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博士(水産学)服部 努 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(水産学)服部    努 学位論文題名

マダラの成長、成熟および繁殖生態に関する研究 学位論文内容の要旨

  マダラ(くradus macoc啣aJus)は、北太平洋の亜寒帯海域ではスケトウダラ

(弼鹹曾.a曲a缸啓ramma)に次ぐ主要な漁獲対象種である。しかしながら、日本 にお ける マダ ラの 生物学的特性に関する研究の多くは1950年代になされたもの であ り、 本種 の生 物学的あるぃは資源学的な解析の基礎となる年齢査定法の確 立、 詳細 な成 長様 式、年齢を考慮した成熟過程および産卵行動などは明確にさ れていない。

  そ こ で 、 本 研 究 は 、 以 下 に 示 す 本 種 の 生 物 学 的 特 性 を 調 べ た 。 1) 樹脂包 埋に よる 耳石 薄片 法の 年齢 査定 法と しての精度を確認し、信頼性の 高い年齢査定法を確立すること。

2) 耳石薄 片法 を用 いて 、北 太平 洋の 様々 な海 域で採集されたマダラ個体群の 成長様式の海域間差異を調べること。

3)生殖腺の組織学的観察に基づき、マダラの組織学的成熟度を設定すること。

4) 組 織 学 的 成 熟 度 に よ り 、 マダ ラの 詳細 な生 殖周 期を 明ら かにす るこ と。

5) 組織学 的成 熟度 と生 殖腺 重量 指数 との 対応 から、北西太平洋の様々な海域 で 採 集 さ れ た マ ダ ラ 繁 殖 群 の 成 熟 体 長 と 成 熟 年 齢 を 調 べ る こ と 。 6) 産卵行 動の 水槽 内観 察か らマ ダラ の繁 殖行 動を明らかにし、夕ラ科魚類に おける本種の繁殖特性の位置付けを行なうこと。

7) 人工受 精法 によ る卵 発生 実験 およ び砂 泥の 受精卵への影響を調べることに よ り 、 産 卵 基 質 を 推 定 し 、 産 卵 場 の 特 性 を 明 ら か に す る こ と 。   ま た、 得ら れた マダラの生物学的特性に関する知見から、マダラの資源動態 に関 与す る要 因を 推定し、資源管理型漁業におけるマダラの資源増殖対象種と しての重要性を検討した。

1.マ ダラ の年齢 およ び成 長様 式

  年齢 形質 としての耳石の採用と、年齢査定法としての樹脂包埋による耳石薄 片 法の 有効 性を検討した。耳石薄片標本を実体顕微鏡下で観察したところ、明 瞭 な輪 紋( 透明帯)が認められた。また、この透明帯が耳石縁辺部に形成され

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る時期 を周 年に わた って 追跡 した 結果、輪紋は年に1輪づっできると判断でき た。

  マダ ラの樹脂包埋による耳石薄片法を用い、北海道太平洋側海域のマダラ繁 殖群について平均体長の月男ザ変化を調べた。その結果、マダラの成長は10月か ら4月 の間 に停 滞し 、5月 から9月の 間に急激であることが明らかとなった。こ の成長 停滞の時期は耳石縁辺に透明帯が出現する時期と一致しており、冬期に 耳石輪紋が形成されると考えられた。

  日本 太平洋側海域(北海道太平洋側海域、金華山沖)、日本海側海域(武蔵 堆海域 、余市沖、松前小島帯海域、秋田沖)、日本オホーツク海側海域(網走 沖)お よび 北方 海域 (西 カム チャ ッカ周辺海域の2地点、北部ベーリング海)

の各標 本間の成長様式を比較したところ、北海道太平洋側海域、金華山沖、武 蔵堆海 域、 余市 沖、 松前 小島 堆海 域、秋田沖および網走沖の標本中には満6齢 までの 個体 が多 いこ と、 これ ら海 域問の3齢以上の成長様式は類似しているこ とが示 された。しかしながら、日本海側海域(武蔵堆海域、余市沖、秋田沖)

および 日本 オホ ーツ ク海 側海 域( 網走沖)の満2齢魚は日本太平洋側海域(北 海道太 平洋側海域、金華山沖)に比べ小型であった。また、西カムチャッカ周 辺海域 の2地点 およ び北 部ベ ーリン グ海におけるマダラの成長は先の日本周辺 海域 の 成 長 に 比 べ で 寿 命 が 長 く 、 明 ら か に 成 長 の遅 い傾 向が 認め られ た。

2. マダ ラの 生殖 周期 およ び成 熟過 程

  これ まで 、マ ダラの成熟に関する研究は生殖腺重量指数や生殖腺の肉眼観察 に 基づ ぃて 行な われており、卵形成過程およぴ精子形成過程の生理的側面を反 映 する 生殖 関連 指標値は設定されていない。そこで、マダラ雌雄の組織学的成 熟 度を 設定 し、 雌の成 熟度 は無 卵黄 期か ら放 卵終了期までの9期に、雄の成熟 度 は増 殖期 から 放精終 了期 まで の6期に 区分 した。

  組織 学的 成熟 度を用い、北海道太平洋側海域のマダラの詳細な生殖周期を調 冬 た結 果、 当海 域にお ける マダ ラの 産卵 期は12月下旬から1月の間と短期間に 集 中す るこ と、 成魚における成熟の進行は極めて同調的であることが明らかと な った 。

  組織 学的 成熟 度と生殖腺重量指数との関係を用い、日本太平洋側海域(北海 道 太平 洋側 海域 、八戸沖、岩手沖、金華山沖)、日本海側海域(武蔵堆海域、

余 市沖 、秋 田沖 )および西カムチャッカ周辺海域の標本について500h成熟体長 を 調 べ た 。 そ の 結果 、 西 カ ム チ ャ ッ カ 周 辺 海 域 で は 雌 は 体 長630mm、 雄 は 600mm、 北 海 道 太 平 洋 側 海 域 で は 雌 は 体 長570〜 580mm、 雄 は 体 長 520mm 50mm、 八 戸 沖 で は 雌 は 体 長470づ20mm、 雄 は 体 長460mm、 岩 手 沖 で は 雌は 体長530mm、雄 は体 長480mm、 金華 山沖 では 雌は 体長450″480mm、 雄は 体 長410m叶430mmで あ り 、 北 方か ら南 方に かけ て成熟 体長 が小 さ〈 なる 傾向

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が認 められた。日本海側海域の標本では、同緯度の太平洋側海域の標本に比べ て成 熟の 早い 傾向 が認め られ た。

  以 上の本研究の結果に過去の知見をあわせて解析すると、成長様式および成 熟過 程の海域間差異は極めて明瞭となった。すなわち、マダラは高緯度海域で は低 成長率・晩熟型・高寿命、低緯度海域では高成長率・早熟型・低寿命であ り、 特に日本太平洋側海域においては北方から南方にかけて成長様式と成熟過 程が 緩や かに 変化 してい ると 考え られ た。

3.飼育実験によるマダラの繁殖特性の解明 1)マダラの産卵行動

  マ ダラ の水 槽内飼育観察により、産卵前の雌雄の行動、産卵行動、雌の産卵 回数 およ び産 出卵の性状等を調ベ、他のタラ科魚類の繁殖生態に関する既往の 知見 と比 較検 討した。さらに、その特徴と産出卵の性状から産卵基質の推定を 行なった。

  マ ダラ は弱 粘着 性の 沈性 卵を1回の 産卵 で放出すること、成熟雌の産卵は連 続的 に起 こる ことが示唆された。さらに、雄同士には明確な順位形成が認めら れ ず 、 雌 の 放 卵 に よ っ て 産 卵 が 開 始 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 2)マダラの卵発生実験およぴ産卵基質の推定

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  マ ダラ の人 工受精卵を用い、マダラ卵の最適水温条件と塩分条件、卵発生速 度を 調べ ると ともに、受精卵への砂泥の影響を調べることにより、いかなる要 因が 産卵 場の 物理的環境に必要かを明らかにし、卵が弱粘着性である意義を推 察した。

  人 工受 精法 を用いた卵の飼育実験の結果、北海道太平洋側海域においてマダ ラ卵 の最 適水 温条件範囲は2℃〜8℃の間と極めて限定されていること、最適塩 分濃 度範 囲は 約34%0(純海水)から約1700で、純海水で最も生残率および孵化 率の 良い こと が示された。以上のようにマダラ卵の孵化率は水温によって多分 に規定されることから、産卵場は極めて限定された海域であろうと考えられる。

  ま た、 マダ ラ卵が弱粘着性の沈性卵であることから、産卵海域の海底は砂泥 底で あり 、産 卵場は物理的要因に大きく既定されると推測された。そこで、人 工受 精法 を用 い生残率に及ぽす砂泥の影響を調べた。その結果、砂泥の有無が 生残 率に 大き く影響し、砂泥存在下において受精卵は高い孵化率を得ることが 明らかとなった。

4.以 上の 結果 から、マダラは生息海域によって成長様式および成熟過程に変化 が認 めら れ、 高緯度海域では低成長率・晩熟型・高寿命、低緯度海域では高成 長率 ・早 熟型 ・低寿命であり、特に日本太平洋側海域においては北方から南方 にか けて 成長 様式および成熟過程が緩やかに変化していることが明らかとなっ た。 この よう な成長様式および成熟過程の海域間差異がもたらされる要因は、

(4)

マダラの産卵場が水温条件と底質によって既定され、産卵場がノヾッチ状に形成 されることにより繁殖群間の独立性が高められていることによると考えられる。

  マダラは産卵場を中心とした繁殖群を形成しやすく、繁殖群は産卵海域の産 卵場としての適性にその繁栄:資源量の増加・減少を大きく左右されるため、

今後、マダラ資源の安定化を計るためには産卵場の保全および保護が重要であ ろうと考えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

マダラの成長、成熟および繁殖生態に関する研究

  マダラ(Gadus macrocep轟甜us)は、北太平洋の亜寒帯海域では主要な漁獲対象 種であるが、本種の生物学的な解析の基礎となる年齢査定法、詳細な成長様式、

年齢を考 慮した成 熟過程、 産卵行動 などは明 確にされていない。そこで、本研 究 は 、 こ れ らの マ ダラ の 生 物学 的 特性 を 明 らか に する こ と を目 的 と した 。

1.マダラの年齢および成長様式

  耳石薄片標本を実体顕微鏡下で観察したところ、 明瞭な輪紋(透明帯)が認 めら れた。ま た、この 透明帯が 耳石縁辺 部に形成さ れる時期を周年にわたって 追 跡 し た 結 果 、 輪 紋 は 冬 期 に 1輪 づ っ で き る と 判 断 で き た 。   耳石 薄片法を 用い、マ ダラの季 節的成長 の変化を調べた。その結果、マダラ の 成長 は10月から4月の間に 停滞し、5月から9月の 間に急激 であるこ とが明ら かと なった。 この成長 停滞の時 期は耳石 縁辺に透明 帯が出現する時期と一致し てお り、冬期 の成長停 滞期に耳 石輪紋( 透明帯)が 形成されると考えられた。

  日本 太平洋側 海域(北 海道太平 洋側海域 、金華山沖)、日本海側海域(武蔵 堆海 域、余市 沖、松前 小島帯海 域、秋田 沖)、日本 オホーツク海側海域(網走 沖 )お よび北方 海域(西 カムチャ ッカ周辺海 域の2地点 、北部ベ ーリング 海)

の 各 標本 間 の 成長 様 式を 比 較 した ところ、日 本周辺7海 域の標本 中には満6齢 ま での 個体が多 いこと、 日本海側 と日本オホ ーツク海 側の満2齢 魚が日本 太平 洋 側に 比ベ小型 であった ことを除 き、これら 海域間の3齢以上の 成長様式 は類 似し ているこ とが示さ れた。また、西カムチャッカ周辺の2地点および北部ベー リ ング 海におけ るマダラ の成長は 日本周辺7海 域の成長 に比べて 寿命が長 く、

有意に成長の遅い傾向が認められた。

2.マダラ の生殖周 期および成 熟過程

  マダラの 詳細な成 熟過程を調 べるため、マダラの組織学的成熟度を設定し、

雌の成熟 度は無卵 黄期から放 卵終了期 までの9期 に、雄の 成熟度は 増殖期から 放精終了 期までの6期に区分し た。

二 哉

健 裕

崎 橋

島 高

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

  組織学的成熟度を用い、北海道太平洋側海域のマダラの生殖周期を調ぺた結 果 、当 海域 にお ける マダ ラの産 卵期は12月下旬から1月の間と短期間に集中す ること、成魚における成熟の進行は極めて同調的であることが明らかとなった。

  さらに、日本太平洋側海域.(北海道太平洋側海域、八戸沖、岩手沖、金華山 沖 )、日本海側海域(武蔵堆海域、余市沖、秋田沖)および西カムチャッカ周 辺海域の標本について50ワ。成熟体長を調べた。その結果、北方から南方にむけ て 成 熟 体 長 が 小 さ く 、 成 熟 年 齢 が 若 く な る 傾 向 が 認 め ら れ た 。

3.飼 育実 験に よる マダラ の繁 殖特 性の 解明

  マダ ラの 水槽 内飼 育観察により、その繁殖特性(産卵行動)を調べた。その 結 果、 マダ ラは 弱粘 着性 の沈 性卵 を1回 の産 卵で 、しかも短時間に放出するこ と 、成 熟雌 の産 卵は 連続的に起こることが示唆された。さらに、雄同士には明 確 な順 位形 成が 認め られず、雌の放卵によって産卵が開始されることが明らか と なっ た。 以上 のマ ダラの産卵行動は、本研究において初めて明確にされた。

  人工 受精 法を 用い た卵の飼育実験の結果、北海道太平洋側繁殖群の卵の最適 水 温条 件範 囲は2℃ 〜8℃の間と極めて限定されていること、最適塩分濃度範囲 は 約3400か ら約17% で、純海水で最も生残率および孵化率の良いことが示され た 。こ のよ うに マダ ラ卵の孵化率は水温によって多分に影響されることから、

産 卵 場 は 極 め て 限 定 さ れ た 海 域 で あ ろ う と 考 え ら れ る 。   また 、マ ダラ 卵が 弱粘着性沈性卵であること、マダラの産卵場は砂泥底であ ろ うと 考え られ るこ とから、砂泥が産卵基質として有効であるかを検討した。

人 工受 精法 を用 い生 残率に及ぼす砂泥の影響を詞べた結果、砂泥の有無が生残 率 に大 きく 影響 し、 砂泥存在下において受精卵は高い孵化率を得ることが明ら か とな った 。

  以上 のこ とか ら、 マダラの産卵場が水温条件と底質によって既定され、産卵 場 が局 所的 に形 成さ れることにより繁殖群間の独立性が高められていると推測 さ れる 。こ のよ うな マダラの繁殖特性により、マダラの成長様式および成熟過 程 の海 域間 差異 がも たら され ると 考え られ る。

  以上 の結 果は 、マ ダラの生物学的特性を明確にしたのみならず、年齢を考慮 し た成 熟過 程分 析の 有効性を示し、マダラの生物学的特性が海域間により異な る こと を種 の特 徴と してとらえた点、飼育実験が種の繁殖特性の解明に有効で あ るこ とを 明ら かに した点において、貴重な成果であり、今後の生物学的研究 に 指針 を与 える もの として評価される。したがって、本論文は博士(水産学)

の 学位 論文 と、 して 相当 の業 績で ある と認 定し た。

参照

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