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意味公式使用数

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第 6 章 2 回目およびそれ以降の断り発話に着目した分析 1―意味公式使用数・

6.4 結果と考察

6.4.2.1 意味公式使用数

下の図 6-1 では縦軸が利用組数(%)69を、横軸が意味公式使用数を表している。

JNS の場合

図 6-1 1 回目と 2 回目の断り発話における JNS の意味公式使用数の比較70

図 6-1 が示しているように、JNS-F の 2 回目の断り発話では意味公式使用数 1 と 2

69 パーセント(割合)の値は、意味公式使用数を母集団で割った数値である。

70 1回目と2回目の断り発話の母数が異なる。上記の図6-1から分かるように、やり取りが進 むと、断り発話の出現数も減ってくる。

0 20 40 60 80 100

1 2 3 4 5 6

%

使

JNS-F

1回目の断り 2回目の断り

0 20 40 60 80 100

1 2 3 4 5 6

%

使 JNS-M

1回目の断り 2回目の断り

108

が同じでそれぞれ 36.0%(9 組)、意味公式使用数 3 が 20.0%(5 組)、意味公式使用数 4 が 8.0%(2 組)である。この結果から、JNS-F は 2 回目の断り発話では意味公式使用 数が基本的に 1 と 2 であることがわかる。また、JNS-F の 1 回目と 2 回目の断り発話 の意味公式使用数を比較すると、意味公式使用数 1 が 16.7%(5 組)から 36.0%(9 組)

へと大幅に増加し、意味公式使用数 2 が 33.3%(10 組)から 36.0%(9 組)にやや増加 し、意味公式使用数 3 が 23.3%(7 組)から 20.0%(5 組)に、意味公式使用数 4 が 13.3%

(4 組)から 8.0%(2 組)に減少している。意味公式使用数 5 以上は見られなくなっ た。

他方、JNS-M の 2 回目の発話では、意味公式使用数 1 が 53.6%(15 組)、意味公式使 用数 2 が 25.0%(7 組)である。また、意味公式使用数 3 が 14.3%(4 組)、意味公式使 用数 4 が 7.1%(2 組)である。この結果から、JNS-M は、2 回目の断り発話において意 味公式使用数が基本的に 1 であることがわかる(53.6%)。また、JNS-M の 1 回目と 2 回 目の断り発話の意味公式使用数を比較すると、意味公式使用数 1 が 23.3%(7 組)から 53.6%(15 組)に有意に増加し(χ2 (1) = 5.625, p = .0177)、意味公式使用数 2 は 40.0%

(12 組)から 25.5%(7 組)に減少し、意味公式使用数 3 が 10.0%(3 組)から 14.3%

(4 組)へと少し増加している。それ以外の意味公式使用数 2、4、5、6 については、

すべてで減少している。

SNS の場合

図 6-2 1 回目と 2 回目の断り発話における SNS の意味公式使用数の比較

図 6-2 に示したように、SNS-F の 2 回目の断り発話では意味公式使用数 1 が 46.7%

0 20 40 60 80 100

1 2 3 4 5 6

%

使

SNS-F

1回目の断り 2回目の断り

0 20 40 60 80 100

1 2 3 4 5 6 7

使

SNS-M

1回目の断り 2回目の断り

109

(14 組)、意味公式使用数 2 が 33.3%(10 組)、意味公式使用数 3 が 13.3%(4 組)、意 味公式使用数 4 が 6.6%(2 組)である。SNS-F の 1 回目の断りと 2 回目の断りの意味 公式使用数を比較すると、意味公式使用数 1 が 16.7%(5 組)から 46.7%(14 組)へ71 と有意に増加した(χ2 (1) = 6.239, p = .0125)。また、意味公式使用数 2 は全く変わらず、

使用 3 は 33.3%(10 組)から 13.3%(4 組)に減少した。この結果から、SNS-F は 2 回 目の断りにおいて意味公式使用数が基本的に 1 であり、意味公式使用数 2 がそれに続 く。また、1 回目の断り発話に比べ、2 回目の断り発話において、意味公式使用数が複 合的使用から単独使用へと有意に変化した。一方、意味公式使用数 4 以上は少なくな っている。つまり、断りで使用する機能の種類(バリエーション)が少なくなってい るのである。

他方、SNS-M は 2 回目の断り発話において意味公式使用数 1 が 40.0%(12 組)、意味 公式使用数 2 が 20.0%(6 組)、意味公式使用数 3 が 20.0%(6 組)である。この結果か ら、2 回目の断り発話では、意味公式使用数 1 が最も多く、その次に意味公式使用数 2 と 3 が同数であった。また、1 回目の断りと 2 回目の断りを比べると、SNS-M の意味公 式使用数 1 が 16.7%(5 組)から 40.0%(12 組)へと増加し、意味公式使用数 2 が 50.0%

(15 組)から 20.0%(6 組)に減少している。また、それ以外の意味公式使用数 3 以上 はすべてで減少している。1 回目の断り発話では使用数 2 が一番多いのに比べ、2 回目 の断り発話では意味公式使用数 1 が最も多く(40.0%)、複数使用から単独使用へと変 化したことがわかる。特に意味公式使用数 1 が有意に増加し(χ2 (1) = 4.022, p = .0449)、

それと同時に意味公式使用数 2 の減少という変化が顕著である(χ2 (1) = 5.934, p = .0149)。

この結果から、意味公式使用数の変化について、SNS-F は意味公式使用数 1 が増加し ているだけだが、SNS-M は意味公式使用数 1 の増加および意味公式使用数 2 の減少に 有意差が見られたことから SNS-M の方が意味公式使用数におけるストラテジーの変更 幅が大きいと言える。

JNSとSNSを比較すると、2回目の断り発話の意味公式使用数について、全体的に意味 公式使用数1、つまり意味公式の単独使用が中心になっているという共通点が見られた。

但し、JNS-Mの方が有意に増加することから、JNSでは性差が見られた。他方、SNSでは 意味公式使用数1では同様に有意に増加したが、意味公式使用数2はSNS-Mにおいてのみ

71 2 つの数値を比べる場合は言語表現で、3 つ以上の数値の変化を記す場合は矢印(→)を用 いて表記する。

110

有意に減少したことから、性差が見られた。したがって、両母語話者間は1回目の断り 発話から2回目の断り発話における意味公式使用数の有意な変化から、JNS-Fを除き、

断りの戦略を大幅に変えるという行動をとっていると考えられる。第5章の[課題2]

の分析の際に述べたように、意味公式使用数は断りの発話機能と関わり、2回目の断り 発話で使用された意味公式使用数が減少したということは断りの機能の種類も少なく なったということである。

吉井(2009, p. 83)は、親しさの度合いによって断り表現の長さも変化し、親しさの度 合いが高い相手には意味公式使用数が増え、断りのやり取りが長くなったと指摘して いる。また、元(2000)は意味公式の使用頻度は丁寧さと関わり、親しい相手に対して は断りにくいため、丁寧にすべきであると認識され、意味公式を多用する傾向が認め られると述べている(p. 227)。既述のように、対面で断る場面では、通常、1 回の断り 発話で受諾してもらえると期待して発話する。そのため、断る際に FTA を緩和するた めの意味公式も追加的に用いて、相手の理解が速やかに得られるようにする。大倉

(2002, p. 121)は、断りの際に発話要素数72が多いということは、多様な要素を使用す ることになり、それが FTA の危険を軽減することになると述べている。

これらの先行研究に基づくと、両母語話者はともに、1 回目の断り発話から 2 回目 の断り発話に移行する際、意味公式使用数を減らしているということから、1 回目の断 りから 2 回目の断りにおいてストラテジーの変更をしたと考えられる。通常、断る側 が 1 回目の断り発話で受諾されると期待して丁寧さにかかわる意味公式を含め、断り 意図を表明した。しかしながら、実際には期待と異なり、1 回目の断り発話でその意図 が受諾されなかった。そして、依頼側が再度働きかけることになる。その場合、断り の意図をより明確に伝えるために、断りにかかわる意味公式を優先的に使用した結果、

丁寧さにかかわる意味公式の使用が減り、全体的に意味公式の使用数が減少したと解 釈できよう。

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