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博 士 ( 農 学 ) 木 村 良 臣

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 木 村 良 臣

学 位 論 文 題 名

ビ ー ル の 製 造 技 術 と 香 味 品 質 に関 する 研究      学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  世 界 各地で時 代とともに 多種多様 なビール が誕生し てきたが 、醸造方 法に本 質的 な 違いは ない。19世紀 なかば、 ピルゼン 市(チェ コスロバ キア)で 誕生し たピルス ナーピー ル(原麦 汁10〜12エキス /,%、アルコール4〜5 /,%)は 世界 各 地で生 産されるビ ールの主 流を占め る淡色ビ ールであ る。1970年代 に米 国で 広 まった ライトビー ル(原麦 汁7〜8%、 アルコー ル3〜5%) は軽快な 香味 を特 徴 とする 低カロリー の新しい タイプの ビールで ある。ほ かに濃色 の黒ピー ル( 原 麦汁12.5% 、アルコー ル5.5%) やスタウ トビール (原麦汁1〜8%、ア ルコ ー ル8%) な ど があ る 。 日本 の ピール の製造技 術はドイ ツから導 入された もの で あるの で、今日で もそのべ ースはド イツ技術 において いるが、 日本のビ ール 製 造技術 として新た にアレン ジされた ものも少 くない。 これまで ピールの 香味 を 定量的 に表現する ことが難 しく、化 学分析技 術も香味 成分の極 く一部を 測定でき るに過ぎ なかった 。

  ビ ー ルの香味 品質を設計 し、実際 にこれを 実現しよ うとすれ ばビール 香味、

化学 分 析値及 び製造法の 相互関係 が明らか にされて いる必要 があり、 このため 官能 検 査ヘ統 計学的手法 を適用し てビール の香味特 性を数量 化して評 価する方 法を 確 立した 。さらに高 濃度ピー ル及びラ イ卜ピー ルを開発 するにあ たり、香 味品 質 を実現 するための 新規醸造 法の開発 ならびに ビールの 香味安定 性を向上 する た めの醸 造条件を明 らかにす ることに より、新 商品開発 の新しい 技術の開 発 を 目 的 と し て 研 究 を 実 施 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 次 の 通 り で あ る 。 . 、 1. 高 濃 度 ビ ー ル の 製 造 技 術 開 発 お よ び 香 味 品 質 改 善 の 試 み   1)高濃度 ビールの 香味特性 と噌好性

    ピ ー ル の 基 本 香 味 特 性 を 表 現 す る 用 語 と し て 国 際 的 に も 広 く 使 わ れ     て い る 多 数 の 用 語 か ら20の 用 語 を 選 び 、 そ れ ら 用 語の 官 能特 性 に 関す     る 心 理 量 を 、 強 度 と 嗜 好 性 尺 度 と し て 計 量 し 、 重 回帰 分 析 法に よ り 解     析 し て ビ ー ル の 香 味 特 性 を 数 量 化 し た 。 香 味 の よさ に 対す る 官 能     特 性 の 寄 与 率 は97% と 大 き く 、 こ れ ら20の 官 能 特性 を 評価 す れ ばビ ー     ル の 香 味 特 性 を ほ ぼ 完 全 に 把 握 で き る こ と を 示 し 、ピ ー ル の官 能 検 査     法 を 確 立 し た 。 高 濃 度 ビ ー ル の 「 香 味 の よ さ 」 は 「麦 芽 香 味」 、 「 エ     ス テ ル 香 味 」 、 「 こ く み 」 、 「 甘 味 」 の4香 味 特 徴 と 、 そ の 調 和 性     ー177―

(2)

    

「 まるみ 」に よっ て決定されていると判断され、原麦汁15 %ピールの

    

「 香味の よさ 」が

13

%、17 %に比べて最も優れていた。また香味安定

    

性 は原麦 汁濃 度が 高くなるほど向上し、特に15 %ピールの香味安定性

    

は顕著に良好であった。

  2

)糖及び窒素成分の摂取と揮散性成分の生成に及ぼす麦汁濃度と発酵温度

    

の影響

    

酢 酸 エ チ ルの 生成 は摂取 され たエ キス 量が多 いほ ど、 また窒 素成 分

    

の 摂取量 が少 なく 、酵母の増殖が少ないほど多く生成する傾向が認め

    

ら れた。 酢酸 エチ ルの生成は発酵温度が高くなってもやや増大する程

    

度 である が、 麦汁 濃度が高くなると原麦汁濃度あたりの生成の増大は

    

顕著であった。

2

.ピールの醸造条件および香味安定性

  1

)醪、麦汁の酸素吸収とピールの香味安定性

    

醸 造 パ イ ロッ トプ ラント の仕 込工 程に おいて 醪や 麦汁 に通気 して 酸

    

化 させる と麦 汁の 溶存酸素量が高くなり、得られたピールは酸化を防

    

い で 調 整 した 麦汁 からの 対照 ビー ルに 比べて 、色 度が 濃く、 ポリ フ

    

ェ ノール 含量 が少 ない。酸化還元電位、還元力、酸素吸収能などの酸

    

化 還元指 標か ら見 て酸化状態にある。保存すると混濁安定性が悪く、

    

強い酸化臭がついて香味安定性が著しく劣った。

  2

)主発酵条件とピールの香味安定性   `

    

大 型 醸 造 パイ ロッ トプラ ント を用 いて 主発酵 パラ メー ターを 種々 の

    

組 み合わ せで 変え た場合に低温発酵の実用性を保ちながら、香味安定

    

性 の向上 が図 れる かにっき試験した。酸化臭指標(亜硫酸含量、酢酸

    

イ ソアミ ル含 量) と実用性指標(全ダイアセチル含量、発酵日数、酵

    

母 回収倍 率) を設 定した結果、指標を満足させる発酵条件として10 ℃

    

発 酵 を 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 目 的 と す る 醸 造 法 を 案 出 し た 。

3

.ライトピールの香味設計技法の開発

  1

)醸造パイロットプラント及び工場での醸造によるライトピールの香味品

    

質分析

    

高 濃 度 醸 造で はエ ステル の生 成が 著し く促進 され るこ とが確 認さ れ

    

た 。イソ フム ロン

9

〜14mg/ セの範囲で「苦味の快さ」の評価がよかっ

    

た。原麦汁濃度が8 .5 %を超えるとカロリーが30kcal /10 0m‑e を超え

    

る 。12 オ ンス (355m‑C )壜で

100kcal

/壜 未満 に抑えるには28kcal /

    100me

以下 でな ければ なら ない と判断 され た。 高濃度醸造ピールと低

    

濃 度醸造 ピー ルの プレンドビールの香味評価は高いものが多かった。

  2

)化学分析値、官能検査値を用いた数理統計解析によるライトビールの

    

香味設計

    

ラ イ ト ピ ール の「 香味の よさ 」に 強く 影響す る香 味特 性は通 常の ピ

(3)

2

    ールに比べて「軽快さ」、「苦味の快さ」との相関が高い。試醸ライ     卜ピールの香味特性と化学分析値との単相関をみた結果、「苦味の快     さ」、「こくみ」、「まるみ」、「軽快さ」そして「香味のよさ」な     どの香味特性は窒素成分量(全窒素あるいはホルモン態窒素)、エス     テル含量、イソフムロン含量の3因子に強く依存していることが判明     した。

    開発するライトピールを 非常に軽く、すっきりしているが水っぱ     いアメリカンタイプのライトピール とは、はっきり一線を画し、従     来のピルスナータイプのピールに近い独自の香味特徴を有する領域に     香味地図上位置付けた。

新 し い 発 酵 法 「 分 割 発 酵 法 」 に よ る ラ イ ト ピ ー ル製 造 技術 の 開 発 化学分析値と醸造方法との対応解析

    ピールのカロリーは発酵度が多少変動しても、原麦汁濃度によって   ほぼ決まることが判明した。ライトピールのカロリーは通常ピール   (原麦汁10 ‑‑,12%)と明らかに差のある原麦汁濃度に設定すべきで外   国ピール及び試醸ピールの香味評価から7.5%以下の原麦汁濃度では   優れた評価のピールがないことから、8%が設定すべき原麦汁濃度の   下限と考えられた。試醸ライトピールについては発酵度とビール香味   の間に明らかな相関は見られなかった。高濃度発酵をする場合は、糖   度の切れが緩慢になる傾向があるので14℃程度の高温発酵を採用した   方がよい。

    ライトピールでは 水っぼさ ヽ 物足りなさ を補うために、高   エステル含量を確保することが必要である。今回試みた醸造方法のう   ちで望ましいエステル含量に達したのは15%以上の高濃度発酵後、炭   酸水あるいは低濃度ビールで稀釈するという方法であった。安定的に   高エステル含量を維持するには、高濃度ピールは18%程度、低濃度ビ   ー ル は 4% 程 度 と す る の が 適 当 で あ る と 判 明 さ れ た 。

「分割発酵法」の考案

    開発ターゲットを満たすライトピールの分割発酵法は「14〜21%の   高濃度麦汁を最低14℃で発酵させて十分にェステル類が生成した時点   で別に発酵させた3〜6%の低濃度麦汁発酵液で原麦汁濃度6〜9%相当   にまで稀釈・ブレンドして、この混合ビールを更に後発酵させて熟成   させる方法」である。

    高濃度麦汁の望ましい原麦汁濃度は16〜20%で、低濃度麦汁のそれ   は4‑5%である。また低濃度麦汁の全窒素含量は30mg/100g以上であ   ることが望ましいと判断された。

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論 文題名

ビ ールの製造技術と香味品質に関する研究

  本諭文は、和文253頁、図65、表66、5章からなり、ほかに参考諭文10編が付 されている。

  世界各地で時代とともに多種多様なピールが誕生してきたが、醸造方法に本 質的な違いはない。19世紀なかば、ピルゼン市(チェコスロバキア)で誕生し たピルスナーピール(原麦汁10〜12エキスシ′W%、アルコール4‑5、r/v%)

は世界 各地で生産されるピールの主流を占める淡色ビールである。1970年代に 米国で急速に広まったライトピール(原麦汁7〜8%、アルコール3〜5%)は軽 快な香味を特徴とする低カロリーの新しいタイプのビールである。ほかに濃色 の黒ピール(原麦汁12.5%、アルコール5.5%)やスタウトピール(原麦汁18

%、アルコール8%)などがある。ピールの製造は、伝統と経験に基づく技術 分野であり多様なピ―ルの香味の特徴を定量的に表現することが難しく、数量 化して的確に評価することは困難と考えられていた。

  本研究は、化学分析と官能検査ヘ統計学的手法を適用してピールの香味性を 解析することにより香味特性を数量化して評価する方法を確立し、それを応用 して新しいタイプのピールを迅速、適確に設計、開発することを意図してなさ れ た も の で あ る 。 研 究 の 結 果 は 、 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。

  1.ピールの基本香味特性を表現する用語として国際的にも広く使われてい る多数の用語から20の用語を選び、それら用語の官能特性に関する心理量を、

強度と嗜好性を尺度として計量し、重回帰分析法により解析してピールの香味 特性を数量化した。 香味のよさ に対する20の官能特性の寄与率は97%と大 きく、これら20の官能特性を評価すればピールの香味特性をほぼ完全に把握で きることを示し、ピールの官能検査法を確立した。

  2.国産、輸入のピルスナータイプピールおよび高濃度ビール69試料にっき 官能検査による香味評価を行った。国産と輸入のピルスナーピール、高濃度ピ ールは官能検査によってそれぞれのグループに識別され、高濃度ビールの 香 味のよさ は「麦芽香味」「エステル香味」「こくみ」「甘味」の寄与が大き く、その4香味特性の調和性による「まるみ」によって決定されると評価され た 。こ の 評価 に 基づ き 、高 濃 度ビ ー ルの 製 造条件 を検討して 、原麦汁15

%、低温発酵(5→8→4℃)が最も適当であり、香味の安定性が優れているこ とを示した。

  3.国産ピール60試料にっき20の官能検査値により判別関数分析を試みた結 果、各銘柄ごとの香味の調和性の違いは、7つの官能特性、「こくみ」「エス

哉 男

誠 房

葉 田

千 冨

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

テ ル香 味 」「 酸 化 臭」 「 ホッ ブ の 異臭 味 」「 甘 味 」「 苦 味の快 さJ「炭酸ガ ス の 快さ 」 の官 能 検 査の 正 準変 量 と して 捕 える こ と がで き た。こ れら7っの官 能 特 性値 を 重回 帰 式 に代 入 して 得られた 値をZっの 正準変量 を2軸とす る直角座標 上 に分 布 させ る と ピー ル の各 銘柄ごと にクラス ターを形 成し(香 味地図)、 国 産ピー ルの銘柄を 明確に識 別できる ことを示 した。

  4.ラ イ トピ ー ル とは 従 来の ビ ー ルよ り 「軽 快 」 で「 す っきり」 とした香味 を与え るビールを 総称した ものであ り、多く は原麦汁 の濃度が7.5〜8%の麦 汁 を 発酵 さ せ、 カ ロ リー は 通常 のピール の約70%で ある。輸 入ライト ピール29試 料 の官 能 検査 に よ る評 価 の結 果、その 香味の よさ は 「軽快さ 」と「苦味 の 快さ」 により大き く影響さ れると判 断された 。

  5.59種の ラ イ トビ ー ルを 試 醸 し、 各 香 味特 性 と化 学 分析 値の單相 関を検討 し た。 そ の結 果 、 「こ く み」 「まるみ 」「軽快 さ」「苦 味の快さ 」などの香 味 特 性は 、 窒素 成 分 含量 、 エス テル含量 、イソフ ムロン( 苦味成分 )含量の三 因 子に大 きく依存し ているこ とが判明 した。

  6.ピ ー ルの エ ス テル 含 量は 、 「 軽快 さ 」に 大 き く寄 与 している が、原麦汁 を 高濃 度 で発 酵 さ せる ほ どエ ステルの 生成が促 進される 。米国タ イプのライ ト ビ ール は 、エ ス テ ル含 量 を高 めるため 原麦汁濃 度を高め に設定し て発酵させ 、 炭 酸水 で 稀釈 す る 製造 法 が広 く用いら れている 。このた め幾分 水ぱく 「 こ くみ」 に乏しい、 香味とし ては 物 足りない 感じを 与える。 原麦汁7.5〜8% の まま で 発酵 さ せ ると 、 「こ くみ」「 エステル 香味」に 乏しく、 官能検査の 評 価が低 いものが少 くない。

  7.試 醸 した59種の ラ イト ビ ー ルの 官 能 検査 と 化学 分 析の 反覆対照 により、

ピ ルス ナ ータ イ プ ピー ル の「 こくみ」 を留めな がら「軽 快」で「 苦味の快さ 」 を もつ 新 しい タ イ プの ラ イト ビールの 設計、開 発を試み 、分割発 酵法を考案 し た。こ の発酵法は 、16‑‑ 20%の高 濃度麦汁 を14℃以上 で発酵さ せエステ ル類(

主 に酢 酸 エチ ル ) が十 分 生成 した時点 で、別途4〜5%の低 濃度麦汁 発酵液で原 麦 汁濃 度 の8%相 当 ま で稀 釈 ブレ ン ド して 熟 成さ せ る 方法 である 。この方法 に よ って 開 発さ れ た 新タ イ プの ライ卜ビ ールは、 国内では じめて製 造されたラ イ   ト ピ ー ル で あ り 国 内 ビ ー ル の 多 様 化 の 先 駆 と な っ た も の で あ る 。

  以 新し のみ どに され   ょ 提出 た。

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