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博 士 ( 農 学 ) 真 坂 一 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 真 坂 一 彦

学 位 論 文 題 名

資 源 配 分 か ら み た シ ラ カ ン バ の 開 花 戦 略 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本研 究で は, 北海 道における主要な森林構成種であるカバノ キ科カバノキ属のシラカンバ Betula〆ロルヲルぬvar. japonica (Miq.) Haraを対象に,その繁殖生態として資源配分の視点から 開 花戦 略を 検討 した 。 開花 戦略 とし ては ,1)個体ごとの雌花 ・雄花の配分比に関する性比 配 分戦 略,2)樹 冠内 にお ける 繁殖 器官 の垂 直分 布 パタ ーン に関 する 配置戦略,そして3) 豊 凶 現 象 の3点 を 対 象 に し た 。 そ れ ぞ れ の 研 究 の 背 景 と 研 究 方 法 , 結果 を以 下に 記す 。 1)性比配分戦略

  シラ カン バは 単性 花をもつ雌雄同株の風媒花植物である。こ のような性表現をもつ植物の 性 比配 分戦 略に 対し ,サイズ依存適応度仮説が提案されてきた が,この仮説で説明できない 例 外が 多数 ある 。そ れゆえ,風媒花植物の性比配分戦略を再考 する必要がある。風媒花の受 粉 効率 はき わめ て低 く,花粉の柱頭への到達確率はポアソン分 布にしたがう。これを風媒効 率 と呼 ぶこ とに する 。また,風媒花植物は受粉効率を上げるた めに高密度個体群を形成する 必 要が ある 。こ のよ うな個体群内では,雄花問で限られた数の 雌花をめぐる競争,いわゆる 競 争的 配分 が発 生し て いる と予 想さ れるd本 研究では,この風 媒効率と競争的配分を数理モ デ ルに 組み 込み ,そ の予測傾向と現実の植物の性比配分傾向を 比較した。また併せて,サイ ズ依存適応度仮説の説明能カについて検討した。

  数理 モデ ルは ,風 媒効率と,競争的配分におけるゲーム的状 況の効果を検討するため,次 の4つの モデ ルを 作っ て解 析し た。 すな わち ,モ デ ル1:競 争的 配分 だけ の非ゲーム.モデ ル ,モ デル2:風 媒効 率十 競争 的配 分の 非ゲ ーム ・ モデ ル, モデ ル3:競 争的配分だけのゲ ー ム・ モデ ル, モデ ル4: 風媒 効率 十競 争的 配分のゲーム・モ デルである。解析の結果,モ デ ル1は 全て の個 体が 雌花 だけ を着 ける とい う現 実 的で はな い傾 向を 予測した。モデル2も 同 様に ,全 ての 個体 が同じ性比配分になるという,現実的では ない傾向を予測した。ただし モ デル2は, 繁殖 資源 量の 個体 間差 がな いと いう 意 味で モデ ル4の特 殊例 といえる。モデル 3は ,個 体間 の性 比の ばら っき を予 測し たが ,風媒花植物に観 られる雌花だけを着ける個体 の 出現 を予 測で きな か った 。モ デル4の 解析 によって得られた ナッシュ解は,繁殖資源が少 な い個 体が 雌花 だけ を着け(雌相),繁殖資源が多くなると雄 花だけ着けるという雄相を呈 し ,さ らに 繁殖 資源 が多い個体は雄花数を一定にして残りの資 源を雌花に投資する(雄一定 相 )の が適 応的 とい う 傾向 を予 測し た。 モデ ル4の解析結果に 基づき,仮想個体群を作り,

数 値解 析に よっ て個 体群の構成を検討したところ,繁殖資源量 の個体間差が大きく,風媒効 率 が低 いと いう 条件 ほ ど, 雌相 と雄 相, 雄一 定相の3相が出現 しやすい傾向が認められた。

こ れら の条 件は 現実 の風媒花植物の状況と似ている。実際の植 物個体群では,繁殖資源の増 加 とと もに ,雌 花だ けを着ける個体,雄花だけを着ける個体, 両方を着ける個体が出現する 傾向をもつ 種が数種認められた。シラカンバでも同様に,総花序数が少ない個体に雌花だけ,

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(2)

または雄花だけ着ける個体が出現し,雌花序数は総花序数の増加とともに単調に増加したが,

雄花序数は頭打ちの曲線を描いた。これらの結果は,数理モデル(モデル4)の予測傾向と きわめて似ており,今回作成した数理モデルがは,雌雄同株の風媒花植物における性比配分 戦略の骨格を説明できた可能性が高い。なお,シラカンバの性比配分傾向は,サイズ依存適 応度仮説では説明できなかった。

2)樹冠内における配置戦略

  樹冠内における花序の配置にっいては,雌雄間で垂直分布パターンを比較し,さらに一次 枝単位での性比配分を検討した。繁殖器官は生産性の高い樹冠上部に着けるのが適応的と考,

えられている(生産構造仮説)。シラカンバの繁殖器官の製造コストは,乾重レベルで性差 が認められないため,この仮説に従うならば,雌・雄ともに同様な垂直分布パターンを示す と予想される。一方,散布体の放出位置が高いほど,散布体はより広範囲に散布されること も知られている。種子の場合,広範囲に散布されると更新適地に到達する種子数が増加する と予想される。しかし,風媒花の花粉が広範囲に散布されると大気中の花粉密度が低下する ことが予想される。っまり,雄器官は雌器官より樹冠上部に偏って分布する適応的意義が低 いと予想される(散布範囲仮説)。シラカンバの雌花序・雄花序の垂直分布を調査したとこ ろ,花序数が少ないときは雄・雌両方とも樹冠上部に集中し,花序数が多くなるにっれて,

雌花序は雄花序よりも樹冠上部に偏る傾向が認められた。花序が少ないことは繁殖資源量が 少ないことを反映しているため,生産性の高い樹冠上部に集中することは有利と考えられる

(生産構造仮説)。また,花序が多いときに生じる垂直分布の違いは散布範囲仮説で説明で きる可能性がある。一次枝ごとの性比配分は,個体単位の性比配分と同様な傾向を示した。

っ ま り , 一 次 枝 は 個 体 と 同 様 に 振 舞 っ て い る 可 能 性 が 高 い こ と が 分 か っ た 。 3)豊凶現象

  シラカンバの豊凶現象にっいては,その豊凶特性を評価し,資源収支モデルに基づく豊凶 モデルを作成した。ここでは,北海道大学医学部附属病院で採取されたシラカンバ花粉飛散 量データを分析した。シラカンバの豊凶現象の特性として,その振幅の大きさにっいて変動 係数CVで評価したところ,北欧のカバノキ属樹種で調査された場合のCVとほば同じ大き さの値だった。これらの値は同じカバノキ科のクマシデ属のCVよりも小さく,Lalonde and Roitberg(1992)が示唆する先駆樹種特有の大きさであることが予想された。また,豊凶の 周期性にっいて自己相関分析したところ,対数変換した場合のー1年のタイム・ラグにのみ 有意た負の相関関係が認められた。この結果は,シラカンバの豊凶には明瞭な周期性がない ことを示唆している。

  豊凶モデルの作成では,周期分析の結果からべース・モデルをっくり,べース・モデルか らのデータのばらっきが資源収支によって説明されると考えた。そして資源収支には,シラ カンバの開花結実フェノロジーを考慮し,開芽から蕾形成までの期間に稼いだ資源の指標と して開花前年の5〜6月の気象条件(気温・日照時間)が,また蕾形成年の開芽前の資源蓄 積量,すなわち開花前々年からの繰越資源の指標として,開花前々年の開花結実量が関与す ると予想した。これらを説明変数としてモデルに組み込んだところ,非常に説明能カの高い 豊凶モデルが作成できた。シラカンバは受粉効率を上げるため,大量に開花する必要がある が,資源配分上,毎年大量開花ができないために豊凶を発生させていると考えられる。

  今回の研究ではシラカンバの開花戦略を論じたが,単純な仮定の下で開花戦略がよく説明 できた。それゆえ,他の同様な繁殖形態を採用している樹木においても今回の仮定を摘要で きる可能性が高い。

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学位論文審査の要旨

主査   教授,高橋邦秀 副査   教授    矢島   崇 副査   助教授   渋谷正人

副査   教授   高田壮則(大学院環境科学院)

学 位 論 文 題 名

資源配分からみたシラカンバの開花戦略

本 論 文 は6章 、133頁 の 和 文 論 文 で 、 図29、 表6、 引 用 文 献162か ら な り 、 参 考 論 文 5編が添えられている。

  本 研 究で は , 北 海道 に お け る主 要 な 森 林構 成 種 で ある カ バ ノキ科カ バノキ 属のシ ラカン バBetula p細吻り枇7var.角pD をロ(Miq.)Haraを対象に,その繁殖生態として資源配分の視点 から,次の3つの開花戦略を検討した。

1)性比配分戦略

  シ ラ カン バな ど,雌 雄同株 の風媒 花植物 におけ る性比 配分戦 略を説明 するモ デルと して,

風 媒 効 率 と雄 花 間 に おけ る 競 争 的配 分 を 組 み込 ん だn人 ゲ ーム ・ モ デ ルに 基 づ く 数理 モ デ ル を 構 築 し , 解 析 し た 。 そ して そ の 予 測傾 向 と 現 実の 植 物 の 性比 配 分 傾 向を 比 較 し た。

  モ デ ルの 解 析 に よっ て 得 ら れた ナ ッ シ ュ解 は , 繁 殖資 源 が 少なぃ個 体が雌 花だけ を着け

( 雌 相 ) ,繁 殖資源 が多く なると 雄花だ け着け るという 雄相を 呈し, さらに 繁殖資 源が多 い 個 体 は 雄 花数 を 一 定 にし て 残 り の資 源 を 雌 花に 投 資 す る( 雄 一定相 )のが 適応的 という 傾 向 を 予 測 した 。 こ の モデ ル の 解 析結 果 に 基 づき , 仮 想 個体 群 を作り ,数値 解析に よって 個 体 群 の 構 成を 検 討 し たと こ ろ , 繁殖 資 源 量 の個 体 間 差 が大 き く,風 媒効率 が低い という 条 件 ほ ど , 雌 相 と 雄 相 , 雄 一 定相 の3相 が 出 現し や す い 傾向 が 認 め られ た 。 こ れら2つの 条 件は,現実の風媒花植物の状況と似ている。

  実 際 の植 物 個 体 群で は , 繁 殖資 源 の 増 加と と も に ,雌 花 だ けを着け る個体 ,雄花 だけを 着 け る 個 体, 両 方 を 着け る 個 体 が出 現 す る 傾向 を も つ 種が 数 種認め られた 。シラ カンバ で も 同 様 に ,総 花 序 数 が少 な ぃ 個 体に 雌 花 だ け, ま た は 雄花 だ け着け る個体 が出現 し,雌 花 序 数 は 総 花序 数 の 増 加と と も に 単調 に 増 加 した が , 雄 花序 数 は頭打 ちの曲 線を描 いた。 こ れ ら の 結 果は , モ デ ルの 予 測 傾 向と き わ め て似 て お り ,今 回 作成し たモデ ルが, 雌雄同 株 の 風 媒 花 植 物 に お け る 性 比 配 分 戦 略 の 骨 格 を 説 明 で き た 可 能 性 が 高 い 。 2)樹冠内における配置戦略

  樹 冠 内に お け る 花序 の 配 置 につ い て は ,雌 雄 間 で 垂直 分 布 パターン を比較 し,さ らに一     ―204―

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次枝単位での性比配分を検討した。

  シラカンバの雌花序・雄花序の垂直分布を調査したところ,花序数が少ないときは雄・

雌両方とも樹冠上部に集中し,花序数が多くなるにっれて,雌花序は雄花序よりも樹冠上 部に偏る傾向が認められた。花序が少なぃことは繁殖資源量が少なぃことを反映している ため,生産性の高い樹冠上部に集中することは有利と考えられる。また,花序が多いとき に生じる垂直分布の違いは,種子と花粉が必要とする散布範囲で説明できる可能性がある。

  一次枝ごとの性比配分は,個体単位の性比配分と同様な傾向を示した。っまり,一次枝 は個体と同様に振舞っている可能性が高いことが分かった。

3)豊凶現象

  シラカンバの豊凶現象については,その豊凶特性を評価し,資源収支モデルに基づく豊 凶モデ ルを作成 した。 シラカンバの豊凶現象の特性を表す変動係数CVは,同じカバノキ 科だが極相種であるクマシデ属のCVよりも小さく,Lalonde and Roitberg(1992)が示唆 する先駆樹種特有の大きさであることが予想された。また,豊凶の周期性について自己相 関分析したところ,明瞭な周期がなぃことが明らかになった。

  資源収支モデルの作成にあたっては,シラカンバの開花結実フェノロジーを考慮し,開 芽から 蕾形成ま での期 間に稼い だ資源 の指標と して開 花前年の5〜6月の 気象条件(気 温・日照時間),蕾形成年の開芽前の資源蓄積量,すなわち開花前々年からの繰越資源の指 標として,開花前々年の開花結実量が関与すると予想した。これらを説明変数としてモデ ルに組み込んだところ,非常に説明能カの高い豊凶モデルが作成できた。以上の結果から,

シラカンバは受粉効率を上げるため大量に開花する必要があるが,資源配分上,毎年大量 開花ができなぃために豊凶を発生させていると考えられる。

  今回の研究ではシラカンバの開花戦略を資源配分モデルから論じ,単純な仮定の下で開 花戦略がよく説明できた。それゆえ,他の同様な繁殖形態を採用している樹木においても 今回の仮定を摘要できる可能性が高い。

  以上のように本研究はシラカンバの開花戦略を仮説に基づき検証し、仮説の適合性の高 さを明らかにし、他樹種への応用の可能性も提示した。ことは学会でも高く評価されてお り、樹木の繁殖生態の解明に大きく貢献出来ると考えられる。よって、審査員一同は、真 坂 一 彦 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

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参照

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