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平行円板間のメニスカス不安定現象を利用した表面張力の推定方法の検討
Discussion on a method for estimating surface tension using meniscus instability between circular parallel plates
○ 高寺 晴紀(長岡技科大) 正 古口 日出男(長岡技科大)
Haruki TAKATERA, Graduate School of Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamitomiokamachi, Nagaoka, Niigata Hideo KOGUCHI, Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamitomiokamachi, Nagaoka, Niigata
Key Words: Non-Newtonian Fluid, Air Finger, Viscoelastic Fluid
1. 緒 言
平行平板間に自由表面を有する粘性流体を満たし,板をそれ ぞれ平行に保ったまま引き離していくと,両板面上に残留液膜を 残しながらすき間の中央に空気が入り込んでいく.この時,板を 引き離す速度やすき間の間隔,流体の粘度がそれぞれある条件 の臨界値を超えてしまうと,自由表面に乱れを生じ,その乱れは ヴィスカスフィンガーとして成長し,板面上に液体が樹枝状パタ ーンをていして残留する.この自由表面が乱れる現象はメニスカ ス不安定と呼ばれ,ゴムローラで壁にペンキなどを塗った場合,
転がり軸受内の潤滑膜が破断する場合などに起きる.本検討で はメニスカス不安定により自由表面に乱れが発生し始めた頃の 乱れの波数とキャピラリ数の関係[1]から,グリースの表面張力の 推定と検討を行う.
2. 理論解析
2.1 基本解 ここでは,グリースのような非ニュートン流体の 液膜破断現象における理論解析から,局所キャピラリ数
C
anと波 数m
の関係式を導出する過程を説明する.非ニュートン流体の 流れを解析するためには,連続の式,運動方程式および非ニュ ートン特性を表す構成方程式が必要となる.スクイズ運動をする 平行円板間にべき乗則流体がある場合を考える.基本的に粘性 流れであり慣性力は省略できると考え,以下の解析を行う.式(1) は非圧縮性べき乗則流体の構成方程式である.ij ij
ij
p e
2
………(1)
2 2
2
2 4
2
2
2
(1)/2
e
rre
qe
zze
ze
zre
r n ……(2) ここで,pは圧力,eijは円柱座標系でのひずみ速度である.式(3)は連続の式である.
1 r
r
rVr V z
z
0………(3) ここで,Vr,Vzはそれぞれ半径方向およびすき間方向の流速で ある.解析のための座標系を図 1 に示す.z座標の原点はすき間 の中央にとる.下板は固定し,上板を一定速度
V
Sで引き離す.こ では,簡単化のためe
zr≒( 1 / 2 )( dV
r/ dz )
が支配的と考える.そ の結果,
は式(4)のように簡単になり,その場合の運動方程式 は式(5)で与えられる.) 1 (
n r
z
≒
V
………(4)0
1
0
n r r
z V z V z r
p
………(5)ここで,
p
0とは自由表面に摂動を与えない場合の軸対称流れ に対する圧力の解である.式(5)をz
に関して積分して,z=0 で∂Vr/∂z=0
およびz=±h/2
でV
r=0
の境界条件を用いてV
rを求 めると式(6)が得られる.ここで,hはすき間で時間の関数で ある.
n n
n n n n r
z h dr
dp dr dp n
V n
/ ) 1 ( / ) 1 ( / ) 1 ( 0 0
2 1
1
1
………(6) 圧力分布は,式(3)の連続の式をzで積分し,
r=0
でdp/dr=0
の境界条件を用いて,式(7)のように求められる.1 1 1
2
1 2
4 1 ) 2
( C
n r h n V n r p
n n n n
S
………(7) 式(7)をHele-Shaw
セルにおける研究で導かれた境界条件[2] [3]の下で解くと,圧力分布は式(8)で示される.
1 1
1 2 0
1 1 2 1 2
4 ) 2
(
n n n
n n
S a
R n r
h n V n
R T h p T R p
………(8)
2.2 局所キャピラリ数と波数の関係 いま,板のすき間の 中央面における自由表面形状が式(9)のように与えられたとする.
) cos(
) ( ) , ,
1
( R t R t e
m
R
t ………(9) この式でR_
は自由表面の平均半径,
t
は時間,mは波数,ωは 乱れの時間に対する波長・減衰支配するパラメータである.この時,自由表面の乱れに応じて自由表面近傍の流体中の圧 力分布も式(10)のように乱れたとする.
) cos(
) ( )
, ,
( r t p g r e
m
p
o
t ………(10)ここで,
g(r)は自由表面の乱れによる圧力変動の r
方向の分布関数で,連続の式と圧力の境界条件から決定される.こ こでは
ω
を求めることにより与えた摂動の成長と減衰に関 する中立安定条件を求める.ω
は界面の運動方程式から求め ることができる.自由表面のr
方向の平均移動速度は,式(6) より式(11)で与えられる.2 / ) 1 ( / ) 1 (
2 1
1 1
n n n r
h dr
dp dr dp n
V n
………(11)この式の左辺に,式(9)を時間で微分して求められる自由表面 の移動速度を,右辺に式(10)を代入し,ωの一次の項をまと めると次式が得られる.
R r n n n
n
dr dp dr dg dr
p d n h n
n
0 (1 )/
2 0 / 2
1
( 1 1
2 1
2
…(12)z
θ r
Liquid Glass plate
Fig.1 Analysis model
乱れの成長は,
ε
を含む項のexp(ωt)
のω
の正負により決ま る.このω
は式(12)より式(13)のように求まる.
4 2
12 1 2 1 2
4 1 2
2 1
2 2
1 1 2 2
2
V h m C m mn n R h
T V
an n
n S n
S
………(13)
α
1は式(14)で示される.2 4 ) 1 ( ) 3
(
2 21
n m n
n
………(14)また式(13)の
C
anは式(15)で定義される非ニュートン流体の無次 元パラメータの局所キャピラリ数である.2
2
11 2
12 R
V h n n C T
n n r an
………(15) 式(13)から
ω≧0 にする C
anは,式(16)を満たすm
の範囲である.) 2 (
48
) 1 0 (
2
1 2
2 2 1
2
m m C m
m
, an ………(16) 次にω
を最大にする波数の条件により非ニュートン流体の場 合の局所キャピラリ数と波数m
の関係を導く.式(13)を波数m
で 微分することにより,式(17)が求められる.
n m n
n n n m
n m n
n n m m
Can m
2 2 2
2 2 2
2 2
4 1 1
1 2
4 1 1 1 1 2 1 3 2 48
………(17)
3. グリースの特性値
3.1測定方法 コーン/プレート式レオメーターを使用し2つ の方法でグリースの粘度測定を行う.方法 1 はプレートを一方向 に回転させ,せん断応力を測定する一般的な方法である.方法 2 ではプレートの回転方向に小さい往復運動を加えながらプレー トを回転させ,せん断応力を測定する.測定時の温度は 25℃で ある.また,せん断応力対せん断速度の比を見かけ粘度し式(18) に示す.
/
………(18) 3.2測定結果
図 2 に測定結果と累乗近似の線を示す.
せん断速度が 500s-1以上になると、見かけ粘度が低下するように 見えるが、グリースサンプルがコーンとプレートのすき間からはみ 出されたためと考え,近似結果から除外する. 2 つの方法の測 定結果を比較すると,2つの方法ともほぼ等しい傾きを示してい るが,方法2の方が全体的に高い粘度を示している.グリースを 非ニュートン流体として扱い,せん断応力とせん断速度との間に 式(19)のような関係があるとして,その特性値を求める.結果を表 1 に示す.
n
………(19) 4. グリースの表面張力の推定4.1 推定方法及び考察
2
枚のガラス円板のすき間を平行 に調節し,すき間ゲージを用いてガラス板間のすき間を所定の 初期すき間h
0に調整する.すき間を一旦拡げ,下板上にグリー スを均一に塗布する.再び上板を下げ,すき間内にグリースが均 一に満たされるように初期すき間h0に戻し,一定速度で上板を引 き離す.板面上に液体が樹枝状パターンを形成する様子を円板 下方からビデオ撮影し,乱れの発生直後の乱れの波数を測定す る.そして乱れの波数と式(15),式(17)からグリースの表面張力を 推定する.実験条件を表 2 に示す.4.2 推定結果及び考察 乱れの波数を横軸にとり,各乱れ の波数における表面張力を推定した結果を図 3 に示す.破線は 全ての実験結果から得られた推定値の平均である.図 3 に示す ように,推定値は各初期すき間の大きさによらず,ほぼ一定の値
を示し,平均値は
0.285mN/m
となった.しかし各初期すき間にお いて,表面張力が乱れの波数の増加に伴い減尐していることが 確認できる.そのため実験における引き離し速度を更に増加させ た場合,キャピラリ数の増加に伴い表面張力の値は本検討で求 めた数値以上を示すことも推察できる.5. 結 論
本検討ではメニスカス不安定現象より生じる乱れの波数とキャ ピラリ数の関係より表面張力の推定を行った.その結果,各実験 条件においてほぼ等しい値を示した.今後はさらに,平板の引き 離しに要するエネルギから表面エネルギの算出を行い,本検討 より得られた結果と比較検討を行う予定である.
参考文献
[1]高村祥司, メニスカス不安定と非晶質材料の破面パターンの 形成,平成元年度長岡技術科学大学修士論文.
[2]Park, C.W. and Homsy, G.M., J. Fluid. Mech., 139, PP.
291-308, (1984).
[3]Reinelt, D.A., J. Fluid. Mech., 183, PP. 219-234, (1987).
1 10 100 1000 10000 100000
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000
Shear rate , s-1 Viscosity, Pa・s
M ethod1 M ethod2
Fig.2 A relationship between viscosity and shear rate
Table 1 Properties of grease
Base oil Ester synthetic oilThickener LiOHSt
Penetration No.3
n 0.2129
κ, Pa・sn 499.47
Table 2 Experiment condition Initial liquid radius R
0, mm
50Initial gap h
0, mm
0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0Tension rate V
S, mm/min
0.5, 1, 2, 5, 10, 20, 50, 1000.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
40 50 60 70 80
Nondimentional wave number , m
Surface Tension T , mN/m
h0=0.9mm h0=0.8mm h0=0.7mm h0=0.6mm h0=0.5mm h0=0.4mm h0=0.3mm Average