博 士 ( 農 学 ) 奈 良 真 二
学 位 論 文 題 名
コ ロ ナ チ ン の 全 合 成 と 関 連 化 合 物 の 生物 活 性 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
コ 口 ナ チン (
1
) はイ タ リ アン ラ イグラス に傘枯れ病 をおこす 病原菌(Psuedomonassyri
移ロピpv. qtrop rpureロ)の生産する毒素であり、本菌より単離、構造決定された化合 物であ る。近年 、コ口ナ チンは植 物ホルモ ン様の生 理作用を有するジャスモン酸(2) と の構 造類似性 を指摘さ れ、実際 にジャス モン酸がそ の生理作 用を示す 数種の典 型的 な バイ オ ア ッセ イ 系に お い てコ 口 ナ チン も 生理 作 用 を示 し 、し かもジ ャスモン 酸の100
〜10
,000
倍 の活性を 有するこ と等、ジ ャスモン 酸との生理 作用にお けるの類 似性 が 幾っ かのグル ープによ って報告 されてい る。コロナ チンの示 すジャス モン酸様 の生 理 作用 を研究す るために はコ口ナ チンの供 給が必要だ が、菌の 生産性が 低くく、 培養 に よる 供給は困 難なこと からコロ ナチンの 合成法確立 が望まれ ている。 また、コ 口ナ チ ンと ジャスモ ン酸の構 造を比較 すると、 コ口ナチン はジャス モン酸よ りも炭素 鎖が 長 いこ と か ら、 ジ ャス モ ン 酸生 合 成 関連 のPDA
、OPC
類 、ア ミ ノ酸縮 合ジャス モン酸 の 生物 活性に興 味が持た れる。本 論文はコ 口ナチンの 最初の化 学合成と ジャスモ ン酸 生合成関連化合物の生物活性についてまとめたものである。コ ロ ナ チン は コ 口ナ フ ァシ ン 酸 (
3
)と コ □ナ ミ ン 酸(4
) が縮 合した化 合物であ る が、 このうち コロナミ ン酸の合 成法はす でに確立さ れている ので、残 るコ口ナ ファ シ ン酸 の不斉合 成とコ口 ナチンへ の誘導を 行った。コ 口ナファ シン酸の 合成法は 数多 く 報告 されてい るが、従 来の方法 では効率 と不斉合成 への展開 の点で難 がある。 そこ で、今 回新たに 分子内1
,6
−共役付加反応を鍵段階とした合成法を確立した。入手容易 なシク口ペンタノン誘導体[く士)‐5]をアルドール反応と脱水でジェン[(土)‑6]に導い た とこ ろE‑
ジエン のみが立 体選択的 に得られ た。次に環 化をおこ なったと ころ、塩 基 として触媒量のピ口リジンを用ると環化した[(土)‐7]が高収率で得られた。(士)‑7は 異性化をおこなってコ口ナファシン酸エステル[く土)‑8
]へと誘導できた。さらに、塩基とし てナ卜リウムエトキシドを用いると一挙に[く土)‑8]が得られ、加水分解して(土).
コ 口 ナ フ ァシ ン酸 を得 た。 この 方法 では 入手 容 易な シク 口ペ ンテ ン−
1
‐ オ ンか ら7段階 、 通 算 収 率34
% で ( 土 ) ‐ コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 を 合 成 で き る 。 次 に コ口 ナフ ァシ ン酸 の不 斉 合 成 を 行 っ た 。 出 発 物 質 と な る 光 学 活性 な[ (十 )‑5]は最 近柴 崎ら によ って 報告 され たGa
ーNa
ーBINOL
錯 体 を 用 い て3
段 階 、 収 率70
% 、98
%e
.e
. で 合 成 し た 。 続 い て ラ セ ミ 体 合 成 と同 様に 反応 をお こな って (十 ) ‑コ 口ナ ファ シン 酸を 得た 。こ の時 、あ らか じ め導入 した不斉炭素がアリル位になることから[(十)‑5]と合成した(十)‑コ口ナファシン 酸 工 チ ル エ ス テ ル の 光 学 純 度 を 比 較 し た と こ ろ 、 い ず れ も98
%e
.e
. と 合 成 途 中 で の ェ ピ メ リ 化 は 全 く 起 こ ら ず 出 発 物 質 の 光 学 純 度 が 生 成 物 に 完 全 に 反 映 さ れ る こ と が 確 認 され た。 今 回合 成し た(3
) と別 途合 成 され た( 十) ‐コ 口ナ ミン 酸の保護体を縮合し、最 後 に 脱 保 護 を 行 っ て 、 天 然 由 来 の コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 を 用 い な い コ 口 ナ チ ン の 初 め て の 不 斉 合 成 に 成 功 し た 。 ま た 、 コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 合 成 の 出 発 物 質 の シ ク 口 ペ ン タ ン 部 を シ ク 口 ヘ キ サ ン に 換 え て コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 合 成 と 同 様 に 導 く と、 シス _デ カリ ンが 得 ら れ た こ と か ら 、 今 回 新 た に 確 立 し た 分 子 内
1
,6
. 共 役 付 加 反 応を 鍵段 階と した コ口 ナ フ ァ シ ン 酸 合 成 法 は 、5
,6
一 縮 環 系 以 外 に6
,6
一 縮 環 系 に も 適 用 可 能 で あ る 。コ 口 ナ チ ン の
C6
位 に 関 す る 異 性 体 と ジ ャ ス モ ン 酸 生 合 成 関 連 化 合 物を 合成 して 、/ヾ レ イ シ ョ 塊 茎 細 胞 肥 大 試 験 と バ レ イ シ ョ 塊 茎 形 成 誘 導 試 験 と を 行 っ た 。 コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 異 性 体 の 構 造 活 性 相 関 を バ レ イ シ ョ 塊 茎 形 成 誘 導 試 験 に よ り 行 っ た と こ ろ 、 コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 の 活 性 発 現 に はC6
位 ア ル キ ル 基 の 有 無 が 重 要 で あ り 、C6
位 の 相 対 立 体 配 置 が 非 天 然 型 の も の は 天 然 型 に 比 べ 活 性 が 低 下 す る が 、C6
位 ア ル キ ル 基 の 長 さ は 活 性 に は あ ま り 影 響 し な い こ と が 解 っ た 。 ま た 、 コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 にACC
が 縮 合 す る と コ 口 ナ フ ァ シ ン 酸 自 身 よ り も 活 性 が 強 く な る こ と が 解 っ た 。 一 方 、 ジ ャ ス モ ン 酸 生 合 成 関 連 化 合 物 を パ レ イ シ ョ 塊 茎 細 胞 肥 大 試 験 に 供 し た と こ ろ 、 ア ミ ノ 酸 縮 合 ジ ャ ス モ ン 酸 の 中 で はL‑
イ ソ 口 イ シ ン が 縮 合 し た も の が 最 も 強 い 活 性 を 示 し た が ジ ャ ス モ ン 酸 自 身 の 活 性 よ り も 弱 か っ た 。 こ の 時 、 コ 口 ナ ミ ン 酸 あ る い はACC
が 縮 合 し て も 活 性 が 低 下 、 あ る い は 消 失 し て し ま う こ と が 解 っ た 。 こ れ に 対 し てOPC
類 で は 、 ジ ャ ス モ ン 酸生 合成 前駆 体 では ないOPC
−7:0,‑5:0,3:0
,1:0
はバ レイ ショ 塊茎 細 胞肥大試験におい て 活 性 が な い もの の、 ジャ スモ ン酸 生合 成前 駆体OPC
−8
:O,‑6:0,‑4:0
では ジャ ス モン酸 と同 程度 の活性がみられた。しかし、これらはジャスモン酸に代謝されている可能 性が高く、今後さらなる検討が必要である。
H ‑‑
Coronafacic acid 3
H M e
C02H
Amino acid canjugated Jasmonic acid tine1
Coronamic acid 4
H
H
― 48
OPC1: 0
Jasmonic acid 2
n 5
4 3 2 1 0
OPC 8:0 7:0 6:0 5:0 4:0 3:0
o o e
I 爵
, o
( お‐5
LDA/THF, ‑78 'C 1) MsCI, DMAP /CH2CI2. VTsOH, Acetone
C02Et
CH0 2) D8U, CH2CI2, r. t. 99%
□
98 cYo e. e.
( 必‐3
COzEt
10%Pd‑C AcOEt
2 steps 89%
C02H
3 steps 76%
3N HCI, reflux 95%
NaOEl/ ElOH 80 %
o F
C02Et + C02Et :
‑‑'
( 錨 一83 : 1
( ヰ ,9
o F
C02El + C02Et ‑‑
N (+)‑8 t+)‑9 3:1
3N HCI, reflux
WSC, DMAP, Et3N /CH2CI2
‑ 49―
―メ 3
COzH
学 位 論 文 審 査 の要 旨
主査 教授 市原耿民
副査 教授 宮下正昭(理学研究科)
副査 助教授 吉原照彦
学 位 論 文 題 名
コ ロ ナ チ ン の 全 合 成と 関 連 化 合物 の 生 物 活性
本 論 文 は 序 論 、
3
章 か ら な る本 論 な ら び に 実 験 部 で 構 成 さ れ 、 図23
、Scheme 25
、 表1
を 含 む 総 頁 数106
の 和 文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文6
篇 が 添 え ら れ て い る 。コ ロナ チン (1) は牧 草の 一種 イタ リア ンラ イグ ラス にか さ枯病 を起 こす 病原 細菌
(Pseudomonas syringaepv
.aとr
〇pu
亅ureめ の生 産す る植 物毒素であり、本菌の培養 液 から単離、構造決定された化合物である。最近コロナチンは植物ホルモン様の種々の 生 理作 用を有 する ジャ スモ ン酸 (8
)との構造類似性が指摘され、実際にジャスモン酸 が その 生理作 用を 示す パイ オア ッセ イ系 にお いて 、コ 口ナ チンは100
〜10.000倍の高 い 活性を有することが明らかにされてきた。しかし、本菌の培養によるコロナチンの供 給 は生産性が低いため、効率的な合成法の確立が望まれていた。本論文はコ口ナチンの 最 初の 不斉全 合成 とジ ャス モン 酸生 合成 関連 化合 物の 生物 活性にっき述べたものであ る。コロ ナチン の構 成ア ミノ 酸で あるコロナミン酸(3)の合成法はすでに確立されてい る ので 、残る コロ ナフ ァシ ン酸 (
2
)の不 斉合 成と コロ ナチ ン(1
)への誘導法を検討 し てい る。2のラ セミ 体の 合成 法については多数の報告があるが、不斉合成に適用する に は難 点があ った 。今 回新 規分 子内1
.6―共役付加反応を鍵段階とした2の実用的合成 法 を確 立した 。本 合成 の特 色は コロナファシン酸のC
ヨョの立体化学を固定することに よ り、C6
`C7ヨの 立体 化学 を制 御している点である。光学活性コロナファシン酸(2) の 合 成に 先立 って まず ラセ ミ体 の2を 以下 のよ うに 合成 した 。入手 容易 なシ クロ ペン タ ノン 誘導体 (4
)よ ルア ルド ール縮合を経て、立体選択的にE
トジエン5を得ている。さ らに ナトリ ウム エト キシ ドを 塩基として
1
.6一共役付加反応を行うと5からコロナフ ァ シン 酸エチ ルエ ステ ル(6
) とこ の立体 異性 体(7
) が3:1
の割合で得られた。最後 に6
を加 水 分 解 し て シ ク ロ ペ ン テ ノン 誘導 体4から 通算 収率34
%で (土 )ー コ口 ナフ ァシン酸(2)を得ている。次に光学活性コロナファシン酸(2).を合成するため、既知の不斉マイケル反応を利 用 す るこ とに よル シク 口ペ ンテ ノン誘 導体
4
を 合成 した 。こ のあと 、ラ セミ 体の 合成と同様の反応により(十)―コ口ナファシン酸(2)を得た。この過程で、不斉マイケル 反 応に より 生成 した 不斉 炭素 の光 学純度 の低 下が 懸念 され たが 、出 発物 質4と合成し た (土 )− (2) の光学純度を測定したところ、いずれも98%eeと合成過程でのエピヌ リ 化は 認め れら れず、4の光学純度がそのまま保持されている事が確認された。最後に 合成した(十)−コ口ナファシン酸(2)と(十)―コ口ナミン酸(3)の保護体を縮合、
脱 保 護 を 経 て コ ロ ナ チ ン (
1
) の 初 め て の 不 斉 合 成 に 成 功 し た 。COHOFi 念F ←ー
ゴ 6
― CorDnat.inel
HH022C H
Coronamic acid 3
コロナ チン (1)の
C6
位 に関 する異 性体 とジ ャス モン 酸生 合成 関連 化合 物を合成し て、バレイショ塊茎細胞肥大試験と塊茎形成誘導試験を行った。コロナファシン酸(2) の 類縁体 の生 物活 性試 験に より 、こ の活 性発 現にはC6位の立体配置が非天然型のもの は 天然型 に比 ベ活 性が 低下 する こと 、ま たC6位アルキル基の有無が重要であり、この 長 さには あま り影 響を 受け ない こと 、2に エチ レン の生 合成 前駆 体ACC(1一アミノ−1
− シク 口プ 口バ ンカルポン酸)が縮合すると活性が高まることが明らかとなった。さ ら にコ口 ナチ ン(1
) の構 造か ら、ジ ャス モン 酸(8)にアミノ酸類が締合した化合物 に 生理活 性が 期待 され たが 、L‑ロイ シン の縮 合物に活性がみられたものの、その活性 は8
よ り も 低 下 し た 。 これ に対 して ジャ スモン 酸生 合成 前駆 体で ある ○PC類(9
、3‑オキソ―シス‑2−(2−ペンテニル)−シクロペンタン脂肪酸)では○PC8:0、6:O、4: