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博士(医学)服部理史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)服部理史 学位論文題名

日本人妊婦のデータに基づぃた胎児出生前診断における 母体血清マーカー検査の再評価

学位論文内容の要旨

     緒言

   最近,我が国においても,胎児染色体異常の危険率を算出する方法として母体血清中 の a‑ フェ トプ ロテ イン(AFP) ,ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG) および非抱合型エ ストリオール (uE3 )を用いた母体血清マーカー試験には社会的にも関心が高まっている.

しかしながら,母体血清マーカーの測定値およびMOM ( multipleofmedian :中央値の倍 数値)値は妊娠週数,母体体重および人種など症例固有の因子に加え,測定方法,環境因 子などの影響を受けることが知られている.従って,欧米における成績を直接的に我が国 の症例に当てはめることができないばかりか,我が国の中でも地域性,施設間の差異を考 慮せずに判定してよいかは不明である.現在,我が国では主に4 つの臨床検査会社で本検 査が実施されているが,その測定時期・方法による相違,あるいはダウン症候群(DS ) リスク値の相違などは全く検討されていない・

   本研究では我が国の胎児出生前診断における母体血清マーカーの測定時期,ならびに 現在施行されている臨床検査施設での測定方法および解析プログラムの相違などによる影 響を部分的ではあるが日本人母集団において検討した.

     対象と方法

1 .測 定妊 娠期 間につ いて :1997 年 1 月 から 1999 年 4 月までに北海道大学医学部附属 病院ならびに関連教育病院産婦人科12 機関を受診し,本研究への同意が得られた2 ,809 名 の妊 婦を対 象と した.妊娠第1 三半期後期(lst TM) (妊娠10 週O 日¥‑13 週6 日)と 第 2 三 半期 前期 (2nd TM) ( 妊娠 14 週 0 日 〜20 週 6 日) の2 回に わた り,同 一妊 婦か ら 血清を採取し,AFP ,free ロhCG ,uE3 を測定した.次に,日本人妊婦のデータに基づい た MOM 値を算出するため本研究に同意の得られた5 ,594 例の各マーカーを測定し,各妊 娠週数(10 進法による日数に換算)におけるmedian 値を算出した.体重および妊娠週数 による補正を行った後,2 ,809 症例(5 ,618 検体)のMOM 値と母体年齢に基づくDS リス ク 値 を 算 出 し , 2 群 間 に お け る 相 違 を 統 計 学 的 手 法 を 用 い て 検 討 し た . 2 .測定キットおよび解析プログラムの相違による影響の検討:本研究に同意が得られ,

健常児を出産した妊婦193 名より,2ndTM において採血し,直ちに血清を分離した後,

A 社(AFP , free ロ hCG ,uE3 ),B 社(AFP ,tot 甜hCG , uE3 )においてそれぞれのマーカ

ーを測定した.次いで,日本人妊婦のデータに基づいたMOM 値を算出するため,1 .と

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同 様 にA社 では2,820例,B社 では4,258例の妊婦の 同意のも とに各マ ーカーを 測定し,

各 妊 娠 週 数 に お け るmedian値 を 算 出 し ,193症 例 に お け る 各 マ ー カ ーのMOM値を 算 出 し た . 解析 プ 口グ ラ ム にお け る相 違 は これ ら の 値を ,A社 ではSpencerら(1993)のぱ口 テ ス ト , およ びB社 ではWaldら (1988)のト リ プ ルマ ー カー テ ス トに お ける 出 生 前診 断 解 析 プ 口グ ラ ムを 日 本 人用 に 改変したも のを用い て行いDSリ スク値を 算出した .それぞ れ の解析プ ログラム に用いた 測定値の相 関,リス ク値の相 関を分析し,リスク値に関して は 更 に レ ベ ル 別 一 致 率 , カ ッ ト オ フ 値 別 一 致 率 に 関 し て 検 討 し た . 3. 測 定 キ ッ ト に つ い て :AFPはAbbott社 製 キ ッ ト(IRMA法 ) ,total hCGはWallak社 製 キ ッ ト(TR‑FIA法 ) ,freeロhCGはCIS社 製 キ ッ ト(IRMA法 ) ,uE3はDPC社 製 キ ッ ト(RIA法)を用 いて,そ れぞれ測 定を行った .

    結果

  総症例数 は2,809例(5,618検体) で,異常 例数は6例 (12検体)であった, lst TMと 2nd TMで のDSリ ス ク値 レ ベル の一致率 は61.7%(1,734/2,809)であっ た.リスク 値レ ベルで3段階以上の乖離がみられたものを除いた一致率は92.1%(2,588/2,809)であった.

カッ 卜 オ フ値1/250以 上 のも の と1/250未満 の も のの2群 に 分け て 一 致率 を み たと こ ろ2 群間 で95% の 一 致を 認 め, 両群 間に有意 な差は認 められなか った.測 定施設お よび測定 キッ ト に よる 影 響を 検 討 した 結 果 ,AFP MOM値 では 極 め て高 い 相関(R〓0.8336) を 示 し た . ロhCGとtotmhCG, お よ び 皿3MOM値 で は 比 較 的 高 い 相 関 が 得 ら れ た が , 数 例 にお い て 大き な 乖離 が 認 めら れた.DSリ スク値の 相関を検討 した結果 ,全例で の相関は R2=0.3773であったが,DSリスク値1/5,ooO以上でR2=0.1786,DSリスク値1/1,000以上 でR2〓0.0723と 相関が低 くなり,症例によってはばらつきが認められた.完全にレベルが 一致した ものは81.3%(157/193)であった.また,カットオフ値(1/250)別の一致率も 94.3%(182/193)であった.

    考察

  母 体血 清 マ ーカ ー 検査 に お ける測 定時期, 測定キッ ト,およびDS解析プロ グラムに よ る影響を日 本人母集 団のデー タをもと に初めて 検討した ・

  今 回 の 研 究で ,lst TMに お ける 各 母 体血 清 マー カ ー のMOM値 およ びDSリ ス ク 値が2nd TMに おけ る そ れら と 有意 差 を 認めな かったこ とから,lst TMにおける母 体血清マ ーカー 検査 が2nd TMと ほ ぽ同 等 の信 頼 度をもつ 可能性が あること を初めて明 らかにす ることが できた.こ のことは ,現行よ り早期か ら母体血 清マーカ ー検査を用いた出生前診断が可能 であ る こと を 意 味す る .こ れ は検 査結果を 踏まえた 上での現行 の妊娠15‑‑18週 に行われ てい る 羊水 染 色 体検 査 時期 を 早 期化 で きる こ と を示 唆 し てい る.また ,AFPでは非 常に 高い 相 関が 得 ら れた が ,hCGお よびuE3で は,大き く乖離す る症例も一 部に認め られた.

DSリ スク 値 の 相関 を 検討 し た 結果で は,症例 によって はばらっき が認めら れたもの の,

いずれの解 析プログ ラムを使 用しても ,ほぽ変 わらない 検出率が得られることが明らかと なった.す なわち, 母体血清 マーカー は測定時 期の早期 化,解析プログラムの変更を加え ても,ほぽ 同等の結 果が得ら れること ,その一 方で症例 によってはりスク値に大きな差異 が生 じ るこ と を 初め て 明ら か にす ることが できた. 羊水穿刺は 妊娠14週頃 から安全 に施 行すること ができる ので,母 体血清マ ーカー検 査をより 早期に行うことができれば羊水染 色体検査を 繰り上げ て実施す ることが でき,妊 娠の帰結 を決定する際のクライアント・妊

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婦の精神的,肉体的負担が軽減されることが考えられる.

   以上の研究結果より,母体血清マーカー検査における測定時期,測定キット,およびDS

解析プログラムによる影響を日本人母集団をもとにした解析プログラムを用いて初めて明

らかにすることができた.本検査法に対する医療側の理解度,遺伝カウンセリングなど本

検査法に伴う妊婦へのカウンセリングシステムの拡充,さらにはより精度の高い日本人独

自のデータベースの整備などが母体血清マーカーの今後の臨床応用にあたって望まれる.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

日本人妊婦のデータに基づぃた胎児出生前診断における 母体血清マーカー検査の再評価

  胎 児 出 生 前 診 断 に お け るa‑フ ウ ト プ 口 テ イ ン(AFP), ヒ 卜 絨 毛 性 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン (hCG)お よ び 非 抱 合 型 エ ス ト リ オ ー ル(uE3) を 用 い た 母 体 血 清 マ ー カ ー 試 験 の 測 定 時 期 , な ら び に 臨 床 検 査 施 設 で の 測 定 方 法 お よ び ダ ウ ン 症 候 群(DS) リ ス ク 値 の 解 析 プ ロ グ ラ ム の 相 違 な ど に よ る 影 響 を 日 本 人 母 集 団 に お い て 検 討 す る こ と を 目 的 と し た .   1997年1月 か ら1999年4月 ま で に , 同 意 が 得 ら れ た2,809名 の 妊 婦 を 対 象 と し , 妊 娠 第1三 半 期 後 期 ( lst TM)( 妊 娠10週O日 〜 13週6日 ) と 第2三 半 期 前 期(2nd TM)( 妊 娠14週O日 〜 20週6日 ) の2回 に わ た り , 同 一 妊 婦 か ら 血 清 を 採 取 し ,AFP,freeロhCG, uE3を 測 定 し た , 次 に , 日 本 人 妊 婦 の デ ー タ に 基 づ ぃ たMOM値 を 算 出 す る た め 同 意 の 得 ら れ た5,594例 の 各 マ ー カ ー を 測 定 し , 各 妊 娠 週 数 に お け るmedian値 を 算 出 し た , 体 重 お よ び 妊 娠 週 数 に よ る 補 正 を 行 っ た 後 ,2,809症 例 (5,618検 体 ) のMOM値 と 母 体 年 齢 に 基 づ くDSリ ス ク 値 を 算 出 し , lst TMと2nd TMの2群 間 に お け る 相 違 を 検 討 し た .   測 定 キ ッ ト お よ び 解 析 プ 口 グ ラ ム の 相 違 に よ る 影 響 を 検 討 す る た め , 同 意 が 得 ら れ , 健 常 児 を 出 産 し た 妊 婦193名 よ り ,2nd TMに お い て 採 血 し , 直 ち に 血 清 を 分 離 し た 後 ,A 施 設(AFP,freeロhCG,uE3) ,B施 設(AFP,total hCG,uE3) に お い て そ れ ぞ れ の マ ー カ ー を 測 定 し た . 次 い で , 日 本 人 妊 婦 の デ ー タ に 基 づ い たMOM値 を 算 出 す る た め ,A 施 設 で は2,820例 ,B施 設 で は4,258例 の 妊 婦 の 同 意 の も と に 各 マ ー カ ー を 測 定 し , 各 妊 娠 週 数 に お け るmedian値 を 算 出 し ,193症 例 に お け る 各 マ ー カ ー のMOM値 を 算 出 し た . 解 析 プ ロ グ ラ ム に お け る 相 違 は ,A施 設 で はSpencerら (1993) のaロ テ ス ト , お よ びB 施 設 で はW甜dら (1988) の ト リ プ ル マ ー カ ー テ ス ト に お け る 出 生 前 診 断 解 析 プ 口 グ ラ ム を 日 本 人 用 に 改 変 し た も の を 用 い て 行 い ,DSリ ス ク 値 を 算 出 ・ 比 較 し た . す な わ ち , そ れ ぞ れ の 解 析 プ ロ グ ラ ム に 用 い た 測 定 値 の 相 関 , リ ス ク 値 の 相 関 を 分 析 し , リ ス ク 値 に 関 し て は 更 に レ ベ ル 別 一 致 率 , カ ッ ト オ フ 値 別 一 致 率 に 関 し て 検 討 し た .   総 症 例 数 は2,809例 (5,618検 体 ) で , 異 常 例 数 は6例 (12検 体 ) で あ っ た .lstTMと 2ndTMで のDSリ ス ク 値 レ ベ ル の 一 致 率 は61.7% (1,734/2,809) で あ っ た . リ ス ク 値 レ ベ ル で3段 階 以 上 の 乖 離 が み ら れ た も の を 除 い た 一致 率は92.1% (2,588/2,809) であ った . カ ッ ト オ フ 値1/250以 上 の も の と1/250未 満 の も の の2群 に 分 け て 一 致 率 を み た と こ ろ2 群 間 で95% の 一 致 を 認 め , 両 群 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た . 測 定 施 設 お よ び 測 定

征 信

本  

  上

藤 西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

キッ トによる影響を検討した結果,AFP MOM値では極めて高い相関(R2=0.8336)を示し た.freeロhCGとtotal hCG,およびuE3 MOM値では比較的高い相関が得られたが,数 例に おいて乖離 が認められ た.DSリスク 値の相関を 検討した結 果,全例での相関は R2=0.3773で,完全にレベルが一致したものは81.3%(157/193)であった.また,カット オフ値(1/250)別の一致率も94.3%(182/193)であった.

  公開発表にあたり,水上教授(副査)より,lst TM,2nd TMのダウン症リスク値の被 験者への報告について,ハイリスクと判定された症例における羊水検査の割合について,

lst TMにおける検査の信頼性について,質問があった.次いで,西教授(副査)からはuE3 測定値が施設によってばらっく原因について,AFP,hCGがダウン症妊娠の母体血中で下 降,上昇する理由について,最後に藤本教授(主査)からは,異なる検査施設間で3段階 以上 リスクレベルが違った症例の数(%)について,1stTMで口ーリスク,2ndTMでハ イ リ ス ク と 診 断 さ れ た 症 例 の 数 ( % ) に つ い て , 質 問 が あ っ た .   いずれの質問に対しても,申請者は,対象のデー夕解析結果,国外の文献的知見,自身 の臨床経験などをもとに概ね妥当な回答をなしえた.

  審査員一同は,母体血清マーカー検査における測定時期の早期化,ならびに検査施設お よびDS解析プログラムの相違による影響を日本人母集団のデータをもとに初めて検討し た本研究の成果を評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有する ものと判定した.

参照

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