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博 士 ( 農 学 ) 寺 脇 良 悟

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 寺 脇 良 悟

学 , 位 論 文 題 名

わ カ ヾ 国 に お け る 乳 牛 集 団 の 育 種 計 画 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  わが国乳牛の遺伝的改良は米国およびカナダからの種畜(主として若雄牛)

の導入によるところが大きい。昭和49年から牛群検定事業が開始され、現在 約40%の乳牛が検定を受けている。この検定記録を利用して種雄牛の遺伝的 能力評価値が平成2年度以来公表され、酪農家が種雄牛を選択するときの資 料に利用されている。また、雌牛についても能力評価値が公表されようとし ている。血統登録事業、凍結精液と人工授精のほば100%の普及に加えて、牛 群検定事業とその記録収録によって、わが国乳牛改良の体制が整備されつつ ある。本研究では、gene flow法ならびに本法の不備を自ら改善した演算法 を用いたコンピュータシュミレ―ションによって、育種計画の根幹を構成す る種畜の供用年数、後代検定のための調整交配割合ならびに外国集団からの 種畜導入が長期ないし短期の遺伝的改良量に及ばす効果を明かにし、最適な 育種計画を検討した。

1.遺伝的改良量への各選抜径路の寄与

  父、母牛から雄、雌子牛(若雄、雌牛)への遺伝子伝達径路毎にその伝達 量と実現可能な選抜強度に基づいて、50年後までの遺伝的改良量を予測し、

径路間の相対的重要性を検討した。母牛の選抜効果は最も早期に発現するが、

選抜強度が弱いので改良効果は小さい。10年後では一般種雄牛(検定群父牛)

の選抜効果が最も大きくなる。種雄父母牛の効果発現は前者より更に遅れる。

種雄父牛は最も強い選抜が可能なことから、50年後では遺伝的改良量への寄 与が最も大きくなる。このように、選抜による長期、短期の遺伝的改良効果 の発現様相は径路間で大きく変わる。最も強い選抜が可能な種雄父牛の選抜 効 果 発 現 を 早 め る た め に 早 期 選 抜 の 方 策 が 今 後 の 課 題 で あ る 。 2.種雄牛の最適な供用年数

  種畜の供用年数が長いことは毎年の更新頭数が少なレヽことによる強い選抜 と、産次記録や血縁個体数の増加に伴いより正確な選抜によって世代当りの 改良量が大きくなる。その反面、世代間隔が長くなり年当りの改良量は必ず しも高まらない。供用年数を1から10年と変えたときの50年後までの改良量 を予測し最適な供用年数について検討した。種雄父牛の選抜効果は短期(25 年後)では3年、長期(50年)では5年のときに最も大きくなるが、それぞ れ3から5年、5から7年の供用 年数の間で大きな差は認められなかった。

検定群父牛については、長期、短期の改良量ともに5から10年の供用年数の 間で殆ど差がなかった。これらに対して、牛群検定事業に参加していなレ丶乳 牛群に交配される種雄牛(非検定群父牛)の選抜効果は長期、短期の改良量 共に供用年数が長くなる程大きくなる。選抜効果発現の遅れ1年に6%の割 引率を課した改良量で比較したとき、最適な供用年数はいずれの径路とも若 干短くなる傾向が認められるが割引率の影響は大きくなかった。また、互い に他の径路の供用年数の影響を受けることが認められ、3径路の種雄牛の供

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用年数5年のとき総期 待改良量が最も大きくなった。しかし、3から7年の 間に大きな差はなかった。また、6%の割引率を想定しても供用年数5年の とき最も大きくなった。

3.後代検定材料牛生産のための調整交配割合

  若雄牛の遺伝的能カは娘牛成績に基づく後代検定で評価されている。その ための交配を調整交配と呼び、現在わが国では、検定牛の約10%を占めてい る。この交配割合を高めることにより、検定若雄牛頭数の増加による強い選 抜ないしは若雄牛当りの娘牛頭数の増加による選抜の正確度の高まりによっ て、遺伝的能カのより高い種雄牛の選抜が可能になる。その反面、能カの未 確認な若雄牛の遺伝子もまた集団中に広まる危険を伴っている。検定牛およ び非検定牛を合わせた全乳牛の平均遺伝的改良量は、一般に調整交配割合が 20ないし70%と高まるにっれて大きくなった。しかし、種雄牛の供用年数が 長くなるに伴い低い調整交配割合でプラ卜一に達し、さらに長期(50年)の 改良量は更に低い割合でプラト―ないしは逆に減少傾向を示した。種雄牛の 供用年数5年のとき、50%以上の調整交配割合では殆ど差がなく改良量も大 きかった。これを検定牛群と非検定牛群とに別々に改良量を予測してみると、

両群の様相に大きな差が認められた。即ち、検定牛群では30―40%で最も大き くなり、それ以上の割合に高めると改良量の減少が認められた。これに対し て、非検定牛群では調整交配割合が高まるにっれて改良量が増加した。種雄 牛の後代検定の負担をすべて検定牛群農家が担っていることを配慮すれば、

最適な調整交配割合は30%であり現状の割合を更に高める努カが必要である。

4.外国集団からの種畜の導入による改良効果

  これまで閉鎖集団を想定したときの最適な育種計画を検討してきた。現実 には若雄牛の大半が米国から導入されている。また、わが国乳牛集団とこれ らの外国集団との聞には乳量で約600kgの差があると推測されている。この 様な差が存在する限り外国からの導入は今後とも続くと考えられるが、その 効果を正しく把握し適切な導入割合を検討しておく必要がある。初期の遺伝 的能力差を400、600、800kgと外国集団の年当り改良量(遺伝的趨勢)を60、 80kgを想定して、導入割合0、25、75、100%のときの集団の改良量を他の径 路選抜も含めて予測し検討した。初期遺伝的差の遺伝的改良量への効果は比 較的早期に現れ、導入元集団の遺伝的趨勢は徐々に現れてくる。最終的には 集団平均値は導入元集団と平行に推移する。導入割合が大きいほど導入元集 団の水準により近づく。導入元集団との間に400―800kgの差があるときに、

集団の遺伝的改良に対して導入割合は供用年数、調整交配割合よりも重要で あった。また、導入元集団の遺伝的趨勢が80kg以上のとき、国内産の若雄牛 が種雄牛として選抜されなかった。

  わが国現行の育種計画では米国の乳牛集団の水準に追いっくことは困難で あることが明らかにされた。今後の育種計画の改善策と。して、MOET(過剰排 卵処理と胚移植技術)ならびにMAS(標識遺伝子を利用した選抜)を応用し、

種雄牛の早期選抜と選抜強度を高め、更に調整交配割合を現状の10%から30

%程度にまで高める育種計画の策定が必要である。

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学位論文審査の要旨

    主 査  教授  清水  弘     副 査  教授  朝日 田康 司     副 査  助教 授  上 田純 冶     学 位論 文題 名

    わ が 国 に お け る 乳 牛 集 団 の 育 種 計 画 に 関 す る 研 究 本 論文 は、図34、表16、引用文献86を含み5章で構成した和文論文である。

  わ が国 の牛群 検定 事業は昭和49年度に開始され、検定場方式に替わって検 定記 録を 利用し た種 雄牛 能力 評価が 平成2年 度以 来公表されている。更に、

雌牛 につ いても 全国 的規模での能力評価が実施されようとしており、遺伝的 改良 の体 制が整 備さ れつっある。乳牛集団は世代が重複した複雑な交配構造 をし てい るため に、 育種計画全般の検討は十分になされていない。本論文で は、 種畜 の供用 期間 、種雄牛能力評価のための交配ならびに外国集団からの 種畜 導入 を中心 に、 従来の手法の不備に改善を加えたシュミレーションによ って それ らの最 適化 について検討した。その内容は次のように要約される。

1. 親か ら子 への遺 伝子 の伝 達に基 づく 選抜 径路 につい て、50年 後ま での遺 伝子の 伝達 量と 親畜 の選抜 強度 から 、集 団の改良量に及ぼす各径路の相対的 寄与を 明ら かに した 。母牛 の選 抜効 果は 最も早期に発現するが、選抜強度が 制限さ れ改 良効 果は 小さい 。10年後 では 一般種雄牛(検定群父牛)の選抜効 果が最 も大 きく なる 。種雄 父母 牛の 選抜 効果は前者より更に遅れるが、強い 選抜が 可能 なこ とか ら、長 期的 な(30―50年後)改良量への寄与が最も大き くなった。

2. 種畜 の供 用年数は選抜強度ならびに選抜の正確度と世代間隔に互レ丶に逆 の効果 を及 ぼし 、こ れらの 要因 を介 して 年当り改良量に影響を及ばす。そこ で、50年後 まで の改 良量に つい て種 雄牛 の最適な供用年数を明らかにした。

種雄父 牛の 選抜効果は短期的.(25年)には供用年数3年、長期(50年)では 5年のとき最も大きいが、それぞれ3−5年ヤ5―7年の間で大きな差はなかった。

検定群 父牛 は長期、短期とも5−10年の供用年数の間で殆ど差がなかった。こ れに対 して 、非 検定 牛群に 交配 され る種 雄牛の選抜効果は50年後まで供用年 数 が長 く な る ほ ど 大 き か っ た 。選 抜効 果発現 の遅 れ1年に6%の割 引率 を課 した改 良量 で比 較し ても、 最適 な供 用年 数はいずれの径路とも若干短くなる 傾向が 認め られ るが 割引率 の影 響は 大き くなかった。また、互いに他の径路 の 供用 年 数 の 影 響 を 受 け る こ とが 認め られ、3径路の 種雄 牛の 供用 年数5年 のとき 総期 待改良量が最も大きくなった。しかし、3−?年の聞に大きな差は な く 、 現 状 に 近 い 5年 が 種 雄 牛 の 最 適 な 供 用 年 数 と 結 論 し た 。

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5年 の と き 、50% 以 上 の 交 配 割 合 で は 殆 ど 差 が な く改 良 量 も 大 き か っ た 。 こ れ を 検 定 牛 群 と 非 検 定 牛 群 と に 別 々に 改 良 量 を 予 測 し て み る と 、 両 群 の 様相 に 大 き な 差 が 認め られ た。 即ち 、検 定牛 群で は30ー40%で最 も大 きく 、そ れ以 上 に 高 め る と 改 良 量 の 減 少 が 認 め られ た 。 し か し 、 非 検 定 牛 群 で は 調 整 交配 割 合 が 高 ま る に っ れ て 改 良 量 が 増 加し た 。 種 雄 牛 の 後 代 検 定 の 負 担 を す べて 検 定 牛 群 農 家 が 担 っ て い る こ と を 考慮 す れ ば 、 最 適 な 調 整 交 配 割 合 は30%で

の構築が必要であると結論してレヽる。

  以上 の 研 究 成 果 は 、 わ が 国 乳 牛 集 団 の 遺 伝 的 改 良 を 一 層 早め る た め の 最 適 な 育 種 計 画 策 定 に 有 用 な 知 見 を 提 供 し て い る 。

  よっ て 審 査 員 一 同 は 、 別 に 行 っ た 学 力 確 認 試 験 の 結 果 と 合わ せ て 、 本 論 文 の 提 出 者 寺 脇 良 悟 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

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参照

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