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第2章  グループワー・・クの実践 第1節 グループワークのプログラム計画

第4節  考 察

 前節では、G.W.のふりかえり表の結果から各G.W.にみられる特徴を考察した。そ の考察にもとづいて、プログラム全体の包括的な考察をすることにしよう。

 現代の子どもの問題は、対人関係の希薄化・未熟さである。中学校では、友人関 係が深まらずコミュニケーションをとるのが不得手な生徒が増えている(g)。これら の問題を克服する手がかりとして、人間関係を促進し、学級集団の凝集性を高め、

個々の生徒の変容を図るために特別活動(、。)においてG.W.を実施した。

その結果は、各ふりかえり表の質問項目の回答がほぼ全員、肯定的に答えているこ とから、目的を達成できたものと考える。生徒の感想からも、G.W.に満足して、積 極的に参加したことがみられる。これらのことから、G.W.は、生徒が存在感をもて

る場を保証することができるといえよう。

生徒は、自分の存在が認められ、頼りにされている(期待されている)と感じると きに「居場所」(・・)体験をすることができる。生徒の存在感は、 「あてにする一あ てにされる」(・2)という役割期待と、それへの応答反応という相互作用により生じ るものである。生徒の存在感は、学級の居心地(、3)の良さとも関連することである。

居心地の良さは、生徒が学級のなかに自分の 居場所 を自覚することが出来るよ うになるという意味において重要な要因である。

 この生徒の存在感にかかわる居心地の良さは、生徒が、他者からのまなざしがか けられ、あてにされ、期待されていると感じることによって形成される。G,W.は、

そのような対人関係と生徒が存在感を感じることが出来る場所を作り出していくこ とができるのである。

 このようなG,W.が個々の生徒に及ぼす効果は、生徒個人だけではなく、集団形成 にも及ぶものである。G.W.では、個々のコミュニケーション能力にかかわる内容の ものが多く取り入れられていた。特に、他者の話・意見・考えを きく ことに力 点がおかれていた。この きく という場合、 「聞く」、 「聴く」、 「利く」、

「効く」、 「訊く」というように様々な意味を含むが、G.W.で目指すものは「聴く」

こと、つまり 傾聴的態度 の育成である。他者の話を聴くためには、集中力、他 者の尊重、沈黙が必要になり、相手に注意を傾け聴かなければならない。

 このコミュニケーション能力としての聴く態度は、生徒にとって、日常欠けてい ることである。そのために、他者を理解しようとすることがあまりなされず、生徒 は固定しがちな狭い小集団のなかにいることになるのである。G.W.の実施により、

日頃、疎遠な級友と接することで新たな気づきが起こり、学級内の人間関係を促進 する契機となることが期待できる。生徒間で新たに結ばれた関係、生徒と生徒を結 ぶコミュニケーションネットワークは、日常の小集団の枠を越えて、学級集団とし てのまとまりを強めるごとに寄与することになる。このことについては、第3章で 実証的に分析することにする。

 以上のように、G.W.の実施は、学級集団の形成においても人間関係促進という点 から有効な手段であることが明らかになった。個々の生徒における存在感、集団内 での対人関係促進は、個々の生徒が持っている特性(性格というより一般的に長所 といわれるもの)が、学級集団の持つ固有な雰囲気により影響を受けることにも関 係する。このことは、ボルノーが「子どもの発達の仕方や方向は.,同時に、彼をと

りまく(人間的)環境がどのように彼を迎え容れ、どのような要求を彼に課するか によって、根本的に左右されるのである」(、4)と述べたように、教師と生徒の相互 作用が、全体的・包括的な雰囲気の中で展開してゆくことが重要な意味をもつから である。学級集団は、G.W.の実施を契機として、生徒相互の人間関係が深まり、徐 々に友人の輸が広まることにより学級としての雰囲気が形成された。この学級固有 な雰囲気は、一人.一人の生徒の人間形成にも影響を与えるものといえよう。このこ

とについては、第4章で実証的に分析することにする。

(註)

(1)國分康孝監修(1992)『教師と生徒の人間づくり』、第1集〜第4集、渥渥社:。

(2)國分康孝(1981)『エンカウンター』誠信書房。

(3)伊東博(1990)「ニューカウンセリング」、國分康孝編『カウンセリング 辞典』

  所収 誠信書房。

(4) 同上書、伊東(1990)、431−432頁。

(5)筆者が知る理論的なものは、南山短期大学人間関係科監修(1992)『人間関係トレーニング』ナカニ   シや出版、柳原光(1989−1992)『人間のための組織開発シリーズ』、Vo1.1−Vo1.5、プレスタイム   、柳原光(1989)『人間関係訓練基礎講座』プレスタイム、富士ゼロックス総合教育研究所(1991)

 『新入社員研修』のプログラムなどのなかにみることができる。

(6)坂野公信監修(1994)『学校グループワーク・トレーニング』遊戯社。・

(7)それぞれのワークを準備するにあたって、参考にしたものは次の通りである。

  第1回、第:7回…坂野公信・高垣芳郎(1990)『人間開発の旅』遊戯社。

  第3回、第4回…坂野公信監修(1994)『学校グループワーク・トレーニング』遊戯社。

  第5回、第6回…坂口順治(1994)『実践・コミュニケーションゲーム』生産性出版。

  第9回   …埼玉県教育相談研修会の資料

  第12回   …川瀬正裕・松本真理子(1993)『自分探しの心理学』ナカニシや出版       (詳しくは、APPELZVDZXIを参照のこと)

(9)文部省く1988)『生活体験や人間関係を豊かなものとする生徒指導一中学校・高等学校三一』

  「問題行動の背景には、それを起こす生徒だけでなく最近の生徒に多く見られる傾向、つまり生    活体験の不足や対人関係の形成が十分行われていないことなどによる発達課題の未達成、精神    発達の未熟さがあるとの指摘は、今後の生徒指導の在り方を考える上で重要な示唆を含んでい    るといえよう。」と現在の生徒の特徴を示している。

  これらのことから、文部省が生徒指導の今後の課題としてあげる「人間関係の改善と望ましい人   間関係の促進」 「生徒の自然体験や生活体験の不足を補うような望ましい習慣の形成」の2点は、

  学校教育の中でも重要な実践課題である。実践の在り方として示されている、 「生徒に自己存在   感を与える」 「共感的人間関係を育成する」 「自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助す   る」の3点が最もよく生かされる場は特別活動である。

(10)同上書、文部省(1988)

  「特別活動は最も直接的に生徒指導の機能が生かされる場として重要な役割を果たす。」と示され   ている。G. W.の位置づけを、現行学習指導要領に求めるならば、特別活動の学級活動「個人およ   び集団の一員としての在り方」にある。

(11)吉本均(1994)『教室の人間学』明治図書、28頁。

(12) 同上書、吉本(1994)、27頁。

(13) 同上書、吉本(ig94)、29頁。

  居心地の良さについて、吉本は「身体の 居場所  (庇護感)」をあげ、 「子どもたちが 身を   開き 身(心)のやすらぎ を体験できる、明るい共感に包まれた 庇護の場所(関係) が、

  人間としての自立にとって決定的に重要となる。つまり、それが 居場所 の意義なのである。」

  とした。

(14)0・F・ボルノウ、森昭・岡田渥美訳(1992)『教育を支えるもの』黎明書房、206頁。