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博 士 ( 医 学 ) 森 岡 正 信 学 位 論 文 題 名

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 森 岡 正 信

学 位 論 文 題 名

白 血 病 に お け る 血 清 筋 型 Aldolase の 臨 床 的 意 義 に 関 す る 研 究

    学位論文内容の要旨 I研究目的

  解糖系酵素の 一員であるAldolase (EC4.1.2.13;以下ALD)には筋型川,肝型(B),脳 型(C)の三種のアイソザイムが存在し,癌化時には発生母組織の如何に拘わらず筋型ALD(以 下; ALD―A)が 増加してくることが,ALDの 分画測定法や電気泳動法などの検討より知ら れている。しか し,これらの検討には限界があり,教室の浅香は,ALD→Aの酵素蛋白質を直 接定量しうるradio一immunoassoy(RIA)法を 開発し,癌におけるその組織や血清での増加 を報告してきた 。このRIA法を用いて,著者 は自血病の診断や治療効果判 定における血清 ALD―Aの臨床的有用性を検討した。

1I実験方法および対象 1ALD―Aの測定系

  ALD一Aの 測 定は 二抗 体 法に よるRIA法に よっ た。 す なわ ち, ヒト 筋肉 よ りALD―Aを 精製してニワト りに免疫し,抗ヒトALD―A血 清(第一抗体)を得,さら に,二ワトリIgG を家兎に免疫し ,抗ニワトリIgG血清(第二 抗体)を作製した。ALD―Aの12゜Iによる標識 はク口ラミンT法 により行なった。約10,OOOcpmに調製したt25I ALD―A,1,000倍に希釈 した第一抗体および被検血清の各0. Imlを加え,室温にて24時間反応させた。その後,抗原抗 体 結合 物と 非結 合抗 原 の分 離の ため 第二 抗 体を 加え 遠心 , 沈澱 物の 放射 活性をwell型 ッ―scintillation counterで測定した。

2血清ALD―Aの正常値

  健常成人41例 の検討成績より,血清ALD−A値は171土39(平均値土2SD)ng/mlであり,

正常値を210ng/ml以下とした。

3.対象患者 白血病  85例

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(2)

  急性 非リ ンパ性自 血病(ANLL)   急 性 リ ン パ 性 自 血 病(ALL)   慢 性 骨 髄 性 白 血 病(CML) 非 腫 瘍 性 血 液 疾 患  52例

35 26 24

  再 生 不 良 性 貧 血  (AA)  10例   鉄 欠 乏 性 貧 血  (IDA)  20例

  特 発 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病(ITP)  5例   急 性 ル ン パ 節 炎  (LA)  7例

  溶 血 性 貧 血  (HA)  10例

  ANLLお よ びALLはFAB(French←AmericanーBrjti.Ii) 允 類 に よ り 病 型 を 分 け , ANLLで はMl  8例 ,M212例 ,M3  2例 ,M4  9例 ,M5  3例 ,M6  1例 で あ り ,ALLで はLl  6例 ,L220例 で あ る 。CMLは 全 例 慢 性 期 の 症 例 で あ る 。

m結果

  血 清ALD―Aの 正常 値を210n g/ml以 下と し て検 討し ,各 疾 患群 のALD―A値は 平 均値 土SD (range)で表した。

1自血病に おける血清ALD−A値   1)急性 自血病

    急 性自 血 病61例の 未治 療時 血 清ALD−A値は480土319ng/ml(125―1,550ng/ml)で   あり ,52例 (85.2%)が210ng/ml以上の異常値を示した。ANLL 35例では508土315ng/

  ml(125−1,360ng/ml,以下単位省 略)であり,28例(80%)が 異常値を示し,ALLの2   6例では466土329(125―1,550)であり,24例(92.3%)が異常値を示した。FAB分類によ   る病 型別 に みると,Mlは62.5% (5/8),M2では66.6%(8/12)の症例が異常値を示   した ほか ,M3〜M6で は全 例が 高 値を 示しL1‑L2は それ ぞれ1例 を除いて異常値を示し   た。

    臨床 経過を追って血清ALD−A値を測定した10例にっいてみると,血液学的に完全寛解を 得た時点 では全例が正常値に復し,再 発時には再び血清ALD―Aの上昇がみられ,臨床経過   におけ る病勢と並行した推移を示した。また,未治療時の血清ALD―Aレベルと白血病細胞 数との間 には有意の相関がみられた。

  2)慢性 骨髄性自血病

109

(3)

    CML24例 の 末 治療 時 血 清ALD―A値 は481土177 (270―1,100)で ,全例 が210ng7ml 以上の 高値を 示した 。また, 治療により末梢自血球数が2〜3 Xl04/ulにコン卜口ールさ れた時点の血清ALD−A値は全例で低下した。

  3)血清ALD―A値と血清LDHの関係

  未 治 療 急性 自 血 病61例 に お ける 血 清ALD‑Aの異 常値は85.2%(52例) ,LDHの 異常値 は81.9% (50例) にみら れ,ほ ば同様 の異常 率を示 した。 病型別に みると ,ALDーAは ANLLの92.3%(24/26)に異 常 値 を 示し , 一 方 ,LDHは そ れ ぞれ77.1%(27/35),88.4

%(23/26)であり,いずれもALLにおける異常率が高かった。

  4)急性白血病の血清ALD−A値と治療成績・予後との関係

  血 清ALDーA値 が210ng/ml以下 の 正 常 値を 示 し た9例 中8例(88.8% )が 寛解を 得た のに 対 し て ,500n g/ml以 上 の19例 で は9例(47.3%)の 寛解に 留まり,ALD―A値 が高 値にな るに従 って寛 解率は低 下した 。さら に,300ng7mlで二群に分け生存率をみると,

ALD―Aが低値の群は予後良好な傾向を示した。

  5)臨床例

  症例46歳女性急性単球性白血病

  初診時,末梢自血球数は19. 9Xl04/肛1(自血病細胞94%),骨髄有核細胞数51. lXl04/   lu1( 自 血 病 細 胞94.1% ) で あ り ,FAB分 類 でM5と 診 断し た 。 血 清ALDーA620ng/

ml,LDH6401U/1であっ た。寛 解導入 化学療 法によ り,血液 学的に 完全寛 解を得 た時点 で血清ALDーA値は正常となった。しかも,この症例においては抗腫瘍剤および抗生物質の 投与に よる肝機能障害の合併がみられ,黄疸,トランスアミナーゼさらにはLDH,ALD総括 性の上 昇時にも拘らず,血清ALD―Aは正常値を示したままであり,肝障害の際にも原疾患 の病勢を反映するマ一カーとして有用であることが示唆された。

2非腫瘍性血液疾患における血清ALD―A値

  1) IDA,AA,ITP,LAの 血清ALDーA値はそ れぞれ150土35,158土32,171土29,140     土38と,いずれも健常人と同様に正常範囲に分布した。

  2)溶血性貧血における血清ALD―A値

  HA10例(自己免疫性溶血性貧血;4例,遺伝性球状赤血球症,夜間発作性血色素尿症;各   3例)の 血清ALD―A値は339土127(175―540)と1例を除いて高値を示した。これらは,

治療後,溶血性症状の消失により正常化した。

‑110

(4)

IV要約および考察

  白血 病に おけ る 血清 筋型 アル ドラ ー ゼ(ALD―A)をRIA法により検討し以下の成績 を得 た。

1. 急 性 自血 病61例 の未 治療 時 血清ALD―Aは 平均 値480ng7mlで,52例(85.2% ) が210   n g/ml(正常上限値)を超える異常値を示した。

2.急性自血病 の血清ALDーAは,治療により完全寛解を得た時点で正常値に復し,再発時に   は再び上昇 し,病勢と並行した推移を示した。さらに,急性白血病の末治療時血清ALDーA   レベルと末 梢血自血病細胞数は有意に相関し,寛解率・予後とも一定の相関がみられた。

3.急性自血病 の完全寛解時に,黄疸を伴う肝機能障害を認めた症例においても血清ALD―A   は正常値を示したままであり,肝細胞障害に影響されることなく白血病病勢を正確に反映する   ことが示唆された。

4. 慢性 骨 髄性 白血 病24例に お ける 血清ALD一Aは平均 値481ng7mlで,全例が異常値 を示   した。治療による白血球数の減少に伴いALD―Aは低下した。

5. ALD―Aの 血中増加に関しては,従来のアイソザイム比活性や電気泳動法によるザイモグ   ラムの検討 より,自血病細胞における筋型アイソザイムの増加が報告されており,今回の   RIA法による 検討でも,血清ALD−Aレベルは未治療時の白血病細胞実数と有意に相関し,

  寛解・再発の臨床病勢と並行した推移を示すことより,自血病細胞由来であることが示唆され   た。

  これらの結 果より,自血病の補助診断や治療効果判定に血清ALD―Aは有用であることが示 唆された。

(5)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    宮 崎    保 副 査    教 授    小 林 邦 彦 副査    教授    細川真澄男

I研究目的

  解糖系酵素の一員であるAldolase (EC4.1.2.13;以下ALD)には筋型川,肝型(B),脳 型(C)の三種 のアイ ソザイ ムが存在 し,癌 化時に は筋型ALD(以下 ;ALD−A)が増加して く ることが 知られ ている 。教室 の浅香 は,ALD―Aの酵素蛋白量を直接定量しうるradio− lmmunoassoy (RIA)法を 開発し ,癌組 織や血清での増加を報告してきた。このRIA法を用 いて,著者は自血病の診断や治療効果判定における血清ALDーAの定量的測定の臨床的有用性 にっき検討した。

H実験方法および対象 lALD―Aの測定系

  ALD―Aの 測定 は 二 抗 体法 に よ るRIA法 に よ っ た。 す な わち,ヒ ト筋肉 よりALD―Aを 精製してニワ卜りに免疫して,抗ヒトALD→A血清(第一抗体)を得,さらに,二ワトリIgG を 家兎に 免疫し, 抗二ワトリIgG血清(第二抗体)を作製した。ALD―AのI2:JIによる標識 は クロラ ミンT法 により行なった。約10,OOOcpmに調製した125I ALDーA,1,000倍に希釈 した第一抗体および破検血清の各O. Imlを加え,室温にて24時間反応させた。その後,抗原抗 体 結 合 物と 非 結 合 抗原 の 分 離 のため 第二抗 体を加 え遠心, 沈澱物 の放射 活性をwell型 7―scintillation counterで411J定した。

2血清ALD―Aの正常値

  健 常成人41例の検 討成績 より, 血清ALD―A値は171土39(平均値土2SD) ng/mlであり,

正常値を210ng/ml以下とした。

3臨床材料

  白 血病85例 (急性 非リン パ性白 血病ANLL35例,急性リンパ性白血病ALL26例,慢性骨髄 性 自血病CML24例), 非腫瘍性血液疾患52例(鉄欠乏性貧血IDA,再生不良性貧血AA,特発 性 血 小 板滅 少 性 紫 斑病ITP, 急性 リンパ 節炎AL, 溶血性 貧血HA)を 対象と した。 採血は

112

(6)

未治療時に溶血を避けて行い,血清分離後2週間以内に測定した。

1II結果

1白血病における血清ALD一A値

1)急性自 血病

    急性 自血 病61例 の未 治療 時血 清ALD―A値 は480土319ng/ml(125―1,550ng7ml)で   あ り,52 i (85.2%)が210ng7ml以上の異常値を示した。ANLL 35例では508土315ng/

  ml(125―1,360ng/ml,以 下単位省略)であり,28例 (80%)が異常値を示し,ALLの2   6例では466土329 (125―1,550)であり,24例(92.3%)が異常値を示した。末治療時の血清   ALD―Aレベルと自血病細胞数との間には有意の相関がみられた。

  2)慢性骨髄性自血病

    CML24例 の未 治療 時 血清ALDーA値 は481土177 (270−1,100)で, 全例 が210ng2ml 以上の高値を示した。また, 治療による白血球数の減少 と共に血清ALD―A値は低下した。

  3)血清ALDーA値と血清LDHの関係

    未治療急性白血病61例に おける血清ALDーAの異常値 は85.2%(52例),LDHの異 常値   は81.9%(50例)にみられ,ほぼ同様の異常率を示した。病型別にみるとALLにおける異常   率がやや高かった。

  4)急性自血病の血清ALD―A値と治療成績・予後との関係

    ALD―A値 が210n g/ml以 下の 正常 値を 示し た9例中8例(88.8% )が 寛解を得たのに   対 して ,500ng/ml以上 の19例で は9例(47.3%) の寛 解 に留 まり ,ALD−A値が高値に   なるに従い寛解率は低下した。さらに,300n g/mlで二群に分け生存率をみると,ALD ‑‑A   が低値の群は予後良好な傾向を示した。

2非腫瘍性血液疾患における血清ALD―A値

  IDA,AA,ITP,LAの血 清ALD―A値は そ れぞ れ150土35,158土32,171土29,140土38 と,いずれも健常人と同様に正常範囲に分布したが,HA10例では339土127であり,1例を除い て高値を示した。

IV要 約お よ び考 察

  白 血病 に おけ る血 清筋型Aldolase (ALD―A)をRIA法により検討し以下の成 績を得た。

1, 急性 白血 病61例 の未 治療 時血 清ALD―Aは 平均 値480ng/mlで,52例(85.2%)が210

113

(7)

ng7ml(正常上限値)を超える異常値を示した。

2.急性自血病の血清ALD―Aレベルは末梢血自血病細胞数と有意に相関し,さらに病勢と並 行した推移を示した。

3.急性自血病の完全寛解時に,黄疸を伴う肝機能障害を認めた症例においても血清ALD―A は正常値を示したままであり,肝細胞障害に影響されることなく白血病病勢を正確に反映する   ことが示唆された。

4.慢 性骨髄 性自血 病24例に おける 血清ALDてAは平均 値481n g/mlで,全例が異常値を示   し,治療による自血球数の滅少に伴いALD―Aは低下した。

5. ALDーAの血中増加に関しては,従来のアイソザイム比活性や電気泳動法によるザイモグ   ラムの検討より,自血病細胞における筋型アイソザイムの増加が報告されており,今回の RIA法に よる検 討でも ,血清ALD―Aレベルは未治療時の自血病細胞実数と有意に相関し,

寛解・再発の臨床病勢と並行した推移を示すことより,白血病細胞由来であることが示唆され   た。

  これらの結果より,白血病の酵素学的補助診断や臨床的病勢および治療効果の判定に血清 ALD―Aの測定は有用であることが示唆された。

  以 上 に より , 本 研 究は 博 士 ( 医学 ) の 学 位論 文 と し て妥 当 なも のと判 断され る。

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