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博 士 ( 医 学 ) 佐 々 木 宣 哉 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 医 学 ) 佐 々 木 宣 哉 学 位 論 文 題 名

High‑throughput PCR システムの開発とその性能評価に関する研究

学位論文内容の要旨

現 在 , ゲ ノ ム 研 究 に お け る マ ッ ピ ン グ , 塩 基 配 列 決 定 等 に 膨 大 な 数 のPolymerase Cham ReaonPCR) の 反 応 数 が 必 要 と さ れ て い る . ま た , そ の 需 要は ゲ ノム 計画 のみ なら ず, 様々 な 領 域 で 益 々 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ る . こ の 様 に , よ り 多 く の 検 体 を よ り 短 時 間 で 処 理 す る こ と が 要 求 さ れ る こ と を 鑑 み , 試 薬 や 検 体 の 分 注 か ら 反 応 ま で を オ ー ト メ ー シ ョ ン 化 す る こ と に よ り , 労 働 量 と 人 為 的 ミ ス を 減 少 さ せ る こ と , さ ら に ,コ ス トノ ヾフ オー マン スを 上げ る た め に , 試 薬 の 消 費 量 を 減 ら す こ と な ど が 益 々 重 要 と な っ てき て いる .し かし ,現 在ま で,

大 量 生 産 を 目 的 と し たPCR反 応 装 置 に 関 す る 研 究 は ほ と ん ど 報 告 さ れ て い な い . 本 研 究 で は こ れ ら の 要 求 に 対 す る 解 決 策 と し て ,PCRの オ ー ト メ ー シ ョ ン 化 と 反 応 体 積 の 縮 小 化 に 焦 点 を絞り装置の研究開発を試みた.

  PCRに お い て 迅 速 で 正 確 な 温 度 変 化 に よ っ て 鋳 型 と プ ラ イ マ ー の 非 特 異 的 な 会 合 が 抑 制 さ れ , さ ら に 酵 素 の 失 活 を 防 ぐ こ と に よ っ て , 反 応 の 特 異 性 と 増 幅 効 率 を 向 上 さ せ る こ と が 可 能 で あ る . よ っ て , 本 装 置 を デ ザ イ ン す る に あ た っ て , 熱 源 で あ る ぺ ル テ イ エ 素 子 か ら 検 体 へ の 熱 伝 導 率 を 高 め る た め に , 種 々 の 検 討 を 行 な っ た . 一 般 の 市 販 機 で は プ ラ ス チ ッ ク チ ュ ー プ に 密 封 し た 反 応 液 を 熟 伝 導 ブ ロ ッ ク に 乗 せ , そ の ブ ロ ッ ク の 温 度 を 上 昇 下 降 さ せ る こ と で 反 応 を 進 行 さ せ て い る . 熱 源 か ら サ ン プ ル ヘ の 熱 伝 導 ブ ロ ッ ク に は 熱 伝 導 率 の 高 い ア ル ミ ニウ ム(2.38X10→3J/m.s.K,O℃)が用いられている.本装置では アルミニウムブロックに384 個 の ウ ェ ル を 設 け , 蹴 ` . 酵 素 等 の 非 特 異 的 吸 着 を 防 ぐ た め にテ フ ロン コー テイ ング を施 し,

直 接 , 反 応 容 器 と し て 用 い る こ と を 試 み た . こ の 条 件 に お い て プ ラ ス チ ッ ク 製 チ ュ ー ブ を 用 い た 時 に 生 じ る 熱 伝 導 率 の 低 下 が な く , よ り 迅 速 な 温 度 変 化 が 可 能 と な っ た . ま た , 市 販 機 で は 熱 伝 導 ブ ロ ッ ク と ぺ ル テ イ エ 素 子 の 間 に シ リ コ ン ラ バ ー 等 の 熱 伝 導 素 材 を 挾 む こ と に よ っ て 密 着 性 と 熱 伝 導 率 を 高 め て い る . 本 装 置 で は , さ ら に 熱 伝 導 性 の よ ぃ カ , ボ ン グ ラ フ ァ イトシート(15.5X1013J/(珊.s.K,O℃ )を使用することによって迅速な温度変化と各ウェルにお け る 温 度 の 均 一 性 が も た ら さ れ た . . さ ら に , 加 熱 時 に お け るサ ン プル の蒸 発を 制御 する ため に , 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー を 設 け た . 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー の 裏 に 耐 熱 性 シ リ コ ン ラ バ ー を 接 着 す る こ と に よ っ て , 上 部 温 度 コ ン ト ロ ニ ラ ー を セ ッ ト す る だ け で 気 密 性 を 保 つ こ と が 可 能 と な っ た . 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー を105℃ に 設 定 し ,96℃ ‐10秒 ,60℃ −10秒 ,72

2分 の サ イ ク ル を 行 っ た と こ ろ , 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー の 熱 に よ り ,PCR反 応 液 の 温 度 下 降 が 阻 害 さ れ た . こ の 条 件 に お い て 反 応 液 の 大 部 分 が 蒸 発 し , 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー 裏 面 に 凝 結 し た . 一 方 , 上 部 温 度 コ ン ト ロ ー ラ ー をPCR反 応 液 の 温 度 変 化 と 同 調 し て , 常 に25℃ 高 く 設 定 し た 場 合 , 反 応 液 に 接 す る 気 相 内 の 飽 和 蒸 気 圧 が 常 に 低 く 保 た れ , 検 体 の 蒸 発 を 最 小 に す る こ と が 可 能 と な っ た . さ ら に , 前 者 と 比 較 し て 正 確 か つ 迅 速 な 温 度 変 化 が 可 能 と な っ た . こ の 条 件 に お い て11の 反 応 ボ リ ュ ー ム に お い て も 蒸 発 を 抑 制 す る こ と が 可 能

(2)

と なっ た. 以上 の要 素技術により,熱伝導性の向上や反応体積の縮小化がもたらされた.ま た ,PCR プレ ート がロ ボッ トア ーム によ って 着脱 可能であることに加えて,上部温度コント ローラーを自動開閉するように調整したことから,多数のモジュール(反応装置,解析装置,

分注ロボット,フリーザー等)の集合体であるワークステーション内で,モジュール間の輸送 が可能となりPCR の完全自動化が可能となった・

  

本装置を用い実際の反応における感度,増幅効率,再現性について種々の検討を行なった.

マ ウス

reeler. cDNA

,lpg(2Xl06 コ ピー )を 鋳型

DNA

と して ,384 ウェ ル全 てを 用いてPCR を 行 った とこ ろ, 各ウ ェルにおける増幅率の差は認められず,温度が正確かつ均一に制御され て いる こと が示 唆さ れた .さら に, マウ スreelerc 聊qA ,2X107 から2X101 コピーを鋳型とし て

PCR

を 行っ たと ころ ,2X102 コ ピー まで 増幅 が可 能で あり ,極 めて 高い 検出 感度が示され た . さ ら に ,

reekrcDNA

5

( ) 矧 ル

I

の 濃 度 で 含 むPCR 反応 液を

50pl

から

1

メ1 まで 様々 な 反応 ボリ ュー ムに 調整し,増幅率の検討を行ったところ,単位体積あたりの増幅率にほと ん ど差 が認 めら れず ,上部温度コントローラーの至適化によって,微量な体積においても蒸 発 が抑 制さ れ, 十分 な増幅が得られることが示された.また,固有の長さと配列をもつ複数 の 鋳 型

DNA

に 対し て , こ の 装 置 を 用 い て

PCR

に お け る 反応 成功 率に つい て検 討を 行っ た.

マ ウス 胚盤 胞cDNA ラ イブ ラリー よル コロ ニー ピッ カーを用い,無作為にlo .752 クローンを 選 別し ,大 腸菌 培養 液よ り直接

PCR

によ って 増幅 を行った.電気泳動にて増幅の有無,増幅 率,サイズについて確認したところ,高い反応成功率(92 %)が得られ,そのうち426 クロー ンを無作為に選び,サイズを測定したところ,255 〜4372b (平均1167b )の間に分布していた.

鋳 型の サイ ズに おけ る反 応成功 率へ の影 響を 検定 するため,同ライブラリーの294 クローン よ ルプ ラス ミド

DNA

を 抽出 し制 限酵 素に てイ ンサ ートを切り出たところ,308 〜3701b (平均

1041b

) の間 に分 布し ており,両者のサイズに有意な差は認められなかった.よって約4kb ま で の鋳 型DNA につ いて は, サイ ズよ りも 特異 的な 塩基配列によって増幅が阻害されているこ と が示 唆さ れた ので ,PCR で増 幅で きな かっ たク ローンについてプラスミドを抽出し塩基配 列 を決 定し てみ たと ころ ,GC ま たは

AG

に 富む 配列 を持 っク ロー ンが 多く ,こ れらの配列は 特 異な 高次 構造 をと るこ とが示 唆さ れた .GC 含量 の多 い配 列の 増幅 に関 して 様々な試みが な され てい るが ,す べてを克服できる技術はなく,増えにくい配列を増幅する技術が今後の 課 題で ある .さ らに この 装置を 用い て,

PCR

産物

3510

クローンを直接鋳型として,5t 末端よ り塩基配列を決定したところ,高い反応成功率(85 %)が得られた.得られたシーケンス3086 ク ロー ンに つし ゝて

BLASTX

およ びBLASTN を用

k

ゝ ホモロジー検索を行ったところ,1036 種に 分類され,その内,既知の遺伝子および既知遺伝子とホモロジーのあるものは713 種(68 .8 %)

であり,未知の遺伝子は323 種(31 .2 %)であった・

  

本 研 究 で は ,

GS384

サ ーマ ルサ イクラ ーを 用い て,

1

日 に10752 反 応が 可能 であ るこ とを 実 証し た. 現在

6

台を ワークステーション上に設置しており,64512 反応/日が可能である.

本 装置 にお いて

PCR

プ レー ト上 のウ ェル の数 を増 やす ことや ,PCR プ レー トの 熱伝導性を上

げ るこ とに より ,さ らに反応数を増やすことが今後の課題である.本研究により作製したシ

ス テム はゲ ノム プロ ジェ クトや

DNA

診断 等へ の利 用が可能であり,今後このシステムを用い

る こ と に よ り , 生 物 医 学 に お い て 有 用 な 情 報を 数 多 く 提 供 す る こ と が 可 能 で あ ろ う .

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

High‑throughput PCR システムの開発とその性能評価に関する研究

  ゲ ノ ム 研 究 に お け る マ ッ ピ ン グ 、 塩 基 配 列 決 定 等 に 膨 大 な 数 のPolymerase Chain Reaction (PCR) の 反 応 数 が 必 要 と さ れ て い る 。 よ り 多 く の 検 体 を よ り 短 時 間 で 処 理 す る こ と が 要 求 さ れ る こ と に 鑑 み 、 試 薬 や 検 体 の 分 注 か ら 反 応 ま で を オ ー ト メ ー シ ョ ン 化 す る こ と に よ り 、 労 働 量 と 人 為 的 ミ ス を 減 少 さ せ る こ と 、 さ ら に 、 コ ス ト を 下 げ る た め に 、 試 薬 の 消 費 量 を 減 ら す こ と な ど が 重 要 と な っ て き て い る 。 こ れ ら の 要 求 に 対 す る 解 決 策 と し て 、PCRの 迅 速 化 、 オ ← ト メ ー シ ョ ン 化 、 反 応 体 積 の 縮 小 化 に 焦 点 を 絞 り 、 種 々 の ア イ デ ィ ア を 取 り 入 れ て 装 置 の 研 究 開 発 を 試 み た 。 本 装 置 を 用 い 、 増 幅 効 率 と 再 現 性 に つ い て 種 々 の 検 討 が 行 わ れ 、PCR装 置 と し て の 性 能 は 充 分 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 さ ら に 、 本 装 置 を 用 い 、 ヒ ト で は 解 析 が 困 難 で あ る32細 胞 期 の ブ ラ ス ト シ ス ト で 発 現 す る 遺 伝 子 の カ タ ロ グ 化 、 さ ら に 未 知 の 遺 伝 子 単 離 を マ ウ ス に お い て 試 み た 。 定 法 に よ りcDNAラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 し 、 本 装 置 を 合 む オ ー 卜 メ ー シ ョ ン シ ス テ ム に よ り 、 一 日10752検 体 の イ ン サ ー トDNAの 増 幅 を 行 っ た 。 反 応 成 功 率 は92% で あ り 、 反 応 成 功 率 に 影 響 を 与 え る 要 因 と し て 、 特 異 な 配 列 が 影 響 を 与 え て い る こ と を 明 ら か に し た 。 増 幅 で き な か っ た8% に つ い て は 遺 伝 子 の 大 部 分 を 明 ら か に す る 目 的 上 、 問 題 で あ り 反 応 成 功 率 を あ げ る こ と 今 後 の 課 題 で あ る 。 さ ら に 、 約4000ク ロ ー ン を 無 作 為 に 抽 出 し 、 塩 基 配 列 を 決 定 す れ ば 、 任 意 の 細 胞 で 発 現 す るrareな 遺 伝 子 以 外 は 大 体 ( 約5001000種 類 ) 提 示 で き る と い う 作 業 仮 説 の 基 に シ ー ク エ ン ス を 決 定 し た 。 ホ モ ロ ジ ー 検 索 の 結 果 、 ミ ト コ ン ド リ ア の 転 写 産 物 や 繰 り 返 し 配 列 な どuninfonnative cloneを 除 い た3860タ ロ ー ン は945種 に 分 類 さ れ 、 既 知 の 遣 伝 子 お よ ぴ 既 知 遣 伝 子 と ホ モ ロ ジ ー の あ る も の は461種 で あ り 、 未 知 の 遺 伝 子 は 484種 類 あ っ た 。 こ の こ と に よ り 発 生 初 期 で は 数 多 く の 末 知 遣 伝 子 が 機 能 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に 、 ブ ラ ス ト シ ス ト は 他 の 組 織 に 比 べ 細 胞 分 裂 関 連 遺 伝 子 や 蛋 白 の 発 現 に 関 与 す る 遺 伝 子 群 が 豊 富 で あ り 、 一 方 で 、 細 胞 問 の 相 互 作 用 や 免 疫 系 関 連 遺 伝 子 の 発 現 は 相 対 的 に 低 い 傾 向 に あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の よ う に 本 装 置 を 用 い て 短 期 間 で 新 規 遺 伝 子 発 見 と 細 胞 ・ 組 織 を キ ャ ラ ク タ ラ イ ズ す る こ と が 可 能 で あ っ た 。 さ ら に 、 現 在7

也 三

   

   

哲 信

内  

  川

守 西

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

万反応/日が可能であるシステムを構築した。これに対応するシークエンサーが開発され れ ば 、 生 物 医 学 に お い て 有 用 な 情 報 を 数 多 く 提 供 す る こ と が 可 能 と な る 。

  

公開発表はおよそ

13

名の聴衆の前で行われ、西教授より、あらゆるメーカーの

PCR

機 を試してだめで、自分で作製しのか、

1

万検体のPCR 産物を解析できるシークエンサーの 開発を進めているのか、およびゲノムプロジェクトはいつ終了予定なのか等について質問 があった。次いで細川教授より、この装置全体が既に完成しているのか、他の装置も考 案したか、だれでも使えるシステムになるのか等の質問があった。最後に、守内教授より、

ヒト

mRNA

の全ては 今世紀中に 登録される か、

DNA

診断に応用可能か、およびコンピュ ーター上でのハイブリダイゼイションの概念について質問があった。これらの質問に対し て申請者は、解析システムの構築に関する試行錯誤の経験、および現在進行中のゲノム解 析に関する豊富な知識に基づぃて明解に解答した。さらに、申請者は、あらゆる組織で発 現している遺伝子をシークエンスする一方で、ゲノムも大まかにシークエンスし、コンピ ユータ上でホモロジー解析を行うことによって、転写地図を作製する。さらに、マウス疾 患遺伝子のゲノム上の位置を連鎖解析等で明らかにして、標的遺伝子座に存在する候補遺 伝子をりストアップし、シークエンス法だけで原因遺伝子を同定することを考えていると 解答した。さらに、分化、増殖など細胞の変化と原因遺伝子を結ぴっけることは非常に困 難であるが、このシステムを用いて、どの様なことができうるかという質問に対して、申 請者は

1

細胞で発現しているmRNA の分子数は数10 万であり、できるだけ転写産物の量比 のバイアスのないライプラリーを作製し、数10 万シークエンスすると全種類がりストア ップできることになり、変化前、変化後の発現プロフんイルを比較し候補遺伝子を絞るこ とが可能であると考えていると解答した。

  

審 査 委 員 は 、 装 置 開 発 に は 細 部 に わ たり 様 々な 工 夫 や試 行 錯誤 が あり 、 困難 をーつーつ 解決してい ったこと、 技術を開発 しデータ生 産の効率化 をはかる、ある いは、いま まで不可能 であったこ とを実現す るような研 究スタイル は生物学では非 常にまれであることを評価した。.

  

さらに、このシステムを用いることにより、特定細胞内で発現している遺伝子の多くの 種類のカタ ログ化、任意の表現形質とその原因遺伝子を結ぴっけるために必要な転写

    

地図の作製 等、生物医 学にとって 有用な情報 を数多く提 供すること が期待される。

  

審 査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者を博士(医学)の学位を受ける

のに充分な資格を有するものと判定した。

参照