博士(医学)西部 学位論文題名
学
HLA class I antigens are possible prognostic factors in hepatocellular carcinoma
( 肝 細 胞 癌 に お け るHLA class| 抗 原 の 予 後 因 子 と し て の 可 能 性 に 関 す る 研 究)
学位論文内容の要旨
I目的
肝細胞癌(HCC)の治療には肝切除が最も優 れているが、併存する肝障 害のため33.40/0の 患者しか肝切除 の対象とならなぃ。非切除 症例に対しては肝動脈塞栓術 、エタノ―ル注入 療法、化学療法 等が施行されているが、満 足のいく生存率は得られてい ない。治癒切除さ れ た症 例に おい ても 再 発率 は高 く術 後5年生 存率 は50%に満たない。それゆえ 、再発の予 測あるいは予防 を研究することは予後の改 善に重要である。
HLA classI抗 原は 正 常の肝細胞には発現しない が、HCCの癌細胞には発現し てくること が 知ら れて いる 。近 年 、MAGE‑1など い くっ かの 腫瘍抗原がメラノーマより同 定され、こ れ らの 腫瘍 抗原 がHCCに おいても発現しているこ とカsわかってきた。一方、 細胞傷害性T 細 胞 ( の り はT細胞 レセ プ夕 ―(TCR)を介 し て腫 瘍細 胞表 面のHLA classI抗原 に 結合 し た抗原ペプチド を認識して抗腫瘍活性をも たらすことから、腫瘍細胞上 のHLA classI抗原 の 発現 は腫 瘍特 異的 免 疫反応に不可欠である。そ こで、本研究ではHCCの癌細 胞上のHJ̲A classI抗 原 の 発 現 率 と 臨 床 病 理 学 的 因 子 な ら び に 予 後 と の 相 関に つい て検 討 した 。
n方法
1992年6月よ り1994年3月 まで に北 海 道大 学医学部附 属病院第一外科において肝切 除術 を 施行 したHCC 30例 を対象 とした。HJ̲A classI抗原の 発現率は今川らの方法に準じ てフ ロ ーサ イト メト リ― 法によ り測定した。すなわち、腫瘍 組織を 0.05%コラゲナーゼ 含有 RPMI1640培地 で 撹拌 後、 金属 メ ッシ ュを 通し 、O.1%BSA添 加PBSに て洗 浄 し、 単細 胞浮 遊 液と した 。こ の単 細胞浮 遊液に最終濃度が1ニ100にな るように抗HLA‑ABC抗体(W6/32) を 添 加 し 、4℃に て30分 間反 応さ せた 。PBSに て2回洗 浄後 、FITC標識2次 抗体 を最 終濃 度1:500で4℃に て30分 間反 応さ せた 。 細胞 を充 分洗 浄後PBSに再 度 浮遊し、フロー サイ トメトリー(FACScan、Becton‑Dicbnson)に て解析した。はじめに腫瘍 細胞の丘adionにゲ ー トを かけ 、5000個 の腫瘍 細胞にてヒストグラムを描い た。2次抗体のみを反応させ た細 胞を陰性対象とした。
統計学的解析は2群間の解析には対応のないT検定(unpairedstudent.st・test)、3群以上の解 析 に は 一 元 配 置 分 散 分 析 (ANOuqを 行 い 、 危 険 率5% 以 下 を 有 意 差 あ り と し た 。
ni結果
1.すべ ての腫瘍組織においてHLA classI抗原の発現が認められ た。発現率は最低41.2%か ら最高97.2a/oで平均72.0%であった。
2. Stage IVの症例の発現率(52.8土11.6%、N=5)はStageI (82.5土9.5%、N=6)、Stage IIく78.0 土 14.3% 、 N=15)の 症 例 の 発 現 率 に 比 ベ 有 意 に 減 少 し て い た (Pく0.05)。
‑ 70−
3.肝 内 転移 を伴 う症 例 の発 現率(51.0土10.2%、N=7)は転移のない症例 の発現率(80.7土 13.3%、N=23)に比ベ有意 に減少していた(Pく0.001)°
4.絶対非治癒切除症例の 発現率(51.6土9.0%、N=3)は病巣を全摘出した症例の発現率く76.2 土16.9%、N=27)に比ベ有 意に減少していた(Pく0.05)。
5. HBs抗 原陰 性か つHCV抗 体陰 性例 い 〓7) で は76.5土18.7%. HBs抗原 陰性 かつHCV抗 原陽 性例 ば=12)で は73.6土19.5%、HBs抗原 陽性かつHCV抗体陰性例バ =9)では75.6土 16.9a/o、HBs抗原陽性かっHCV抗体陽性例(N=2)では56.7土5.00/0であり、肝炎ウィルス混 合 感 染 例 で 腫 瘍 細 胞 上 の HLAclassI抗 原 の 発 現 率 が 低 下 し て い た 。 6. 門 脈 侵 襲 陽 性 症 例 の 発 現 率 は 陰 性 例 に 比 ベ 低 下 傾 向 を 示 し た 。 7. 高 分 化 型 肝 細 胞 癌 に 比 べ て 中 分 化 型 肝 細 胞 癌 で 発 現 率 が 低 下 傾 向 を 示 し た 。 8. 浸 潤 性 発 育 を 示 すHCCの 発 現 率 は膨 張性 発 育を 示すHCCに比 ベ減 少傾 向 を示 した 。 9.血 清AFP値 が200ng/ml以上 の症 例 のHLA classI抗原の発現率は200ngjml未満の症例の 発 現 率 に比 ベ低 下 傾向 を示 した 。PMくA‑IIに関 して は 一定 の傾 向は みら れ なか った 。 10.絶 対 非治 癒切 除を 除 く27例中15例 に術 後 再発 を認 めた 。こ の15例の 無再発生存期間 とHJA classI抗原の発現 率との間には正の相関関係が あった。すなわち、HLA classI抗原 の 発 現 率 の 高 い 症 例 は 低 い 症 例 に 比 ベ 無 再 発 生 存 期 間 が 延長 して いた 口 く0.05) 。
IV考案
HCC切 除後 再 発因 子と して 池田 ら は腫 瘍多発例、 腫瘍分化度の低い症例、HCV抗体陰性 例をあげている。 また、泉らは門脈浸潤が切除 後再発のいちぱんの危険因 子であると報告 している。HLA classI抗原の発現を低下させる 因子はこれらの報告におけ る再発危険因子 とよく一致した。
HCCの悪性度、予 後規定因子としては今まで に腫瘍核DNA ploidy pattern、p53、nm23な どの 癌 抑制 遺伝 子の発 現、PCNAの発現などが報告さ れている。本研究ではJ{LA classI抗 原の発現がこれら の因子同様に再発予測因子に なりうることが明らかになった。今後、HIA classI抗原 の発 現とp53、nm23な ど の因 子と の相 関を み るこ とは さらに重要で あろう。
HLA classI抗原に結合して発現される抗原ペプチドについては、1991年にVan der Bruggen らに よ りMAGE geneが報 告されて以来いくっかの腫 瘍抗原が同定され、報告され ている。
これ ら の腫 瘍抗 原はHCCにも存在するという報告が あり、また、未だ同定される に至って いな い 腫瘍 抗原 も多 数存 在 する と思 われ る。それ ゆえ、HCCにおいてもCTLはHLA classI 抗 原 を 発 現 し て い る 腫 瘍 細 胞 に 対 し て 特 異 的 免 疫 反 応 を 示 す こ と が 期 待 さ れ る 。 一 方 、T細 胞 側の 因子 であ るTCR repertoireにつ いてWeidmannらはHCC患者のPBL、TIL 中のvp3 geneの高 度発現、V[34 geneの発現低 下を指摘している。HLA classI抗原を発現す る腫瘍細胞を認識 し、抗腫瘍活性をもたらすCTL」を選択的に癌局所に数多く誘導する工夫 が期待される。
HCCの 手術 後 再発 には 肝内 転移 再 発の ほか に残 肝に 新 たな 癌が 新生してくる 多中心性 発生が高頻度に存 在し、その鑑別は必ずしも容 易ではない。しかし、少な くとも肝切除後 の肝 内 転移 再発 の制御 には、HLA classI抗原の発現 を上げ腫瘍局所にCTLを数多 く集める 工夫がなされるこ とが期待される。
v結語
HCCに おけ るHLA classI抗原の発現 はStage IV症例、肝内転移 陽性例、絶対非治癒切除 症例において有意に低下 した。
HLA classI抗 原の 発現 はB型お よびC型 肝炎ウィルスの混合感 染例、門脈浸潤陽性例、
中 分 化 型 肝 細 胞 癌 症 例 、 浸 潤 性 発 育 症 例 に お い て 対 象例 に比 ベ 低下 傾向 を示 し た。
HLA classI抗原の発現 率の高い症例は低い症例に比ベ無再発生存期間が有意に延長した。
‑ 71―