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博 士 ( 医 学 ) 岡 部 實 裕 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 岡 部 實 裕

学 位 論 文 題 名

慢 性 骨 髄 性 白 血 病 に お け る 急 性 転 化 の 分子 遺 伝 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

I. 緒  言

  慢 性 骨 髄 性 自 血 病 (chronic myelogenous leukemia,CML)の95%以 上 の 症 例 にお い て 染 色 体 相互 転 座t(9;22)(q34;qll) に 伴 う疾 患特 異的 染色体 異常Philadelphia染色 体(Phi) が み られ る 。22番染 色 体 上 に 座位 す るbcr遺 伝 子 の 切 断部 位 に9番 染色 体からcーabl癌 原遺伝 子 が 転座 す す る こ とに よ りbcr―abl融合遺 伝子 が形成 され,c―abl遺 伝子が 活性化 され ること が そ の分 子 遺 伝 学 的本 態 で あ る こ とが 明 ら か にされ てき た。CMLは数 年に亘 る慢性 期を 経て不 可避 的に急 性転化 (急 転)に 至るが ,現在 ,急転 の機 序は明 らかに されて おらず,また,急転を 予 防 する 有 効 な 治 療法 は 確 立 さ れ てい な い 。CMLの 慢性期 から 急転へ の移行 に関与 する 分子遺 伝学 的機序 を解明 する ことを 目的と して本 研究を 施行 した。

n.症 例 , 材 料 と方 法

  症例 と 材 料 : 当科 及 び 関 連 病院 に お け る1982年 よ り10年 間 のCMLの 延 べ55症 例 を 対象 と し た 。Ficoll―Conray比 重 遠 沈 法 に よ り 骨 髄 血 , 末 梢 血 の 単 核 球 を 回 収 し , 高 分 子DNAや RNAを 抽 出 し 解 析 に 供 し た 。 高 分 子DNAは フ ェ ノ ー ル 抽 出 法 ,RNAはgu anidinum, thiocyanate−cesium chloride法 に よ り 抽 出し た 。CML急転由 来培養 自血 病細胞 株とし て,著 者 が 樹 立 し たMC3細 胞(non―lymphoid crisis)に 加 え てK562細 胞(erythroid crisis) , NALM―1細胞(lymphoid crisis)を 用 いて 解 析 し た 。

  bcr―abl遺 伝 子 の 再構 成 と 発 現 :高 分 子DNAを 各 種 制 限 酵素 に て 切 断 後, サ ザ ン ブ ロッ ト 法 (以 下 サ ザ ン 法と 略 ) を 施 行し た 。maj or―breakpoint cluster region(M一bcr)内での 再 構 成の 検 出 に は3 bcrプ 口ー ブ と5 bcrプ ロ ーブ を 用 い た サ ザン 法 を 行 い ,bcr遺 伝子 内 に お け る 切 断 部 位 を 推 定 し た 。 更 に , 抽 出RNAよ りabl遺 伝 子 第2工 ク ソ ン に 対 す る antisense primer(3 ―AGACTGAAACTCGGACTCCCAGAC−5 ) を 用 いreverse transcriptaseに よ りcDNAを 合 成 し た 後 ,bcr第2エ ク ソ ン に 対 す るsense prlmer(5

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CTCCAGACTGTCCACAGCATTCCG3 ) を 加 えreverse transcriptase polimerase chain reaction (RT一PCR)を施 行し,abl遺伝子とbcr遺伝 子の結合部位を検討した。bcr

―ablmRNAの 発 現 は ノ ザ ン 法 と ド ッ ト ブ 口 ッ ト 法 と に よ り 解 析 し た 。   In vitro DNA transfectionとPCR法に よるtransforming遺 伝子 の 検索 :NIH3T3細 胞 を受容細胞とし,自血 病細胞由来高分子DNA60〃gを燐酸カルシュウム共沈法により導入し培 養した。2―4週後にfocus形成を算定した後。focus形成transformant細胞を回収して培養 した 。transformant細胞 より 抽出した高分子DNA中のヒト 特異的Alu構造の存在をサザ ン 法で確認したうえで既 知の各種oncogeneプローブを 用いたサザン法によりtransforming遺 伝子の同定を試みた。また,点突然変異を検出し得るprimerとoligonucleotideプローブを合 成 しPCR法 に よ りras遺 伝 子 と fms遺 伝 子 の 点 突 然 変 異 に っ い て 検 索 し た 。   p53遺伝子の構造,発現異常の検討:p53遺伝子の第1工クソンから11工クソンをカバーする PR4―2cDNAプ 口 ー ブ , 第6工 ク ソ ン の 対 す るHu2―6プ 口 ー ブ や10―11エ ク ソン をカ バー するHu7ー1プ口 一ブ を用 い てサ ザン 法を 施行 し た。 サザ ン法 はPR4一2cDNAプ口 ー プを用い施行した。

m.結  果

  1. bcr遺伝子内切断点 と急転との関連性:CML50症例のbcr再構成をサザン法により検索 した。2症例 を除きM−bcrの再構成が認め られた。その内の7症例ではM一bcr sequenceの 部分的欠失のため正確ナょ切断部位は決定しえなかったが,残り41症例における再構成部位は M―bcrに 集中 し てい た。 更に ,32症 例に おい てRT−PCR法によりbcr/abl transcriptの 結合部位にっいて検索した。M―bcr再構成を示さなかった1症例を除き,全症例がabl遺伝子 工 ク ソ ン2とMーbcr工 ク ソ ン2(a2一b2) かbcr工 ク ソ ン3(a2―b3) の 結 合 に 由 来するシグナルを示した。慢性期症例と急転症例間には明らかな切断点の差異は認められず,両 期のbcr再構成を検討し得た症例においても急転に伴うbcr切断点の変化はみられなかった。

  2. bcr−ablmRNAの発現:慢性期と急転期の両期を比較,検討し得た症例においては,急 転期では8.5−kb bcr7abl融合mRNAの発現増強が認め られた。ドットブロットによる検討 では,慢性期症例と比較して急転症例ではbcr遺伝子およびabl遺伝子のtranscriptはともに 増幅傾向を示した。

  3.急性転化における発 癌遺伝子の活性化: CML慢性期12症例,急転期13症例においてin vitro DNA transfectionを施行した。慢 性期症例では1例のみが弱いfocus形成を示し,

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transfectionの過程で 生じた活性化hst遺伝子がtransformationに関与していることが示唆 された。一方,急転期13症例の解析では2症例において活性化transformnig遺伝子が検出さ れたが,それらはサザ ンブ口ットassayではNーras遺伝子であることが推察された。更に,

ras遺伝 子群 とfms遺 伝子 に関してPCR法にて点突然変異の有無に っいて検索した。fms遺 伝子の点突然変異は慢性期,急性期いずれの症例においても認められなかった。ras遺伝子群の 検討では,Ki―rasとHa―ras遺伝子の点突然変更はみられず,慢性期12症例中1症例と急転 期19症例1症例でN ‑ ras遺伝子61番コドンのセカン ドレタ―の点突然変異が検出された。

  4.癌抑制遺伝子p53の検討:慢性期11症例ではp53遺伝子のallelicな欠失や構造異常は検 出されなかったが,急 転期13症例中2症例に大規模な構造異常が認められた。更にp53遺伝子 mRNAの発現にっいて検 討を加えた。慢性期8症例では発現異常はみられなかったが,急転移 行期症例及び急転5症例中,リンパ球性急転症例を除く骨髄球性急転4症例と急転由来K562細 胞ではp 53mRNAは検出 されなかった。また,サザン法により対立遺伝子欠損を伴う大規模な 構造異常を示したCML急 転症例により樹立された培 養細胞株MC3細胞においては,正常2.8

―kbp53mRNAと移動度の異なる異常なp53mRNAが認められた。

IV.考  察

  CMLの 延べ55症 例に お いて サザ ン法 とRT―PCRに てbcr遺伝子の 切断部位を検索し急転 との関連 性にっいて検討した。1症例 を除き,CMLの22番染色体qllの切断点はMーbcr領域 のエクソン2と3か4との間のいずれかのイントロンに存在すると考えられた。bcr遺伝子の第 1工クソンに由来するア ミノ酸配列がabl蛋白のSH2領域との結合を介しチ口シンキナーゼ領 域を活性化する機序が明らかにされてきているとともに,bcr遺伝子内切断点の差異に基ずいて 産生され るP190とP210¨′/ab´キナ ーゼが各々ALLとCMLという異 なる自血病発症に関与 するとい う事実はbcrとabl遺伝子の結 合様式がCMLにおいてもその 病態に関与する可能性 を示唆す るため,M―bcr内切断点とCMLの急転との関連性にっいて 検討した。M−bcr内切 断点と予後の間に関連性があるとする報告もみられるが,現在迄の著者の検討では,M−bcr切 断点と急転との関連性 は明らかでなかった。しかし ,bcr7abl mRNAの発現は慢性期症例に 比較して 急転症例で増幅しており,両 期のbcr/ablmRNAを比較し得 た症例においても急転 期ではその発現の増強が認められた。従って,急転細胞は分化成熟能を有する慢性期細胞に比較 してbcr/ablmRNAの発現が強いことが窺われた。

  transforming活性を 有する癌原遺伝子の活性化が急転に関与するか否かにっいてin vitro

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DNA transfectionとPCR法 を 用 い て 検 討 し た 。ras遺 伝 子 の 点 突 然 変 異 に よ る 活 性 化 は MDSか ら 急 性 自 血 病 へ の 移 行 に 際 し 高 頻 度 に 検 出 さ れ る が ,CML急 転 症 例に お いて は低 頻 度 であ り ,諸 家の 報 告と 一致 す る結 果で あ った 。ヒ ト 非リ ンパ 性 白血 病やMDSの 症 例の 約10% 強 にfms遺 伝 子 の 変 異 が 報 告 さ れ て い る が ,CMLの 慢 性 期 や 急 転 期 で は い ずれ に おい ても 変 異 は認 め られ なか っ た。 一方 ,p53遺 伝子 はそ の 正常 機能の消失が細胞の 癌化に関与する癌 抑制遺 伝子 で ある が, 急 転13症例 中2症 例 に構 造異 常 を認 めるとともに,骨髄 球性急転症例にお いて高 頻度 にp 53mRNAの 発現 消失 が みら れ, 急 転と の関 連 性を 示唆 し た。

V.結  語

  本研究の結果は,慢性期から非リンパ性急転への移行はP 210゜fr/ 々′発現の強い造血幹細胞ク ロ ー ンが 漸次 選 択的 に増 加 する 過程 で あり ,p53癌抑 制 遺伝 子の 機 能喪失や,稀に,ras遺伝 子 の 点 突然 変異 に よる 活性 化がこの過程 に促進的に作用する という可能性のー っを示唆するもの と 考 えられた。

学位論文審査の要旨

I研 究 目的

  慢 性 骨 髄 自 血 病(chronic myelogenous leukemia,CML) は 数 年 に亘 る慢 性 期を 経て 急 性 転 化 に 至 る 。CML急 性 転化 に 関与 する 分 子遺 伝学 的 機序 を解 明 する こと を 目的 とし て ,Phi染 色体 異常 に 伴っ て形 成 され るbcr7abl遺 伝子 の解 析 に加 えて , その 他の 癌 遺伝 子及 び 癌抑 制遺 伝子 の関 与 の可 能性 に っい て解 析 した 。

II対 象 及 び 方 法   1. 対 象 症 例

  1982年 か ら1992年 ま で のCML55症 例 を 対 象 と し , 自 血 病 細 胞 よ り 高 分 子DNAとRNAを 抽

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保 暹 明         光 崎 巻 沼 宮 葛 柿 授 授 授 教 教

′ 教

査 査

主 副

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出し 解 析 し た。 ま た , 一部 の 実 験 にお い て は 培養 自 血 病 細胞 株 を 用 いて 解 析した 。   2. bcr/abl遺伝子の再構成と発現

  高分子DNAを各種 制限酵 素にて 切断後 ,bcr遺伝子内再構成を検出し得る各種DNAプロー ブを用 いサザ ンブ口 ットを施 行した 。更に,抽出RNAよりabl遺伝子第2工クソンに対する antisense primerを 用いreverse transcriptaseによりcDNAを合成した後,bcr第2工クソ ンに対 するsense prlmerを加え ,polimerase chain reaction (RT―PCR)を施行し,abl 遺伝子 とbcr遺伝 子との 結合部 位を検 討した。‑bcr7ablmRNAの発現はノザン法とドットブ ロット法により検索した。

  3. transforming活性を有する癌遺伝子の検討

  in vitro DNA transfection法はNIH3T3細胞を受容細胞とし燐酸カルシュウム共沈法に よ゛り施行した。ras遺伝子群(N―,Ha―,Ki−)及びfms遺伝子のコドン969と301の点突然 変異にっいてPCR法により検討した。

  4. p53遺伝子の構造,発現異常の検討

  p53遺伝子 の各部位に対するDNAプ口ーブを用いてサザンブ口ット,ノザンブ口ットを施 行した。

m結  果

  1. bcr遺伝子切断部位と急性転化

  CML50症 例のbcr再 構 成 をサ ザ ン 法 によ り 検 索 した 。2症例 を除きmajor breakpoint cluster region (M−bcr)における再構成が認められた。RT―PCRによる23症例の検討では 1症 例 を除きM―bcr内 工クソ ン2かエ クソン3とabl遺伝 子工ク ソン2と の結合 に由来す る シグナルが認められた。しかし,慢性期症例と急性症例間にはM−bcr切断部位の差異はみら れなかった。

  2. bcr/ablmRNAの発現

  慢性期と急性期の両期にっいて検討比較し得た症例においては,急転期で8.5―kb bcr/abl 融合mRNAの発現 増強が みられ た。ド ットブ 口ットによる検討では,急転症例ではbcr及び abl遺伝子のtranscriptはともに増幅していた。

  3.急性転化における発癌遺伝子の活性化

  in vivo DNA transfection assayでは急転期13症例中2症例でtransforming活性を有する 遺伝 子が検 出され, それらは活性化N―ras遺伝子であった。PCR法による検討ではfms遺伝

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子の コド ン969と301の点突 然変異 は検出 され なかっ たが, 慢性期12症例 中1症例と 急転19症 例中 1症 例 で N− ras遺 伝 子 61番 コ ド ン 第2塩 基 の 点 突 然 変 異 が 検 出 さ れ た 。   4. 癌 抑 制 遺 伝 子p53の 検討

  慢 性期症 例ではp53遺 伝子の 対立 遺伝子 欠損や 構造異 常は 検出さ れなか ったが ,急転13症例 中 2症 例 に大 規 模 な 構 造異 常 が 認 め られ た 。p 53mRNAの 発 現 は 慢 性期 症 例 , リ ンパ 球 性 急 転症 例 及 びPhi陽 性ALL細 胞 で は 異 常 を 認 め な か っ たが , 急 転 移 行期1症 例 , 非リ ン パ 球 性 急転 4症 例 及 び 赤 芽 球 性 急 転 由 来K562細 胞 で はp53mRNAは 検 出 さ れ な か っ た 。 サ ザン 法 に よ り 対 立 遺 伝子 欠 損 を 伴 う大 規 模 な 構 造 を示 し た 急転症 例より 樹立 されたMC3細 胞株に おいて は正 常2.8一kb p53mRNAと 移 動 度 の異 な る 異 常 なmRNAが認 め ら れ た 。

1V要 約 及 び 考 察

  本 研 究 を 通 して 以 下 の 点 が明 ら か に な っ た。

  1. CMLに お け るbcr遺 伝 子 の 切 断部 位 はM→bcr領 域 に集 中 し て い たが , 慢 性 期 と 急転 期 症 例の 間 に は そ の 相違 は み ら れ なか っ た 。

  2. bcr7ablmRNAの 発 現 は 慢 性 期 に 比 較 し て , 急 転 期 で 増 強 し て い た 。   3. 急 転 に 伴うras遺伝 子 の 点 突 然 変異 に よ る 活 性化 は 稀 で あ り, ま た 一 方 ,fms遺 伝 子の 点 突然 変 異 も み ら れな か っ た 。

  4. 急 転13症 例 中 ,2症 例 でp53遺 伝 子 の 大 規模な 構造異 常が検 出さ れると ともに ,非リ ンパ 球 性 急 転 症 例 で は p 53mRNAの 著 明 な 発 現 減 少 を 主 と す る 異 常 が み ら れ た 。   以 上 の 結 果 よ り ,CMLに お ける 非 リ ン パ 球性 急 性 転 化 への 移 行 はbcr7abl遺 伝 子 発 現 の強 いPhlク 口 ー ンが 選 択 的 に 漸増 す る 過 程 であ り ,p53癌 抑 制 遺 伝 子の 異 常 や 稀 にras癌 遺 伝子 等 の 活 性 化 が 急 転 へ の 過 程 に 促 進 的 に 作 用 す る 可 能 性 の ひ と っ と し て 示 唆 さ れ た 。

以上に より, 本研 究は博 士(医 学)の学位論文として妥当なものと判断される。

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参照

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