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博 士 ( 農 学 ) 徳 山 真 治

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 徳 山 真 治

′ 学 位 論 文 題 名

N − ア シ ル ア ミ ノ 酸 ラ セ マ ー ゼ の 諸 性 質 と そ の 応 用 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  L−アミノ酸は主に直接発醇法により生産されているが、化学合成されたラセミ体 を原料とした酵素を用いる竺産方法もいくっか開発されている。酵素法のーっにL

−アミノアシラーゼをN−アシル―DL−アミノ酸に作用させL−アミノ酸を生産する光 学分割法が知られている。この方法においてLーアミノアシラーゼはL体の基質を立 体選択的に加水分解し、D体の基質は未反応のまま反応系に残存する。このため変 換率は50%を越えることは哲い。原料を全てL―アミノ酸に変換するには残存する D体を反応系から分離後、fヒ学的にあるいは物理的にラセミ化し、再度Lーアミノア シラーゼを作用させる操作を繰り返す必要がある。もし、Lーアミノ酸に作用せず、

N一アシルアミノ酸だけをラセミ化する酵素が存在するならば、L―アミノアシラー ゼとの共同作用により、N―アシルーDL―アミノ酸を見かけ上一段階の反応で全てL 一アミノ酸に変換することが可能となる。また、同様にD―アミノアシラーゼと、こ のようなラセミ化酵素を同時に作用させるならば、同じ原料からDーアミノ酸を効率 よく製造することが可能となる。しかし、アミノ酸には作用せずN―アシルアミノ酸 のみをラセミ化する酵素は全く知られていない。

  このような背景の中で本研究は、光学活性なアミノ酸の効率的な製造法の確立を 目的として、新規ラセミ化酵素を広く微生物界に探索した。

1.新規なラセマーゼの探索

  目的の酵素活性を有する微生物は、その作用によりN―アシル‑D―アミノ酸をL体 に変換し、さらにL―アミノアシラーゼの作用によりL―アミノ酸を生成することが 推定された。スクリーニングは、液体培地にN−アセチル―D−メチオニンを添加して 微生物を培養後、L―アミノアシラーゼを添加し、L―メチオニン生成の有無を調べ て行った。さらに、L−メチオニンはD―アミノアシラーゼとアミノ酸ラセマーゼの 作用により生成する可能性もあるため、D―メチオニンからLーメチオニンを生成し ないことを確認して本酵素の生産菌と判断した。細菌、放線菌、かび、酵母など約 50,000株を 調べ た結果、放線菌類にのみ目的とする酵素生産菌を見いだした。

2.N−アシルアミノ酸ラセマーゼの精製と酵素化学的藷性質

  比較 的強 い酵素 活性 を示 したStreptomyces atratusY−53(Yー53株)およぴ Amycolatopslssp.TS−1―60(TS株)から疎水クロマトグラフイー、イオン交換ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー 、 ゲ ル ろ 過 な ど を 用 い て 、 本 酵 素 を 精 製 し た 。

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  分子量は、Y―53株で約240,000、TS株で約300,000、サブュニツ卜の分子量は そ れぞ れ約41,000、約40,000と推定されたので、それぞれの酵素は6個および 8個の 分子 量的 に同 一の サブュニツ卜から構成されていると考えられた。TS株の 酵素はY−53株の酵素に比ベ熱安定性に優れており55℃,30分間の加熱処理でも安 定であった。アミノ酸関連のラセマーゼでは金属イオンによる活性化は全く報告さ れていないが、本酵素はC02十,Mg2十,Mn2゛などの金属イオンにより活性が著しく促 進された。基質特異性はいずれも同じ傾向を示し、芳香族アミノ酸を合む疎水性ア ミノ酸(メチオニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプ卜フアン、

チロシン、バリンなど)のアシル誘導体に対し作用した。一方、アミノ酸、N―アル キルアミノ酸には全<活性を示さなかった。諸性質および基質特異性から、本酵素 は既知のアミノ酸ラセマーゼとは全く異なる新規なラセマーゼであることが明らか に な っ た の で 、 本 酵 素 を Nー ア シ ル ア ミ ノ 酸 ラ セ マ ー ゼ と 命 名 し た 。 3.耐熱 性N−ア シル アミ ノ酸ラセマーゼ遺伝子のクローニングと大腸菌での発現   本酵素の大量生産法を確立するために、TS株から本酵素遺伝子をスgtllをべク ターとした抗体法を用いてクローニングした。本酵素遺伝子は1107塩基のオープ ンリーディングフレームから成り368アミノ酸残基をコードしていた。N末端のメ チ オ ニ ン はATGで は な くGTGで コ ー ド さ れ 、GC含 量 は 約70%の 値 を 示 し た 。 市販のデータベースを用いてホモロジー検索を行ったが、本酵素遺伝子および推定 されるアミノ酸酉ご列と高い相同性を示すものはなく、本酵素が新規なものであるこ とがこのことからも示唆された。

  本酵素遺伝子を大腸菌で高発現させるためT7プロモーターでの発現を試みた。

部位特異的変異法を用いて本酵素遺伝子の開始コドン部位にlxTdeIサイト、終止コ ド ン 近 傍 にBgl IIサ イ ト を 作 成 し 、T7発 現 ベ ク タ ーpETー3cのNdeI−Bam HI サイトに連結し、発現プラスミドを構築した。このプラスミドを持っ大腸菌川42 94 はIPTG誘導下で本酵素を大量に生産し、その発現量は大腸菌可溶性夕ンパク質の 17〜18%に達した。大腸菌での本酵素の生産性は放縁菌に比べ1100倍に上昇した。

4.形質転換体からのクローン化酵素の精製と諸性質

  クローン化酵素は大腸菌形質転換体を破砕後、熱処理(60℃,30分間)および、

疎水クロマトグラフイーの二段階の精製法により65%の高収率で電気泳動的にほぼ 単一なまでに精製された。クローン化酵素の性質を調べたところ天然型の酵素の性 質とほぼ一致した。クローン化酵素では金属イオンの酵素活性に与える影響がより 明確になり、金属イオン無添加の場合、ほとんど酵素活性を示さなかった。また、

ク ロー ン化 酵素 と天 然型 酵素のアミノ酸組成は一致し、かっDNAの塩基配列から 予想されるものともよく一致した。

5. パ イ オ リ ア ク タ ー に よ る 効 率 的 な 光 学 活 性 ア ミ ノ 酸 の 生 産   L−アミノアシラーゼと本酵素をDEAE−Toyopearl 650Mに吸着させ、カラムに充 填後、N−アセチル―DL―メチオニンを原料として、30℃、SV=1.0、基質濃度、0.5

%の条件下で反応を行った。通常の光学分割反応では、ラセミ体原料の片方の光学 異性体のみを基質とするため、変換率は50%以下である。一方、ラセミ化酵素を添 加 し た 本 反 応 で は 一 段 階 の 反 応 でL− メ チ オ ニン が 変 換 率98%で 生 成 し た 。

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学 位 論文 審 査 の 要旨

学 位 論 文 題 名

N ― ア シ ル ア ミ ノ 酸 ラ セ マ ー ゼ の 諸 性 質 と そ の 応 用 に 関す る 研 究

  本 論 文 は 、 和 文137頁、 図36、表25、 引用 文献55、4編お よび 総括 から なり 、他 に 参考 論文10編 が付 され てい る。

  L− ア ミ ノ 酸 は 主に 直接 発酵 法に より 生産 され てい るが 、N― アシ ル−DL一 アミ ノ 酸 をL− ア ミ ノ ア シラ ーゼ で加 水分 解し 、L一 アミ ノ酸 を生 産す る光 学分 割法 も知 ら れ て い る 。L− ア ミ ノ ア シ ラ ー ゼ はL体 の 基 質を 立体 選択 的に 加 水分 解し 、D体の 基 質は 未反 応の まま 反応 系に 残存 する 。原 料を 全 てL−ア ミノ 酸に 変換 する には残存す るD体 を 反 応 系 か ら分 離後 ラセ ミ化 し、 再度L一ア ミノ アシ ラー ゼを 作用 させ る操 作 を 繰 り 返 す 必 要 があ る。 もし 、L− アミ ノ酸 に作 用せ ず、Nーア シル アミ ノ酸 だけ を ラ セ ミ 化 す る 酵 素 が 存 在 す る な ら ぱ 、L− ア ミノ アシ ラー ゼと の共 同作 用に より 、 N− アシ ル―DL― ア ミノ 酸を 一段 階の 反応 で全 てL‑ニア ミノ 酸に 変換 する ことが可能 とな る。 また 、同 様にD−ア ミノ アシ ラー ゼと 、こ のよ うな ラセ ミ化 酵素 を作用させ るな らば 、同 じ原 料か らD一 アミ ノ酸 を製 造す るこ とが 可能 とな る。 本研 究は、光学 活 性 な ア ミ ノ 酸 の効 率的 な製 造法 の 確立 を目 的と して 、新 規ラ セミ 化酵 素を 広く 微 生物 界に 探索 した 。

  第 一編 ではNー ア シル アミ ノ酸 ラセ マー ゼの 探索 につ いて 、そ して 第二 編では新た に 発 見 さ れ た に つい てそ の諸 性質 に つい て述 べら れ、 下記 の内 容が 含ま れて いる 。   細 菌 、 放 線 菌 、か びお よび 酵母 を 調べ た結 果、 放線 菌類 に目 的と する 酵素 生産 菌 を 見い だし た。 比較 的強 い酵 素活 性を 示し たStreptomyces atratusyー53(Yー53株)

および!』ヱcolatopsis sp. TSー1−60(TS株)から、本酵素を精製した。分子量は、

Yー53株 で 約240,000、TS株 で 約300,000、 サ ブ ュ ニ ツ 卜 の 分 子 量 は そ れ そ れ 約 41,000、 約40,000と 推 定 さ れ た の で 、 そ れ ぞ れ の 酵 素 は6個 お よ び8個 の 分 子 量 的 に 同 ー の サ ブ ュ ニ ツ 卜 か ら 構 成 さ れ て いる と考 えら れた 。TS株 の酵 素はY―53 株 の 酵 素 に 比 ベ 熱安 定性 に優 れて お り55℃,30分 間の 加熱 処理 でも 安定 であ った 。 ア ミ ノ 酸 関 連 の ラセ マー ゼで は金 属 イオ ンに よる 活性 化は 報告 され てい ない が、 本

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男 哉

房 誠

田 葉

冨 千

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

酵素はいずれもC02十,Hg2十,Mn2゛などの金属イオンにより活性が著しく促進された。

両酵素は共に疎水´性アミノ酸(メチオニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニ ン、卜リプ卜フアン、チロシン、バリンなど)のアシル誘導体に作用した。一方、

アミノ酸、N―アルキルアミノ酸には全く活性を示さなかった。これらの諸性質およ び基質特異性から、本酵素が新規なラセマーゼであることが明らかになったので、

Nーアシルアミノ酸ラセマーゼ と命名した。

第三編では耐熱性N−アシルアミノ酸ラセマーゼ遺伝子のクローニングと大腸菌での 発現について述べられ、下記の内容が含まれている。

  本酵 素の大量 生産法を 確立する ために、TS株から本酵 素遺伝子をスgtllをべク ター とした抗 体法を用 いてクロ ーニング した。本酵 素遺伝子は1107塩基のオープ ン1´ ーディン グフレー ムから成 り368アミノ 酸残基をコ ードしていた。っぎに、

本酵 素遺伝子 を大腸菌 で高発現 させるた め、T7プロモ ーターを用いて発現プラス ミ ド 構築し た。この プラスミ ドを持っ大 腸菌MM294は本 酵素を大 量に発現 した。

第四編では、大腸菌による耐熱性N−アシルアミノ酸ラセマーゼの大量生産とクロー ン 化 酵 素 の 精 製 と 諸 性 質 に っ い て 述 べ ら れ 、 下 記 の 内 容 が 含 ま れ て い る 。   T7プロ モーター を用いて 発覗プラ スミド構 築し、この プラスミドを持っ大腸菌 MM294はIPTG誘 導下で本 酵素を大量に生産し、その発現量は大腸菌可溶性夕ンパク 質の17〜18%に達し た。また 生産性は放線菌に比ベ1100倍に上昇した。クローン化 酵素は大腸菌形質転換体を破砕後、熱処理および疎水クロマ卜グラフイーの二段階 の精 製法によ り65%の高収 率で電気泳動的にほぼ単一なまでに精製された。クロー ン 化 酵 素 の 性 質 を 調 べ た と こ ろ 天 然 型 の 酵 素 の 性 質 と ほ ぼ 一 致 し た 。 第五編ではN−アシルアミノ酸ラセマーゼとL一アミノアシラーゼを用いたバイオリ アクターによる効率的な光学活性アミノ酸の生産にっいて述べられ、下記の内容が 含まれている。

  L−ア ミノアシ ラーゼと 本酵素をDEAE−ToYOpearl 650Mに吸着させ、カラムに充 填後、Nーアセチル―DL―メチオニンを原料として反応を行った。通常の光学分割反 応で は、ラセ ミ体原料 の片方の光学異性体のみを基質とするため、変換率は50%以 下である。一方、ラセミ化酵素を添加した本反応では一段階の反応でLーメチオニン が変換率98%で生成し、変換率が大幅に上昇した。

  以上のように、本研究はN一アシルアミノ酸を特異的にラセミ化する新規な酵素を 自然界に見いだし、その諸性質を明らかにした。っぎに、本酵素遺伝子を放線菌か らクローニングし、大腸菌で高発現させ、本酵素の大量生産を可能にした。さらに、

光学活性なアミノ酸の効率的な新製造法を確立した。

  よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提出 者 徳 山 真治 は 博士 ( 農 学) の 学 位を 受 ける のに十 分な資格 があるも のと認定 した。

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参照

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