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石川県内の教員への調査に基づく一考察〜

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石川県内の教員への調査に基づく一考察〜

著者 加藤 隆弘, 田向 海裕

著者別表示 Kato Takahiro, Tamukai Miyu

雑誌名 教育実践研究

号 43

ページ 39‑45

発行年 2018‑03‑01

URL http://doi.org/10.24517/00051121

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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39

ICT活用指導力向上に向けた取組みや課題の特徴

〜石川県内の教員への調査に基づく一考察〜

PeculiarityoftheApproachesandtheProblemfbrUpgradingTbaching SkillsbyUsinglCT

AStudybasedonthesurVeyresultofteachersfromlshikawa〜

加 藤 隆 弘 ・ 田 向 海 裕

TakahiroKATO,MiyuTAMUKAI

概要:石川県にて日常的にICT活用を行う教員に対して,ICT活用指導力の現状とICT活用 指導力向上への取組みや課題を明らかにするためのアンケート調査,インタビュー調査を 行った。ICT活用経験の浅い若手教員は,機器を「活用すること」に課題を感じ,文献調査 や研究会で学ぶことで解決しようとしていた。一方,ICT活用経験のある教員は「活用する こと」は前提として,活用の仕方は効果的かどうかに課題を感じていた。双方の結果から,

若手教員がICT活用指導力を向上させるために必要とされる取組みや視点を考察し,提案を 行う。

キーワード:ICT活用指導力,ICT活用経験,半構造化インタビュー,段階モデル

1 . は じ め に 1.1.研究の背景

文部科学省(2016)は,教員のICTを活 用した指導力向上のための養成・採用・研修 の 在 り 方 に つ い て , 教 職 課 程 に お け る I C T 活用について学ぶ機会の充実や,教員のICT 活 用 指 導 力 の 向 上 を 図 る 施 策 を 講 じ る た め に,教員養成・採用・研修の一体改革のため の 制 度 改 正 を 図 る と あ る 。 文 部 科 学 省 (2015a)は,ICTを利活用した授業力の育 成や児童生徒の実践的活用や情報活用能力 の 育 成 に 資 す る 指 導 の た め の 研 修 の 充 実 に ついて示している。特に,教員が授業のどの 場 面 で ど の よ う な 教 材 を 提 示 す れ ば 児 童 生 徒の関心意欲を引き出し,理解を促しやすい かという観点や,児童生徒が学習の道具や環 境として適切にICTを用いて学習を進める ことを促すという観点から,授業力の育成を 図 る 必 要 が あ る と し て い る 。

こ の よ う な 国 の 政 策 に も と づ き , 石 川 県 の 第2期石川の教育振興基本計画(・2016)は,

平成27年度実施の学校における教育の情報

平成29年3月30日受理

化の実態等に関する調査結果を示し,「授業 中にICTを活用して指導することができる 教員の割合」,「児童生徒のICT活用を指導 す る こ と が で き る 教 員 の 割 合 」 が そ れ ぞ れ 78.7%,69.7%と全国平均を上回る状況を明 ら か に し て い る 。 し か し , 目 標 値 で あ る 100%に到達していないことから,教員の ICT活用指導力の向上に取組む必要がある としている。このような課題を受け,石川県 教育センター研修講座ハンドブック(2015)

では今日的課題研修の1つに「情報教育・

ICT活用」の項目を設定し,「はじめてのICT

活用(小学校・中学校)」「校務に役立つデー タベース研修(入門編)」など8種類の研修 が用意され,実際に行われている。

1.2.先行研究

清水ら(2007)は教員のICT活用指導力 は授業経験や活用頻度によって大きく異な るとしている。堀田ら(2008)はICT活用 の エ キ ス パ ー ト 教 員 の 授 業 設 計 や 学 習 環 境 設 計 の 手 法 を 分 析 し た 。 こ の よ う に , I C T

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活 用 経 験 も 教 員 経 験 も 豊 富 な 教 員 が ど の よ う な 活 用 を 行 う か を 明 ら か に し た 研 究 は 多 く行われている。

また,堀田ら(2006)はICT活用初心者 教員にICT活用実践を普及させる戦略を示 すことを目的に,ICT活用に関する研修にお い て 効 果 の あ っ た と 感 じ る 働 き か け の 調 査 を行った。ICT機器環境の整備,それを活用 するムード作り,いつでも支援してくれる人 的体制,授業づくりなどの研修の支援が効果 的とされ,操作に関する研修は相対的に低く 評 価 さ れ て い る こ と を 示 し た 。 こ の よ う に ICT活用指導力の向上に向けた研修に関す る研究も行われている。

しかし,近年は,学校現場に若手教師が大 量採用されており(文部科学省2015b),ICT 活用経験に加え,教員経験も浅い教員が増え ている。山本ら(2008)は初任者教員と中 堅教員のICT活用指導力の違いに着目し,

初 任 者 教 員 に と っ て 重 点 的 に 研 修 を 実 施 す ることの必要性を示した。ICT活用指導力の 向上に向けた研修は,若手教員に対しても重 要であるとわかる。

一方で,福岡市教育センター(2012)は

『自分が期待する教師としての力量を高める 方法」として,研修の場面以外での若年層教 員の取組みの実態を明らかにした。また,福 岡市教育センター(2013)は若年層教員の 自己成長のために,先輩教員の実践をモデル として学び,自分の実践に取り入れている実 態を明らかにしつつ,研修以外の場面での教 師の力量向上に触れている。しかし,これら の研究はICT活用指導力の向上には焦点を 当てていない。研修の場面以外で若手教員の ICT活用指導力の向上に関する研究は筆者 の知る限り少ない。そのため,堀田らや山本 らの示す研修の場面以外で若手教員がICT 活 用 指 導 力 を 向 上 さ せ る た め に 必 要 と さ れ る取組みや視点をまとめることは,より広い 視点から,若手教員の力量を高める一助にな るのではないか。

1.3.目的

本県にて日常的にICT活用を行う教員を 対象に,ICT活用指導力の現状とICT活用 指 導 力 向 上 へ の 取 組 み や 課 題 を 明 ら か に す る。その結果から,後進の「若手教員」が「ICT 活用指導力を高める」取組みや視点に関する 提案を行う。

表 1 対 象 教 員

2.研究方法 2.1.調査対象

石川県内で,日常的にICT活用を行う小 学校教員8名を対象とした(表1)。本研究 では,本県の初任者研修を受講している教員 経験1年目の教員と,本県で行われている初 任者フォローアップ研修の対象となる教員 経 験 2 年 目 及 び 3 年 目 の 教 員 A 〜 D を I C T 活用経験の浅い若手教員として位置づけた。

また,教員経験,ICT活用経験がともに5年 目以上の教員E〜Hは,ICT活用経験のある 教員として位置づけた。

2.2.ICT活用指導力チェックリストの活用 調査は,文部科学省「教員のICT活用指 導力のチェックリスト」を援用して行った。

特に「A教材研究・指導の準備・評価など にICTを活用する能力」「B授業中にICT を活用して指導する能力」「C児童・生徒の ICT活用を指導する能力」の3分野12項目 で,「わりにできる」「ややできる」「あまり できない」及び「ほとんどできない」の選択 肢で構成された4点法のアンケート調査を 対 象 教員経験i担任学年i恥T活用経験

教 員 A鳶達2:I 弓 I 印 q * も L I I 司 哩q墨 識

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教 員 E 5年

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教 員 F 22年

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6年生 7年

教 員 G 16年

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5年生 7年

教 員 H 5年

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4年生 5年

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し て コ ン ピ ュ ー タ や イ ン タ ー ネ ッ ト な ど を 利用すれば良いかを計画する」B‑2「児童一 人 一 人 に 課 題 を 明 確 に つ か ま せ る た め に , コ ン ピ ュ ー タ や 提 示 装 置 な ど を 活 用 し て 資 料 などを効果的に提示する」B‑3「わかりやす く説明したり,児童の思考や理解を深めたり するために,コンピュータや提示装置などを 活用して資料などを効果的に提示する」など

『授業中にICTを活用して指導する能力』の 得点について,4名中3名が2点以下であっ た。

ICT活用経験のある教員は,C‑2「児童 が 自 分 の 考 え を ワ ー プ ロ ソ フ ト で 文 章 に ま とめたり,調べたことを表計算ソフトで表や 図 な ど に ま と め た り す る こ と を 指 導 す る 」 C‑3「児童がコンピュータやプレゼンテー ションソフトなどを活用して,わかりやすく 発表したり,表現したりできるように指導す

る」など『児童生徒のICT活用を指導する 能力』の得点について,4名中3名が2点以 下であった。

行った。そして,各項目に対し肯定的な回答h

から順に4,3,2,1と点数化した。

2.3.インタビュー内容

下記の内容で,半構造化インタビュー形式 で行った(2016年8月へ"11月,約30分×

8回)。

自 主 的 に 行 っ て い る 取 組 み 1 の 取 組 み の 中 で 感 じ て い る 課 題 2 か ら 必 要 と 考 え る 取 組 み

jjj l23 くくく

各 教 員 へ の イ ン タ ビ ュ ー 結 果 を プ ロ ト コ ルに起こし,1つ1つのコメントに注目した。

その後,ICT活用経験の浅い若手教員とICT 活用経験のある教員それぞれで,ICT活用指 導 力 を 高 め る た め の 課 題 や 取 組 み に つ い て まとめた。

3.結果

3.1.ICT活用指導力調査の結果

本調査で得られたICT活用指導力の現状 を以下に示す(表2)。

A‑2「授業で使う教材や資料などを集める ために,インターネットやCD‑ROMなどを 活用する」A‑3「授業に必要なプリントや提 示資料を作成するために,ワープロソフトや プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ソ フ ト な ど を 活 用 す る 」 はどの教員も3点以上であった。

ICT活用経験の浅い若手教員は,A‑1「教 育効果をあげるには,どの場面にどのように

3.2.ICT活用指導力調査の結果からみられ た 特 徴

「ICT活用指導力チェックリスト」でみら れた結果から,ICT活用経験の違いに着目し て,その特徴を示す。4名中3名が2点以下 であったことから,ICT活用経験の浅い若手 教員は『授業中にICTを活用して指導する』,

ICT活用経験のある教員は『児童生徒のICT

表 2 I C T 活 用 指 導 力 チ ェ ッ ク リ ス ト の 結 果

対象 mT活用経験A‑1 A 2 A令

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(5)

活用』に課題を感じていると推察できる。し・

かし,ICT活用経験の浅い若手教員の中でも,

教員Cのみ『授業中にICTを活用して指導 する』ではなく,ICT活用経験のある教員と 同じく『児童生徒のICT活用』の得点が低

くみられた。

3.3.インタビュー調査の結果

インタビュー調査の回答は以下の通り。

(1)自主的に行っている取組み

ICT活用経験の浅い若手教員は,「勉強会 や研究会に参加して,授業を参観する(教員 A)」「4月の段階で操作の練習をして,授業 の中で慣れていく。(教員D)」「自主的な勉 強会に呼んで頂き学ぶことが多い。堪能な先 生に教えて頂き,実践することが多い(教員 C)」とあった。

ICT活用経験のある教員は,「セミナーで 活用事例の発表や実践発表を行っている。そ の取組み自体が勉強になる(教員E・G)」「以一 前は学ぶ立場にいたが,研修講師として県内 のICT活用についての講演や模擬授業をし ている(教員F」とあった。

(2)取組みの中で感じている課題

ICT活用経験の浅い若手教員は,「使い方 が分からず,生かし切れていない(教員B)」

「活用のアイデアを深めたい(教員D)」「学 級間格差を生みやすいツール,どう工夫して 活用するか(教員C)」とあった。

ICT活用経験のある教員は,「昔学んだ活 用方法ばかりしている気がする(教員F)」

「ICT機器をどう使うかではなく,教科との 関連の中で深めたい(教員G)」「その活用は 効果的だったか毎回考えている(教員E・H)」

とあった。

(3)自身の課題から必要と考える取組み ICT活用経験の浅い若手教員は,「真似し やすいので,私はこう使うといった具体例を 聞きたい(教員D)」「使いにくい機能がある ので,他の先生の活用法を学びたい(教員 A・B)」「活用のレベルに応じて違う。使い

始めの段階では,活用方法はもちろん,コン テ ン ツ や ア プ リ の 内 容 に つ い て 学 び た か っ た。次に,ICT活用を行った実践例,今は I C T を 活 用 し た 際 の 子 ど も の 変 容 は ど う で あ っ た か な ど の 視 点 か ら 学 び , 活 か し た い (教員C)」とあった。

ICT活用経験のある教員は,「どのように 子どもが反応するか生の授業を見たい(教員 F・H)」「ICTを教員がどのように活用する かは前提として,子どもがどのような活用を 行うか普段使いの授業を見たい(教員E)」

「教科の本質を子どもたちが身に着けるため に,ICT機器をどう使うか以上に,教科との 関連も図れる取組みがあればいい(教員G)」

とあった。

3.4.インタビュー調査の結果からみられた 特 徴

「( )自主的に行っている取組み」では,

ICT活用経験のある教員は,事例から学ぶだ けでなく,自分が行っている取組みを発表す る場に自発的に参加している。その場に参加 することが,力量向上に関わるとしていた。

ICT活用経験の浅い若手教員の中で,教員c も 参 加 し て 学 ぶ こ と へ の 有 効 性 を 感 じ て い た。加えて,「堪能な先生に教えて頂く」「一 緒に組んだ堪能な先生の真似をする」とあっ たように,ICT活用経験のある教員との関わ

りから学び,実践していた。

「(2)取組みの中で感じている課題」では,

ICT活用経験のある教員は「活用すること」

は前提で,活用の仕方は効果的かどうかに課 題を感じていた。一方,ICT活用経験の浅い 若手教員は,使い方が分からないなど「活用 すること」に課題を感じていた。しかし,教 員 c は 機 器 を 活 用 す る こ と へ の 課 題 意 識 は 少なく,「どのように活用するか」といった 活用の仕方に課題を感じていた。

「(3)自身の課題から必要と考える取組 み」では,ICT活用経験の浅い若手教員は,

活 用 方 法 や 取 組 み を 学 べ る 実 践 報 告 や 模 擬

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授業に参加したいとあった。ICT活用経験の ある教員は,活用は前提として,生の授業を 参観し,子どもがどのようにICTを活用す る か な ど 「 子 ど も 」 に 焦 点 を 置 い た 取 組 み が あれば良いとあった。また,ICT活用経験の ある教員は「以前は学ぶ立場にいたが」「昔 学んだ活用方法」「ICTを教員がどのように 活 用 す る か は 前 提 と し て 」 と 発 言 し て い る 。 まず学び,実践することで,活用を前提とし て考えるようになるという段階を踏んでい た。この点に関し,教員Cも最初は,教員C も 他 の 若 手 教 員 と 同 じ 取 組 み を 求 め て い た が,徐々に変化していったとしていた。

4.考察

ICT活用経験の浅い若手教員は,「ICT機 器はどのように操作するか」「授業でどのよ うにICT活用を行うか」,に課題を感じてお り,文献調査や研究会で学ぶことで解決して いた。一方,同じ若手教員であっても,教員 Cは身近にいるICT活用経験のある教員の 手法を学び,実践することで解決していた。

また,教員Cは「(3)自身の課題から必要 と考える取組み」のインタビューにて「活用 方法やコンテンツ紹介」今「ICTを活用した 実践例」今「ICTを活用した実践研究,それ による子どもの変容」と段階的に取組みや研 修 に 対 す る 思 い が 変 化 し て い る こ と が わ かった。ICT活用経験のある教員も,まず学 び,実践することで,活用を前提として考え るようになるという段階を踏んでいたこ』と が イ ン タ ビ ュ ー の 中 で わ か っ た 。 こ の こ と か ら,ICT活用経験の浅い若手教員が求める

「活用方法やコンテンツ紹介」に関する取組 みから,ICT活用経験のある教員が求める

「子どもの変容」に関する取組みへ,段階的 に必要と考える内容が変化していくと推察 できる。しかし,単に取り組むだけでは考え は変わらない。実際に現段階では,若手の中 で 教 員 C の み に 段 階 的 な 変 化 が み ら れ た 。 教 員 C の イ ン タ ビ ュ ー に あ る よ う に , I C T

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活 用 経 験 の あ る 先 輩 教 員 と 意 図 を 持 っ て 関 わることがICT活用指導力の向上を支えて いると考えられる。

以上の結果を参考に,若手教員のICT活 用指導力向上への段階モデル,(図1)を作成 した。ICT機器の活用方法やコンテンツの内 容を学ぶ「ステップ1:『方法』への視点」,

学 ん だ 活 用 等 を 授 業 の 目 的 に 応 じ て 活 用 す る「ステップ2:『活用』への視点」,子ども への効果を考慮する「ステップ3:『子ども』

への視点」と3ステップで成り立っている。

また,文部科学省(2016)においても初任 者の教員は,指導教員や先輩教員からの指導 や助言を受けながら学校で日々実践し,省 察・改善を繰り返す中で,教員として成長し ていくものであるとしている。ICT活用指導 力の向上においても,この視点は変わらない。

ICT活用経験がある先輩教員との関わりが,

特にICT活用経験が浅い若手教員のICT活 用指導力を段階的に高めるために有効だと 考えられる。実際に,ICT活用経験のある教 員4名は,本段階モデルを取組みの内容に差 はあるものの,段階的に経験していた。加え て,この段階モデルは,福岡市教育センター (2012)が示した若手教員の「日常的に先輩 教員の指導の様子を見聞きしたい」「具体的 な ア ド バ イ ス を 受 け た い 」 と い う 思 い に ,

「ICT活用指導力の向上」の観点から,より

図 1 若 手 教 員 の 段階モデル

,翼謝關究から学ぶ

。子どもの反応や渚用を憩定 して授婁を考溌

・研究授集を行う

・実燃浩を聞く

。堪能な先生の真似する

。敏科との関連¥授蕊の目的 を吟味する

、文献鯛査を編

・セミナーや§饒会一鏡pする

.自身の綴篭の鼠入する

ICT活用指導力向上への

(7)

実 践 的 な ア プ ロ ー チ を 行 う た た き 台 に な る と考える。まず現状を各ステップに置き換え,

照らし合わせることで若手教員はICT活用 指 導 力 を 向 上 さ せ る た め の 具 体 的 な 方 法 や 視点を得る。それらを念頭に置きつつ,ICT 活用経験のある教員と関わり,自身のステッ プアップを意識することが,ICT活用指導力 を 効 果 的 に 向 上 す る こ と に つ な が る と 考 え

5.今後の課題

本研究では,ICT活用指導力チェックリス ト と 半 構 造 化 イ ン タ ビ ュ ー に よ る 結 果 の 2 つから,ICT活用指導力を向上させるための

3 つ の ス テ ッ プ か ら 成 る 段 階 モ デ ル を 提 案 した。しかし,本研究での考察はあくまで,

「若手教員」が「ICT活用指導力を高める」

た め に 必 要 と 考 え る 取 組 み や 視 点 の 方 向 性 を示したに過ぎない。本研究では,実際の現 場 で I C T 活 用 指 導 力 の 向 上 に ど の よ う に 取 組み,成長しているかといった変化を追った 具体的なデータは得ていない。そのため,図 1に示した段階モデルのうち,各ステップで は具体的にどのような取組みがなされ,それ が ど れ ほ ど 効 果 的 で あ っ た か の 具 体 性 に は 乏しい。ICT活用経験の浅い若手教員の実情 を知ることができたこと,その若手教員に向 け て た た き 台 と な る 段 階 モ デ ル を 作 成 で き たことが本研究の成果であると考えている。

今後の課題として,本研究で得た知見を土 台とし,ICT活用経験の浅い若手教員や今後 ICTを活用しようと考えている若手教員は,

実際にどのように取組み,ICT活用指導力を 向 上 さ せ て い る か , 数 名 の 教 員 の 取 組 み を 追っていきたい。その中で,各ステップに あった具体的な事例をまとめ,若手教員の視 点から,どのような取組みに効果を感じたか の調査を行いたい。実際の現場から,教師の 成長という観点を踏まえ,データをまとめる ことで,より具体性の増したICT活用指導 力を高められるモデルを提案していきたい。

謝 辞

本論文をまとめるにあたり,石川県内の小 学 校 教 員 8 名 に は 多 大 な る ご 協 力 を い た だ きました。深謝申し上げます。

参 考 文 献

文部科学省(2016):教育の情報化加速化プ ラン〜ICTを活用した「次世代の学校・地 域 」 の 創 生 〜

http://www.mext.go.jp/b̲menu/houdou/2 8/07/̲icsFiles/afieldfile/2016/07/29/137 5100̲02̲1.pdf(2017年3月30日閲覧)

文部科学省(2015):これからの学校教育を 担 う 教 員 の 資 質 能 力 の 向 上 に つ い て 〜 学 び合い,高め合う教員育成コミュニティの 構築に向けて〜(答申)

http://www.mext.go.jp/component/b̲me nu/shingi/toushini‑icsFiles/afieldfile/2 016/01/13/1365896̲01.pdf

文部科学省(2015):これからの学校教育を 担う教員の資質能力の向上について(中間 まとめ)

http://www.mext.go.jp/component/b̲me nu/shingi/toushin/̲icsFiles/afieldfile/2 015/08/06/1360150̲02̲1.pdf(閲覧日:平 成29年11月14日)

石川県教育センター(2015):平成27年度 石 川 県 教 育 セ ン タ ー 研 修 講 座 ハ ン ド ブ ッ

http://www.ishikawac.ed.jp/kouza/ippan /handbook2015.Pdf(閲覧日:平成29年 11月10日)

石川県教育委員会教育振興推進室(2015):

第 2 期 石 川 の 教 育 振 興 基 本 計 画 2016→2020

https://www.pref・ishikawa.19.jp/kyoiku/ plan2/documents/plan2̲all・pdf(閲覧

日:平成29年11月09日)

清水康敬,山本朋弘,横山隆光,小泉カー,

堀田龍也(2007):教員のICT活用指導力 の 因 子 分 析 に よ る 能 力 分 類 の 検 討 , 日 本 教

(8)

青工学会第23回年会論文集,pp.169‑170 堀田龍也,中川一史,黒上晴夫(2008):ICT

活用のエキスパート教員による学力向上を意 図した授業設計・学習環境設計,日本教育工 学会研究報告集,JETO8‑1,pp.183‑188 堀田龍也,高橋純,西岡遼一,中山実,清水康

敬(2006):ICT活用初心者教員にICT活用 実践を普及させる戦略,日本教育工学会第22 回年会論文集(課題研究),pp、179‑182

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福岡市教育センター(2012):若年層教員の学 級経営力向上をめざした小学校におけるOJT の在り方一主観教諭を軸とした組織的な取組 を通して−,福岡市教育センター平成24年度 研 究 紀 要

福岡市教育センター(2013):若年層教員の自 己成長を促すOJTの在り方一中学校にお ける組織文化に着目した事例分析を通して,

福岡市教育センター平成25年度研究紀要

参照

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