博 士 ( 医 学 ) 服 部 拓 哉
学 位 論 文 題 名
メ チ ル セ ル ロ ー ス 法 に よ る in vltro 神 経 芽 種 コ ロ ニ ー の形 成
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
I 研 究 目 的
神経芽腫の治療成績は改善してはぃるが歩みは遅く、進行例に関してはマススクリーニソグに より頻度は減少しつっあるが、その治療には難渋しているのが現状である。その理由として骨髄 への転移か多く、その診断も腫瘍細胞が少なぃうちは困難なことがあげられる。そこで著者はメ チルセル口ース法によるin vitroコロニー法で神経芽腫の骨髄転移の有無、早期診断への可能性、
コロニー形成と臨床経過との相関等にっき検討した。
H 研 究 方 法
1.対象 :進行 性神経 芽腫患 児10例(I期4名,W期6名) で、計28回採 取され た骨髄液を用 いた。また対照として鑑別診断等のため採取をされたが、血液学的に異常を認めなかった8例の 骨髄液を用いた。
2.メチ ルセル ロース液の作製:メチルセルロース粉末9.6gを滅菌し、加温蒸留水195.2ml に溶 かし冷 却後、Iscove modified Dulbeccom.edium( IMDM)を195.2ml加え攪拌し、2.4 弼メチルセルロース液とした。
3.conditioned medium(PHA添加 ヒ ト末 梢血 培 養上 清(PHA−LCM) )の作 成:ヒトリ ン パ 球 を 、20ゲ 。FCSと1芻PHAを 含 むIMDM細 胞 浮 遊 液 を 作成 し 、炭 酸ガ ス 培養 器に て5 日間培養後濾過液をPHA−LCMとした。
4, メ チル セル ロ ース 法に よ る細 胞培 養 :単 核球 をIMDMに浮 遊 させ 、FCS20%、2ーメ ル カプトエタノール5 x10−5M、PHA−LCM20伽およ びメチルセルロー ス濃度0.96ゲ。とし、0.5
〜5 x10個ずっぺ トリ皿に分注した 。倒立顕徽鏡にてsingle cellであることを確 認後、炭酸 ガス濃度5ゲ。、37℃、湿度100ゲ。の 条件下で培養を開 始した。
5.コロ ニーの観察および 同定:倒立頭微鏡にて観察し、14日目には50個以上の細胞集団をコ ロニ ーと して算定した。 コロニーを吸引塗抹 し、MaY Grllnwalds−Giemsa法(MG染色)等に て細胞形態を観察、 同定した。
I 結 果
1,正常ヒト骨髄 におけるコロニ一形 成
4〜5日目 頃より好中球、マ クロフ7一 ジ、好中球とマク ロフフージの混在 したものおよび好 酸球の4型のコロニ ーが認められた。こ れらは倒立顕微鏡 で同定可能で、そ の総和をCFUーCと して算定し た。
2.神経芽腫息児 骨髄におけるコロニ ー形成
神経芽腫 患者よりは神経芽 腫コロニーが形成された。3〜4日目に出現し、12 ^‑16日目に最大 となり30〜40日目頃には退縮した。小型で淡褐色の細胞密度に富む円形の均一な細胞より構造さ れ時に神経 突起を有し、前述 の各血液幹細胞コ ロニーと鑑別し得た。このコロニーの細胞のMG 染色所見は もとの細胞と同様であった。また播種細胞数と得られたコロニ一数の問には直線関係 が得られた 。組織学的陰性例 では神経芽腫コロ ニーは培養されずCFU−Cが正常対照と同様に見 ら れた のに 対 し、 陽性 例 では1X105個あ た り神 経芽 腫 コロ ニー が0.6〜816個、CFU−CがO
〜 116個そ れそれ混在して見 られた。
3, CFU−Cおよ び神経芽腫コロニー の経時的動態パタ ーソ
本法は造 血幹細胞と神経芽腫コロニーの混在することが特徴であり、これらの経時的観察と臨 床 経過 との 相 関に て3群 に分 けた。1)第1群:I期神経芽腫で治癒し た症例(3症例)。当初 よ り骨 髄のCFU−Cは 正常で神経芽腫コロ ニーも見られず、 治療によりCFU‐Cは増加し神経芽
腫 コ口 ニーは 全く見 られな い。2)第2群:W期神 経芽腫 で治癒 した症例(2症例)。当初は骨 髄 のCFU―Cは正 常〜や や低下 、神経 芽腫コ ロニーも見られる。治療により速やかにCFU−Cは 正常化し、神経芽腫コロニーは見られなくなる。なお1症例では本法により神経芽腫の早期診断 と 骨髄 転移の 確定診 断をし 得た 。3)第3群:H,W期神 経芽 腫で死 亡した 症例(5症 例)。当 初より骨髄のCFU−Cは低下し、IV期の場合は神経芽腫コロニーも見られる。治療を開始しても CFU‐Cは回 復せ ず、骨髄浸潤の状況により神経芽腫コロニーが出現あるぃは増加する。1例は 生存中であるがこの群に帰属すると考えられる。本例でも神経芽腫コロニーの形成で骨髄転移が 確認された。
W 考 按
神経芽腫コロニーは、@コロニーを吸引後塗抹し染色すると培養前の細胞と同様の形態を呈し た、@播種細胞教とコロニー数の間の直線的関係よルコロニーは単一の神経芽腫起源であることが 推定された、◎他の細胞では見られたぃ特徴的次神経突起を有する、の3点より神経芽腫由来と 考えられた。組織学的所見との相関は極めて良好であり、感度において優れていると考えられた。
また骨髄転移の診断は腫瘍細胞が少なぃうちは困難であるが、培養早期に典型的な神経芽腫コロ ニーが出現することにより鑑別診断に有用である。著者はメチルセルロース法を用いて神経芽腫 コロニー形成に初めて成功した。メチルセルロースは寒天に比ペ取扱いが容易であり、細胞を取 り 出 せ る と い う 大 き た 利 点 を 有 す る た め 、 細 胞 の 同 定 等 の 応 用 が 可 能 で あ る 。 著 者の培 養系の 最大 の特徴 はcolony―stimulatorで あるPHA−LCMを使用しているため腫瘍 性幹細胞と造血幹細胞との同時定量が可能な点である。従来の系でstimulatorを塗加した培養系 の 報告は なく、この種の培養系を用いたのは著者らが最初である。この系でCFU−Cと神経芽腫 コロニーの経時的動態パターンを3群に分類して臨床経過との相関性を検討した。経過中全くコ ロ ニーの 形成を見ない例、あるぃは治療後速やかに神経芽腫コロニーが消失し代りにCFU―Cが 見 られて くるものは予後が期待し得るが、神経芽腫コロニーが増加傾向の見られCFU―Cが減少 する例は予後が悪いと考えられる。以上よりこのin vitro神経芽腫コ口ニー法が将来的に神経芽 腫 の 骨 髄 転移の 有無、 早期診 断、 さらに 予後の 推定な どに臨 床応 用でき る可能 性かあ る。
V 結 語
(1)小児 の骨 髄 を用 いPHAーLCMを添加したメチル セルロース法によ るin vitroコロニー 形 成能 を検 討 した 。(2)正常骨髄で は正常造血幹細胞 コロニー(CFU―C)が得られ た。(3)神 経 芽腫例ではCFU一Cに混じて神経芽腫コ ロニーが見られ容 易に鑑別し得た。(4)神経芽腫コロニ ーの形成は骨髄転移の有無と良く相関し、従来の組織学的検索法より感度および特異性の面で優 れていると考えら れた。(5) CFU‑Cと神経芽腫 細胞のコロニーの割 合の変化は患児の予後との 相関が見られ、治 療開始後神経芽腫コ ロニーの減少とCFU−Cの増加を見る例は予後良好であっ た。
学位論文審査の要旨
神経芽 腫は現 在, マスス クリー ニング によ り進行 例の頻 度は滅 少しつ っあ り,且つ又その治療 成績も 年毎に 徐々に 改善 しつっ あるが ,進行 例の治 療に はいま も難渋 してい るのが実状である。
その理 由とし て骨髄 への 転移が 多く, その診 断も腫 瘍細 胞が少 ないう ちは困 難なことがあげられ る。 筆 者 は 今 回メ チ ル セ ル口 ース法 によ るin vitroコ 口ニー 法で 神経芽 腫の骨 髄転移 の有 無,
早期診 断への 可能性 ,コ 口ニー 形成と 臨床経 過との 相関 性等を 明らか にする 目的で本研究を行つ た 。 方 法 と し て は 単 核 球 をIMDMメ ジ ウ ム に 浮 遊 さ せ ,FCS 20% ,2― メ ルカ プ ト エ タ ノー ル5 x10ーSM,PHA―LCM 20% およ び メ チ ル セル 口 ー ス 濃 度O.96% とし ,O.5〜5x10‑。個 ず っペ ト リ 皿 に 分注 し , 倒 立顕 微鏡に てsingle cellで あるこ とを 確認後 ,炭酸 ガス濃 度5%,37
℃, 湿 度100%の条 件下で 培養 を行っ た。コ 口ニー は倒立 顕微 鏡で観 察し,14日目 に50個以 上の 細 胞 集 団 を コ 口 ニ ー と し て 算 定 した 。 コ 口 ニ ーを 吸 引 塗 抹 し ,May―Grunwalds―Giemsa法 (MG染 色)等 にて細 胞形態 を観 察,同 定して いる。
神経芽 腫コ口 ニー は,組 織学的 所見との相関は極めて良好であり,感度においても優れていた。
こ の 方 法 を 用 い て 筆 者 は (1) 正常 骨 髄 で は 正常 造 血 幹 細 胞コ 口 ニ 一 (CFU―C)が見 ら れ る こ と ,(2)神 経 芽 腫 例 で はCFU−Cに 混 じ て 神 経 芽 腫コ 口 ニ ― が 見ら れ 容 易 に 鑑 別し 得 る こ と, (3) 神経芽 腫コ口 ニーの 形成は 骨髄 転移の 有無と 良く相 関し ,従来 の組織 学的検 索法よ り 感 度 お よび 特 異 性 の 面で 優 れ て い るこ と , (4)GFU一Cと神 経 芽 腫 細 胞の コ 口 ニ ー の割 合 の 変化 は 患 児 の 予後 と よ く 相 関し , 治 療 開 始 後神 経 芽 腫 コ ロニ ー の 減 少 とCFU―Cの増加 を見る 例は治 療の予 後が良 好で あるこ となど の結果 を得た 。以 上の研 究に使 用され た筆者の培養系の特 徴は メ チルセ ル口ー スを用 いて 神経芽 腫コ口 ニー形 成に 成功し ている 点とcololny―stimulator で あ るPHA―LCMを 使 用 す る こ と に よ り腫 瘍 細 胞 と 造血 幹 細 胞 と の同 時 定 量 が 可 能で あ っ た 点で あ る 。 従 来の 系 でstimulatorを 添加し た培養 系の 報告は なく, 筆者は この培 養系 を用い る こと に よ り 初 めてCFU―Cと 神 経 芽 腫 コ口 ニ ― 経 時 的動 態 パ タ ー ンを い くっ かの 群に分 類して
三
暹
保
脩
本
巻
崎
松
葛
宮
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
が見られてくる ものは予後が期待し得るが,神経芽腫コ口二ーが増加傾向の見られCFU―Cが 減少する例は予後が悪いと考えられる結果であった。以上よりこのin vitro神経芽腫コ口ニ一 法を他の種の転移診断法と組み合わせて検討することにより神経芽腫の骨髄転移の有無転移の有 無及び早期診断の精度を上げ得るものと考えられ,学位論文として評価に足るものと判断した。
ナよお,副査 の葛巻,宮崎両教授から神経芽細胞種コ口ニーの判定基準,PHA―LCM以外の stimulatorとの比較,骨髄の転移部を効率的にキャッチするための工夫,細胞培養にメチルセ ルロースを用いた理由などにっき専門の立場から質問があり,さらに,古舘,西両教授からも骨 髄への転移を早期にキャッチする上での有カな示唆を頂戴し,それらを交えて討議が行なわれた が , 大 部 分 の 質 問 に 対 し 概 ね 妥 当 と 考 え ら れ る 答 え が な さ れ た も の と 判 断 し た 。