博 士 ( 医 学 ) 石 塚 竜 哉
学 位 論 文 題 名
マ ウ ス ACTH 受 容 体 遺 伝 子 の ク 口 ー ニ ン グ と そ の 発 現
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
1992年 にMountjoyら は ヒ ト のACTH受 容 体 及 ぴMSH受容 体 を ク 口ー ニ ン グ した ./− ザ ン 解析 か ら ACTH受 容 体 のmRNAは 副 腎 に の み 発 現 し ,MSH受 容 体 はmelanocyteの み で 発 現 し て い る こ と も 明 か とな っ た . さらに ,脳に 特異的 に発現 している 新しいMSH受容 体もクロ ーニン グされ ,これ ら受容 体 の 細胞 特 異 発 現は , 転 写 制御 に よ る もの と思わ れ非常に 興味深 い,現 在まで ,ACTHに反 応して ステロ イ ド産 生 を 示 す副 腎 由 来 の細 胞 株 は マウ スY―1細 胞 だ け であ る こ と から , こ の 細胞 株 がACTH受容体 遺 伝子 の 副 腎 特異 的 転 写 調節 機 構 の 研究 に適し ていると 考え, マウスACTH受容 体遺伝子 のク口 一二ン グ を行 う こ と にし た .
方法
1)マウスACTH受容体遺伝子のクローニング
ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 の 全 コ ー ド 領 域 を 含 むDNA断 片 を 正 常 ヒ ト リン パ 球 ゲ ノムDNAを 鋳 型と し て 合 成 プ ラ イ マ 一5 GQQgQCC・ATGAAGCACATTATCAACTCGTATG31(se懲e)と5.GQ△ △一 璽 コAAAACCA GGGATCAGCCATTCTAC3. (andsense) 間 でPCR法 に て 得 た . そ のDNA断 片 をpUC18に サ プ ク ロ ー ニン グし, ランダ ムプライ ミング キット を用い32Pで標識 しプロ ープと し,マ ウス胸 腺リン パ腫由来の細胞株 で作 成 し た 九dashファ ー ジ ゲ ノムDNAラ イプラ リーをス クリー ニング した. ハイプ リダイ ゼーシ ョンは 5xSSPE.5xI冫enhar酬s溶液,20ゲ。fonnarnide,O.1ゲ。SDS,0.1m伽I大腸菌DNA中で42℃一晩行った.最終の 洗浄条件は,0.5xSSC,0.1ゲ。SDSで42℃60分とした.
2)ゲノムDNAクローンの解析
106個 のフ ァージ をスク リーニ ングし て,8個 の陽性フ ァージ クロ― ンを得 た.最 も強い シグナ ルを示 したク 口一ン 廴mCTR8の制 限酵素 地図を 作成し ,これ をpUC18にサ ブクローンし,塩基配列の決定をした.
3)/−ザン解析
Y−1細胞 か らRNAzolを 用 い て 全RNAを抽出, さらに0ugば(rDLa地x粒子 にてp0り (A)十RNAを選別 し た . マ ウ スACTH受 容 体 の 全 コ ー ド 領 域 を 含 むDNA断 片 を ラ ン ダ ム プ ラ イ ミ ン グ キ ッ ト を 用 い32P で標識しプローブとした.20嶇のpolyCA)十RNAを1ゲ。寒天ゲル(2ゲ。細maldehyde)で電気泳動し,ナイ口ン メンプランにトランスファーした.ハイブリダイゼーションは5xSSPE,5xDenhardfs溶液,50ゲ。fbrm孤ide, 0.1ゲ。SDS,0.2m如1大腸菌DNA中で42℃一晩行い,最終洗浄条件は,O.3xSSC,O.1ゲ。SDSで50℃で行った.
4)ACTH受容体遺伝子のCOS7細胞での一過性発現
MH3恥 細胞 のゲノ ムDNAを鋳 型とし て廴m( :TR8のシ ークエ ンス解 析に基 づぃて 合成し たプラ イマー間 で ,PCR法 に て マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 の 全 コ ー ド 領 域 を 含 むDNA断 片 を 得 た . こ のDNA断 片 を発現ベクターpcDL‐SRロ296のEcoR亅部位に組み込んだ(pSRロmACTHR).
COS7細 胞 は , ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン 前 日 に1プ レ ー トO:8x106個 に 調 整 し培 養 .pcDL.SRロ296 お よ ぴpSRamACTHRそ れ ぞ れ20ug/440山 に2.5MCaC1250山 を 加 え ,2xHBS(pH7.1)550いrを 混 合し室 温30分間 インキ ュペー ト後,こ のりン 酸カル シウム の共沈 殿物を 培養細 胞に加 え,37℃4時間培養
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後PBSで2回 洗浄 し通 常 の培 養液 に換 え培 養 した ,ト ラン ス フェ クシ ョン48時 間後,ACTH 10‑7Mを添加 し ,2 mM 3‑isobutyl‑l‑methylxanthine存 在下 に,37℃60分培 養後 ,培 養液 中 のcAMPをRIAで測定し た .
結果と考察
ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 を プ 口 一 プ と し て , マ ウ ス ゲ ノ ムDNAラ イ プ ラ リ ー の106個 の フ ァ ー ジ を スク リ ーニ ング して8個 の陽 性フアージを得,本実験 では最もシグナルの強かっ たク口ーンXmCTR8につい て 解 析 し た .A,mCTR8は 全 長 約12kbの イ ン サ ー ト を もち ,ACTH受 容 体の コー ド領 域と そ の5. 上 流約 9 kbを 含 ん で い た . マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 の コ ー ド 配 列 は ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 と 同 様 イ ン ト ロ ン を 含 ま ず ,296個 の アミ ノ酸 をコ ー ドし てい た. ヒト 及 びウ シACTH受 容体 で は終 止コ ドン の 前の コド ン が,TGG及びCAGでTrp及びGlnに翻訳されるが ,マウスではここh'TAGで終 止コドンとなっており,
1個アミノ酸が少ない構造であった.
マ ウ スACTH受 容 体 は ヒ ト 及 び ウ シ と 同 様 にN端 側 細胞 外ド メイ ン に2カ 所の 糖 鎖結 合コ ンセ ン サス 配列 を もち ,第3番 目の 細胞 内ド メ イン にAキナ ―ゼ によルリン酸化を受けるコ ンセンサス配列を有して いた,ヒト及びウ シでは′rhr・204がCキナー ゼによるりン酸化部位とな っているが,マウスでは同部位は Naと な っ て い た . し か し 第2番 目 の 細 胞 内 ド メ イ ン 中 にnいMetIA昭 配 列 が あ り ,Cキ ナ ー ゼ に よ り Tbr|143がりン酸化される可能性があると考えられた.
マウスACTH受容 体は,ヒト ,,ウシACTH受容体とは,塩基配列でそれぞれ84.6.80.6ゲ。,アミノ酸 配列でそれぞれ88.9.78.7%の相同性を示した.他のmelanocomn受容体とは39.6〜48.4ゲ。のアミノ酸配列の 相同性を示した.
Y−1細 胞 で の ノ ー ザ ン 解析 で は,20噛 のpoly(A) 十RNAを 用い て 約2kbの単 一 バン ドが 検出 さ た.
マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 をpcDL‐SRa296に 組 み 込 ん だ 発 現 プ ラ ス ミ ド をCOS7細 胞 に 導 入 し ,A CTHに対する応答性を調べたところ,明らかなcAMPの産生増加を認めた.
以 上 か ら 本 遺 伝 子 は 副 腎 細 胞 に お い て そ の 発 現 が み ら れ , 導 入 細 胞 でACTHに 応 答 し てcAMPの 産 生 増 加 を 示 す こ と , 既 報 の ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 及 び ウ シACTH受 容 体cDNAと 相 同 性 が 非 常 に 高 い こ と か ら , マ ウ ス のACTH受 容体 遺伝 子と 考え ら れた .ま た, 今 回ク ロー ニン グし た 九mCTR8はコ ード領域の上流約9kbを含んでおり,転写調節機構の解析に有用と考えられる.
結語
マ ウスACTH受容 体 遺伝 子を クロ ーニ ン グし ,そ の解 析 と真 核細 胞で の発 現を検討 して,以下の結果 を得 た.
1) マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 の コ ー ド 領 域 は ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 と 同 様 に イ ン ト ロ ン を 含 ん で いな かっ た.
2) マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 は296個 の ア ミ ノ 酸 か ら な り , ヒ ト お よ び ウ シ のACTH受 容 体 よ り 1個の ア ミノ 酸が 少な い 構造 であ った .
3) マ ウ スACTH受 容 体 に はN端側 細胞 外ド メイ ン に2カ 所 の糖 鎖結 合部 位(Asn‑12.Asn‑17)とAキナ ー ゼ , Cキ ナ ー ゼ に よ る り ン 酸 化 部 位 各 1カ 所 ( Ser‑209,Thr‑143) を 認 め た . 4)ヒ トお よ びウ シのACTH受 容体 のア ミノ 酸配 列 と比 較し て, それ ぞ れ88.9,78.8qoと高 い相 同性 を 有し てい た.
5) ノ ー ザ ン 解 析 の 結 果 で は , マ ウ スACTH受 容 体 はY−1細 胞 で 約2kbの 単 一 のmRNAを 認 め た . 6) COS7細 胞 で の 一 過 性 発 現 実 験 で は , ACTHに 反 応 し てcAMPの 増 加 を 認 め た .
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
マ ウ ス ACTH 受 容 体 遺 伝 子 の ク ロ ー ニ ン グ と そ の 発 現
I.目的と背景
1992年にMountjoyらはヒ トのACTH受容 体及 びMSH受容 体遺 伝子 をク 口―ニングした.
/一 ザ ン 解 析 か らACTH受 容 体 のmRNAは 副 腎 に の み 発 現 し ,MSH受 容 体 のmRNAは melanocyteのみ で発 現して いる こと も明 かとなった.さらに,脳に特異的に発現してい る 新し いMSH受容 体も ク口 ーニ ング され ,こ れら 受容体 の細 胞特 異発 現は,転写制御に よ る も の と 思 われ 非常 に興 味深 い, 現在ま で,ACTHに反 応し てス テ口 イド 産生 を示 す 副 腎由 来の 細胞 株は マウスY‐l細胞 だけ である.この細胞株がACTH受容体遺伝子の副腎 特 異 的 転 写 調 節機 構の 研究 に適 して いると 考え ,マ ウスACTH受容 体遺 伝子 のク ロー ニ ングを行うことにした.
II.方法
1)マウスACTH受容体遺伝子のク口ーニング
ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 の 全 コ ー ド 領 域を 含 むDNA断片 を, 正常 ヒト リン パ球 ゲノ ム DNAを 鋳 型 とし て , 既 報 の ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 を 基 に 合 成 し た プ ライ マ ー間 でPCR 法 にて 得た .そ のDNA断片 をプ 口ー ブと し, マウ ス胸腺 リン パ腫 由来 の細胞株で作成し た 入 dashフ ァ ー ジ ゲ ノ ム DNAラ イ ブ ラ リ ー を ス ク リ ー ニ ン グ し た . 2)ノーザン解析
マ ウ スACTH受容 体の 全コ ード 領域 を含むDNA断片 をプ ロー ブと し,Y‑l細 胞か ら抽 出 した20 Lt9のpoly (A)+ RNAを1ワ。寒天ゲルで電気泳動し,ナイ口ンメンブランにトランス フ ァ ー し ,32Pで 標 識 し た 上 記 プ 口 ー ブ と ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン し た . 3) ACTH受容体遺伝子のCOS7細胞での一過性発現
マ ウ ス ACTH受 容 体 遺 伝 子 の 全 コ ー ド 領 域 を 含 む DNA断 片 を 発 現 ベ ク タ ー pcDL−SRoc296に組み込んだ(pSRamACTHR).
COS7細 胞 は , ト ラ ン ス フ ウ ク シ ョ ン 前 日 に1プ レ ー ト0.8x106個 に 調 整し 培 養 . pcDLーSRa296およびpSRamA(ニTHRそれぞれ20ugをりン酸カルシウム法にてトランスフェ クションした.
ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン48時 間 後 ,ACTH10―7Mを 添 加 し ,37℃60分 培 養 後 ,培 養液 中 のc´6LMPを測定した.
HI.結果と考察
ヒ トACTH受 容体 遺伝 子を プ口 ーブ として ,マ ウス ゲノ ムDNAラ イブラ リー の106個 の フ ァー ジを スクリーニングして8個の陽性ファージを得,本実験では最もシグナルの強か
夫
一
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主
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ったク ローン入m( ニTR8について解析した.マウスACTH受容体遺伝子のコード配列はヒト ACTH受容 体 遺 伝子 と 同 様イ ント ロンを含 まず,296個 のアミノ 酸をコ― ドしていた .ヒ ト 及 び ウ シACTH受 容 体 で は 終 止 コ ド シの 前 のコ ド ン が,TGG及びCAGでTrp及 びGlnに 翻 訳さ れ るが , マ ウス で はこ こ がTAGで 終 止コ ド ン とな っ ており,1個アミノ酸 が少な い構造であった.
マ ウ スACTH受 容 体 はヒ ト 及び ウ シ と同 様 にN端側 細 胞 外ドメ インに2カ 所の糖鎖結 合 コ ンセ ン サス 配 列 をも ち ,第3番 目 の 細胞 内 ルー プ にAキ ナーゼに よルリン酸 化を受け るコン センサス配 列を有し ていた. また第2番 目の細胞 内ループ 中にThr‑Met‑Arg配列が あ り ,Cキ ナ ― ゼ に よ りThr―143が . リ ン 酸 化 さ れ る 可 能 性 が あ ると 考 え られ た . マ ウ スACTH受 容 体 は, ヒ ト, ウ シACTH受容 体 とは , ア ミノ酸配 列でそれ ぞれ88.9, 78.7%の相同性を示した.他のmelanocortin受容体とは39.6〜48.4c70のアミノ酸配列の相同 性を示した.
Y‑l細 胞 で の ノ ー ザ ン 解 析 で は , 約 2kbの 単 一 バ ン ド が 検 出 さ た . マ ウ スACTH受 容 体 遺伝 子 をpcDL‑SRcc296に 組 み込 ん だ 発現プラ スミドをCOS7細胞に 導 入 し ,ACTHに 対 す る 応 答 性 を 調 べ たと こ ろ, 明 ら かなcAMPの 産生 増 加 を認 め た.
以 上 から 本 遺 伝子 は 副腎 細 胞 にお い て その 発 現が み ら れ,導入 細胞でACTHに応 答し てcAMPの 産 生 増 加 を 示 す こ と , 既 報 の ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 及 び ウ シACTH受 容 体 cDNAと相同 性が非常に 高いこと から,マ ウスのACTH受 容体遺伝 子と考え られた.ま た,
今回ク ローニング した入mCTR8は コード領 域の上流 約9kbを含ん でおり, 転写調節機 構の 解析に有用と考えられる.
IV.結語
マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 を ク ロ ーニ ン グし , そ の解 析 と 真核 細 胞で の 発 現を 検 討 して,以下の結果を得た.
1) マ ウ ス ACTH受 容 体 遺 伝 子 の コ ー ド 領 域 は ヒ トACTH受 容 体 遺 伝 子 と 同 様 に イントロンを含んでいなかった.
2) マ ウ スACTH受 容 体 遺 伝 子 は296個 の ア ミ ノ 酸 か ら な り , ヒ ト お よ び ウ シ のACT H受容体より1個のアミノ酸が少ない構造であった.
3) マ ウ スACTH受 容 体 に はN端 側 細 胞 外 ド メ イ ン に2カ 所 の 糖 鎖 結 合 部 位 と 第2, 第3細胞 内 ル ープ にCキ ナー ゼ ,Aキ ナー ゼ によ る り ン酸化 部位各1カ 所を認めた . 4) ヒト お よ びウ シ のACTH受 容 体 のア ミ ノ 酸配 列 と比 較 して ,それぞ れ88.9,78.80/0 と高い相同性を有していた.
5) ノ ー ザ ン 解 析 の 結 果 で は , マ ウ スACTH受 容 体 はY―1細 胞 で 約2kbの 単 一 の mRNAを認めた.
6)COS7細 胞 で の 一 過 性 発 現 実 験 で は ,ACTHに 反 応 し てcAMPの 増 加 を 認 め た .