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博士(医学)猪部 学 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)猪部   学 学位論文題名

マ ウ ス B7 ― 1 分子 の 選 択 的ス プ ラ イシ ン グ 産物 の 同定 と そ の T 細 胞 活 性化 における 役割に 関する研 究

学 位論文内容の要旨

【序論】

  T細胞の活性化反応は、抗原提示細胞上の主要組織適合抗原複合体(MHC)上に提示された 抗原ペプチドを、抗原受容体(TCR)を介して認識することにより開始される。しかし、T細 胞が最適な反応を示すためには、TCRを介する主シグナルのみでは不十分であり、抗原提示 細胞から伝達される抗原非特異的な第2シグナル(costimulatoげsignal)を必要とすることが 明らかとなっている。さらに、TCRを介する主シグナルでのみ刺激されたT細胞は活性化し ないだけでなく、それ以後もはや正常な刺激に反応できない不応答状態(ane rgyに陥ること から、T細胞活性化における第2シグナルの役割は大きい。

  第2シグナルは、主に【細胞上のCD28と抗原提示細胞上のB7−1、B7−2との結合により伝 達されていることが明らかとなっている。また、活性化1湘胞上にはCD28と相同性があり、

リガンドを共有するCTLA.−4が発現される。現在、CD28、CTLA一4はそれぞれT細胞を正 および負に調節することが遺伝子欠損マウスの解析から明らかにされている。一方、B7―1 とB7ー2分子の役割は、1)B7一2分子はB7―1分子と比較して、相対的に活性化B細胞上で早期 より発現され、樹状細胞等に強く発現されることなどから、B7ー2分子が免疫反応の開始に、

B7―1分子は免疫反応の維持に主に作用する、2)B7―1分子に刺激されたへルバー1細胞は Th1細胞に、B7ー2分子に刺激されたへルバーT細胞はTh2に分化する、といった相違が見い 出されている。

  本 研 究 で は 、 マ ウ スB7ー1分 子の 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ 産 物を 同 定 し 、 新 た な CD28/CTLA―14リガンドの存在を明らかとした。したがって、CD28/CTLA−・4を介するT細 胞調節機構は、3種の異なるりガンドにより複雑に調節されていることが予想される。そこ でB7−1分子の選択的スプライシング産物のmvivoにおける発現動態および機能を検討し、

その生理的役割について考察した。

【本論】

1. マ ウ スB7−1分 子 に お け る 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ 産 物(MB7−2) の 同 定   B7−1分子は免疫グ口ブリンスーバーファミリーに属する分子で、細胞外に2つの免疫グ 口ブリン様ドヌイン(N末端よりIgVおよびIgC様ドメイン)を有する。マウス脾細胞における B7―1mRNAの発現動態を即―PCR法により解析した。PCRにはB7−1の翻訳領域を完全に含 むようなプライマーを用いた。B7−lmRNAはLPS存在下、6時間でその発現が誘導された。

その際、LPSにより発現が誘導され、B7−1mRNAよルサイズの小さい特異的なバンドが得 られた。このバンドは、塩基配列の解析からB7―lmRNAの一部を欠失したものであること

(2)

が明 らか とな った 。マ ウスB7−1遺伝 子は 、ゲ ノム 構造 の解析 から5つのェクソンより構成 され てい るこ とが 明ら かと なって いる 。先 のバ ンド はB7−1遺 伝子のェクソン3に相当する 部分 が完全に欠失していることから、B7―1の選択的スプライシング(MB7−2と命名)による もの であ るこ とが 明ら かと なった 。エ クソ ン3はIgCドメ イン をコードすることから、細胞 表 面 上 のMB7―2分 子 はB7―1分 子のIgVドヌ イン のみ を有す る分 子で ある と考 えら れた 。 2. MB7―2mRl¥TAのin vivoに おけ る発 現およ び動 態

  MB7−2分 子はB7−1分子 のIgCドメ イン を欠 失し た構 造を 有す るた め、モ ノク口ーナル抗 体 に よ る 識 別 が 困 難 で あ る 。 そ こ でB7−ImRNAとMB7―2mRNAを 同時 に か つ 定 量 的に 評価 で きる 、RNase protection assay(RPA)法によ る解 析を 試み た。RPA法によ り胸腺、脾臓、

リ ン バ 節 の 免 疫 系 組 織 に お い て 、 特 異 的 にB7−ImRNAの 発 現 が 認 め ら れ る と と も に 、 MB7−2mRNAの 発 現 が 認 め ら れ た 。 マ ウ ス をOVA/CFA懸濁 液 で 免 疫 し 、 脾 臓 に お け る 各 mRNAの 発 現 を 解 析 し た 。 そ の 結 果 、い ず れ のmRNAも 投 与 後2日 をピ ー ク と す る よう な一 過 性の 発現 誘導が 認められた。したがって、MB7ー2分子はin vivoにおいて、B7―1分子同様 そ の発 現が 厳密に 制御 され てい るこ とが 示唆 され た。

3.MB7―2分子 の機能

  MB7−2分 子の 機能 を解 析す るた め、B7―1およ びMB7―2遺伝 子導 入CHO細胞 を作製した。

得 られ た細 胞に は、 抗マ ウスB7−ImAb(1G10)を 用いたFACS解析によりそれぞれB7−1およ びMB7−2分 子 が 同 程 度発 現し てい ると 考え られ た。CD28お よびCTLA―4に対 する 親和性 を 比 較 検 討 す る た め 、CD281gお よびCTLA−41g可溶 性融 合蛋 白を 用い てFACS解 析を 行った 。 MB7−2分 子 はB7−1分 子と 比 較 し て 、CTLA−4に 対し ては 弱い もの の、CD28に対 しては ほ ぽ 同等 の親 和性 を保 持し てい るこ とが 明ら かとな った 。こ のこ とか らB7ー1とCD28/CTLA− 1の 相 互 作 用 に お い て 、IgVド メ イ ン が 両 者 に 対 す る 結 合 部 位 で あ り、IgCド メ イ ン は

:TLAqに対 する 親和 性の 増強 に必 要で ある ことが 示唆 され た。 ドヌ イン 構造 を欠失した選 択 的ス プラ イシ ング 産物の解析により蛋白問相互作用におけるドメインの役割が明らかにさ れ ると とも に、MB7―2分 子がCD28/CTLA−4リガン ドと して 機能 し得 るこ とが 示唆された。

  MB7―2分子 のT細胞 に対す る活 性を 検討 する ため 、マ ウス のり ンパ 節よ り精 製したT細胞 を用 いて 、B7ー1、MB7―2、B7−2導 入CHO細胞 の増 殖に 与え る影 響に つい て検 討した 。T細 胞 を サ ブ オ プ テ ィ マ ル な 濃度 のPMA/ionomycin存 在 下 で各CHO導 入 細 胞 と 共 培 養 し 、T細 胞の増殖能を解析した。B7−1、B7−2一くニHO細胞がT細胞に活発な増殖を誘導したのに対し、

MB7−2−CHO細 胞 はT細 胞 の増 殖 を ま っ た く 誘 導 で き な か っ た 。 一 方 、 活 性 化T細 胞 を 各 CH○ 導入 細胞 と共 培養 する と、B7−1、B7―2−CHO細胞 と比較すると弱いものの、MB7−2ー CHO細 胞 に もT細 胞 の 増 殖 を維 持す る活 性が 認め られ た。 すな わち 、MB7−2分子 はB7−1、 B7―2分 子と 異な りT細 胞に 対す る作 用がT細胞 の活 性化 状態に依存することが明らかとなっ た 。 し た が っ て 、T細 胞 を 中 心 と す る 生 体 の 免 疫 応 答 を次 の3段階 に分 けて 考え た場 合、

    1)抗原認識によるT細胞の活性化

    2)持続的なT細胞の活性化による外来抗原の除去     3)外来抗原除去後のT細胞反応の終息

B7―1お よびB7−2分子 がT細 胞の 活性 化段 階か ら作 用し 得る のに 対し 、MB7−2は活性 化T細 胞反応の維持にのみ特異的に作用すると考えられる。

(3)

【結論】

1. マウ スB7―1分 子のIgCド ヌイ ンを 完全 に欠 失す るよ うな 選択 的ス プラ イシング産(MB7ー   2)の存在を同定した。

2. MB7−2はin vivoにおいてB7―1と同様その発現が厳密に制御されていることが示唆された。

3. MB7―2はIgCドヌイ ンを 欠失 して いる にも かか わら ず、CD28に対 する 親和性を保持して   い る こ と が 明ら かと なっ た。 一方 、CTLA−4に対 する 親和 性はB7―1と比 較し て低 下し て   お り 、 受 容 体に 対し て特 徴的 な結 合能 を示 すこ とが 明ら かとな った 。B7−1分子 のIgVド   メ イ ン は 、CD28/CTLA−4の 結 合 部 位 で あ り 、IgCド ヌ イ ン はCTLA‑4と の 親 和 性 の 増 強   に作用することが示唆された。

4. MB7―2のT細 胞に対 する 第2シグ ナル 活性 は、T細胞 の活 性化 状態 に依 存することが明ら   か と な っ た 。す なわ ち、MB7−2は 静止 期T細 胞の 増殖 を誘 導せ ず、 活性 化T細 胞の 増殖 の   みを維持した。

(4)

学 位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

マ ウ ス B 7‑1 分 子の 選 択 的ス プ ラ イシ ン グ 産物 の 同 定 とそ の T 細 胞活 性 化に おける 役割に関 する研 究

  r細 胞 の 活 性 化 は 、TCRを 介 す る 主 シ グ ナ ル の み で は 不 十 分 で あ り 、 抗 原 提 示 細 胞 か ら 伝 達 さ れ る 抗 原 非 特 異 的 な 第2シ グ ナ ル(costimulatory signaDを 必 要 と す る こ と が 近 年 明 ら か と さ れ て い る 。1湘 胞 上 のCD28/CTIA4と 抗 原 提 示 細 胞 上 のB71/B72は 、 第2 グ ナ ル を 伝 達 す る 分 子 と し て そ の 重 要 性 が 明 ら か に さ れ て い る 。   申 請 者 は 、 マ ウ ス 脾 細 胞 に お け るB7ImRNAの 発 現 を 解 析 す る 過 程 で 、 エ ク ソ ン3 欠 失 す る よ う な 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ 産 物(MB72と 命 名 ) の 存 在 を 同 定 し た 。RNase Protection AssayCこ よ り 、MB72mRNAB7ImRNAと と も に 、in vivoに お い て 胸 腺 、 脾 臓 、 リ ン バ 節 等 の 免 疫 系 組 織 に お い て 特 異 的 に 発 現 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 脾 臓 に お け る 各mRNAの 発 現 は 、 免 疫 感 作 に よ り い ず れ も 投 与 後2日 を ピ ー ク と す る よ う な 一 過 性 の 発 現 誘 導 を 示 し た 。 し た が っ て 、MB72in vivoに お い て 、B71同 様 そ の 発 現 が 厳 密 に 制 御 さ れ て い る こ と を 明 ら か と し た 。 さ ら に 、MB72遺 伝 子 導 入CHO細 胞 を 用 い てCD28/CTLA‑4に 対 す る 結 合 能 を 検 討 し 、MB72B71と 比 較 し て 、CTIA4 対 し て は 弱 い も の の 、CD28に 対 し て は ほ ぽ 同 等 の 親 和 性 を 保 持 し て い る こ と を 示 し た 。 し た が っ て 、MB72CD28/CTLA4の 第3の り ガ ン ド と し て 機 能 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 一 方 、MB72(B71パ リ ア ン ト ) のT細 胞 に 対 す る 増 殖 誘 導 能 は 、B71/B72と 異 な り 、T細 胞 の 活 性 化 状 態 に 依 存 し 、 活 性 化T細 胞 に の み 特 異 的 に 作 用 し た 。B71B72 は 発 現 動 態 の 違 い か ら 、 生 体 内 に お い て 、B72が 免 疫 反 応 の 開 始 に 、B71は 免 疫 反 応 の 増 幅 に 作 用 す る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 一 方 、MB72(B71バ リ ア ン ト ) は 活 性 化T細 胞 の 増 殖 維 持 に 特 異 的 に 作 用 す る と 考 え ら れ た 。

  公 開 発 表 は 約15名 の 出 席 者 の 前 で 行 わ れ た 。 質 議 応 答 で は ま ず 、 吉 木 教 授 よ り 、 @ MB72が 病 態 等 の 特 殊 な 条 件 下 に お い て 選 択 的 に 発 現 す る 場 合 が 存 在 す る か 、 @ 抗 原 提 示 細 胞 上 に お け るB71MB72分 子 の 存 在 様 式 お よ び そ の 解 析 に 利 用 可 能 な 特 異 抗 体 の 作 製 に つ い て 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 、Oこ れ ま で に 自 己 免 疫 疾 患 モ デ ル マ ウ ス で あ る lprマ ウ ス に お い て 検 討 し た が 、 明 ら か な 発 現 の 違 い が 見 い 出 さ れ な か っ た こ と 、 ◎ 細 胞 膜 上 のB71MB72分 子 の 存 在 様 式 を 解 析 す る に は 、 単 個 細 胞 上 の 分 子 を 検 出 で き る 特 異 抗 体 の 利 用 が 必 須 で あ る こ と 、 ま た そ の 作 製 に は 欠 失 に よ る 連 結 部 位 を 認 識 す る 抗 体 を 獲 得 す る 必 要 が あ る こ と を 回 答 し た 。 次 に 、 小 野 江 教 授 よ り 、CDB71MB72分 子 が

光 則

利 和

出 江

   

   

上 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

異なる細胞上に発現している可能性について、またその検索のひとつとして各種細胞株 における両分子の発現について、◎MB7―2分子が活性化T細胞に特異的に作用したこと に関して、活性化T細胞の詳細な実験条件について、◎MB7−2がCD28/CTLAー4に特徴 的な結合能を示したことに関して、ドメインを欠失することによる立体構造への影響に ついて質問があった。申請者は、@B7ー1およびMB7―2分子が同時に、あるいは別々に発 現する可能性について触れるとともに、これまでに解析したいくつかの細胞株では、い ずれも両者が発現していたこと、@活性化1細胞が抗CD3抗体による刺激により72hr前 処置を受けたこと、◎これまでの文献を引用し、置換、欠失等の変異が全体の立体構造 に与える影響の可能性について回答した。会場からは第2内科小林講師より、O抗原提示 細胞の種類の違いによるB7−1、MB7―2分子の発現について、@細胞膜上Ig、CD40を介 した刺激等、LPS以外の刺激によるB細胞でのMB7−2の発現動態について質問があった。

申請者は、@現在まだ未検討であること、. ConAを用いた脾細胞の刺激においてはLPS と同様な結果であったことを回答した。最後に上出教授より、CDMB7―2の活性化T細胞 に対する作用がCTLA−41gでほぽ完全に抑制されたにも関わらず、抗CD28(Fab)抗体で 部分的であったこと、@MB7―2が静止期T細胞に作用を示さなかったのではなく、アナ ジーの誘導を抑制している可能性について質問があった。申請者は、@CTLA−4の関与 および用いた抗CD28(Fa.b冫抗体の濃度の問題を答えたが、MB7−2がB7−1′と比較して CTIAqに対して結合能が低下していることから、CTLA―4を介するアポトーシス誘導能 が低下している可能性があることをアドバイスされた。また、◎に関しては、MB7−2の アナジー抑制能に関しても今後検討する予定であることを回答した。本研究は、T細胞の 新たな活性化調節機構の一部を解明したものであり、今後さらに解析を進めることによ り、1細胞機能の人為的制御に道を開くものと期待される。申請者は全般的に概ね妥当な 回答を行い、審査委員は本研究の斬新性、実験法や結果の解釈の妥当性、関連領域の知 識、さらに研究者としての申請者の資質について審議し、いずれの点においても高く評 価されるとの結論に達した。

  以上より、審査員一同は、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有す るものと判定した。

参照

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