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個別意味公式の出現について

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第 7 章 2 回目およびそれ以降の断り発話に着目した分析 2

7.3 結果

7.3.3 個別意味公式の出現について

137

中核的なストラテジーとして用いられていることがわかる。吉田(2015)は男女別の 分析をせず、女性のみの分析をした結果、マナド語母語話者75は勧誘に対する依頼のや り取りでは{間接的断り}が中心になったと述べたが、この点では本調査は吉田(2015)

と同様の結果となっている。

138

表 7-7 と表 7-8 から分かるように、話者ごとの出現順位は異なるものの、全体的に

{間接的断り}の【理由】、【謝罪】、【代案提示】および{直接的断り}の【不可】の使 用率が高い。したがって、この 4 つの個別意味公式が断り発話において重要な要素で あると考え、これらの意味公式を中心に分析する。また、{付随表現}については、【た めらい】および【困惑】が代表的で、それ以外の【批判】、【条件提示】、【言い差し】と いった個別意味公式の出現率は低かったため、分析の対象としなかった。

断りのやり取りは、それが進行するにつれ、断り発話の出現が減少し、顕著な違い が見られなくなるため、比較が困難になる。そこで、各話者の断り発話を最大5回目ま でに絞り、その後の断り発話を省くことにした。

7.3.3.1 JNS の場合

JNS の結果は、以下の図 7-1 と図 7-2 に示した。

図 7-1 に示したように、JNS-F では【理由】の使用が 1 回目の断り発話では 56.7%

(20 組)だが、2 回目の断り発話では 40.0%(10 組)というように減少している。ま た、その後の断り発話においても減少し、5 回目の断りからは出現しなくなった(42.1%

(8 組)→31.3%(5 組)→0.0%(0 組))。他方、【謝罪】の使用は増加する傾向が見ら れた(13.3%(4 組)→20.0%(5 組)→21.1%(4 組)→37.5%(6 組)→15.4%(2 組))。

56.7

13.3

3.3 6.7

66.7

16.7 40.0

20.0

4.0

24.0

40.0

12.0 42.1

21.1 21.1

5.3

26.3

10.5 31.3

37.5

31.3

0.0

31.3

12.5 0.0

15.4

61.5

7.7

30.0

7.7 0

20 40 60 80 100

理由 謝罪 代案提示 言い差し 不可 ためらい

%

図7-1 JNS-Fの個別意味公式の使用

1回目の断り 2回目の断り 3回目の断り 4回目の断り 5回目の断り

139

また、【代案提示】も同じく増加する傾向が見られた(3.3%(1 組)→4.0%(1 組)→

21.1%(4 組)→31.3%(5 組)→61.5%(8 組))。【言い差し】の使用は 2 回目の断り発 話で増加するが、(6.7%(2 組)→20.0%(6 組))、その後はほとんど使用されなくなっ た。さらに、【不可】の使用は、1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話への移行段階 で、有意に減少している((66.7%(20 組)から 40.0%(10 組)(χ2 (1) = 6.667, p = .0098)。

その後は、変化がほとんど見られない。そのほか、【ためらい】と【困惑】は使用数が 少ない。この結果から、JNS-F は、【理由】が減少する傾向にあり、最後の断り発話で は見られなくなった。その代わりに【謝罪】と【代案提示】は、断りが進むと増加する 傾向が見られた。また、【不可】の使用は、1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話へ と移行する際、顕著に減少するが、3 回目の断り発話以降はほぼ横ばいとなる。この段 階で【代案提示】の使用が最も増加している。これは、【代案提示】により、相手に断 り意図を受諾させ、断りを結束させようとするものであり、断りのストラテジー変更 と見なされる。

次に JNS-M の結果を見てみよう。

図 7-2 に示したように、JNS-M は 1 回目の断りでは【理由】の使用が多く(76.7%(23

76.7

16.7

3.3 3.3

43.3

26.7 67.9

17.9

10.7 7.1

21.4 21.4

52.2

17.4 21.7

8.7

47.8

13.0 50.0

12.5

31.3

12.5

31.3

25 46.2

30.8 30.8

0.00

15.4 15.4

0 20 40 60 80 100

理由 謝罪 代案提示 言い差し 不可 ためらい

%

図7-2 JNS-Mの個別意味公式の使用

1回目の断り 2回目の断り 3回目の断り 4回目の断り 5回目の断り

140

組))、2 回目以降の断り発話から減少する(67.9%(19 組)→52.2%(12 組)→50.0%(8 組)→46.2%(6 組))。しかしながら、基本的に 5 割前後の出現率が保たれている。【謝 罪】の使用は少ないが、最後の段階の断り発話で顕著な増加が見られる(16.7%(5 組)

→17.9%(5 組)→17.4%(4 組)→12.5%(2 組)→30.8%(4 組))。【代案提示】の使用 は増加する傾向が見られ、【言い差し】の使用も少ないが、増加している。【不可】は 1 回目の断りでは多かったが(43.3%(13 組))、一旦 2 回目の断り発話で減少し(20.0%

(6 組))、そこから 3 回目の断りで有意に増加し(36.7%(11 組)(χ2 (1) = 2.600, p = .1069)、

その後減少している。他方、【ためらい】は全体的に使用率の低い横ばい状態にある。

この結果から、【理由】は断りが進むと、その使用は減少はするが、基本的に最後の断 り発話まで 5 割が継続して使用したことがわかる。【代案提示】は、断りが進むと、増 加が見られた。【謝罪】は、最後の段階の断り発話で増加した。よって、断りが進むと、

【理由】を中心に使用し、それと同時に【代案提示】と【謝罪】も補完的に使用してい ることがわかる。【不可】の使用には不安定さが見られたことから、断りを理解させよ うとストラテジーをこまめに変更している可能性があると言えそうである。【ためらい】

の使用は、減少傾向にあるものの、ほぼ横ばいであり、相手からの理解を期待してい る様子がうかがえる。

JNS-F と JNS-M を比べると、【理由】の使用は 2 回目の断り発話では JNS-F に比べ、

JNS-M の方が有意に多い(それぞれ 40.0%(10 組)、67.9%(19 組)、(χ2 (1) = 9.664, p

= .0019)。また、最後の 5 回目の断り発話では、それぞれ 0.0%(0 組)、46.2%(6 組)

である。この結果から、【理由】の使用は JNS-M の方が多いということがわかる。男女 とも【謝罪】の使用は少ないが、最後の断りの段階に入ると共通して増加する。【代案 提示】の使用は、両話者ともに相対的に増加するが、グラフの形に見られるように JNS-F の方が変化の度合いが大きい。つまり、JNS-JNS-F の方は断り談話を収束させるために、

【代案提示】をより積極的に使用していると言えよう。【言い差し】の使用は両話者と もに少ないが、JNS-F では 2 回目の断り発話で増加する。【ためらい】の使用は少なく、

基本的に減少する傾向にある。しかし、その使用が無くなるわけではないので、相手 からの断りの理解を期待するために、使用が続けられていると考えられる。

7.3.3.2 SNS の場合

SNS-F は以下の図 7-3 に示したように、【理由】の使用は多いが、1 回目の断り発話

141

(76.7%(23 組))と 2 回目の断り発話(73.3%(22 組))とではほとんど変わっていな い。しかし、3 回目以降の断り発話から減少する傾向が見られた。他方、【謝罪】の使 用は 1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話にかけて減少するが、3 回目の断り発話 からは増加する傾向がある。また、【代案提示】の使用は、【理由】と逆に、断りが進行 するにつれ、増加する傾向が見られた(0.0%→20.0%(6 組)→37.0%(10 組)→45.0%

(9 組)→46.7%(7 組))。しかも、1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話への移行の 際、有意に増加している(χ2 (1) = 6.667, p = .0098)。【不可】は、3 回目の断り発話まで は減少するが、その後、再び増加する。一方、【困惑】は、1 回目の断り発話から 2 回 目の断り発話にかけて有意に減少し(56.7%(17 組)から 30.0%(9 組)、(χ2 (1) = 4.344, p = .0371)、その後基本的に横ばいになる。この結果から、SNS-F は主に【理由】を使 用するが、3 回目の断り発話以降その使用が減少し、代わりに【代案提示】と【謝罪】

が増加していることがわかる。一方、1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話へと進 む際、付随的な発話【困惑】の使用は、一旦は減少するが、その後は比較的多く使用さ れている。これは、相手の理解を引き出すためのストラテジーとして発話されている からだと考えられる。

次に SNS-M だが、図 7-4 に示したように、【理由】の使用は 1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話にかけて増加するが(63.3%(19 組)から 76.7%(23 組))、2 回目の断 り発話から 3 回目の断り発話への移行の際、有意に減少した(75.7%(23 組)50.0%か ら(14 組)、(χ2 (1) =5.711 , p = .0169)。その後、さらに減少傾向にあるが、最後の断り 発話まで比較的多く使用されている。【謝罪】の使用は、それほど多くないが、増加傾 向が見られる。また、【代案提示】の使用は、1 回目の断り発話から 2 回目の断り発話 にかけて有意に増加し(0%から 23.3%(7 組)、(χ2 (1) = 7.925, p = .0049)、その後も、最 後の断りまで増加し続けた。それとは逆に、【不可】の使用は不安定で、1 回目の断り 発話から 2 回目の断り発話にかけて一旦減少するが、3 回目の断り発話でまた増加し、

4 回目の断り発話以降減少している。また、【困惑】は 1 回目の断り発話から 2 回目の 断り発話にかけて有意に減少し(60.0%(18 組)から 26.6%(8 組)、(χ2 (1) = 6.787, p

= .0092)、その後も基本的に減少している。これらの結果を見ると、SNS-M は主に【理 由】と【不可】を使用するが、断りが進むと【代案提示】と【謝罪】の使用が増加する ことがわかる。その一方、【困惑】は、2 回目の断り発話で顕著に少なくなるが、最後 まで使用が続く。

142

SNS-F と SNS-M を比べると、男女両話者間では【理由】が 1 回目と 2 回目の断り発 話で最も多く使用され、減少はするものの、最後の断りまでその使用が続く。両話者 とも【理由】の使用は 3 回目の断りで減少するが、SNS-M の方が有意に減少している。

【代案提示】は SNS-F、SNS-M ともに 2 回目の断り発話で有意に増加し、その後もその 使用は徐々に増加している。また、【困惑】は両話者ともに 1 回目から 2 回目にかけて の断り発話で有意に減少するが、その後も、一定程度その使用が続く。【謝罪】の使用 に関しては、多少のばらつきはあるが、両話者とも増加している。

76.7

16.7

0.0

36.7

56.7 73.3

3.3

20.0

26.7 30.0

48.1

18.5

37.0

18.5 22.2

30.0 30.0

45.0

35.0 33.3 30.0

6.7

46.7

26.7

6.7 0

20 40 60 80 100

理由 謝罪 代案提示 不可 困惑

%

図7-3 SNS-Fの個別意味公式の使用

1回目の断り 2回目の断り 3回目の断り 4回目の断り 5回目の断り

143

ドキュメント内 著者別表示 NOVIA HAYATI (ページ 146-152)