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断り発話冒頭部に出現する意味公式

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第 6 章 2 回目およびそれ以降の断り発話に着目した分析 1―意味公式使用数・

6.4 結果と考察

6.4.2.2 断り発話冒頭部に出現する意味公式

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有意に減少したことから、性差が見られた。したがって、両母語話者間は1回目の断り 発話から2回目の断り発話における意味公式使用数の有意な変化から、JNS-Fを除き、

断りの戦略を大幅に変えるという行動をとっていると考えられる。第5章の[課題2]

の分析の際に述べたように、意味公式使用数は断りの発話機能と関わり、2回目の断り 発話で使用された意味公式使用数が減少したということは断りの機能の種類も少なく なったということである。

吉井(2009, p. 83)は、親しさの度合いによって断り表現の長さも変化し、親しさの度 合いが高い相手には意味公式使用数が増え、断りのやり取りが長くなったと指摘して いる。また、元(2000)は意味公式の使用頻度は丁寧さと関わり、親しい相手に対して は断りにくいため、丁寧にすべきであると認識され、意味公式を多用する傾向が認め られると述べている(p. 227)。既述のように、対面で断る場面では、通常、1 回の断り 発話で受諾してもらえると期待して発話する。そのため、断る際に FTA を緩和するた めの意味公式も追加的に用いて、相手の理解が速やかに得られるようにする。大倉

(2002, p. 121)は、断りの際に発話要素数72が多いということは、多様な要素を使用す ることになり、それが FTA の危険を軽減することになると述べている。

これらの先行研究に基づくと、両母語話者はともに、1 回目の断り発話から 2 回目 の断り発話に移行する際、意味公式使用数を減らしているということから、1 回目の断 りから 2 回目の断りにおいてストラテジーの変更をしたと考えられる。通常、断る側 が 1 回目の断り発話で受諾されると期待して丁寧さにかかわる意味公式を含め、断り 意図を表明した。しかしながら、実際には期待と異なり、1 回目の断り発話でその意図 が受諾されなかった。そして、依頼側が再度働きかけることになる。その場合、断り の意図をより明確に伝えるために、断りにかかわる意味公式を優先的に使用した結果、

丁寧さにかかわる意味公式の使用が減り、全体的に意味公式の使用数が減少したと解 釈できよう。

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〈断り発話の冒頭部に出現する意味公式カテゴリー〉

まず、どのような意味公式カテゴリーが出現するのかを調べ、1 回目の断り発話の場 合と比較していく。そして両母語話者の断り発話の冒頭部に使われる意味公式がどの ように変化したのかを調べる。その結果は以下の図 6-3 と図 6-4 で示されているい。

JNS の場合

図 6-3 1 回目と 2 回目の断り発話における JNS の冒頭部の意味公式カテゴリーの比較

図 6-3 に示したように、JNS-F の 2 回目の断り発話では{直接的断り}、{間接的断 り}、{付随表現}の順にそれぞれ 24.0%(6 組)、44.0%(11 組)、32.0%(8 組)となっ ている。JNS-F の 1 回目の断り発話と 2 回目の断り発話を比べると、最も顕著なのは

{間接的断り}が 3.3%(1 組)から 44.0%(11 組)に有意に増加し、一方で{付随表 現}が 73.3%(22 組)から 32.0%(8 組)へと有意に減少した(χ2 (1) = 10.417, p = .0012)

ことである。また、{直接的断り}にはほとんど変化が見られなかった。他方、JNS-M の 2 回目の断り発話では、{直接的断り}、{間接的断り}、{付随表現}がそれぞれ 10.3 %

(3 組)、57.1%(16 組)、35.7%(9 組)である。JNS-M の 1 回目の断り発話に比べると、

{間接的断り}が増加し、{付随表現}に減少傾向が見られたが、JNS-F と異なり、有 意差は認められなかった。この結果から、JNS-F と JNS-M は 2 回目の断り発話では 1 回 目の断り発話に比べ、{間接的断り}は増加しているが、{付随表現}は減少したこと が読み取れる。JNS-F には変化に有意差が認められたことから、2 回目の断り意図をよ り明確に表明する展開に近づけていることが窺える。その反面、JNS-M はそもそも 1 回 目の断り発話から JNS-F

より既に{間接的断り}の使用率が有意に高いことから(JNS-23.3

3.3

73.3

24.0

44.0

32.0

0 20 40 60 80 100

直接的断り 間接的断り 付随表現

% JNS-F

1回目の断り 2回目の断り

13.3

33.3

53.3

10.3

57.1

35.7

0 20 40 60 80 100

直接的断り 間接的断り 付随表現

% JNS-M

1回目の断り 2回目の断り

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F は 3.3%、JNS-M は 33.3%、(χ2 (1) = 9.017, p = .0027)、2 回目の断り発話ではそれほど 大きな変更が見られなかったと推量できる。

SNS の場合

図 6-4 1 回目と 2 回目の断り発話における SNS の冒頭部の意味公式カテゴリーの比較

図 6-4 に示したように、SNS-F の 2 回目の断り発話において{直接的断り}、{間接的 断り}、{付随表現}は、それぞれ 13.3%(4 組)、56.7%(17 組)、30.0%(9 組)である のに対し、SNS-M は 23.3%(7 組)、50.0%(15 組)、26.7%(8 組)となっている。1 回 目の断り発話と 2 回目の断り発話を比較すると、SNS-F と SNS-M はともに、{間接的断 り}が有意に増加する一方(SNS-F:χ2 (1) = 5.554, p = .0184)、SNS-M: χ2 (1) = 4.593, p

= .0321)、{付随表現}が有意に減少している(SNS-F:χ2 (1) = 6.696, p = .0097)、SNS-M:

χ2 (1) = 5.554, p = .0184)。この結果から、2 回目の断り発話では、断り意図をより明確

に表明するような、使用する意味公式カテゴリーの変更が認められる。つまり、SNS で は男女ともに 1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話に展開する際、{間接的断り}お よび{付随表現}を変更して使用する態度が顕著に見られた。他方、{直接的断り}に おいては顕著な変化が見られなかった。

1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話へと展開する際の冒頭部の意味公式の変化 について、両母語話者はともに 1 回目の断り発話では{付随表現}が最も多く使用し ていたが、2 回目の断り発話では、その使用が減少する傾向が見られた。その一方で、

{間接的断り}が増加したことが分かった。2 回目の断り発話で{付随表現}が減少し たのは、断りが進むに伴い、断り意図をより明確に表明するために(森山 1990)、緩 衝材の使用を避けたためであると推測できる(吉田 2015,ハヤティ 2018; 2019)。他

10.0

26.7

63.3

13.3

56.7

30.0

0 20 40 60 80 100

直接的断り 間接的断り 付随表現 SNS-F

1回目の断り 2回目の断り

20.0 23.3

56.7

23.3

50.0

26.7

0 20 40 60 80 100

直接的断り 間接的断り 付随表現 SNS-M

1回目の断り 2回目の断り

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方、2 回目の断り発話で増加した{間接的断り}については、断り意図をより明確に表 明しようとする態度の現れと理解することができる。これは両母語話者間の共通点と して見なされる。また、{直接的断り}の使用変化については、{付随表現}と{間接的 断り}ほど大きくない。以上のことから、{間接的断り}を増加させ、{付随表現}を減 少させることは、ストラテジーの大幅な変更であると理解することかできる。既に述 べたように、通常なら 1 回目の断り発話で受諾してもらえるという前提で発話したと ころ、そうならなかったためストラテジーを変えて対処したということである。この 顕著な変化は 1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話へと移行する段階に見られたこ とを強調しておきたい。

〈断り発話冒頭部に出現する個別意味公式〉

次は、個別意味公式を分析する。意味公式カテゴリーにおける具体的な個別意味公 式の内訳は以下の表 6-2 と表 6-3 のとおりである。

JNS の場合

表 6-2 2 回目の断りにおける JNS の冒頭部の意味公式の内訳

(単位:%)

意味公式 個別 JNS-F JNS-M カテゴリー 意味公式 1 回目 2 回目 1 回目 2 回目

{直接的断り} 【不可】 23.3 24.0 13.3 10.7 小計 23.3 24.0 13.3 10.7

{間接的断り}

【理由】 3.3 16.0 16.7 39.3

【謝罪】 0.0 16.0 10.0 7.1

【言い差し】 0.0 12.0 6.7 3.6

【代案提示】 0.0 0.0 0.0 7.1 小計 3.3 44.0 33.3 57.1

{付随表現}

【ためらい】 50.0 16.0 33.3 25.0

【繰り返し】 13.3 8.0 16.7 3.6

【情報確認】 10.0 4.0 3.3 0.0

【願望】 0.0 0.0 0.0 3.6

【困惑】 0.0 4.0 0.0 0.0 小計 73.3 32.0 53.3 32.1 合計 100.0 100.0 100.0 100.0

表 6-2 に示したように、冒頭部に出現する個別意味公式の特徴を見ると、JNS-F の 2 回目の断り発話では、{直接的断り}は【不可】が 24.0%(6 組)と最も多く、その次 は{間接的断り}の【理由】と【謝罪】が同じでそれぞれ 16.0%(4 組)、【言い差し】

が 12.0%(3 組)、{付随表現}は【ためらい】が 16.0%(4 組)などである。

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JNS-F の 1 回目の断り発話と 2 回目の断り発話の冒頭部の意味公式を比較すると、1 回目の断り発話では【ためらい】が 50.0%(15 組)と最も多かったが、2 回目の断り発 話では 16.0%(4 組)有意に減少した(χ2 (1) = 6.971, p = .0083)。また、【謝罪】と【言 い差し】は 1 回目の断り発話では見られなかったが、2 回目の断り発話ではそれぞれ 16.0%(4 組)と 12.0%(3 組)と新たに出現した。【理由】に関し、3.3%(1 組)から 16.0%(4 組)に増加した。

この結果から、JNS-F は 1 回目の断り発話に比べ、2 回目の断り発話では【ためらい】

などの付随的な表現よりも、より明確に断り意図を表明する【理由】、【謝罪】、【言い 差し】を用い、または【不可】という直接的な断り方を示していることがわかる。

他方、JNS-M の 2 回目の断り発話では{直接的断り}は【不可】が 10.7%(3 組)で、

{間接的断り}は【理由】が最も多く 39.3%(11 組)であり、次に【謝罪】と【代案提 示】も見られたが、少ない。また、{付随表現}は【ためらい】が 25.0%(7 組)も見ら れた。この結果から、JNS-M の 2 回目の断り発話では最も顕著なのは【理由】の使用で ある。1 回目の断り発話では 16.7%(5 組)であるが、2 回目の断り発話では 39.3%(11 組)へと有意に増加したことがわかる(χ2 (1) = 3.068, p = .0798)。また、【謝罪】と【言 い差し】が減少する代わりに、新たに【代案提示】が出現した。一方、{付随表現}は

【ためらい】が少し減少したが、継続的に使用されている。この結果から、JNS-M は 1 回目の断りに比べ、2 回目の断りでは【理由】が中心になり、間接的な断りを表明する 割合が増えた。

次に SNS の個別意味公式を検討してみよう。

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