な連携に よる「共助」を機能させることが重要となる. このような広域連携による「共助」の機能向上を図るためには,被害軽減を目標とした事 前対応による「減災」対策および早期復旧・復興を目標とした事後対応による「縮災」対策 が必要であり,河川の全流域にわたる広域的な地域連携体制を構築する必要がある.また, 広域連携の中核となるべき地域防災リーダーの人材育成が必要不可欠である.本論文では, これらの課題を解決するための具体的な検討方法が確立されていないため,行政界を越えた 広域的な地域住民(自助・共助)と地域行政(公助)の連携(これを「流域連携」と称す) による危機管理対策の検討方法を提案する. 危機管理対策は,東日本大震災の発生を契機に,「強くしなやかな国民生活の実現を図る ための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が 2013(平成 25)年 12 月に公布・施行さ れ,国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,国・県における国土強 靱化に係る他の計画等の指針(アンブレラ計画)となるべきものとして,国土強靱化基本計 画,国土強靱化地域計画が策定されることとなった8).国土強靱化基本計画では,国土強靱化 の基本目標を“人命の保護が最大限図られること,国家および社会の重要な機能が致命的な 障害を受けず維持されること,国民の財産および公共施設に係る被害の最小化,迅速な復旧 復興”としており9),災害レジリエンス(縮災)の考え方10)11)12) が基本となっている.また, 国土強靱化推進の基本方針の中で,“「自助」「共助」「公助」を適切に組み合わせ,国・ 地方公共団体・住民・民間事業者などが適切に連携および役割分担して取り組むこと”とし ており. 9),地域連携の必要性を示している.この基本計画の考え方を踏まえ,国土強靱化地. 域計画では,「強靱な地域づくり」を目指した地域におけるアンブレラ計画を策定するもの である. この国土強靱化の概念を踏まえ,流域連携による危機管理対策検討を進めるにあたっては, 災害レジリエンス(縮災)の考え方に基づく地域計画「強靱な地域づくり」として,広域的. 2.

(7) な地域連携により防災・減災・縮災を目指す新たな地域社会の仕組みを構築する必要がある. その試みは既に香川大学を中心に開始されており13)14),組織間および自助・共助・公助の連 携による実効性のある防災・減災・縮災の行動計画として「香川地域継続計画(DCP:District Continuity Plan)」の策定が有効である. DCP 策定手法の代表的な事例としては,「香川 DCP」以外に「京都 DCP」などがあり 13), これらの手法は,防災関係機関を中心とした検討組織によるもので,トップダウン型で地域 に展開する方式となっている.しかし,これらの手法は,地域住民が主体となっていないた め,DCP の実効性が十分に担保されているとは言い難い.また,流域連携による DCP 策定 に向けた検討を進めるためには,地域で包括的な枠組み・組織を立ち上げ,検討の場を設け た上で,行政界を越えて広域的に地域住民と地域行政の間で合意形成を図る必要がある.そ のためには,地域住民と地域行政がともに主体的に連携し,防災・減災・縮災行動を具体化 するための災害コミュニケーション・ツールを用いた新たな合意形成プロセスの手法(ワー クショップ(以下「WS」と略記)手法)が求められる. 一方,香川県の中讃地域に位置する一級河川土器川では,鬼怒川水害以前から流域連携に よる取組が開始されている.土器川流域では,年間の降水量が少ない地域特性を有し,戦後 において堤防の決壊を伴う大規模水害は発生しておらず,水害に対する備えが十分ではなく, ひとたび堤防の決壊を伴う大規模水害が発生すると,行政界を越えて広域的に甚大な被害が 生じる危険性がある.そのため,国土交通省四国地方整備局香川河川国道事務所においては, 土器川流域を対象として,「香川地域継続検討協議会」14) と連携し,大規模水災害を想定し た危機管理対策検討「水害に強いまちづくり」を 2013(平成 25)年度から進めている15). この土器川流域における危機管理対策検討の取組は,鬼怒川で起こったような大規模水害を 予見し,「水防災意識社会. 再構築ビジョン」の考え方を取り入れた住民目線による取組を. 継続的に実施しており,「水防災意識社会. 再構築ビジョン」に先行した取組であるが,流. 域連携による DCP 策定までには至っていない. このような背景を踏まえ,本論文では,土器川流域の危機管理対策検討の取り組みを通じ, 「強靱な地域づくり」を実現するために有効な手法である DCP 策定手法の一般化を目指し, 流域連携による大規模水災害を想定した DCP 策定手法の開発を行う.開発する DCP 策定手 法の特徴として,以下の 6 点が挙げられる. ①災害レジリエンス(縮災)の考え方の導入 ②住民目線によるボトムアップ型の DCP 策定 ③流域外の地域全体での地域継続を目指す DCP 検討組織との連携 ④「共助」を中心とした流域連携体制の構築 ⑤流域連携の中核となるべき地域防災リーダーの人材育成 ⑥自助・共助・公助の連携・役割分担による防災・減災・縮災行動の実現化. 3.

(8) 本論文では,これらの特徴を活かして,まず,土器川流域を対象として,流域全体での防 災・減災・縮災を検討する新たな組織・枠組みを構築するとともに,地域住民と地域行政の 主体的な関与による新たな合意形成プロセスの手法(WS 手法)による DCP 検討プロセスを 提案する.この DCP 検討プロセスに基づき実施する WS による DCP 策定の検討(以下「WS 検討」と略記)ついて検討内容と成果を示す.次に,モデル地区を選定して,WS 検討によ り具体的な行動計画を検討する.検討に際しては,防災・減災・縮災行動を具体化するため の災害リスクコミュニケーション・ツールとして,「災害警戒期~応急対策期の住民タイム ライン」を導入し,その住民タイムライン検討・作成について検討内容と成果を示す.以上 の土器川流域を対象とした危機管理対策の検討成果をもとに,「香川型 DCP 検討方式」によ る DCP 策定手法(DCP 検討プロセス)の一般化について提案するととともに,今後の課題 を示す.. 1.2 既往研究と本研究の位置づけ 本研究では, 流域連携による大機規水災害を想定した DCP 策定手法の開発にあたり, 「DCP 検討プロセス」の一般化を行っている.この枠組みは,図 1. 1 に示すように,DCP 検討の場 において,新たな合意形成プロセスの手法(WS 手法)が必要であり,WS 検討を進めるため の災害リスクコミュニケーション・ツールとして「住民タイムライン」を用いている.. DCP検討プロセス DCPの作成と実施. DCP検討の場. 事前準備 ・目的の設定. 方針検討. 場の生成 ・枠組みの設定 ・検討の場の設定(検討会、ワークショップ). ・検討シナリオの設定 ・目標と戦略の設定 ・地域機能継続の方針設定. アクションプラン検討 ・検討テーマの設定 ・アクションプランの作成. アクションプラン実践 ・アクションプランの事業化・活動 ・対象地域全体への展開. 合意形成プロセスの手法 (ワークショップ手法) ワークショップによるDCP検討の実施 (DCPの検討内容に応じて継続実施) ・複数の災害リスクコミュケーション・ツールの 導入 →災害図上訓練DIG,KJ法(意見カード), 災害アニメーション,住民タイムラインなど. 図 1. 1 本研究における DCP 検討プロセスの枠組み. 4.

(9) 本節では,実効性のある DCP 策定に必要不可欠な手順・内容として,DCP 検討プロセス, 合意形成プロセス,住民タイムラインの 3 つを主要な研究項目と捉え,「DCP 検討プロセス に関する既往研究」,「合意形成プロセスに関する既往研究」,「住民目線のタイムライン に関する既往研究」における課題を整理するとともに,本研究の位置づけを述べる.. (1)DCP 検討プロセスに関する既往研究 既往研究においては,DCP の概念として,小出16)17) や西川ら18) の「隣組型 DCP」,白木・ 岩原ら19)20)21)22) の「香川型 DCP」,指田ら23) の「市町村地域継続計画(MCP:Municipal Continuity Plan)」,磯打ら24) の「流域 DCP」などが堤案されている.また,DCP の枠組 みとして,「香川 DCP」や「京都 DCP」などの策定の取組. 13). があり,畠山ら25) の「香川. DCP」策定を通して一般化した DCP 策定の枠組みなどが提案されている.さらに,計画策 定ステップとして,磯打ら26) の流域 DCP 策定ステップなどが提案されている. 既往研究における DCP 策定手法の枠組みは,行政が中心となって防災関係機関と企業が連 携した検討組織によるもので,トップダウン型で地域に展開する方式となっている.しかし, これらの手法は,地域住民が主体となっていないため,大規模水害が発生した場合に,自助・ 共助が十分に機能するような仕組みの構築は難しいと思われる.また,地域住民(自助・共 助)と地域行政(公助)が広域的に連携した防災・減災・縮災への対応も容易ではなく,地 域連携の強化につながりにくい.そのため,DCP の実効性が十分に担保されているとは言い 難い.さらに,磯打は,「流域 DCP」の概念に基づき,計画策定ステップを示し,多様な地 区防災計画制度の展開の可能性を示しているが,DCP 検討の場(合意形成プロセス)の必要 性を含めた DCP 検討プロセスの全体像については言及していない. 本研究では,土器川流域を対象とし,DCP 検討のプラットフォームとなる県域全体での包 括的な検討組織と連携する流域全体での検討組織・枠組みの構築や,新たな WS 手法を用い た流域連携によるボトムアップ型の DCP 検討プロセスを提案する.具体的には,土器川流域 を対象とした危機管理対策検討において,香川県全域を対象として展開している「香川地域 継続検討協議会」と連携する形で「流域 DCP」の概念を導入する.次に,河川行政(河川管 理者)と大学さらに地域住民と地域行政(市町)が連携した官学民協働によるボトムアップ 型の DCP 検討方式を構築・実践する.この検討プロセスを本研究では,「香川型 DCP 検討 方式」と名付けている.. (2)合意形成プロセスに関する既往研究 公共事業の計画策定プロセスにおける住民参加の手続きでは,市民参加プロセス(PI プロ セス)と言われる合意形成プロセスの一手法が用いられ,行政が主体となり住民への情報提 供,住民からの意見把握,住民意見の計画への反映を行う手順となっている27)28).PI プロセ. 5.

(10) スによる合意形成プロセスについては,既往研究において,藤井29) の集団意志決定における プロセスの重要性,谷口30) の制度・システムの観点からの知見,長町31) や澤田ら32) の PI プ ロセスとその達成度などが示されている. 水災害分野では,河川管理者が主体となって計画を進める河川整備計画などの法定計画の 策定とは別に,大規模水害の発生に備えて,住民が主体となった実践研究として,加藤・石 川33) や片田ら34) の WS を軸とした住民協働型の大規模水害対策に関する研究・取組などが 行われている.また,海外では,大原ら35) のフィリピンの洪水常襲地帯を対象としたコミュ ニティの危機管理計画手法に関する研究などが行われている. 一方,近年では,意識変革と新たな未来創造を可能にする合意形成プロセスの手法として, 西條36) や倉敷ら37) の「フューチャーデザイン」,C・オットー・シャーマー38) や中土井39) の 「U 理論」が注目されており,様々な分野で実践されている. 上述した計画策定者(行政)が主体となった PI プロセスでは,地域住民が主体となってい ないため,地域住民の意見は反映されるものの,トップダウン型の計画策定となり計画の実 行性が住民の行動に確保地域住民が共通の意志(目的)や新たなアイデア(計画,行動)を 創造することにはならない.また,WS を軸とした住民協働型の大規模水害対策検討の取組 の実践では,地域住民が主体となった計画策定を行っている事例があるものの,限定された 地区を対象とした取組にとどまっており,複数の地区や自治体を対象とした広域的な地域連 携の合意形成プロセスを経た取組事例は見当たらない.一方,新たな合意形成プロセスの手 法として,意識変革と新たな未来創造を可能にする「フューチャーデザイン」や「U 理論」 が注目されているが,「フューチャーデザイン」は防災・減災分野において方法論が確立さ れておらず,「U 理論」は防災・減災分野に適応した事例が見当たらない. 本研究では,DCP 検討における合意形成プロセスの手法として,地域住民や地域行政が大 規模水害に対する意識・行動を変えることが重要と考え,人や組織が過去の経験や立場にと らわれず,意識変革を起こし,新しいアイデアや行動を生み出すことが期待できる「U 理論」 のプロセスを導入し,行政界を越えた広域的な地域住民と地域行政の協働による WS 手法を 提案する.具体的には,土器川流域を対象とした危機管理対策検討の取組において,地域住 民と地域行政の協働による WS を企画・実施するにあたり,「U 理論」のプロセスを WS デ ザインの中の検討ステップに適用し,「意識変革~合意創発~未来創造」のプロセスを実践 する.. (3)住民目線のタイムラインに関する既往研究 代表的な既往研究においては,松尾 40) の高知県大豊町や三重県紀宝町での「地区タイ ムライン」,茨城県常総市での「マイ・タイムライン」 41)42) ,石狩川滝川地区での「タ イムライン(試行用完成版)」43) などの取組がある.住民目線のタイムラインは,常総. 6.

(11) 市など一部の地域で始まっているが,まだ作成されたばかり,あるいは作成中の段階で あり,今後,検討対象地域での展開や他地域への応用が期待される段階である. 上述した既往研究の課題として,以下の 3 点が挙げられる. 1) 一つのハザード(主に台風災害)が対象であり多種多様な災害への適応がなされてい ない. 2) 行政から発信される避難勧告等が住民の避難行動の判断基準となっており住民の自 主的な判断・行動や地域の主体的な協働・支援が基準になっていない. 3) 災害警戒期(発災前)が対象となっており被害を受けることを前提とした縮災の考え 方による応急対策期(発災後)への対応がなされていない. 本研究では,DCP 検討の場における災害リスクコミュニケーション・ツールとして,複合 災害を想定した防災・減災・縮災行動シミュレーションによる「住民タイムライン」の WS 検討での活用を堤案する.ここでの「住民タイムライン」は,災害警戒期~応急対策期の時 間軸に応じて,住民が情報の種類や意味を理解し,自主的な判断・行動を実行するとともに, 地域連携の実効性を確保することを目的として,自助と共助による防災・減災・縮災行動の タイムラインを作成するものである.具体的には,土器川流域を対象とした危機管理対策検 討の取組の中で,土器川モデル地区を対象として,堤防決壊を伴う大規模な河川氾濫とそれ に至るまでの内水氾濫および土砂災害を想定し,災害警戒期~応急対策期の防災・減災・縮 災行動を具体化することに重点をおいて,地域住民が「早めの安全な避難」や「早期の生活 再建・応急復旧」を意識して自主的に行動するための「住民タイムライン」の検討・作成を 実践する.. 1.3 本論文の構成 本論文は,序論から結論まで全 6 章で構成している. 第 1 章では,本研究の背景と目的,既往研究と本研究の位置づけ,本論文の構成について 述べる. 第 2 章では,近年の水害を踏まえて,水災害に対する危機管理対策の現状と課題を整理す るとともに,危機管理対策の実効性を高めるための取組として,広域的な地域連携体制の構 築,地域連携による DCP 策定の必要性について述べる.また,危機管理対策の現状整理の中 で,DCP の概念,DCP 検討プロセスに関する既往研究,合意形成プロセスに関する既往研 究について述べる. 第 3 章では,土器川流域における危機管理対策検討の取組について,DCP 検討を実践した 検討フレーム・検討プロセスおよび検討成果について述べる.具体的には,検討フレームの. 7.

(12) 構築として,検討の目的と組織,検討の枠組み,DCP 検討プロセスの開発と適応について示 すとともに,検討プロセスの実践として,検討の全体構成,WS を軸とした検討手順につい て示す.また,検討成果として,DCP の方針検討およびアクションプラン検討の内容を示す とともに,WS 検討の特徴を示す. 第 4 章では,DCP 検討の場における災害リスクコミュニケーション・ツールとして,住民 目線のタイムラインに関する既往研究について述べた上で,土器川モデル地区における住民 タイムライン検討の取組について,住民タイムラインの検討手順と検討成果について述べる. 具体的には,検討手順として,住民目線による複合災害の想定および災害警戒期~応急対策 期の住民タイムラインの検討ステップについて示す.また,検討成果として,災害警戒期~ 応急対策期の住民タイムラインの内容を示す. 第 5 章では,土器川流域における危機管理対策の検討成果をもとに,DCP 検討プロセスの 一般化を行い,「香川型 DCP 検討方式」を提案し,流域連携による DCP 策定手法の開発に ついて述べる.具体的には,「香川型 DCP 検討方式」の概念を示すとともに,「香川型 DCP 検討方式」による DCP 策定手法を,4 ステージ(事前準備,方針検討,アクションプラン検 討,アクションプラン実践)で構成し,16 ステップの検討項目に分けて示す.また,「香川 型 DCP 検討方式」の実践からの DCP 策定手法の評価として,アンケート調査による地域連 携プロセスの評価結果,住民タイムラインの効果検証結果を示し,本研究で提案する DCP 策 定手法が有効であることを考察するとともに,今後の課題を示す. 第 6 章では,本研究を通して得られた知見を総括し,「強靱な地域づくり」に向けて,DCP を継続・展開するための今後の展望について述べる.. 8.

(13) 参考文献 1). 中央防災会議:大規模水害対策に関する専門調査会報告 首都圏水没~被害軽減のために取 るべき対策とは~,2010.4. http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/ senmon/daikibosuigai/ 2) 国土交通省:新たなステージに対応した防災・減災のあり方,2015.1. http://www.mlit.go.jp/saigai/newstage. html 3) 国土交通省 社会資本整備審議会:水災害分野における気候変動適応策のあり方について ~災害リスク情報と危機感を共有し,減災に取り組む社会へ~ 答申,2015.8. http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/ kikouhendou/index.html 4) 常総市水害対策検証委員会:平成 27 年常総市鬼怒川水害対応に関する検証報告書 ―わ がこととして災害に備えるために―,2016.6.13. http://www.city.joso.lg. jp/soshiki /shicho_koshitu/bousai/shs09/news/suibou/1465342760379.html 5) 内閣府 中央防災会議 防災対策実行会議 水害時の避難・応急対策検討ワーキンググル ープ:水害時における避難・応急対策の今後のあり方について(報告),2017.3. http://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigaiworking/index.html 6) 国土交通省 社会資本整備審議会:大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方に ついて~社会意識の変革による「水防災意識社会」の再構築に向けて~答申,2015.12. http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/ daikibohanran/index. html 7) 国土交通省:水防災意識社会 再構築ビジョン. http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/ 8) 内閣官房:強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化 基本法,2013.12.11.法律第 95 号. 9) 内閣官房 国土強靱化推進室:国土強靱化地域計画策定ガイドライン(第4版),2017.6.6. 10) 内閣府:平成 25 年版 防災白書. 11) 河田惠昭:日本水没,朝日新聞出版,2016.7.30.第 1 刷. 12) 林春男:災害レジリエンスと防災科学技術,京都大学防災研究所年報,第 59 号 A,2016.6. 13) 国土交通省:地域継続計画の概要と取組事例について. http://www.mlit.go.jp/common/001120511.pdf 14) 香川大学 四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構:香川地域継続検討協議会. http://www.kagawa-u.ac.jp/iecms/ccckr/ 15) 香川河川国道事務所:水防災意識社会 再構築ビジョン. http://www.skr.mlit.go.jp/kagawa/river/mizubousaivision/index.html 16) 守茂明,水口雅晴:DCP(District Continuity Plan)の提唱―都心オフィス街における 地区防災,地下空間シンポジウム論文・報告書,土木学会地下空間研究会編,土木学会, pp.181-185, 1995. 17) 小出治:DCP; District Continuity Plan: Urban Disaster Prevention Organization, World Conference on Disaster Reduction, 18-22Januari 2005, Kobe, Hyogo, Japan, 企 業間の共助による防災対策,2005. 18) 西川智,紅谷昇平,永松伸吾,野中昌明:業務商業地における DCP 実現に向けた企業参 加による地域防災活動,地域安全学会梗概集,No.21, pp.101-104, 2007.11. 19) 香川大学 HP:「四国の地域継続力向上を目指して ~香川地域継続検討協議会(仮称)設 立シンポジウム~」. http://www.kagawa-u.ac.jp/files/1313/6376/4947/03.pdf 20) 香川県地域継続検討協議会:平成 23 年度香川 DCP 勉強会の概要,2012. http://www.kagawa-u.ac.jp/files/5813/6376/4926/02.pdf. 9.

(14) 21). 白木渡:地域防災の新展開―地域継続計画(DCP)の考え方―防災・減災の輪,かがわ自主 ぼう連絡協議会会報,第 30 号,2009. 22) 岩原廣彦,白木渡,井面仁志,高橋亨輔,磯打千雅子,松尾裕治:南海トラフ地震災害復 旧拠点における地域継続力向上の課題と施策,地域安全学会論文集,No.28, 2016.3. 23) 指田朝久,西川智,丸谷浩明:DCP 概念を整理し新たな市町村地域継続計画 MCP の提 案,地域安全学会梗概集,地域安全学会,No.33, 2013. 24) 磯打千雅子,白木渡,岩原廣彦,井面仁志,高橋亨輔:大規模水災害に対する地域継続計 画(DCP)のあり方と地区防災計画制度の活用,土木学会論文集 F6(安全問題),Vol.70, No.2, pp.I_31-I_36, 2014. 25) 畠山愼二,坂田朗夫,川本篤志,伊藤則夫,白木渡:地域継続の視点を考慮した企業 BCP 策定と災害レジリエンスの強化対策の提案,土木学会論文集 F6(安全問題),Vol.69, No.2, pp.I_25-I_30, 2013. 26) 磯打千雅子:土器川流域における気候変動適応した強靭な社会づくり DCP(地域継続計 画)策定プロセスにみる多様な地区防災計画展開の可能性 -地域継続計画 DCP と地区防 災計画の関係に着目して-,地区防災計画学会誌,第 5 号,2016.2. 27) 国土交通省:国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン の策定について. http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/01/010630_.html 28) 国土交通省:公共事業の構想段階計画策定プロセス. http://www.mlit.go.jp/tec/kanri/process.html 29) 藤井聡:集団意志決定における社会的公正とジレンマ,土木計画学第 27 回ワンデーセミ ナーテキスト,pp.41-49, 2001.12. 30) 谷口守:集団意志決定における制度論, 土木計画学第第 27 回ワンデーセミナーテキスト, pp.5-13, 2001.12. 31) 長町三生:感性工学と住民参加,土木学会四国支部『四国地方における社会資本整備の進 め方に関する事例研究と課題』・講演記録,pp.183-192, 1999.5.1. 32) 澤田俊明,山中英生,大谷英人,角道弘文,門田章宏:PI 参加者の行動および心理要因 に着目した PI プロセスのチェックリストの提案, 第 31 回土木計画学研究発表会 (春大会) , 2002. 33) 加藤孝明,石川金治:ワークショップを軸とする「広域ゼロメートル市街地」における大 規模水害に備えた住民協働型の対策検討の取り組み,生産研究,62 巻 4 号,pp.371-376, 2010. 34) 片田敏孝,金井昌信,児玉真,及川康:防災ワークショップを通じた大規模氾濫時におけ る緊急避難体制の確立,土木学会論文集 F5(土木技術者実践),Vol.67, No.1, pp.14-22, 2011. 35) 大原美保,南雲直子,Badri Bhakta SHRESTHA,澤野久弥:洪水常襲地帯のコミュニ ティーの危機管理計画作成手法に関する研究 -フィリピン共和国パンパンガ川流域での 実践活動を通して-,地域安全学会論文集,No.29, 2016.11. 36) 西條辰義,尾崎雅彦,上須道徳,木下裕介,青木玲子,黒田真史,嶋寺光,武田裕之,渕 上ゆかり,原圭史郎,七条達弘,栗本修滋:フューチャーデザイン 七世代先を見据えた 社会,勁草書房,2015.4.9. 37) 倉敷哲生,倉澤健太,立山侑佐,原圭史郎:フューチャーデザインに基づくリスクコミュ ニケーション,第 30 回記念信頼性シンポジウム講演論文集,pp.108_113, 2017.12. 38) C・オットー・シャーマー著,中土井遼・由佐美加子訳:U 理論,英治出版,2010.11.25. 第1版第1刷,2014.3.10.第1版第 7 刷. 39) 中土井僚:人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門,PHP 研究所,2014.2.3.第1版 第1刷. 40) 松尾一郎,CeMI タイムライン研究会:タイムライン 日本の防災対策が変わる,廣済堂 出版,2016.4.15.第 1 版第 1 刷.. 10.

(15) 41). 下館河川事務所 常総市マイ・タイムライン検討会:みんなでタイムラインプロジェクト 常総市モデル地区における検討の記録,2017.3. 42) 下館河川事務所 鬼怒川・小貝川下流域大規模氾濫に関する減災対策協議会:マイ・タイ ムライン検討の手引き,2017.5. 43) 札幌開発建設部:石狩川滝川地区水害タイムライン検討会. http://www.hkd.mlit.go.jp/sp/kasen_kanri/kluhh40000005pos.html. 11.

(16) 第 2 章 水災害に対する危機管理対策の現状と課題 2.1 水災害に対する危機管理対策の現状 本節では,近年の水害について,水害の経緯を整理し,水害後の国や地域での対策の取組 を整理するともに,鬼怒川水害等の経験から得られた教訓を述べる.また,「減災」「縮災」 に向けた危機管理対策において有効と考える地域継続計画(DCP)について,危機管理対策 を考える上での基本概念となる災害レジリエンス(縮災)の概念を整理した上で,DCP の定 義,法律や防災計画における DCP の位置づけ,事業継続計画(BCP)・地域コミュニティ 継続計画(CCP)と DCP との関係性を述べる.さらに,危機管理対策に関連する既往研究 として,DCP 検討プロセスに関する既往研究,合意形成プロセスに関する既往研究について 整理する.. 2.1.1 近年の水害対策 (1)近年の水害の概要およびその後の対策 IPCC 第 5 次評価報告書では,“気候システムの温暖化については疑う余地がなく,地球 温暖化は継続している”と見解を述べている.予測結果として,“21 世紀末までに,世界平 均気温が 0.3~4.8℃上昇,世界平均海面水位は 0.26~0.82m 上昇する可能性が高い”と評価 している.また,“中緯度の陸地のほとんどで,極端な降水がより強く,より頻繁となる可 能性が非常に高い”と評価している.日本各地における過去 40 年間の時間雨量を見ると,図 2. 1 に示すように,時間雨量 50mm を越える短時間強雨の発生件数が約 30 年前の約 1.4 倍 に増加している1)2).. 図 2. 1 短時間強雨発生回数の長期変化. 12. 2).

(17) 上述のように,地球温暖化に伴う気候変動も影響して,全国各地で記録的な豪雨が頻繁 に観測され,大規模な水害が多発している.以下に,2000(平成 12)年以降の堤防決壊を 伴う甚大な被害が生じた代表的な水害に関して概説する. 2000(平成 12)年 9 月の東海豪雨では,新川・地蔵寺川の堤防決壊や各地での内水氾濫 により,東海地方で都市機能が麻痺する甚大な被害が生じた.この水害を受けて,都市型 水害対策や広域大規模水害危機管理の必要性が認識され,流域全体で洪水防御を行う総合 治水(流域対策)の検討・施策が本格的に始まった3)4). 2004(平成 16)年 7 月の新潟豪雨では,五十嵐川・刈谷田川の堤防決壊により,新潟県 の三条市,見附市,中之島町などの地域一帯で甚大な被害が生じた.この水害を受けて, 三条市は,群馬大学広域首都圏防災センター災害社会工学研究室監修のもと,「三条市豪 雨災害対応ガイドブック(気づきマップ,逃げどきマップなど)」を作成し,地域住民に 早めの避難を促している5). 2004(平成 16)年 7 月の福井豪雨では,足羽川の堤防決壊により,福井市内で広範囲に わたって甚大な被害が生じた.この水害を受けて,国土交通省近畿地方整備局福井河川国 道事務所は,「福井豪雨から 10 年. ふくいの水防災を考える会」を 2014(平成 26)年 6. 月に立ち上げ,子ども目線で防災を考える事業を展開している6). 2011(平成 23)年 7 月の新潟・福島豪雨では,五十嵐川などの堤防決壊により,新潟県 と福島県で広域的に甚大な被害が生じた.この水害を受けて,新潟県は,「平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨対策検討委員会」を組織し,2004(平成 16)年豪雨後に実施されたハー ド・ソフト対策の被害軽減効果の分析を行うとともに,今後の治水対策のあり方について (超過洪水対策に向けて)の提言をとりまとめている7). 2012(平成 24)年 7 月の九州北部豪雨では,白川の越水氾濫や矢部川の堤防決壊などに より,熊本県,大分県,福岡県などで相次いで被害が報告され,広域水害となった.この 水害を受けて,久留米市ネットワーク交流会によるワークショップ8) や,水防災行事実行 委員会による「水防災プロジェクト in 白川」9) などの地域住民による活動が行われている. 2013(平成 25)年 9 月の台風 18 号では,由良川の堤防決壊や桂川の越水氾濫などによ り,近畿地方で広域的に甚大な被害が生じた.桂川では,日吉ダムの特別防災操作による 洪水調節(放流量の大幅カット)を実施したため,亀岡市街地における浸水被害を最小限 に食い止めることができた.この水害を受けて,京都府は,「木津川・桂川・宇治川圏域 河川整備計画検討委員会」などの各河川整備計画検討委員会において,河川整備計画の変 更に向けた検討を進めている10).また,滋賀県は,「湖北圏域水害・土砂災害に強い地域 づくり協議会」などの各圏域の水害・土砂災害に強い地域づくり協議会において,広域避 難の連携に関する協定や,地区別避難計画作成の手引き(案)などの取組を進めている11).. 13.

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