日本機械学会[
No.0127-1
]北陸信越支部 第49
期総会・講演会 講演論文集 [2012.3.10 石川県野々市市]0708
分子動力学法による界面構造の力学的応答解析(界面・表面特性の影響) Analysis of stress field in anisotropic materials joints using molecular dynamics
(Effect of surface and interface mechanical properties)
正 古口 日出男(長岡技科大) ○学 加藤 修(長岡技科大)
Hideo Koguchi, Department of Mechanical Engineering, Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamioka, Nagaoka 940-2188
Osamu Kato, Department of Mechanical Engineering, graduate school of Nagaoka University of Technology
Key Words: Molecular Dynamics, Interface, Elastic constants, Interface stress, interface energy
1.はじめに
本研究は,分子動力学法を用いてナノスケールの異方
性異材接合体の表面・界面特性および界面端部の特異応力 場の特性について調べたものである.一般に材料の大きさ が小さくなるに伴い,表面エネルギに起因する表面応力,
表面弾性特性がバルクの応力場に影響を与えると考えられ る.はじめに界面エネルギ,界面応力,界面弾性定数を求め た後,二つの異なる材料から成る接合体のくさび形切欠先 端近傍における原子応力の分布を調べる.さらに,界面上 の原子応力分布の特性評価を行い,
Stroh
形式を用いた特異 性オーダの解析と分子動力学法の解析との比較を行う.2. 分子動力学法
本研究では分子動力学法を用いて解析を行う.
分子動力学法では原子の動きを以下のようなニュートン運動方程 式により求める.
m
!a
!= F
!= !E
!!r
!"(1)
ここでmαは原子
α
の原子質量, aαは原子α
の加速度, Fαは原 子α
に加わる力, E
αは原子α
のもつポテンシャルエネルギ, r
αβは原子α , β
間の距離を表す.本研究ではポテンシャルエネルギ
E
はGEAM
ポテンシャ ル(1)を用いて解析を行った.3. 弾性係数,界面エネルギ,界面応力,界面弾性係数
界面応力および界面弾性係数は界面エネルギの界面ひす
みによる変化割合を表す物理量であり,界面応力は界面エ ネ ルギの一階微分,また界面弾性定数は,界面エネルギを 二階 微分で与えられる.原子レベルでの不連続構造体にお ける有効な弾性係数として原子弾性係数C
α, 原子応力σ
α がある.原子弾性係数, 原子応力はそれぞれ以下の式で表 される(2)C
ijkl!= 1
!
!"
2E
!"#
ij"#
kl, !
ij"
= 1
!
!" E
!"#
ij(2)
ここでΩαは原子
α
に対するボロノイ多面体の体積である.また
ε
ijはi,j
方向のひずみである.固体の界面エネルギγは,新しい単位面積の界面を作る
エネルギとする. これは理想概念であり,実際新しい界面 を作るのに, 転位の誘発や移行といったエネルギ散逸の過 程を伴う. また界面エネルギは界面付近の特異応力場に影 響を及ぼす. 界面エネルギは界面ひずみε
の関数で次式の ように表される.! ( "
ij) = !
0+ #
ij0"
ij+ 1
2 d
ijkl0"
ij"
kl(3)
ここで
γ
0,τ
0,d
0はそれぞれ無ひずみ状態における界面エネ ルギ, 界面応力テンソル, 界面弾性係数を表す.原子レベルでの不連続構造体における有効な原子界面 弾性係数
C
α, 原子界面応力σ
αは次式で求められる.d
ijkl!= 1
!
!"
2(#
0)
!"$
ij"$
kl, %
ij!= 1
!
!" (#
0)
!"$
ij(4)
4.Stroh 固有方程式を用いた特異応力場の算出方法 4.1 異材接合体と特異応力場
図 1 のようなモデルの異種材料界面角部の特異応力場は 角部の特異点を原点として,特異点からの距離
r,界面に対
する角度をθ
とするとWilliams
の固有展開法により次のよ うに表すことができる.!
ijM= C
kr
!"kf
ijkMk=1 N
" ( # ) (5)
ここで
C
は応力集中の大きさを表すスカラ量である応力拡 大係数、λ
は特異性固有値、f(θ )は角度関数である.また
f( θ )は材料定数と角度形状により決定され荷重量には影
響されない.
4.2 Stroh 固有方程式を用いた特異性固有値角度関数 異材界面角部の特異性固有値解析として
Hwu
らによりStroh
固有方程式を用い求めることができる. (3)Stroh
固有方程式では変位u
i,応力σ
ijを次のように表す.u
i= a
if (z) !
i= b
if (z) z = x
1+ px
2(6)
!
i1= !"
i,2,!
i2= !"
i,1ここで
a
i,b
iはStroh
の固有ベクトル,p
はStroh
の固有値と 呼ばれ,材料の弾性係数から求められる.図 1 のような 2 種類の材料の接合体のモデルでは自由表
面の応力自由の条件および界面における応力、変位を連続 とするとすることにより,固有値λ
の値を求めることがで きる.同様に角度関数も求めることができる.Fig.1 Geometry of an Fig.2 Analyzed model interface corner
θ Materia
Materia
5.解析 5.1 モデル
接合体として図2のようなΓ3を界面とし異材界面角部 を有するモデルを用いた. Γ1の法線方向に
100MPa
の力 を加える.
Γ2は自由表面である.
また,
界面が[001]
にな る よ う な 結 晶 構 造 を 持 つ. MD
解 析 に 用 い た モ デ ル はr=7nm
とし厚さは約2nm
とした.
モデル全体の原子数は13,000~15,000
個である.z
方向には周期境界条件を設定した. また界面で整合界面になるようにした. Material 1,
2
はそれぞれCu, Ni
とした.5.2 固有値解析, 角度関数解析
固有値解析を求めた.固有値解析ではωを変化させ固有 値
λ
を求めた.このときλ c< λ b< λ a
となるように決めた. そ の結果を図3
に表す. 固有値解析の結果よりλは0< λ <0.5
の範囲に入ることがわかる.
またω
が 172 を超えたあた りから複素数になる.次に角度関数解析を求めた.角度関数解析では
ω
=170 のθ
に対するyy
方向の角度関数を求めた. その結果を図4
に 表す. Fc
はどの角度でも0となることがわかる.
Fig.3 Eigenvalue singularity
Fig.4 Anguler function
5.3 MD 法による応力分布解析
MD 法により応力分布の解析を行った. 図 5 に y
=0 面上のσ
yyの分布を, 図 61, 図 62にそれぞれ界面から 63 の応力 分布と界面上の応力分布を示す.実線は固有値解析, 角度 関数解析により求められた値を用いフィッティングした結 果である. ここでは式(5)のモードa
の項のみでフィッティ ングした. 界面上の応力分布は固有値解析, 角度関数解析 により求められた値ではフィッティングできない. 界面特 性の影響が出ていると考えられる.5.4 界面特性の解析
図 7, 図 8 はそれぞれ特異点からの原子界面応力, 原子 界面弾性係数の分布である. 破線は, くさびのないモデル の界面応力,界面弾性係数である. x=0 の特異点付近では 界面応力はプラス方向に大きくなり, 界面弾性係数はマイ ナス方向に大きくなる.
Fig.5 Stress distribution
Fig.6 Stress distribution ( θ =63, θ =0)
Fig.7 Interface stress
Fig.8 Interface elastic module
5.結言
MD 法により界面上にくさびのあるモデルの応力分布を
求めた. 界面上では連続体力学で求めた解とは異なってい た. 今後は MD 法で求めることができた界面特性がどのよ うに応力特性に影響が及ぶのか調べる必要がある.参考文献
(1)
X.W.Zhou, H.N.G.Wadley, R.A.Johnson, Atomic Scale Structure of Sputtered Metal Multilayer, Acta mater., 49, pp.4005-4015, (2001).
(2)
Chyanbin HWU, Masaki OMIYA, Kikuo KISHIMOTO, A Key Matrix N for the Stress Singularity of the Anisotropic Elastic Composit Wedges, (JSME International Journal) Series A, Vol.46, No.1, 2003, pp.40-50)
(3) 泉 聡志,原 祥太郎, 熊谷 知久, 酒井 信介, 半導体 材料 の界面応力/弾性定数の原子レベル評価, 機械学会 講演 論文集, No03-06, (2003).
λa
λc λb