表面応力と表面弾性定数を考慮した半無限異方性弾性体の弾塑性接触解析 Elastic-Plastic contact analysis for anisotropic elastic material consider surface stress and elasticity
○林 高雄(長岡技大院) 古口 日出男(長岡技大)
Takao Hayashi, Graduate school of Nagaoka University of Technology, 1603-1, Kamitomioka, Nagaoka, Niigata Hideo Koguchi, Nagaoka University of Technology, 1603-1, Kamitomioka, Nagaoka, Niigata
Key Words: Contact mechanics, Anisotropic, Surface elasticity, Elasto-Plastic contact.
1. 緒 言
近年,科学技術の進歩に伴う高精度なセンサーの高機能化,
高機能の小型の電子デバイスの開発の要請に応えるために,
物体表面の物理・科学的特性を高精度で調べることが必要に なってきた.そのためナノインデンテーション試験等を用い て表面の力学的特性を調べる研究が多く行われている.
物体の表面近傍では表面応力や表面弾性定数を考慮するこ とが必要と考え,筆者の一人が表面応力と表面弾性定数を考 慮した異方性表面グリーン関数を導出した(1).また,このグ リーン関数を用いて弾性接触解析を行い,押し込み荷重と押 し込み深さに対する表面応力や材料異方性の影響について述 べた(2).
インデンテーション試験では,圧子を材料の弾性から塑性 領域まで押し込み,その押し込み荷重と押し込み深さの応答 から弾塑性特性を評価する.そのため,インデンテーション 試験との比較検討のために弾塑性接触解析を行う必要がある.
そこで,本研究では弾性接触解析を弾完全塑性接触解析に拡 張し解析を行い,接触圧力分布について調べたので,報告す る.
2.表面グリーン関数
詳細については文献(1)を参照し,ここではその概略を述べ る.異方性材料における平衡方程式は変位ukと弾性定数Cijkl
を用いて,以下のように表すことができる.
Cijkluk,lj=0 (1)
表面応力と表面弾性定数を考慮した境界条件は以下の式で表 すことができる.
1)表面に対して接線方向の境界条件
!i"#i$%"&,&=t" (2)
2)表面に対して法線方向の境界条件
!i3"i#$µ%&µ%"3=t3 (3)
ここで,σijはバルク応力,νiは法線ベクトル,!"#は表面応
力,!"#は表面の曲率テンソル,tiは作用力ベクトルである.
また,添字α,β,µは1,2(表面内に対応),iは1,2,3の値をとる.
表面応力と表面弾性定数の間には以下の関係がある.
!"#=!"#
0 +d"#$%&$%
s (4)
ここで,!"#
0 は表面ひずみが無いときの表面応力,d!"#$は表 面弾性定数,!"#
s は表面ひずみである.式(4)を式(2),(3)に代 入し,平衡方程式を用いて荷重fが作用したときの変位uを 表すと,
u x( 1,x2,x3)= i
4!
1
"A e#ip*"x3
#$
%+$
#$
%+$
&(B+i"F)#1fe#1('1x1+'2x2)d'1d'2
(5) と表すことができる.ここで,
e!ip*"x3 =diag e#$ !ip1"x3,e!ip2"x3,e!ip3"x3%&
A=[a1, a2, a3], B=[b1, b2, b3]
F=
d1!1"n!n" d1!2"n!n" 0 d2!1"n!n" d2!2"n!n" 0
0 0 #µ!
0 nµn!
$
%
&
&
&
'
( ) ) ) a
Q+p(R+RT)+p2T
{ }a=0
b=(RT+pT)a=!1p(Q+pR)a
である.またQik=Cijksnjns,Rik=Cijksnjms,Tik=Cijksmjms, m=[0, 0,1]T ,n=[n1,n2, 0]T =[cos!,sin!, 0]Tである.
3.弾塑性接触問題
3.1 接触解析への表面グリーン関数の適応 一般に,単位集 中荷重に対する表面の応答をK(x1, x2)で表すと,接触圧力p(x1, x2)に対する応答変位w(x1, x2)は次式で求めることができる.
w x( 1,x2)= "# $"#+#p(!1,!2)K x( 1"!1,x2"!2)d!1d!2
$+# (6)
ここでK=u3である.この式をFourier変換すると,畳み込み 演算はそれぞれの関数をFourier変換した関数の積で表され,
%
w(!1,!2)=p%(!1,!2)K%(!1,!2) (7)
と書くことができる.本研究ではLiuら(3)が提案したDC-FFT 法を用いて接触による変位分布を求める.
3.2 弾性接触問題の離散化解法 接触面を含む領域を微小 領域に分け,中心座標を(xi, xj)とする.図1のように押し込み 深さδのときの二面間の間隔gijは,微小領域の変位wijを用 いて以下の式から求めることができる.
gij=hij!" !wij (8)
ここで,hijは初期二面間の間隔である.また,接触時の圧力 分布pijはgijについて以下の関係式から得られる.
Fig. 1 Model for contact analysis δ
x R z
In contact :gij=0 thenpij>0 In separation :gij>0 thenpij=0
pij=
! P0
"
#$$
%
$$
(9)
ここで,第一式は接触格子点での二面間隔gijと圧力pijの関係,
第二式は非接触格子点での二面間隔gijと圧力pijの関係,第三 式は圧力分布pijの総和と押し込み荷重 P0の関係式である.
これらの連立方程式を解くために,PolonskyとKeer(4)が提案 した共役勾配法を用いた.
3.3 弾完全塑性接触問題への拡張 弾塑性接触問題への拡 張方法として,圧力pijの上限値を定める手法がある(4).圧力 の上限値を降伏点と見なし,上限値になった領域を塑性領域 として,それ以上圧力が高くならないようにする.この手法 は完全塑性問題とみなせる.本研究では,CG法に圧力の上限 設定を追加して弾塑性接触解析を行う.圧力の上限値を pmax
とすると,式(9)に以下の条件式を追加する.
pij!pmax (10)
ここでpmaxは材料の降伏応力等により決定する.CG 法のプ ログラムでは式(10)を式(9)の 2 番目と同じ箇所に条件式を作 り,圧力の修正を行う.また,塑性領域の圧力分布はCG 法 のループ計算内では修正せず,弾性領域の圧力分布のみ修正 する.
4.解析結果と考察
4.1 解 析 条 件 解 析 対 象 と し て 材 料 を Au[111]お よ び
Cu[111]の2種類を用い,それぞれの弾性定数は表1のとおり
である.表面応力および表面弾性定数は,分子動力学法より 算出し表 2 の値を用いる.それぞれの圧力の上限値 pmax は Au[111]が4GPa,Cu[111]は6GPaとする.解析モデルは格子
点数256 256で格子間隔が0.5nmである.圧子は剛体球状圧
子で半径300nmとした.
4.2 解析結果 Au[111]と Cu[111]の弾性および弾完全塑性 接触解析による圧力分布の結果を,それぞれ図2と図3に示 す.それぞれの押し込み荷重はAu[111]が5000nNでCu[111]
が 8000nN である.それぞれの図において丸記号が表面応力
と表面弾性定数を考慮した結果.三角記号が表面応力と表面 弾性定数を考慮していない結果である.
図2のAu[111]で,表面応力を考慮した結果としていない弾
性接触解析の結果を比較すると,考慮している場合,考慮し ていない場合と比べて最大圧力が高く,接触半径が小さくな ることがわかる.これは,表面応力を考慮することで,材料 の見かけの硬さが硬くなったためである.また,弾完全塑性 接触解析の結果で,上限値の圧力(4GPa)の箇所が塑性領域で それより小さい箇所が弾性領域である.弾性接触解析と比較 して周辺の弾性領域の圧力が,塑性領域の圧力が制限された ために高くなっている.塑性領域は表面応力を考慮した場合,
考慮していない場合よりも広い.これは弾性接触解析で上限 値の圧力を超えている範囲が表面応力を考慮している方が広 いためである.
次に,図3のCu[111]の結果をついて述べる.弾性接触およ び弾塑性接触解析のそれぞれの結果で,表面応力を考慮して
いる場合としていない場合とで,圧力分布はほぼ同じである.
これは,Cu[111]では表面応力の影響が小さいために,Au[111]
とは異なり表面応力を考慮する場合としない場合の圧力分布 がほぼ同じになった.
このように,Au[111]と Cu[111]では表面応力の影響が大き く異なることがわかる.このため表面応力の影響等について 論議する場合には,その材料ごとに論議していく必要がある と考えられる.
5.結 言
本研究では表面応力と表面弾性定数を考慮した半無限異方 性弾性体の弾塑性接触解析を行った.解析により算出した圧 力分布に付いて論議した.本解析では塑性ひずみ増分を考慮 していないため,変位分布等についての議論はできない.し かしながら,インデンテーション試験では押し込み荷重と押 し込み深さから材料特性を求めるので,塑性解析においては 塑性ひずみ増分を考慮する必要がある.今後は塑性ひずみ増 分を考慮した弾塑性接触解析に取り組む.
参考文献
(1) Koguchi, H., ASME J. Appl. Mech., Vol.75 (2008), 061014.
(2) 古口日出男,林高雄,機論 A 編,Vol.75-756 (2009), pp.
1029-1036.
(3) Liu, S., Wang, Q., and Liu, G., Wear, Vol. 243 (2000), pp.101-111.
(4) Polonsky, I.A., and Keer, L.M., Wear, Vol. 231 (1999), pp.
231-219.
6 5 4 3 2 1 0
Pressure , GPa
25 20
15 10
5 0
x-coodinate , nm Elasto-Plastic, Considering Elastic, Considering Elasto-Plastic, Ignoring Elastic, Ignoring
Fig.2 Pressure distribution for Au[111]
8 6 4 2 0
Pressure, GPa
25 20
15 10
5 0
x-coordinate, nm Elasto-Plastic, Considering Elastic, Considering Elasto-Plastic, Ignoring Elastic, Ignoring
Fig.3 Pressure distribution for Cu[111]
Material C11 C12 C13 C15 C33 C44 C66
Au[111] 213.5 147.83 138.67 12.964 222.67 23.667 32.833 Cu[111] 220.3 104.1 86.8 24.466 237.6 40.8 50.1
Table 1 Elastic constants, GPa
Material !xx and !yy d11 and d22 d12 d66
Au[111] 1.056 7.442 -1.273 4.358
Cu[111] 0.616 -6.340 0.938 -3.639 Table 2 Surface stress and surface elasticity, GPa