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算数・数学授業づくり

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Academic year: 2021

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(1)Title. 算数・数学授業づくり. Author(s). 三橋, 功一. Citation Issue Date. 2013-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/6916. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) ! ! ም ૠ ȷ ૠ ‫ܖ‬ ੉ ಅ Ʈ Ƙ Ǔ. ‫׎‬ ᇌ ‫ٻ‬ ‫ܖ‬ ඥ ʴ ҅ ෙ ᢊ ૙ Ꮛ ‫ٻ‬ ‫ܖ‬ ࠯ ঺ ʚ җ ʞ ࠰ ɤ உ. !. ੫జ˾జ‫ޘ‬ଆࢢзСќ!. ! ৥ᅓഩ‫ޘ‬ေ௵ၜ‫ݤ‬๵࢏‫ڏ‬ഩ‫!ޘ‬ ࿱ఴφω໇χद!.

(3)

(4) Instructional Design of Arithmetic and Mathematics. HOKKAIDO UNIVERSITY OF EDUCATION. March, 2013. -1-.

(5) は. じ. め. に. 日本の教師は,授業研究・校内研修・同僚との協働等の活動により,教師に とって不可欠な教育力や授業力を育み,学校教育を支えています。これらの活 動は, 「教師の学び」として「成長する教師・成長し続ける教師」の原動力とな っています。また,日本の「教師の学び」は,外国でも 1990 年代に「レッス ン・スタディ」として紹介され,高い評価を受けるとともに,諸外国の教師に とっても学びのモデルとして注目されています。 近年,国際教育到達度評価学会(The International Association for the Evaluation of Educational Achievement (IEA))による国際数学・理科教育動向調査(Trends in International Mathematics and Science Study (TIMSS)),及び経済協力開発機構 (Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD))による国際学 習到達度調査(Programme for International Student Assessment (PISA))において, 日本の子どもの学力は上位群に位置していますが,「算数・数学の学習が好き」 や「算数・数学の勉強に対する自信」等の算数・数学の学び及び学びの対象へ の向き合い方等が課題となっています。 北海道教育大学は,将来教師をめざす学生の「教師への学び」及び小・中学 校等の先生方の「教師の学び」を担う大学として,上記課題を解決するための 教育・研究を進めております。具体的には,本学の中期計画「小・中学校の理 数科教育について,教育内容・方法を研究・開発し,その成果を現職教員研修 など学校教育支援や国際協力に活かす。」の一環として「算数・数学教育プロジ ェクト」を平成 22 年度に創設し,算数・数学の授業づくりに関する研究を進 めてきました。また,本プロジェクトは,大学の数学・数学教育教員と附属学 校教諭を構成員とし,日常の小・中学校の子どもたちを対象とした授業実践や 教育実習生指導等の経験に基づいて研究を進めてきました。 このたび,本プロジェクトの研究成果として,冊子『算数・数学の授業づく り』を刊行しました。本冊子は,教師経験が 5 年未満であり,教師として成長 期にあると考えられる若い先生方を対象に,充実した授業を実践できる,また 子どもたちが「算数・数学の勉強は楽しく好き」あるいは「算数・数学の勉強 は自信があるよ」と実感できる等, 「教師の学び」の手がかりとなるように編集 されています。特に「第 2 章 小学校算数授業づくり」から「第 3 章 中学校. -2-.

(6) 数学授業づくり」は,小・中学校 9 年間の算数・数学の子どもの学びの特徴と 工夫を理解できるように, 「授業づくり,授業過程に即した実施のポイントや工 夫」について具体的に記載されていますので,ぜひお読みいただきたいと思い ます。さらに豊かな授業を求めるときには, 「第 1 章 算数・数学の授業づくり のために」や「第 4 章 豊かな授業づくりのために」をお読みいただきたいと 思います。 「教師の学び」は,毎日の授業実践における「授業づくり・実施,振り返り」 であり,それが「成長する教師・成長し続ける教師」の原動力になっていると 熟達した先生方からよく聞きます。若い先生方におかれては,この「教師の学 び」において本冊子をご活用いただき, 「成長する教師・成長し続ける教師」と なられますよう期待いたしております。 平成 25 年 3 月 国立大学法人北海道教育大学 理 事 蛇 穴 治 夫. -3-.

(7) 目. 次. ■はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2. ■目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4. 第1章. 算数・数学の授業づくりのために ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7. 第1節 問題解決の授業づくり(相馬) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第2節. 算数・数学的活動に焦点をあてた教材研究(早勢) ・・・・・・・・・・・ 12. 第3節. 子どもの考えを活かす授業の進め方(三橋) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16. 第4節. 評価(久保) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20. 第2章. 小学校算数授業づくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25. 第1節. 繰り下がりのあるひき算(足立) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26. 第2節. 水のかさ(野田) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30. 第3節. 円と球(古川) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34. 第4節. 変わり方(冬野) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38. 第5節. 平行四辺形と三角形の面積(高橋) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42. 第6節. 合同な図形(阿部) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46. 第7節. 分数のわり算(斉藤) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50. 第8節. 比例と反比例(高橋) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54. -4-.

(8) 第3章. 中学校数学授業づくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59. 第1節. 正の数・負の数(辻川) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60. 第2節. 空間図形(上田) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64. 第3節. 資料の活用(角地) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68. 第4節. 連立方程式(斉藤・谷地元) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72. 第5節. 平行と合同(森) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76. 第6節. 一次関数(谷地元) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80. 第7節. 平方根(森) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84. 第8節. 関数y=ax2(辻川) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88. 第9節. 標本調査(中村) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92. 第4章. 豊かな授業づくりのために ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97. 第1節. 図形領域(和地・杉山) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98. 第2節. 数を体系的に理解させる指導のあり方(大久保) ・・・・・・・・・・・ 102. ■あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106. ■プロジェクトメンバー(執筆者一覧) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108. -5-.

(9) -6-.

(10) 第1章. 算数・数学の授業づくりのために. -7-.

(11) 問題解決の授業づくり 第2章,第3章で紹介されている算数・数学の授業例は,いずれも「問題解決の授業」 です。 □なぜ「問題解決の授業」なのでしょうか? □「問題解決の授業」とはどのような授業なのでしょうか? □「問題解決の授業」をつくるためのポイントは何でしょうか? 本節では,このようなことについてまとめます。 1.これから求められる算数・数学の授業 な ぜ 「 問 題 解 決 の 授 業 」 な の か , そ れ は ,「 問 題 解 決 の 授 業 」 が こ れ か ら の 算 数 ・ 数 学 の授業で求められるからです。このことを,算数・数学で育てる学力,算数・数学科学習 指導要領から確認します。 (1)算 数 ・ 数 学 で 育 て る 学 力 を 再 確 認 す る 算数・数学でどのような学力を育てるのかによって授業は変わります。育てる学力を再 確認した上で,そのための授業づくりをすることが必要です。 教育基本法,学校教育法が改正され,基礎的・基本的な知識・技能,思考力・判断力・ 表現力及び学習意欲を重視し,学校教育においてこれらを調和的にはぐくむことの必要性 が規定されています。 このような学力のとらえ方は「新しい」ことではありません。例えば,教育課程審議会 答 申 (平 成 12 年 12 月 )で は , 学 力 に つ い て 次 の よ う に 述 べ ら れ て い ま す 。 「. 現 行 の 学 習 指 導 要 領 (平 成 元 年 )に お い て は , 知 識 や 技 能 だ け で は な く , 自 ら 学 ぶ 意 欲や思考力,判断力,表現力などの資質や能力などまで含めて学力ととらえており, 新 し い 学 習 指 導 要 領 (平 成 10 年 )は , こ う し た 学 力 の と ら え 方 を 一 層 深 め , 言 わ ば 学 力 の 質 の 向 上 を 図 る こ と を ね ら い と し て い る の で あ る 。」. 私たちがこれまで育ててきたこのような学力をこれからも大切にして,学力の質の向上 を図るための授業づくりが求められます。 算数・数学では,公式を知っているとか計算ができるなどの「知識・技能」を確実に身 に 付 け る こ と は も ち ろ ん 大 切 で す 。 し か し , そ れ に と ど ま る こ と な く ,「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 」,「 学 ぶ 意 欲 」 も バ ラ ン ス よ く 同 時 に 育 て る こ と が 必 要 で す 。 そ の た め の 授 業 が , 2.で 確 認 す る 「 問 題 解 決 の 授 業 」 で す 。 「知識・技能」にとどまることのない学力を! 「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 」,「 学 ぶ 意 欲 」 も バ ラ ン ス よ く 同 時 に (2)算 数 ・ 数 学 的 活 動 を 一 層 充 実 す る 平 成 20 年 改 訂 の 学 習 指 導 要 領 で , 算 数 ・ 数 学 科 の 重 点 は 「 算 数 ・ 数 学 的 活 動 を 一 層 充 実する」ことです。 学習指導要領の算数・数学科の目標では,冒頭に「算数・数学的活動を通して」という 文言があり,目標を実現するための授業は算数・数学的活動を通して行われることが強調 されています。. -8-.

(12) [ 小 学 校 算 数 科 の 目 標 ] (… … 部 分 は 省 略 ) 算数的活動を通して,数量や図形についての……. ,算数的活動の楽しさや……。. [中学校数学科の目標] 数学的活動を通して,数量や図形などに関する……. ,数学的活動の楽しさや. 数学のよさを実感し,……。 算数・数学科の目標で「算数・数学的活動の楽しさ」や「数学のよさ」も強調されてい ることをふまえ,これらが実現されるような授業づくりをすることが求められています。 ま た ,『 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 算 数 編 』( 文 部 科 学 省 平 成 20 年 ) に は 「 算 数 科 に お い ては,問題を解決したり,判断したり,推論したりする過程において,見通しをもち筋道 を立てて考えたり,表現したりする力を高めていくことを重要なねらいとしている」とい う記述があります。このねらいは,教師が一方的に説明したり,教師が指示を与えながら 教科書通りに授業をすすめたり,単なる計算練習を繰り返したりするだけでは実現するこ とはできません。 さ ら に ,『 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 数 学 編 』( 文 部 科 学 省 , 平 成 20 年 ) に は 「 数 学 的 活 動は基本的に問題解決の形で行われ」という記述があります。このことからも,算数・数 学 的 活 動 を 一 層 充 実 さ せ る た め の 授 業 と し て ,「 問 題 解 決 の 授 業 」 を 行 う こ と が 求 め ら れ ていることがわかります。 2.算数・数学科「問題解決の授業」 日 本 の 算 数 の 授 業 で は ,「 問 題 解 決 の 授 業 」が 広 く 行 わ れ て い ま す 。そ し て ,算 数 の「 よ い授業」として他の国からも高く評価されています。算数・数学的活動を一層充実するた めには,中学校数学でも「問題解決の授業」を日常的に行うことが求められます。 こ こ で は ,「 問 題 解 決 の 授 業 」 と は ど の よ う な 授 業 な の か 確 認 し ま す 。 (1)結 果 だ け で は な く 過 程 を 大 切 に す る 「問題解決の授業」は, 問題の解決過程を重視する学習指導 で ,「 算 数 ・ 数 学 の 授 業 に お け る 学 習 指 導 法 」 と し て 位 置 づ け ら れ ま す 。 さ ら に 具 体 的 に 述べるならば,次のような学習指導です。 問題を提示することから授業を始め,その問題の解決過程で新たな知識 や技能,数学的な見方や考え方などを同時に身に付けさせていく学習指導 教師が一方的に教え込んだり説明するのではなく,問題に対して子どもが主体的に取り 組むことを大事にしながら学習指導を展開していきます。 授 業 は ,「 問 題 を 提 示 す る こ と 」 か ら 始 ま り ま す 。 そ の 問 題 を 解 決 し て い く 過 程 で , 児 童・生徒の中に次のような気持ちが生まれるようにしたいものです。 「 お や ? 」「 な ぜ ? 」( 目 標 , 必 要 感 ) ↓ 「 考 え て み よ う 」「 や っ て み よ う 」( 学 習 意 欲 ) ↓ 「 わ か っ た 」「 で き た 」( 達 成 感 , 充 実 感 ). -9-.

(13) 第2章,第3章の授業例では,問題を提示したあとの授業の流れはすべて同じではあり ません。しかし,どの授業も,結果だけではなく過程を大切にした「問題解決の授業」で す 。 問 題 を 解 決 す る 過 程 で ,「 知 識 ・ 技 能 」 に と ど ま る こ と な く ,「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 」,「 学 ぶ 意 欲 」 も バ ラ ン ス よ く 同 時 に 身 に 付 け さ せ て い ま す 。 ま た , ど の 授 業 例 で も 算 数 ・ 数 学 的 活 動 を 通 し た 授 業 が 行 わ れ ,「 算 数 ・ 数 学 的 活 動 の 楽しさ」が感じられる授業になっています。 (2)「 問 題 解 決 の 授 業 」 へ の 誤 解 を な く す る 「問題解決の授業」については,次のア~オのような誤解もあるように思われます。こ のような誤解をなくして授業づくりに取り組みたいものです。 ア. 時々行うだけの「特別な授業」ではない 特別な準備をしなければできない,大変な授業であるかのような誤解です。また,普段. の 授 業 で は で き な い が 研 究 授 業 だ か ら 挑 戦 す る と い う も の で も あ り ま せ ん 。「 問 題 解 決 の 授業」の日常的な継続があってこそ,研究授業でも行うことができるはずです。 イ. 「型に当てはめる授業」ではない 「つかむ→見通す→ためす→確かめる→まとめる」など,いろいろな流れで授業が行わ. れ て い ま す 。 し か し ,「 い つ で も こ の 流 れ で 」 と , 型 に 当 て は め る 授 業 で は あ り ま せ ん 。 その授業の目標や問題,児童・生徒の実態などに応じて柔軟に展開する必要があります。 ウ. 「特別な問題」である必要はない 「問題解決の授業」の「問題」は,例えば日常生活と関連づけたり,ゲーム・パズル的. なものにしなければならないという誤解もあります。また,場面設定に凝った長文の問題 にすることもあります。教科書や問題集によくあるような問題を少し工夫しただけで「よ い 問 題 」 に な り ま す 。「 特 別 な 問 題 」 で あ る 必 要 は あ り ま せ ん 。 エ. 教科書を使わない授業ではない 「問題解決の授業」は教科書を使わない授業だという誤解もあります。教科書は子ども. に と っ て , ま た 教 師 に と っ て も 大 事 な よ り ど こ ろ で す 。「 教 科 書 を 教 え る の で は な く , 教 科書で教える」と言われてきたように,授業内容と教科書とを関連づけ,教科書を有効に 活用することを大切にしたいものです。 オ. 練習や定着を軽視する授業ではない. 「 問 題 解 決 の 授 業 」で は ,結 果 だ け で は な く 理 由 や 多 様 な 考 え 方 な ど を 大 事 に し ま す が , 知識や技能をおろそかにする授業ではありません。算数・数学の授業では,繰り返し練習 させて定着をはかることも大事です。練習や定着のためには,宿題も大事にします。 3.授業づくりのポイント 「問題解決の授業」を行うには,深い教材研究と教師の授業力が求められます。授業づ くりのポイントとして,ここでは以下の3点を取り上げます。 (1)「 本 時 の ね ら い 」 を 吟 味 す る 授 業 づ く り の ス タ ー ト は ,「 本 時 の ね ら い 」 の 設 定 で す 。 例 え ば 中 学 校 3 学 年 『 三 平 方 の 定 理 』 の 第 1 時 で は ,「 本 時 の ね ら い 」 と し て 次 の よ う な こ と が 考 え ら れ ま す 。 ・三平方の定理に興味・関心をもつ。. ・三平方の定理を見いだすことができる。. ・三平方の定理の意味を理解する。. ・三平方の定理が証明できることを知る。. ・三平方の定理を証明することができる。 1時間の授業では,この中のいくつかを「本時のねらい」とし,そのねらいを達成する ための授業を構想します。. -10-.

(14) 第 2 章 , 第 3 章 の 授 業 例 の 中 で は ,「 2 . 授 業 づ く り に あ た っ て 」 の ( 1) で 「 本 時 の ね ら い 」 に つ い て 記 述 し て い ま す 。「 本 時 の ね ら い 」 を ど の よ う に 設 定 す る か に よ っ て , 授 業 は 大 き く 異 な り ま す 。ま た ,「 本 時 の ね ら い 」は 評 価 の あ り 方 と も 深 く 関 わ る こ と か ら , 十分に吟味することが大切です。 (2)「 問 題 」 を 工 夫 す る 「問題解決の授業」で教師が提示する「問題」は,教科書や問題集にある例題や練習問 題,またテスト問題ではありません。児童・生徒が授業に取り組み,考えるためのきっか けになるのが「問題」です。その「問題」を解決する過程で,新たな知識や技能,数学的 な見方や考え方などを同時に身に付けさせていきます。 問 題 解 決 の 授 業 づ く り に お い て ,「 問 題 」 は 大 き な ウ ェ イ ト を 占 め ま す 。 よ い 「 問 題 」 を 工 夫 す る こ と が 大 切 で す 。「 問 題 」 と し て 特 に 大 切 に し た い こ と は , 次 の 2 点 で す 。 ※1. 児童・生徒の学習意欲を引き出すことのできる問題. ※2. 問 題 の 解 決 過 程 で 新 た な 指 導 内 容( 知 識 や 技 能 ,見 方 や 考 え 方 ) を身に付けさせることのできる問題. 「問題」を工夫するときには,子どもと教師の両面から検討する必要があります。子ど も に 関 し て は ,「 子 ど も は ど の よ う に 学 ん で い く の か 」 と い う こ と を 重 視 し て 授 業 を 構 成 し ま す 。 こ れ に 対 応 す る 条 件 が ※ 1 で す 。 教 師 に 関 し て は ,「 授 業 を 通 し て 子 ど も に 何 を 身に付けさせるのか」ということで,これに対応する条件が※2です。 こ の 一 方 で も 欠 け て は ,「 問 題 解 決 の 授 業 」 は 成 立 し ま せ ん 。 2 つ の 条 件 が 同 時 に 満 た されてこそ,よい「問題」になります。 よ い 「問 題 」 の 工 夫 に は , 教 科 書 比 較 も 有 効 で す 。 算 数 ・ 数 学 の 教 科 書 に は , い ろ い ろ な「 問 題 」が 取 り 入 れ ら れ て い ま す 。複 数 の 教 科 書 の「 問 題 」を 比 較 す る こ と は ,よ い「 問 題」を工夫するための近道になります。 な お ,「 問 題 」の 工 夫 と と も に ,問 題 提 示 の 工 夫 も 大 切 で す 。同 じ「 問 題 」で あ っ て も , どのように提示するかによって授業は大きく変わります。それぞれの授業例では,ここに も注目していただきたいと思います。 (3)「 個 人 思 考 」 の 時 間 を 再 考 す る - 「 途 中 ま で 」 や 「 ま ち が い 」 を 認 め る - 問 題 解 決 の 授 業 づ く り に お い て ,「 本 時 の ね ら い 」 を 達 成 す る た め に は 「 個 人 思 考 」 と 「集団解決」の時間が重要になります。ただし,どちらも時間が長ければよいというもの ではありません。 「 個 人 思 考 」 (「 自 力 解 決 」 と 言 わ れ る こ と が 多 か っ た )の 時 間 に , す べ て の 児 童 ・ 生 徒 が 自 分 の 考 え を も つ と か ,「 問 題 」 や 「 課 題 」 に つ い て 解 決 で き な け れ ば な ら な い と し て 多くの時間を与える授業も見られます。しかし,そこで時間がかかり,学習指導案の最後 ま で 指 導 で き ず ,「 本 時 の ね ら い 」 が 達 成 で き な い こ と も あ り ま す 。 「問題」や「課題」について自分で考えても,途中でわからなくなってしまったり,ま ち が え る こ と は 多 く あ り ま す 。そ れ で も よ い の で す 。「 途 中 ま で 」や「 ま ち が い 」を 認 め , それを「集団解決」の中で取り上げて,みんなが考え合うことを大切にしたいものです。 そ れ が 「 わ か っ た 」「 で き た 」 と い う 達 成 感 や 充 実 感 が 得 ら れ る 授 業 に つ な が り ま す 。 【引用・参考文献】 ・ 相 馬 一 彦 ・ 早 勢 裕 明 編 著 『 算 数 科 「問 題 解 決 の 授 業 」に 生 き る 「問 題 」集 』 明 治 図 書 ・ 相 馬 一 彦 『 数 学 科 「 問 題 解 決 の 授 業 」』 明 治 図 書 平 成 9 年. -11-. 平 成 23 年.

(15) 算数・数学的活動に焦点をあてた教材研究 現 行 の 学 習 指 導 要 領 で は ,「 算 数 ・ 数 学 的 活 動 」 の 一 層 の 充 実 が 求 め ら れ て い ま す 。 こ のことを実現するには,本時で教師が提示する「問題」や「問題場面」が極めて重要にな り ま す 。 (「 算 数 的 活 動 」 と 「 数 学 的 活 動 」 は 基 本 的 に 同 じ も の で す 。 ) ここでは,日常の授業において継続的に実践可能な教材研究として,教師が本時の学習 のきっかけとして提示する「問題」の工夫について,いくつかのポイントをまとめていき たいと思います。 (1) 算 数 ・ 数 学 的 活 動 の 一 層 の 充 実 の 視 点 か ら ①. 学習指導要領の記述に見る「算数・数学的活動」 改めて,「算数的活動」と「数学的活動」の意味を確認します。学習指導要領解説では,次の. ように書かれています。(学習指導要領解説算数編 p.18,数学編 p.15) ・算数的活動とは,児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数にかかわりのある様々な活動 ・数学的活動とは,生徒が目的意識をもって主体的に取り組む数学にかかわりのある様々な営み さらに,算数・数学の目標の文頭句「算数・数学的活動を通して」は,以下に続く目標 を 実 現 す る た め の 学 習 指 導 の 進 め 方 の 基 本 的 な 考 え 方 (算 数 編 p.18)で あ り , 算 数 ・ 数 学 的 活 動 を 通 し た 指 導 は , 各 領 域 に お い て 行 わ れ る 必 要 が あ る (数 学 編 p.15)と さ れ て い ま す 。 す な わ ち , 多 少 極 端 な 言 い 方 を す る と ,「 す べ て の 算 数 ・ 数 学 の 授 業 は , 算 数 ・ 数 学 的 活動を通して行わなければならない」のです。 ② 「目的意識をもって主体的に取り組む」とは キ ー ワ ー ド は ,「 目 的 意 識 を も っ て 」 と 「 主 体 的 に 取 り 組 む 」 で す 。「 目 的 意 識 を も っ て 」 に つ い て は ,「 問 題 」 や 「 課 題 」 が 子 ど も の 「 自 分 ご と 」 と し て 把 握 さ れ る こ と に 第 一のハードルがあるように思えます。この点でも,教師の提示する「問題」が鍵になるは ずです。そして,授業が「子どもの主体的な取り組み」で貫かれることが理想的です。 精 選 版 日 本 語 大 辞 典 (小 学 館 )で は ,「 主 体 的 」 と は 「 他 に 強 制 さ れ た り , 盲 従 し た り , ま た ,衝 動 的 に 行 っ た り し な い で ,自 分 の 意 志 ,判 断 に 基 づ い て 行 動 す る さ ま 。自 主 的 。」 と解説されています。勿論,本時の「問題」も子どもが見いだし,授業もすべて子どもが 進 め る な ど と 言 う こ と は 現 実 的 で は あ り ま せ ん 。 授 業 と は 教 師 の 意 図 的 ・計 画 的 な 営 み で あるからです。 ③. 子どもの「考え続け,考えることを楽しむ姿」を目指して そこで,次の正木氏の言葉に注目したいと思います。 子どもたちは,きっかけとしての問題を出発点にし,そこから,問いを持ち,次々と問い を 連 続 さ せ て い く の で あ る 。〔 正 木 孝 昌 (2011),「 問 題 」に 問 題 あ り ,算 数 授 業 研 究. VOL.76,東 洋 館 出 版 社 〕. これは,子どもが,教師の提示する「問題」をきっかけとして「課題」をつかみ,教師 の適切な指導によって,考え続ける姿と捉えることはできないでしょうか。そして,その ことによって自分たちで見いだし,解決できたと,あたかも思わせられるような授業を日 常的に継続実践したいのです。 そ の た め に も ,日 々 の 教 材 研 究 と し て ,目 的 意 識 に つ な が る よ う な「 問 題 」の 工 夫 ,「 問 題」をきっかけとして考え続けることができるような「授業」づくりに努めることが大切 です。. -12-.

(16) (2) 教 材 研 究 と し て の 「 問 題 」 の 工 夫 次に,日々の教材研究として,子どもの「目的意識をもって主体的に取り組む」姿を引 き出す「問題」の工夫について考えます。 ① 3つの「問題」の比較から 次の問題A~Cは,私がこれまでに参観させていただいた,小学2年「くりさがりのあ るひき算」の授業の「問題」です。どの問題が「目的意識」や「主体的」につながる「よ い問題」でしょうか。 問題A. 問題B. てつやさんは 45円もって います。 18円のチョコレートを かい ました。 おつりはいくらでしょうか。. 問題C. 45-18 の ひっ さんのしか たをかんがえま しょう。. 45 - 18. まことさんの 45 ひ っ さ ん は 正 し - 18 いでしょうか。 33. 本時の目標は,いずれも「繰り下がりのあるひき算の筆算の仕方を計算の意味と関連づ け て 説 明 で き る (数 学 的 な 考 え 方 )」 で す 。 問題Aの授業は,問題提示の後に「どのような式になるだろう」や「どうしてその式で い い の だ ろ う 」 な ど の 発 問 が 必 要 に な り ま す 。 そ し て ,「 ど の よ う に 答 え を 求 め た ら よ い だろう」などの問いかけで,ようやく本時のねらいにたどり着きます。その後も,筆算と 他の表現を関連づけ,子どもが「なるほど」と感得するには,教師の腕にかかる部分が大 きくなります。 問 題 B の 授 業 は ,ダ イ レ ク ト に 筆 算 を 取 り 上 げ て い ま す が「 筆 算 の 仕 方 を 考 え ま し ょ う 」 と言われてもどうすればよいか困惑する子どもが見られました。教師は続けて「図やブロ ック,お金などを使って考えよう」と投げかけましたが,言われたから活動したという印 象が強く残りました。 問 題 C の 授 業 で は , 問 題 提 示 の 直 後 に 「 正 し く な い ! 」「 え ー っ ! 」 と い う 声 が わ き 上 がりました。すると教師は「どうして?」と投げかけたのです。子ども達は「だって」と 声をあげ,教師が「じゃ,ちょっとノートに考えをメモしてよ」と言っただけでした。こ の 後 も 「 ど う ? 書 け た ? 」,「 そ う か , ど う や ら 正 し く な い ん だ ね 。」,「 じ ゃ , 正 し い 答 え を 教 え て よ 。」 と や り と り し , 個 人 思 考 の 時 間 に 移 っ た の で す 。 「 筆 算 」,「 お 金 」,「 ブ ロ ッ ク 」 の 考 え を 取 り 上 げ ,「 こ の 考 え っ て , み ん な 違 う の ? 」 と 発 問 し ,子 ど も た ち の「 同 じ ! だ っ て ・ ・ ・ 」と い う 声 を 引 き 出 し て い ま し た 。ま さ に , 子ども一人一人が「だって」と考え続ける様子を目の当たりにしたのです。 ②. 日本で採択されている6社の教科書の比較を 学級の実態に応じて「よい問題」を工夫できるのは学級担任や教科担任だけです。その. 際に,他の教科書を比較し,問題を吟味することは効率的な教材研究の一つと考えます。 ち な み に ,上 記 の 場 面 は 各 教 科 書 (平 成 23年 度 使 用 )で は 次 の よ う な 問 題 に な っ て い ま す 。 教 育 出 版. りえさんは折り紙を34枚持っています。18枚使うと,残りは 何枚になるでしょうか。. 東 京 書 籍. けんじさんは,45円持っています。18円のラムネを買います。残りはいくらですか。. 大日本図書. 56枚の折り紙がありました。そのうち7枚を使いました。残りは何枚でしょう。. 学 校 図 書. 切手が45枚ありました。27枚使いました。残りは何枚でしょうか。. 啓. 53-26を筆算でしてみましょう. 林. 館. 日本文教出版. 54円持っています。28円の色紙を買いました。残りはいくらですか。. -13-.

(17) 「 数 値 は ? 」,「 問 題 場 面 は ? 」,「 ダ イ レ ク ト に 筆 算 に す る か ? 」「 誤 答 で 示 す か ? 」 等 々 を 検 討 す る こ と で ,「 目 的 意 識 を も っ て 主 体 的 に 取 り 組 む 」 子 ど も の 姿 が あ ふ れ る 授 業 のきっかけとなる「問題」の工夫に努めたいものです。 (3) 「 問 題 」 の 工 夫 の 実 際 ①. 学習指導要領解説を読む! 本時の「問題」を検討するとき,6社の教科書比較の前に是非,学習指導要領解説算数. 編・数学編を熟読したいものです。また,中学校の数学では,小学校算数の教科書での扱 いや算数編を確認することは言うまでもありません。 以下,小学5年「四角形の内角の和」の授業を例に考えていきたいと思います。 東京書籍. 学校図書. 四角形の4つの角の 大きさの和は,何度に なりますか。. 角度をはか らないで求 めましょう。. 四角形の4つの角. D. エ. の大きさの和は何度. A. ア. になるか,いろいろな B. 方法で調べましょう。. C. ? 四角形の4つの角の大きさ の和の求め方を考えよう。. 三角形の3つの 角の大きさの和 を調べるにはど うしたかな。. ゜. ゜. 。. イ. 。 ウ. ①分度器で はかりましょう。. 上 の 2 つ の 教 科 書 の 扱 い 方 が 特 徴 的 で す 。 前 時 に は 「 三 角 形 の 内 角 の 和 が 180゜ で あ る こ と 」 を 学 ん で い ま す 。 東 京 書 籍 は ,「 何 度 に な り ま す か 」 と 問 い か け , 教 師 が 「 角 度 を 測 ら な い で 」と 考 え 方 を 示 し て い ま す 。一 方 ,学 校 図 書 は ,「 色 々 な 方 法 で 調 べ ま し ょ う 」 と 投 げ か け , ま ず ,「 分 度 器 で 測 る こ と 」 を 促 し て い ま す 。 で は , 自 分 の 学 級 な ら ど の よ うな「問題」を提示したらよいでしょうか。 学 習 指 導 要 領 解 説 算 数 編 (p.158)に は , 算 数 的 活 動 に つ い て 次 の よ う な 解 説 が あ り ま す 。 ・三角形の三つの角の大きさの和が180゜になることを帰納的に考え,説明する活動 ・四角形の四つの角の大きさの和が360゜になることを演繹的に考え,説明する活動 「四角形の内角の和」については,演繹的な考えを扱うことが大切と分かります。この ことを踏まえるならば,まさか,子どもから考えが出ないからと言って三角形と同様に分 度器やちぎって集めることのみで360゜を結論づけるようなことは行わないはずです。 解説を踏まえて学級の実態を勘案し,東京書籍のような流れで,演繹的な考え方のみで進 めるか,三角形での学習を類推的な考えで四角形に生かしつつ,演繹的な考えを扱うかを 検討したいものです。 ②「本時の目標」→「課題」→「問題」の筋で 算 数 の 授 業 を 構 想 す る 際 ,「 算 数 的 活 動 を 通 し て 」 は 勿 論 ,「 本 時 の 目 標 を 達 成 す る こ と」が最も重要になります。そこで,①のように十分に検討された「本時の目標」を設定 したならば,その目標に直結するような「課題」を明確にします。そして,その課題が自 然な形で子どもから引き出せるよう,きっかけとなる「問題」を工夫したいのです。さら に ,「 確 認 問 題 」 や 「 ま と め 」,「 練 習 問 題 」 も 「 本 時 の 目 標 」 に 正 対 し た も の に す る こ と で,目標と指導と評価が一体化された授業がプランニングされるはずです。 こ の と き , 授 業 の 成 否 を 大 き く 左 右 す る こ と の 一 つ に ,「 ど れ だ け 子 ど も の 反 応 を 予 想 できるか」が挙げられます。. -14-.

(18) ③ 「問題」を工夫した授業の実際 実際の授業で確認します。下の指導案は,長方形と四角形での大小を問う形の問題を提 示 す る こ と で , 子 ど も に 「 長 方 形 は 90゜× 4で 360゜だ け ど 四 角 形 も 同 じ な の だ ろ う か ? 」 と い う 「 課 題 」 (問 い )を も た せ , 主 体 的 に 取 り 組 め る よ う 意 図 し て い ま す 。 切 り 取 る 部 分 が 三角形であることから,前時の三角形の内角の和についての想起も暗示しています。 問 題 提 示 後 の「 試 行 錯 誤 」と「 課 題 の 明 確 化 」の 段 階 で ,帰 納 的 な 考 え を 取 り 上 げ ,「 本 当 に 3 6 0 ゜ な の か ? 」,「 分 度 器 を 使 わ な い で 求 め よ う ! 」 と い う 課 題 を 引 き 出 す こ と を ね らっています。さらに,1つの形だけでの一般化を避け,確認問題的な「練習問題」を扱 った後に「まとめ」を行うことで,子どもが発見できたと思えるように構想しています。 ■ 本時の目標: 段階. 四 角 形 の 4 つ の 角 の 和 の 求 め 方 を 説 明 で き る .〔 数 学 的 な 考 え 方 〕. 教師の働きかけ(□:主な発問) □今日はこんな問題を考えよう.. 問 題 把 握. 問題 どちらの四角形の「4つの角の和」が大きいだろう. A. 7分 試行 錯誤. と. cut. ⇒. ・比較の場面とし,解決 の必要感をもたせた い.. B. □まず,ちょっと考えてみよう.. ○分度器で測ってみよう. ○線を引いて考えてみよう. ○ちぎって考えてみよう. ○折り込んでみようかな.. ・途中まででも,考えや 思い,疑問点や不明点 をノートに書かせる.. □困っていることがあれば出そう.. ○分度器だと測りづらいけど370゜だよ. ○362゜だよ.どれがあってるの? ○分度器を使わないで考えられないかな.. 分度器を使わないで,切った形の「4つの角の和」の求め方を考えよう! 3分 個人 思考. ○三角形のときも,ちぎったよ. ○分度器でも360゜でいいんじゃない. ○線を引くと,二つの三角形になるのか. ○90゜じゃない二つの角が問題だな.. ・色々な考え方や説明を ノートに書かせる. ・考え方を取り上げる順 序を構想する.. □お互いに考えを説明し合おう.. ①「長方形+三角形」 長方形と三角形に分ける ことができるので, 360+180で,540゜. ・1つの どもに 自分の 考え方 する.. ※(考え方の発表後)○○さんの気 持 ち は 伝 わ っ た ?( と 確 認 す る .) □どういう考え方になるかな? → そのつど,考え方のポイントを 板書する.. ②「三角形に分けて」 1本線を引くと二つ の三角形にできる. 180×2で360 ゜. →. ① か ⑤ の 誤 答 ( - 360 ゚ な し ) の いずれかを最初に取り上げる.. ま と め ・ 練 習. □ 結局,どちらが大きいと言えるか な.. え 明 葉 代. を さ で 弁. 複 せ 友 さ. 数 た だ せ. の り ち た. 子 , の り. ・「 正 誤 」 の 視 点 で 話 し 合わせる.. ③「角をちぎって集める」 三角形のときと同じように 角をちぎって貼ってみると 1回転の角になるから360゜. → 次に,②を取り上げ,比較して 正誤を問いかけることで,話合 ④「折って合わせる」 い を 焦 点 化 し ,考 え や す く す る . 折って合わせると,△と□の角 で180゜になるので,残りは → その後,どちらが正しいかの根 90゜の角が2つで360゜だ. 拠として,他の考えを取り上げ て話合いを進める. ⑤「三角形に分けて中を引く」 2本引くと四つの三角形にな り,180×4=720゜ ○の360゜を引き360゜ □ 色々な考え方でも360゚になる ね.. 考 説 言 を. ・考え方のポイントを板 書 (黄 色 )す る .. □どちらが正しいのだろう.. 20 分. ・およそ360゜になる ことを確認し,演繹的 に考えることを促す.. □続けて考えてみよう.. 5分 集 団 解 決. 留 意 点 (・ )と 評 価 (※ ) ・ 実演し,図形を黒板に 貼 り, 問題文を板書す る. ・図形はカードで配付し てノートに貼らせる.. □問題について質問があれば出そう. ○これ,四角形なの. ・考える楽しさを奪わな ○長方形の方は 90×4=360 だから, い程度に答える. 切った方の四角形が分かればよい. ・直感も認め,解決への □予想してみよう. ○長方形 ○切った形 ○同じ 意欲を持続させたい. ○わからない. 3分 課題 の明 確化. 子どもの学習活動(○:予想される反応) ○ノートに書きながら,問題のイメージを つかむ.. ・「 も し 」,「 例 え ば 」 等 の言葉を大切にする.. △ □. ○どちらも360゜で同じ.. □練習問題に挑戦しよう. ど ん な 四 角 形 の 4 つ の 角 の 和 も 3 6 0 ゜ な の だ ろ う か .( 自 分 で 好 き な 形 の 四 角 形 を か い て 考 え る .). ・三角形の内角の和を使 った考えを大切にし, ②の考えは必ず扱う. ・ ① は 「 - 180 ゚ 」, ⑤ は 「 - 360 ゚ 」 を す れ ば よ く ,考 え 方 を 認 め る . ※. 発言,ノート. ・ 問題の答えを確認す る. ・となり同士で説明し合 わせる. ・線を引く考え方のよさ を実感させたい.. ○360゜になるわけをペアで説明し合う. ※. 発言,ノート. □今日の学習のまとめをしよう. 四角形の「4つの角の和」は360゜になる. 7分. -15-. ・子どもの声を生かしな がらまとめ,教科書で 確認する..

(19) 子どもの考えを活かす授業の進め方 算数・数学の授業過程は,教師の働きかけに始まり,子どもが教材との格闘や試行錯誤 を繰り返しながら得た新しい発見などのいくつかの考えを,学級全体で比較・対立等によ る 吟 味 ・ 検 討 を 通 し 納 得 ・理 解 し , 新 し い 概 念 を 獲 得 し ま と め に 向 か い ま す 。 1.授業の展開と学習形態 1 時間の授業では,導入は「全体・一斉」で学習し,課題解決は「個人・個別」学習で 行い,その成果は「グループ,全体」で検討・解決し,最後に「全体」でまとめで行うと いうように,効果的な学習形態の選択・系列を考えます。 個別学習は,子どもが教材に向かって学習する自学自習形式の個人の学びです。グルー プ (小 集 団 )学 習 は , グ ル ー プ で 教 材 へ 働 き か け , 子 ど も ど う し の 学 び 合 い ( 相 互 作 用 ・ 共 同作業等)により理解・認識を深めます。学び合いの集団思考は,個々の学びを評価し, 教材の理解・認識を広く深くさせ,授業活性化と仲間意識を育てます。学級全体の一斉学 習は,基礎的・基本的事項の説明・指示など知識伝達を効率的に行うとともに,個人・グ ループ学習により生み出された考えを整理・確認,評価の集団思考を行う学習形態です。 (1)グ ル ー プ 学 習 グ ル ー プ 学 習 に は ,「 競 争( 共 通 の 目 標 に 向 か い ,グ ル ー プ 内 ・ グ ル ー プ 間 競 争 )」と「 協 同 ( 共 通 の 目 標 に 向 か い , 役 割 分 担 等 を 協 力 )」 の 特 徴 が あ り ま す が , 重 点 は 後 者 で す 。 競争は,協力体制を強め意欲を高めますが,差別・排他意識等に注意が必要です。 等質編成は,学習特性等(学習理解・準備状況,興味,行動力,指導性等)の個性・個 人 差 に つ い て 類 似 の 者 ど う し で 編 成 す る グ ル ー プ で ,子 ど も の 能 力 に 応 じ 授 業 内 容 ・ 教 材 , 指 導 方 法 等 を 決 め る こ と が で き る の で ,学 習 指 導 が 円 滑 に 進 み ,効 率 的 な 指 導 が で き ま す 。 算 数 ・ 数 学 の 計 算 等 の ド リ ル 学 習 で は ,「 達 成 状 況 ・ 能 力 等 質 編 成 」 に よ る 効 率 指 導 が 行 われています。能力別グループの所属は,子どもの意志尊重と教師の支援のもとに決め, 学習状況を反映し適宜編成替えが必要です。 異 質 編 成 は , 学 習 特 性 等 に お い て , 多 様 な 経 験 ・ 個 性 ・ 個 人 差 (性 別 , 学 習 の 理 解 ・ 準 備 状況,興味,行動力,指導性等)をもつ子どもを意図的に組み合わせ,学習が促進される よ う に 編 成 す る グ ル ー プ で ,多 様 な 考 え を 出 し ・ 話 し 合 い そ し て 集 約 す る と き に 有 効 で す 。 人間関係や学習の進歩・達成状況において異質集団が優れています。グループ相互の緊 張感・競争的環境を生み出すようグループ内異質,グループ間等質の編成を工夫します。 グループ編成は,学習内容・方法と子どもの発達段階等を考慮しますが,学習を通して 友 達 理 解 が 深 ま る の で ,仲 良 し グ ル ー プ に よ る 編 成 は 避 け た い 。教 室 の 座 席 の 隣 ど う し( 2 人 ), 隣 と 前 後 ( 4 人 ) の よ う に , 日 常 生 活 に お け る 活 動 と の 関 連 も 視 野 に 入 れ た い 。 グループ運営は,できるだけ子どもたちに任せます。そこで,調べ方・話し合いの仕方 な ど 学 習 方 法 ・ 手 続 き に つ い て 予 め 指 導 が 必 要 で す 。 ま た ,「 ジ グ ソ ー 学 習 」 の よ う な 定 型化されたグループ学習の方法の活用もあります。 2.机間指導 机 間 指 導 は , 一 斉 指 導 等 に お け る 個 別 指 導 (机 間 指 導 ) 一斉指導やグループ指導では,個別指導が重要な役割を持ちます。机間指導は,授業に おける学習情報の収集・診断に基づき助言・指導と,次の集団解決の再計画を行います。. -16-.

(20) (1)机 間 指 導 の は た ら き ・ 観 察 : 子 ど も の 学 習 進 度 ,つ ま ず き 等 の 理 解 状 況 を 観 察 ・ 情 報 収 集 し ,実 態 を 把 握 す る 。 ・診断・評価:一人ひとりの子どもの学習の理解を観察し,その場で即座に指導するか, 先 送 り や 全 体 討 議 に 反 映 さ せ る か 診 断 ・ 評 価 (判 断 )す る 。 ま た , 学 級 全 体 の 学 習 理 解 に つ い て , 授 業 の 計 画 (予 想 し て い た 学 習 理 解 ) と の 差 異 ・ ズ レ に つ い て 診 断 ・ 評 価 す る 。 ・指導:その場で即座に指導を必要とする子どもへの助言や指示などの個別指導を行う。 ・再計画:診断・評価に基づき授業計画とのズレを修正し,子どもの考えを活かしたリア ルタイムな授業展開を再計画する。 (2)机 間 指 導 の 方 法 ・観察,診断・評価の観点を明確に 指導意図とそれに即した学習活動の予測に基づき,学習の到達度,つまずきなどの学習 の理解状況,学習方法,解決方法などの多様性を診断・評価する観点を教材研究・指導案 作 成 時 等 の 授 業 前 に 明 確 に し て お き ま す 。 例 え ば ,「 繰 り 下 が り の あ る 引 き 算 の 計 算 」 で は ,「 ① 数 え 引 き , ② 減 加 法 , ③ 減 々 法 , ④ 補 加 法 」 の 4 通 り の 考 え 方 が あ る の で ( p.26 参 照 ), 解 答 の 正 否 と 併 せ 「 計 算 方 法 ・ 考 え 方 」 も 観 察 対 象 と な り ま す 。 学級全体の理解度を調べるとき,ある観点から選んだ数名の子どもの観察から学級全体 の理解状況を推測する方法があります。ここでは,理解の遅い子ども,勘違い,誤り,つ まずき,まちがい等を起こしやすい子どもなど,授業の目標にあわせて観察・診断の指標 となる子どもや個別指導を必要する子どもを,教材研究・指導案作成時に想定します。 ・ そ の 場 で 「 個 別 指 導 」 か ,「 集 団 解 決 」 か 判 断 つまずきやまちがいなど対応を必要とする子どもには,その場で「個別指導」するか, 「集団解決」に反映させた方がよいか判断します。学級全体で誤りなどを新たな学習の課 題として設定し,それを引き起こした論理の不備や欠落点を子どもたちが予想し修正しな がら,正解へ導く授業展開もあります。このとき,まず正答をとりあげるのではなく,対 応を必要とする考えや対立・分化している子どもの考えを学級全体に反映させ,討議(吟 味・検討)し正答へ向かったり,統一を図ったりします。机間指導では,予め「集団解決 ( 討 議 )」 で 指 名 す る 子 ど も を 選 び , 指 名 ・ 討 議 順 序 を 再 計 画 し ま す 。 ・学級全体を見とる 学級全体の学習状況を把握する規準・手がかりとなる子どもとともに,個別指導を要す る子ども等を含めた教室内の観察・指導コースを予め選定・計画します。その際に「子ど もの氏名を記した白紙座席表」を用意し,一人ひとりの子どもの学習状況(観察,診断・ 評価等)を記録します。この記録は,集団解決において「指名する子ども,考えの構成・ 討議順序」等の再計画に役立ちます。また,授業における学習状況や理解度の「子どもた ち の 学 習 記 録 」と し て ,次 の 指 導 案 作 成 時 の「 子 ど も の 学 習 活 動 」の 予 測 資 料 と な り ま す 。 (3)子 ど も を サ ポ ー ト す る 指 導 言 机間指導では,子どもの状況に応じ,次のステージに導く指導言があります。 ・ 指 示 :「 こ こ は ど う し た ら い い ? 」 と , 子 ど も の 活 動 を 方 向 付 け 。 ・ 助 言 ・ 説 明 : 課 題 が 明 確 で な く ぼ ん や り し て い た り ,行 き 詰 ま っ て い る 学 習 活 動 の 中 に , 子どもが気づいていないよさなどを気づかせ意識化させます。意味を取り違えてわから な い で い る 子 ど も に は , 視 点 を 再 焦 点 化 さ せ ま す 。( と き に は , 即 座 に 学 級 全 体 へ ) ・ 解 明 :「 な ぜ そ う 考 え た の 」「 教 科 書 の ど こ か ら … … 」「 具 体 的 に は … … 」「 あ な た の 言 葉 でいうと」等考えの根拠を尋ねたり具体化したりして吟味。 ・ 支 援 :「 あ な た の い い た い こ と は … … と い う こ と ? 」 と 発 言 ・ 発 表 の 準 備 を 補 助 。. -17-.

(21) 3.子どもの多様な考えを活かした学級全体・集団解決 従来,子どもが誤りやつまずきのない順調・円滑な進行がよい授業という考えがありま し た 。 最 近 「 完 成 さ れ た 正 し い 答 え 」 だ け で な く ,「 途 中 ま で ・ ま ち が い ・ つ ま ず き 等 ( 以 下 「 誤 り 」) の 考 え を 積 極 的 に 「 集 団 解 決 」 の 中 で 学 習 課 題 と し て 取 り 上 げ , み ん な で 考 え 合 う こ と を 大 切 に す る 授 業 実 践 が 見 ら れ ま す 。 こ れ は ,「 誤 り 」 を 「 新 た な 学 習 課 題 」 と し て ,「 誤 り 」 を 引 き 起 こ し た 論 理 の 不 備 や 欠 落 点 を 予 想 し 修 正 し な が ら , 正 解 へ と 導 く過程で「算数・数学の論理・考え」を育もうと考えられます。 (1)支 持 的 な 学 級 風 土 を つ く る このような授業は,子どものお互いの発表に丁寧に耳を傾け理解する「共感的受け入れ ・傾聴」によって認め合う「支持的学級風土」において実現されています。 ・うなずき・相づち:発表者・聞き手の対話の成立の実感・励まし「なるほど」 ・ 肯 定 的 評 価 ・ 支 持 ・ 賛 同 : よ い 点 に 対 し 「 な る ほ ど 」「 よ い 工 夫 だ ね 」「 す ご い な ー 」 ・ 確 認 ・ 繰 り 返 し :「 … … と い う こ と で す ね 」「 … … と 考 え る の で す か 」 と 理 解 へ つ な げ る ・言い換え・要約:発表者がうまく言葉に表せないとき,要点をまとめ簡潔に表現 ・ 質 問 ・解 明 : 発 表 者 の 考 え を 具 体 化 ・ 明 確 化 「 例 え ば ど ん な こ と 」, 聞 き 手 の 理 解 も 援 助 (2)子 ど も の 多 様 な 考 え を 受 け 入 れ た 集 団 解 決 の 進 め 方 「 ○ ○ ち ゃ ん の 考 え 方 は ? 」「 ○ ○ ち ゃ ん は な ぜ そ の よ う に 考 え た の ? 」 と 学 習 目 標 の 知識・技能等の習得過程の「ふり返り・省察」と「問い」からはじまり,集団解決により 思考を深化・発展させ,活用型・探求型学習へ進展できます。このような授業の集団解決 では,子どもが「自らの考えの発表・説明」だけでなく,自分の考えと異なる「友だちの 考えを予想し説明する」方法を取り入れるなどの工夫が見られます。 次 ペ ー ジ は , 船 戸 咲 子 先 生 の 「 想 像 説 明 ( 斎 藤 喜 博 1958) 」 の 授 業 過 程 で す 。 問 題 に つ い て 5 人 の 子 ど も に 計 算 ( 考 え 方 ) を 小 黒 板 に 書 か せ 掲 示 さ せ ま し た 。 そ の 後 ,「 小 黒 板 に 書かれた 5 つの計算方法から一つ選び,その計算をした○○ちゃんの考え方を想像しなが ら,自分もその道すじを辿りノートに計算をしたり,文章に書いたりする追・再計算,想 像説明準備等」の学習をしています。この「想像説明準備活動」の後,学級全体での課題 解 決 過 程 は ,「 ア)二 郎 , イ)弘 子 , ウ)剛 之 , エ)理 , オ)久 子 」 の 計 算 の 考 え を 検 討 し て い ま す 。 多くの授業では,計算実施者にその手続き等を発表させ,その後に学級全体で協議する 方法と思います。この授業の二郎の計算・考えの検討では,まず子ども△△に「想像説明 ( 二 郎 の 解 決 ・ 計 算 過 程 の 考 え 方 の 説 明 )」 を さ せ た 後 に , 船 戸 の 「 △ △ ち ゃ ん の 説 明 で い い ? 〔 確 認 ・ 評 価 要 請 〕」 と 計 算 実 施 者 ( 二 郎 ) に 確 認 後 , 続 け て 二 郎 に 自 ら の 計 算 過 程・考え方を説明〔確認・評価〕させ,さらに学級全体で協議・検討する学習過程です。 とくに,久子の考えの検討では,子どもの「久子ちゃんのは少しおかしいよ」という計 算・考えの誤りの指摘に,船戸は「久子ちゃんのやり方を生かして皆で直して」と学級共 通 の 問 題 と し て 考 え る 解 決 課 題 と し て い ま す 。 船 戸 は ,「 久 子 は 計 算 を 間 違 っ た の で す 。 その間違いをみんなの共通の問題として考え合うことによって,その間違った計算が生き る だ け で は な し に ,久 子 自 身 も こ の 学 習 の 中 で 生 き る こ と に な る の で す 」と 述 べ て い ま す 。 このように子どもの多様な考えを受け入れ集団解決により思考を深化・発展させる指導 は , 勤 務 校 や 研 究 会 に お け る 先 輩 ・ 同 僚 の 授 業 を 参 考 に す る と と も に ,「 ○ ○ ち ゃ ん 式 ま ち が い 」「 想 像 説 明 」 等 の 先 達 の 実 践 に 手 が か り を 得 る こ と が で き ま す 。 【引用・参考文献】 生 田 孝 至 編 ( 2006) 子 ど も と 向 き あ う 授 業 づ く り , 図 書 文 化 社 , pp.94 - 117 斎 藤 喜 博 (1958) 未 来 に つ な が る 学 力 , 麥 書 房 , pp.276 - 287. -18-.

(22) 問題 1 本 3 円 50 銭 の エ ン ピ ツ を , 正 さ ん た ち の 組 の お 友 達 1 本 ず つ 買 っ た ら , 代 金 は い く ら に な る で し ょ う 。 正 さ ん た ち の 組 の 人 数 は 40 人 で す 。 解決 二郎 40 ÷ 2 = 20 3 × 40 = 120 120 + 20 = 140 答 140 円. 弘子 3 円 50 銭 × 2 = 7 円 40 ÷ 2 = 20 7 円 × 20=140 円 答 140 円. 剛之 3.5 × 40 = 140.00. 理 350 × 40 = 14000 銭. 久子 50 × 40 = 2000 3 × 40 = 120 120 + 2000 = 2120. 小黒板提示 T: 小 黒 板 に 書 か れ た 5 つ の 計 算 の 中 か ら 一 つ 選 ん で , ○ ○ ち ゃ ん は , ど の よ う に 考 えて計算したのかということを想像して,一つの計算と取り組んでね。 追 計 算 ・想 像 説 明 準 備 小 黒 板 に 書 か れ た 5 つ の 計 算 方 法 か ら 一 つ 選 び ,○ ○ ち ゃ ん の 考 え 方 を 想 像 し な が ら , 自分もその道すじを辿りノートに計算をしたり,文章に書いたりする。 二郎の考えの想像説明 △△:想像説明(二郎の解決・計算過程・考え方説明) T: 二 郎 ち ゃ ん , い ま の △ △ ち ゃ ん の 説 明 で い い ? 〔 確 認 ・ 評 価 要 請 〕 二 郎 : 計 算 過 程 ・ 考 え 方 を 説 明 〔 確 認 ・ 評 価 (→ 同 意 )〕 学級全体で,二郎の計算過程・考え方の協議・検討. 弘子の考えの想像説明. 学 級 全 体 で , 二 郎 ・ 弘 子 の 〔 40 ÷ 2 = 20〕 の 考 え の 検 討. 久子の考えの想像説明 ・「 久 子 ち ゃ ん の は 少 し お か し い よ 」〔 解 答 ・計 算 方 法 評 価 〕 ・ T:「 久 子 ち ゃ ん の や り 方 を 生 か し て 皆 で 直 し て 」〔 学 級 共 有 解 決 課 題 化 〕 ・「 50 × 40 = 2000 の 単 位 は 銭 , 3 × 40 = 120 の 単 位 は 円 で , 円 と 銭 を ご ち ゃ 混 ぜ に 計 算 し て い ま す 〔 子 ど も に よ る 間 違 い 要 因 検 討 ・ 指 摘 〕」 ・「 間 違 い を 直 し て 継 ぎ 足 し て 想 像 説 明 し て も い い で す か ? 〔 確 認 : 間 違 い 要 因 と 正 答 へ 導 く 想 像 説 明 〕」 ・「 50 × 40 は , 50 銭 = 0.5 円 だ か ら 0.5 × 40 で 20 円 で す 。 そ れ か ら 3 × 40 で 120 円 で す 。 合 わ せ る と 20 + 120 円 で 140 円 で す 。〔 間 違 い 要 因 と 正 答 へ 導 く 想 像 説 明 〕」 ・「 そ れ な ら , 剛 之 ち ゃ ん の と お な じ だ 。 3.5 を 3 と 0.5 に 分 け て や っ た ん だ ね 〔 想 像 説 明 の 検 討 ・ 評 価 〕」 ・「 私 は 銭 と 円 を 区 別 し な か っ た ん だ !〔 (久 子 )自 己 評 価 〕」 図 船 戸 咲 子 「 想 像 説 明 ( 斎 藤 喜 博 1958)」 の 授 業 過 程. -19-.

(23) 評価 教 育 で は ,評 価 に つ い て 多 様 な 定 義 が な さ れ て い ま す が ,代 表 的 な も の を 2 つ 挙 げ れ ば , 1つは,評価とは,教育目標に照らして資料を集め,分析し,その結果をフィードバック して,学習・指導を調整するというものです。一般に,私たちが行っている評価は,この 捉え方に近いものになります。ここからは,評価は,目標,学習・指導と不即不離なもの で あ る こ と が 分 か り ま す 。も う 1 つ は ,評 価 は ,い く つ か の 教 育 活 動( 目 標 ,内 容 ,学 習 ・ 指導など)についての資料を収集し,分析し,教育活動の選択のための価値判断を下すと いうものです。ここでは,評価は,教育改善の手段であることが強調されます。 本 節 で は ,第 2,3 章 の 教 育 実 践 に 照 ら し ,特 に 前 者 の 捉 え 方 に 着 目 す る こ と に し ま す 。 1.教育評価の概要 (1)評 価 の 機 能 評価の機能には,大きく分けると「学習・指導の改善」と「履修の証明」の 2 つがあり ます。前者は,教育目標に照らして評価をしながら学習・指導を改善していくものです。 ここでは,学習者や指導者にとって有効な資料が,学習者の成長・発達を助けるために活 用されることになります。後者は,学習者が教育課程を履修したか,また,どの程度履修 したかを証明するものです。ここでは,学習者の学籍や成績を保護者や社会に対して示す ことになりますが,これによって社会は個人を選抜することが可能となります。 (2)評 価 の 主 体 と 対 象 評価は,主体と対象によっても分けられます。主体と対象が一致すると「自己評価」と なり,主体と対象が異なると「他己評価」となります。評価の主体は,教師,子ども,保 護者,社会などが考えられ,評価の対象は,子ども,教師,学校,教育課程,指導法など に な り ま す 。 ま た , 最 近 で は ,「 相 互 評 価 」 の 重 要 性 も 指 摘 さ れ て い ま す 。 (3)評 価 の 種 類 評 価 に は ,「 評 価 」,「 評 定 」,「 ア セ ス メ ン ト 」が あ り ま す 。「 評 価( evaluation)」は ,資 料 を 集 め て 判 断 を 下 す こ と で あ り ,「 評 定 ( rating)」 は , 数 値 や 言 葉 で 言 い 切 る こ と で あ り ,「 ア セ ス メ ン ト ( assessment)」 は , 意 思 決 定 の た め に 情 報 を 集 め る こ と で す 。 (4)評 価 が 満 た す べ き 条 件 評価や評価問題には, 「 妥 当 性 」, 「 信 頼 性 」, 「 客 観 性 」と い う 3 つ の 条 件 が あ り ま す 。 「妥 当 性 」と は ,評 価 の 内 容 が 教 育 目 的 に 適 合 し て い る か , 「 信 頼 性 」と は ,評 価 を 繰 り 返 し 行 っても同じような結果が再現できるか, 「 客 観 性 」と は ,評 価 を 誰 が 行 っ て も 同 じ よ う な 結 果が得られるかということです。最近の教育評価では,信頼性や客観性だけでなく,妥当 性の検討が重視されています。後で示す目標準拠評価もこの妥当性に着目したものです。 (5)評 価 の 時 期 ・ 期 間 評 価 は ,評 価 の 時 期 等 に よ っ て「 診 断 的 」, 「 形 成 的 」, 「 総 括 的 」に 分 け ら れ ま す 。 「診断 的評価」は,学年や単元のはじめに,学習者がその学年や単元の学習を行う上で必要な内 容 に つ い て ,ど の 程 度 身 に つ け て い る か な ど を 見 る た め に 行 う も の で す 「 。 形 成 的 評 価 」は , 1校時の授業中などの一連の学習途中で,学習中の内容の理解や学習中の力の定着などを 調 べ て , 学 習 ・ 指 導 を 調 整 す る た め に 行 う も の で す 。「 総 括 的 評 価 」 は , 学 年 末 , 学 期 末 , 単元末など,一連の学習の終わりに行うもので,学習の内容の理解度や定着の度合いを総 合的に見るものです。 なお,個に応じた指導を考えるときには,診断的評価が重要であり,総括的評価には, -20-.

(24) 修得の証明といった意味があることにも目を向ける必要があります。 (6)評 価 の 方 法 評価の方法については,時期によって次のような多様な方法を用いることが大切です。 例えば,授業前では,ペーパーテスト,インタビューなど,授業中では,座席表による発 言記録,机間観察,チェックリスト,学習ノート,ワークシート,小テストなど,授業後 では,学習感想,学習者の自己評価,ペーパーテスト,インタビューなど,そして長期間 では,レポート,ポートフォリオ,パフォーマンス評価などが挙げられます。 な お ,レ ポ ー ト や パ フ ォ ー マ ン ス 評 価 で は ,ル ー ブ リ ッ ク の 有 効 性 が 指 摘 さ れ て い ま す 。 (7)評 価 方 法 の 分 類 評価方法には,その結果が数値化できる「量的評価」と,数値化できない「質的評価」 があります。最近では,後者の「質的評価」の重要性が指摘されています。 (8)評 価 の 解 釈 評 価 は ,そ の 結 果 の 解 釈 の 仕 方 か ら , 「 相 対 評 価 」, 「 絶 対 評 価 」, 「 個 人 内 評 価 」に 分 け ら れ ま す 。「 相 対 評 価 」( norm referenced assessment: 集 団 準 拠 評 価 ) は , 集 団 内 で の 位 置 に着目するものであり,例えば平均点と標準偏差を基に,数値的な表現でその規準が 5 段 階 な ど で 示 さ れ ま す 。 ま た ,「 絶 対 評 価 」( criterion referenced assessment: 基 準 準 拠 評 価,目標準拠評価)には,評価者の規準に照らした基準準拠評価と外的基準に照らした目 標準拠評価があります。前者は,日本の高等学校でよく見られるものであり,後者は,観 点 別 や 達 成 度 に 着 目 し た 評 価 規 準 を 設 定 し て 評 価 す る も の で す 。こ れ に 対 し 「 ,個人内評価」 は,個人の発達に応じた各自の規準による評価です。 2.指導要録の変遷 (1)相 対 評 価 か ら 絶 対 評 価 へ 指 導 要 録 の 変 遷 か ら 我 が 国 の 教 育 評 価 に つ い て 検 討 し て み る と ,例 え ば 昭 和 30 年 以 降 , 5 段 階 の 相 対 評 価( 平 成 3 年 は ,選 択 は 3 段 階 )の 時 代 が 続 き ま し た が ,昭 和 36 年 の 改 訂 で は , 評 定 は 絶 対 評 価 を 加 味 し た 相 対 評 価 に , ま た 昭 和 55 年 の 改 訂 か ら , 観 点 別 評 価 は 絶 対 評 価 に 変 わ り ま し た 。 そ し て , 平 成 10 年 の 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 に 伴 い , そ れ 以 降 , 総 合 的 な 評 価 で あ る「 評 定 」は 相 対 評 価 か ら 絶 対 評 価( 目 標 準 拠 評 価 )へ と 転 換 し ま し た 。 この転換は急激なもののように捉えがちですが,指導要録の変遷を辿ってみると,この 転換は段階的に徐々に行われてきたことが分かります。 (2)評 価 規 準 と 評 価 基 準 「 評 価 規 準 ( criterion)」 は , 学 習 指 導 要 領 に 示 さ れ た 目 標 に 照 ら し , 具 体 的 な 各 学 習 内容に即した評価の目標を明らかにしたものであり,学習を通して身につけた資質や能力 の 質 的 側 面 を 記 述 し た も の で す 。評 価 規 準 は ,学 習 指 導 要 領 の 各 学 年 の「 目 標 」お よ び「 内 容」に照らし,中学校であれば,3 学年全体の評価の観点の趣旨および各学年の観点の趣 旨をもとに,各学年の内容ごとの評価規準,各学年の内容のまとまりごとの評価規準,そ し て ,各 学 年 の 内 容 の 評 価 規 準 の 具 体 例 が , 「 十 分 満 足 で き る 」状 況 (A), 「おおむね満足で き る 」 状 況 (B),「 努 力 を 要 す る 」 状 況 (C), に よ っ て 記 述 さ れ て い く こ と に な り ま す 。 一 方 ,「 評 価 基 準 ( standard)」 は , 教 育 目 標 が 達 成 さ れ た 程 度 を 量 的 に 示 す 数 値 的 な 目 安であり,観点別に評価するための標準となる数値として,判定の尺度を示すものです。 評 価 基 準 で は ,収 集 し た 資 料 を も と に ,何 ら か の 数 値 的 な 基 準 で 評 価 基 準 の B の 判 断 を 定 め る 必 要 が あ り ま す 。 例 え ば , 評 価 テ ス ト の 問 題 で ,「 何 題 以 上 」 で き た と か ,「 平 均 正 答 率 が 何 %以 上 」 と い っ た 「 基 準 」 を 設 定 す る こ と に な り ま す 。 -21-.

(25) (3)観 点 別 評 価 教育評価は,学習者が理解し身につけるものとしての教育目標を考えることにはじまり ますが,目標は総合的な表現ではなく,分析的な表現に直すと評価がしやすくなります。 指導要録では,このように目標を分析的に表現したものを「観点別学習状況」の「評価の 観点」としています。この「観点」は,中学校数学に着目すると,次のように推移してい ます。なお,平成 3 年以降は,観点の順序性も重視されています。 昭 30 年. 数量への関心/数学的な洞察/論理的な思考/技能/数学の応用創意. 昭 36 年. 数量への関心/知識・理解/技能/直観・見直し/論理的思考. 昭 47 年. 知識・理解/技能/数学的な考え方. 昭 56 年. 知識・理解/技能/数学的な考え方/関心・態度. 平. 3年. 関心・意欲・態度/数学的な考え方/数学的な表現・処理/知識・理解. 平 14 年. 関心・意欲・態度/数学的な見方や考え方/数学的な表現・処理/知識・理解. 平 24 年. 関心・意欲・態度/数学的な見方や考え方/技能/知識・理解. (4)評 価 の 観 点 評 価 の 観 点 は 昭 和 56 年 度 以 降 ,認 知 面(「 知 識 」, 「 理 解 」, 「 思 考 」),技 能 面(「 技 能 」), 情 意 面 (「 態 度 」) の 3 つ の 側 面 か ら 示 さ れ て い ま す 。 そ し て , 数 学 教 育 研 究 ( 例 え ば , 算 数・数 学 の 基 礎 学 力 研 究 )で は ,こ の そ れ ぞ れ に つ い て 次 の よ う な 解 釈 が な さ れ て い ま す 。 認知面における「知識」とは,意味がわかっていて,必要に応じて適用できるように記 憶されている内容のことで,例えば,記号・用語の知識,計算の手続きの知識などがあり ます。 「 理 解 」と は ,全 体 と 部 分 の 関 係 や 従 属 関 係 な ど ,個 々 の 内 容 の 背 後 に あ る 内 部 的 な 関 係 を 把 握 し た 状 態 で , 例 え ば , 意 味 ・ 概 念 ・ 原 理 ・ 法 則 の 理 解 な ど が あ り ま す 。「 思 考 」 とは,新しい問題場面において,既有の知識・原理を使ってこれを解決したり,解釈した りする力で,例えば,問題や性質の発見・解釈などがあります。技能面の「技能」とは, 知識・理解が一定の目的を達成するのにうまく適合するように形式化された行動様式で, 例えば,計算技能,作図技能などがあります。情意面の「態度」とは,見方や考え方の傾 向であって,自分の行動に対して指示力をもつ情意的側面で,例えば,統合的・発展的な 見方を持とうとしているかなどが挙げられます。 ところで,平成 3 年以降,情意面は「関心・意欲・態度」と表現され,観点の中でも特 に重視されてきましたが,これをペーパーテストで評価可能かは意見の分かれるところで す。最近では,他の観点と関連づけて評価することが考えられています。例えば,小学校 では「分数と小数についてそれぞれのよい面をあげてみよう」とか,中学校では「文字を 使 っ て 解 決 す る よ さ に つ い て 考 え て み よ う 」と い っ た 問 題 で は , 「 関 心・意 欲・態 度 」と「 知 識・理解」などとを組み合わせることによって評価することができるといった考え方もあ ります。これは授業における評価にも当てはまります。 また, 「 数 学 的 な 見 方 や 考 え 方 」の 評 価 も 難 し い 側 面 が あ り ま す 。例 え ば ,中 学 校 に お け る 星 形 五 角 形 の 角 の 和 が 180°で あ る こ と を 子 ど も が 見 い だ す 場 面 で は , 問 題 の 解 決 に 当 たっての手立てや着眼点が重要であり,ここでは,既習のことがらを活用したり,これを 引き出したりするときの背景となる力を評価することになります。 な お , 平 成 23 年 11 月 に 示 さ れ た 観 点 で は ,「 数 学 的 な 見 方 や 考 え 方 」 と 「 数 学 的 な 技 能」の趣旨の中に「表現」に関わる記述があることが特徴的です。. -22-.

参照

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